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迷い人は迷宮城に捕らわれている  作者: ビターグラス
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少年は目を覚ます 1

異世界もの、第8作目になります。

今回もまた、1話ごとの文章量は一瞬で読める程度のものですので、

お時間あるときにでも、読んでいただければ幸いです。

 どこかの広間。そこには一人の男が倒れていた。背格好は中学生くらいだろうか、短めの黒い髪に、どちらかといえば丸い輪郭。見た目には特徴という特徴はない男子。シンプルな黒いパーカーに、ポケットが沢山ついているパンツ。これも黒色だ。パーカーの前は半分くらい空いていて、中のチェーンのイラストと読みにくい英語が書かれたシャツが見えていた。


 彼が倒れている場所は、大きな広間だった。赤い大きなカーペットが広がり、壁は白一色。天井には大きなシャンデリアが付いていて、部屋の中を煌々と照らしている。その広間は大きいというのに、扉は一つしかついていない。その扉は縦には人間の三倍ほどの大きさで横には人が五人ほど並んで同じくらいか、少し大きいくらいかというような巨大な扉だった。


 その広間で、ようやく、彼の体が動いた。ピクリと動いたと思えば、彼は小さくうなりながら、目を開ける。寝ぼけながら、体を起こし周りを見て、状況をやっと理解した。


 何度も何度も周りを見回しても、状況は何も変わらない。白い壁にシャンデリアの光が反射して、部屋はかなり明るい。起きたばかりの彼の目には突き刺さるような感覚があり、薄目でしか目を開けられない。だが、その細い視界の中でも、周りの状況を確認する。だが、何度見ても何もわからない。彼の記憶の中には、そこにいる理由も、そこに来る前の記憶もない。いくら考えても、ここに来る前の記憶は一切思いだせない。思い出せるのは自分の名前くらいだろうか。


「自分の名前、カシマ、メイト。鹿島、明途……」


 自分の呟きを聞いて、自分が操ることができる言語を思い出す。脳みそが勝手に覚えるほどに使い込んでいる言語のはずなのに、なぜその言語を使っているのかはわからない。


 あまりに何もわからない彼は、強い不安に苛まれる。そんな状態の彼の前に看板が出現した。地面からすっと生えてきたのだ。何の予兆もなく、生えてきた看板が彼の視界に入る。何も書かれていないはずの看板に少しずつ文字が表れていた。


「ここは迷宮城。君はこの場所から脱出するか、このままも迷い続けるか。選ぶのは君だ」


 看板の文字を読んでも、言葉の意味しか分からない。自分の置かれた状況を理解することはできなかった。そもそも迷宮城というのが何かわからない。この場所の名前だということはわかるが、そこから情報を得ることはできない。そもそも、自分に何ができるのかわからない。戦うにしても、自分にどうな技能があるのかわからないのだ。脱出と言われても、何をどうすればいいのかなんてわかるはずもない。


「?????」


 彼が看板を見ても動かなかったせいか。看板の文字が変わる。彼は書き換わった文字を見ても、看板が何を伝えたいのかわからない。


「どうして動かない?」


「どうもこうも、何も覚えてないんだ。何もできない。迷うこともできない」


 看板相手に彼は返答する。記憶がないせいで、看板と対話できないという常識が、今の彼にはないのだ。


「記憶がない? それはまずいね。私に触れて? 優しくね」


 純粋な彼は、看板に触れる。


「少しそのままで、戦い方くらいは戻せるといいけど」


 看板の文字を読み、不安になるが、彼には看板にどうにかしてもらう以外の選択肢がない。彼はそのまま待機する。


 しばらく、触れていると頭痛がしてきた。いきなり、強い痛みが来るわけではなく、弱い痛みが持続していた。声を出すほどではないが、長時間続くとイライラする程度の痛みが彼を襲っている。しばらく、その痛みに耐えていると、その痛みも和らいでいく。そして、彼の脳内にはとある記憶があった。それは、魔法の使い方と超能力の使い方だ。彼は自身の超能力を自覚する。魔法は体内にある魔気を使い、魔法を使うことができる。魔気は常に呼吸などで体内に蓄積できるが、供給量を上回る魔法を使い続ければ死んでしまう。超能力を使えば、運動したときのように息が上がり、使い続ければこちらも死ぬ。そして、自分の超能力は武器を生み出すという物だ。だが、彼の知識の中には武器の知識は頭の中に残っていないのだ。大量の武器が頭の中にあれば、かなり強力な力のような気がしているが、今は全く使い物にならなかった。


「どう? これで少しは思い出した?」


「少しだけ。魔法と超能力についてだけだけど。助かったよ」


「どういたしまして。では、改めて――」


「ここは迷宮城。君はこの場所から脱出するか、このままも迷い続けるか。選ぶのは君だっ!」


 先ほどの文章よりも少し勢いを感じる文章を看板に表示されていた。今のところ、自分が使えるのは魔法だけだが、どうにもこの場所から抜けなければいけないらしい。彼はあまり納得していないまま、立ち上がった。

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