第5話 またまた新キャラ登場! 「色はお前たちが決めていいぜ」って決め台詞を喋る猫なんだけど!? 今度は怪しくないんだよね!?
「このままじゃお前ら、一生始まりの森を抜けられねえぞ!」
延々と歩き続けた森の中。遠くの木の上からハスキートーンのよく透る声が聞こえてきた。
しゃこしゃこと林檎を食べながら、ああ、もう夕方かあとか思いながら歩いてた荒巻火憐は足を止めて、聞こえてきた木の上へ振り返った。
御領峯音が天空に向かって声を張り上げた。
「その声は……! って言う場面でも無いな。誰やろか。こんにちはー! 誰ですかー! お話したいならば暗くなる前に私たちの目の前に現れてくれませんかー」
「よっと」
「お」
木を伝って、しゅんしゅんと風を切りながら現れたのは、一匹の猫だった。
「猫だー!」荒巻火憐は恐ろしく元気になった。「猫だ猫だー」。
「そうだ。オレは猫だ。名前は『クゥ』って言うんだ。色はお前たちが決めていいぜ!」
「クゥちゃん。初めまして。荒巻火憐です」
「峯山峯音だ。『色はお前たちが決めていいぜ!』って何ですのん。決め台詞として使ってるんですか」
「そうだ。色変化だ。難しいこととか考えなくていいから、色は何でもいいぜ。何色がいい? 何色にでもなれるぞ」
「そうかー。じゃあ、市松模様とかできる?」
「ええっと、色なんだが。柄を訊かれたのは初めてだな。あ、うお。変わったはず。今どうなっているオレ?」
「黒豹みたいになっています。ちっさい黒豹。チーターのほうが可愛いな。黄色と黒!」
その他にも麻の葉やらクロスワードパズルやらホルスタインやら女子二人からの無茶振りに柄色を変えながらクゥは対応していたが、『モノトーン』の「……紫烏色」という一言で、女子同士も納得しクゥの色変化は終わった。
挨拶代わりにしては遊ばれ過ぎたもんだと『モノトーン』は思っていた。
紫烏色、光沢のある黒色で猫は決まった。
「でな。まあ、挨拶は終了だ。本題に入ると、お前らこのままだと一生始まりの森を抜けることが出来ねえよ。どうする」
「どうするって言ったって。魔物を倒し続けていたらそのうち始まりの森も抜けれるんじゃないの」
「お前ら始まりの森クリアの為の条件を知らねえだろ」
「どこかにいる最終ボスでも倒せばクリアになるんじゃないかな」
「例えばさ。そのボスが現れる条件として、魔物との戦闘を1万回しなければ、ボスは永遠に現れないこととか知ってんのか」
「1万回! くらい出来そうじゃない?」
「1万回が最低条件だ。1万回いった後にようやく政府の審議会に掛けられて、ボスと戦うことが許されるかどうかが決まるんだ。
というか、お前らのスキルなんだ。お前らのスキルだと永遠にボスに挑戦できる権利が与えられることがない。
サブスキル『鑑定』」
わざわざ言わなくても『鑑定』してるんだけどな。お前らじゃ無理なんだ。
「……『鑑定』は止めてくれへんかなあ」
「……僕も止めてほしいですね」
「え? なんでなんで? 二人とも、同じパーティに隠し事は無し! だぞ!」
「『荒巻火憐』Lv.328
スキル:『望んだ未来』
魔法:331
攻撃:118
防御:90」
「マジで止めてくんね」
御領峯音は杖を出して猫に睨みつける。
「……オレも無粋じゃないからさ。多分言いたくねえなってところは言わないでおくよ。安心しろよ
『峯山峯音』Lv.551
スキル:???
魔法:166
攻撃:772
防御:881
『』Lv.
スキル『モノトーン』
魔法:221
攻撃:92
防御:32」
「……僕は流れ的に無視されると思ったけれど。貴方は大人ですねクゥさん」
「なあに。良い色を付けてくれたお礼だよ。今回の『鑑定』で一番驚いたのは『モノトーン』、お前だな」
「あの。質問質問! その、『鑑定』ってスキルはどうやって手に入れるのですか? それ持ってたら無敵じゃないですか。羨ましいです。どこかのスキル屋さんにでも行けば手に入るのですか?」
「そもそもの『スキル』と『サブスキル』の違いが分かってねえだろ」
「いいですよね、熟練者は。スキルをたくさん持てて」
「誰であろうとスキルを持てるのは『メインスキル』の一個だけだぞ」
「え? じゃあ、あの『かつおのたたき』さん……失礼、『赤髪』さんは『魂脱出』一個しか使えないのですか」
「ああ。お前らと『赤髪』の衝突もTube、みねやまちゃんねるで見たけどさ。ちゃんと『赤髪』も言っているよ。『サブスキル』って」
「『サブスキル』ってなんなのさ。教えて烏猫さん」
「速攻でニックネームを付けるんか……お前明らかな年長者っぽいオレを怖がったりしないのかな。まあいいや。『サブスキル』は一言で言えば『キズナ』の力だ。
ずっと同じ戦闘などをしていたら、お互いに『キズナ』っていうポイントが貯まってレベルが上がっていくんだ。んで、ある程度まで上がるとお互いのメインスキルが使えるようになっていく。ただし、まあ。強力過ぎるメインスキルだと共有するまでにえらくポイントを貯めないといけない。
もしくは、どんなに『キズナ』のレベルが上がろうとも絶対に共有できないスキルもたくさんあるんだけどな」
「ということは烏猫さんも何かしらのギルドに入っているとか」
「オレの場合は家族と、その組織を慕ってくれるみんなだけだけど」
「血縁ギルド……。よう崩れんなそのギルド」
「まあ、俺らは最強ギルドの一つだからな。互いが互いを殺し合えば一発で終わっちまうくらいには一人一人が強い。だから、まあ。ゆるゆるに活動しているわけよ。
でさ。話戻すけれども。お前ら三人のスキルじゃ絶対に始まりの森を抜けれねえの。
対人戦闘スキルが『モノトーン』しかない。三人しかいないからサブスキルも特に無い。こんなの審議に掛けられるまでもなくオートで弾き返されっちまう。
でも、お前らは実は強い。適材適所という言葉の通りに、お前らがちゃんと活躍できるダンジョンはこれから先にはちゃんとある。ただ、対人戦をぽちぽちやっていくにはあまりにもお前らが不都合すぎるスキルしか持ってねえんだわ。
だから、提案だ。
荒巻火憐。
峯音。
『モノトーン』。
お前ら一時的にオレらのギルド『アイーダ』に入れ。これは本当に言っている。
赤髪みたいに嘘のギルド名を言って騙そうとしているわけでもない。
互いの利益のために『アイーダ』に入れ。もしかしたらオレのメインスキル『空間』も一時的に分けることが出来るかもしれない。
契約書に名前を書いてくれ! こんなどうでもいい森さっさと抜け出しっちまおうぜ!」




