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迷い人は迷宮城に捕らわれている  作者: ビターグラス
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少年は目を覚ます 3

 次のドアを開くと、部屋の中には調理場のような作りだった。コンロにシンク。シンクには蛇口が付いている。フライパンなどの調理器具も壁にかかっている。


「これは、料理でも作れってことか」


 彼は一つ一つの部屋で何かしなければいけないと考えていたのだが、彼の後ろにあるドアは開いたままだ。閉じていなければ、ドアを開ける仕掛けを作る必要もないだろう。第一、この場所には料理を作るための食料は見当たらない。食料を保存できるような木箱も棚もない。あるのは調理場と調理器具のみでそれ以外は何もないのだ。彼もそれに気が付いて、ドアが閉じていないことも確認した。


「ここでは何もしなくていいのか」


 彼はそう呟いて、フライパンを片手で手に取った。その瞬間、彼の頭に電撃が走ったような感覚がした。それは料理の映像だ。おそらく、その映像の視点は自分のもので、目の前のフライパンで米を炒めていた。そこに調味料、野菜や肉を刻んだものを入れて、さらに炒めているもの。それ以外も料理を作っている光景が頭の中に浮かんできていた。あまり手間のかかる料理はできなかったようで、手の込んだ料理は一つも記憶の中にはない。そして、調理している映像の中には、包丁などもある。そして、それは武器になるだろう。そう考えて、彼は目の前にある包丁をイメージした。すると、彼の前の前に白い光が出現して、それが何かを形作る。最初こそ、歪んだ球体のような形だったが、それが徐々に何かを形作る。それはやがて、目の前にある包丁と同じ形になった。刃渡りは大した長さはなく、その武器で攻撃するならば、かなり近づかなければ敵に傷を与えることもできないだろう。包丁を武器として使うならば、魔法を使った方が強いだろう。彼は自分が超能力で作った包丁を適当に台の上に乗せた。彼が離れても包丁は消えずに残っていた。彼はそれを気にすることなく、その部屋に何もないため、部屋を出た。


 彼はその隣の部屋を開けた。そこは水場で、トイレと風呂があった。そこでは特に何かを思い出すことはなく、すぐに部屋を出た。さらに隣のドアを開いて、中に入る。すると、彼が反応したときには既にドアは閉まっていた。その前、三つの部屋より広い部屋だった。部屋全体が石のようなものでできていた。彼が部屋の中に入って、周りも見て、何をすれば脱出できるのかと考えていると、その部屋の中央に黒い球体が出現していた。黒い球体は部屋の中央に置かれたままで、何も起こらなかった。彼はその球を注視していたが、何も起こらなかった。しかし、すぐに黒い球体が静かに浮いた。そして、黒い球体は回転し始めた。そして、黒い球体は針を飛ばし始めた。針一つの大きさは大したものではないが、何度も体に刺されば、大ダメージになるだろう。そうなれば、迷宮城から脱出することはできなくなるどころか、この場所で死んでしまうだろう。こんな場所では死にたくはなかった。記憶はなくても、強くこの場所から出たいと思っていなくても、まだ生きていたいと思うのは記憶がなくても生物としては当たり前のことかもしれない。


 まだ死にたくないという彼の意思は、思い出した記憶の中の、この状況を切り抜けるための魔法を探し出した。彼はその記憶を引きずり出して、それを形作るための呪文を呟いた。


「土よ。ストーンウォール」


 彼の目の前に床から生えた石の壁が彼を針から守っていた。石の壁が針を弾き、彼には一本も当たらない。そのまま、彼は守られていたが、あの球体を止めなければこの部屋から抜け出すことはできないと彼は考えていた。しかし、石の壁の周りを見れば、回避できるほどの隙も無い針の数。石の壁を続けて出して、少しずつ近づくことはできるかもしれないが、少しでもしくじれば、無数の針が体に刺さるわけだ。そう思うと、他の策を考えたいと思ってしまう。


 そして、彼が作戦を思案している間に、針の勢いはなくなっていた。石の壁の後ろからちらと球体の方を見ると、球体は回転をやめて、小さくなっていく。そのまま小さくなり、消滅した。そして、ドアが勝手に開く。石の壁の魔法も解除されて、自然の土の魔気へと還る。黄色の粒子となって消えていく。最後にはその部屋には、無数の針しか残っていなかった。彼は針を踏まないように慎重に歩いて、その部屋をでた。


 まだまだ、序盤であるはずだが、死ぬような思いをして、疲れがどっと出てきていた。息を吐きだして、自分の生を感じていた。今の彼にはその疲れすら心地よい。彼は気合いを入れなおして、次の扉を開いたのだが、そこには大量の木箱が並んでいた。その木箱の一つを開けると、中には野菜が入っていた。先ほどの調理の映像に出てきていたもので、調理の方法もわかる。しかし、米はそこにはなく、野菜と果物だけがそこにあった。それでも、今の疲れを回復したいがために、リンゴを手に取り、それを食べていた。

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