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第7話 私のチャンネルが遂に閉鎖! それでも最強スキルを手に入れちゃった荒巻火憐はこれから……

 「あー。猫の肉球に踏まれるって気持ちいいなあ」


 Tubeにて予告なく始まった荒巻火憐(かれん)の配信動画。


 『きた』

 『いきなり』

 『w』

 『ワロタw』

 『awesome』

 『おい猫w』

 『──神降臨──』

 『何で今さら目隠すねんw』

 


 スパチャには予告なしにも拘わらず次々と荒巻火憐のかれんちゃんねるに次々とコメントが付いて来る。


 WitterではNaivedoorNEWSが速報で流す。テレビ番組のHHKも速報。全てのマスメディアが荒巻火憐の緊急配信が始まったことを速報で流し始めた。


 ……有名にはなりたくないもんやなあ。


 荒巻火憐は、紫烏色(しうしょく)の猫を抱きかかえている。


 猫は上半身を伸ばし、前足両足で火憐の両目を交互に踏み付けている。


 荒巻火憐が決してスパチャを見れないようにしながら。


 外部との会話が出来ない状態にしながら。


 「十一歳でFIRE! 異世界ラジオ。パーソナリティの荒巻火憐だよー! みんな元気ー?


 突然ですがお知らせなんです。実はですね。今日を以てかれんちゃんねるは……


 閉鎖することになりました!」


 『矯めるなw』

 『配信だけで生きていける』

 『は』

 『non』

 『شكران』

 『あ』


 「これからも火憐の勇姿を観たい人は……


 みねやまちゃんねるにちゃんねる登録してください!


 そうだね。閉鎖じゃないね。かれんちゃんねるは、みねやまちゃんねるにお引越しすることになりましたー!


 あー肉球気持ちいいなあ。サブちゃんねるで猫動画でも配信しようかなあ」


 『え』

 『閉鎖の意味なし』

 『ガキやん』

 『マジか』


 「ば、馬鹿! 火憐余計なことは言ったらあかん!」


 『あ、アシスタント』

 『アシさんちーっす』

 『大変やろなあ』


 「……火憐。猫に二足歩行はかなりきついよ。そろそろ引き上げないとクゥさんが限界だと思うよ」


 『モノ』

 『は』

 『Qu?』

 『クゥ!』

 『猫!』


 「猫動画は配信無しで。じゃあ、続きはみねやまちゃんねるに行ってらっしゃい!


 あ、この動画は広告を付けないで配信しています」


 「あー。はい。アシスタントのみねやまです。ウチの荒巻火憐がお騒がせをしてしまいました。これからはみねやまちゃんねる一本で配信していこうと思います。コラボ企画とかは」


 「……クゥさんが限界」


☆☆☆

☆☆☆


 「腰が折れるかと思うたわ」


 猫のクゥは伸びたり縮んだりを繰り返した。


 「じゃあな。早速だけど、これを舐めてや」


 猫のクゥはどこからともなく巾着袋(きんちゃくぶくろ)を取り出した。


 「何これ。飴玉?」


 「キズナ玉や」


 「もしかして舐めただけで『キズナ』の力が高まるとか言うチート系の最強アイテムですか」


 「その通りや! どこにも売ってない『アイーダ』だからこそ出来る最強チートアイテムや! これを舐めたらオレのメインスキル『空間』を三人皆で協力できる最強アイテムやで」


 「……逆に僕たちのメインスキルはクゥさんには共有されないのか」


 「そうや。この飴玉は、本質を辿れば『クゥの時間を圧縮した(かたまり)』やな。いくつか舐めたら数年はオレと一緒に居たことになる」


 「いただきます」


 「いただきます」


 「いただきます」


 荒巻火憐

 スキル:『望んだ未来』

 サブスキル:『空間』


 御領峯音

 スキル:『災厄』

 サブスキル:『空間』


 

 スキル:『モノトーン』

 サブスキル:『空間』


☆☆☆

☆☆☆


 「さて。メインスキル『空間』の使い方を説明するで。と言うところに丁度いい感じのゴブリンLや。こういうときみんなどうするや」


 「逃げるに決まってるでしょ」


 ゴブリンL。


 体長は2mを超える巨漢。


 ゴブリンSをぽかぽか殴ったりしてなんとかやっていた荒巻火憐たちにとって、戦うまでもなく逃げ去る相手だった。


 「よう見とけよ。にゃん!」


 猫は上げた右手をくいっと下に曲げた。


 その途端、ゴブリンLは頭から地面へと這いつくばった。


 すぐにホログラムになり消えていった。


 「……強いけれど。こんなもんですか」


 「さっすが『モノトーン』やな。あんたが一番頭良い。


 三人とも付いて来い。『閉塞(クローズ)』」


 そう言い放つと、猫がぱっと消えた。


 「こっちやこっち! 上や!」


 見上げると猫が居た。


 「空中に飛んでる!? どうやったんですか!」


 「簡単や! 空までの空間を一気に縮めればいいんや! でもこれ空中浮遊とかじゃないから早よ来てや! 今落ちてる最中」


 「『閉塞クローズ』」


 「『閉塞クローズ』」


 「『閉塞クローズ』」


 三人は空へと飛び立った。


☆☆☆

☆☆☆


 始まりの森。遥か上空。


 「『閉塞クローズ』と頭の中で言い続ければ空中浮遊と一緒やな。しかしまあ。()み込み速いなお前ら」


 「ようやくこれぞ異世界って感じがしてきましたね!」


 「空飛んでるでー! みんな見てるかー!」


 「よう見ときいや。これからオレの軽い本気を見せてやるから」


 猫は右手を振り上げた。一瞬だけ目を閉じてから。


 にゃん! っと右手を下ろした。


 途端に、広大に広がる森の四人がいる真下の木という木が全て潰れた。


 「つっよ。あ、潰れた中にゴブリンの群れが。え。一撃で目に見える魔物九十二匹討伐!? えっぐ! EGG! 卵だよもう!」


 「ほれほれー。目には見えない流星群や!」


 猫が前足を下げるたびに、森の中に半径20メートル台のクレーターがぼこぼこと出来上がる。


 「強いわこれは……今までの私たちはなんやったんや」


 「だからギルド入れって言うたんや。『アイーダ』に入っとけばもっと強いの仰山あったのに」


 確か、互いが互いを殺し合えば一発で終わるとこの猫は言っていたが本当にただの事実のような気がした。


 こんな楽勝な最強のスキル、他にある?


 「はい。ゴブリンS223匹、ゴブリンM115匹、ゴブリンL56匹討伐完了や」


 「チートや……」


 「……でも確か始まりの森のボスと出会うには『戦闘回数』が大事なわけであって、倒した魔物の数は重要ではないのでは」


 「よう覚えとるな『モノトーン』。効率的に対戦回数を増やすために、ここは一旦二手に分かれよう。


 オレと峯音のチーム『お山にクー』


 火憐と『モノトーン』の『火憐のモノ』」


 「……初めて僕がいじられましたね」


 「さっさと終わらせるで。配信なんて必要ないレベル。チャンネル登録者数が増えたってただの対戦回数増やすだけの動画はつまらんやろしな!」

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