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第2話 初めてのギルドへの勧誘はどったんばったん大騒ぎ! 『モノトーン』いきなりの大ピンチ!

 「な、なんやあれは。あの赤髪はどう見ても榊原(さかきばら)やが、なんで始まりの森なんかに来とるんや」


 あの軍団は一体なんなん。


 そもそも、相手は少女と少年の二人やん。旅団レベルの人数で来ることは無いんちゃうか。


 私は木陰でスマートフォンで撮影しながら、『英雄』榊原のスクープ映像を撮っていた。これは金になるで。


☆☆☆

☆☆☆


 「こんにちは! 十歳でFIRE! 異世界小学生配信者、荒巻火憐(かれん)です!」


 「……どうも初めまして。『モノトーン』です」


 「そういえば『モノトーン』くん。名前を聞いていなかったね。配信する前に名前を聞けって話だけど。あはは! この配信は台本も計画性も何もなく進んでいきます。お見知り置きを」


 「……」


 「え? 配信中に沈黙? いやだなー。喋ってこそのTuberでしょ。さ、さ。名前名前」


 「……実は名前が無くて」


 「んー……何を言っているのか分かりませんね。あ。100円のスパチャ来た! 『カツオの叩き』さん。いつもありがとうございます!」


☆☆☆

☆☆☆


 「『カツオの叩き』でスパチャを恵んでやっていたのは俺だ」


 「え! 『カツオの叩き』さんは貴方でしたか! いやー、お目にかかれて光栄です。いつも100円恵んでくださってありがとうございました!」


 ……100円? 『英雄』が100円で見知らぬ少女にスパチャ送ってたのか。しかし、100円て。あんた金持ち間違いないのに意外なところで吝嗇(りんしょく)やな。


 始まりの森に旅団で来る辺り、なんというか、『英雄』にしてはちょい残念な情報ばっかりやな。まあ、最初のダンジョンに『英雄』が来る奇跡に巡り合っただけでも、私は幸運なほうやな。


 ばっちり、稼がせて……。


 ドクンッ!


 手からスマートフォンが落ちた。あ、あかん。配信中なのに。


 ドクンッ! ドクンッ! ドドドドドドドドド!


 しゃがみこんだ途端に、心臓の鼓動が早くなっていく。は? なんやこれは。


 「これから先はさあ。ちょっと未成年には見せられない戦闘が始まると思うから、動画配信は無しにしてくんね? 君が誰だか知らんけれど」


 手を覆う(よろい)には赤髪の紋章(もんしょう)


 背の高い女性だ。(むち)を携帯している。叩かれたら私の体力では一発アウトな様子だ。


 心臓の鼓動が激しすぎて返事も出来ない。


 「そう。そのまましゃがみこんどきな。命までは……取るのかな? 数分後の私は」


 スクープどころでは無くなってきた。


☆☆☆

☆☆☆


 「よ! 『明るい未来』!」


 「あ! 私のスキル名を知っているということは、動画を観てくださっている方ですか。あーありがたいです!」


 「うちのギルドに来ない?」


 「良いですね! 入りましょうか! まだまだ私たちは初心者でして。VRMMOに来てからまだ間もない二人なんです。出来れば大勢の仲間が居れば助かるかなーとか思ってたんですよ」


 と話していたら。ぞろぞろぞろぞろと大人の方たちが集まってきた。


 「うわー大所帯(だいじょたい)。すごいパーティーでダンジョン攻略に来ているのですね。仲間がいっぱい。羨ましい限りです。是非仲間に入れてください!」


 「うーん。二人は募集していないのだよね。なあ、火憐ちゃん。君だけウチのギルドに入らないかい。ウチのギルド『赤髪』って言うんだけど」


 「え。いやーそれはちょっと。彼……名も無き彼『モノトーン』さんも一緒にはダメでしょうか」


 「『モノトーン』だよね……。火憐ちゃんはあまり『モノトーン』には詳しくないみたいだね」


 「まだ始めて五日ですから。ゲーム配信についてしか忙しくて知りませんね」


 「『モノトーン』」


 赤髪は荒巻火憐の横にいる物静かな少年を指さしながら。


 「お前、転生者だろ」


 と言い放った。


 「え? 赤髪のお兄さん。何を言って……」


 「覚えておくと良いよ。『モノトーン』が使えるのは、現実で死んでしまった転生者だけなんだ。


 こいつはいわゆるバグなんだ。よく入ってきたな転生者。記憶も何もねえだろ。荒巻火憐を救ったのは良かった選択だ。上手くやった。幸運(ラック)系のスキルを持っている初心者なんざほぼいねえよ。頑張った頑張った。


 だけどお前はもういいんだ」


 「……『モノトーン』」


 少年は、土に手をやりそこから鉱物を固めて出来た剣を引っこ抜いた。


 「……僕は生きたい」


 「俺は悪い奴じゃないんだ。成仏させてやっからさ。抵抗とかやめなよ。楽になるぜ」


 「え、え。ちょっとちょっと。戦闘ですか。も、『モノトーン』やめなよ。別れるのは寂しいけれど、命を投げ出さなくても」


 「……君は頭が悪いみたいだ。僕は君の(そば)でしか存在できない。君の『明るい未来』があるから、こうやって存在出来ている」


 「あ。え。じゃあ、私はギルドに入るのをやめます」


 「駄目だよ。火憐は来なさい。『モノトーン』なんてただの傀儡(くぐつ)だよ。人形に過ぎないんだから」


 ──大丈夫だよ。俺が殺すから。


 突然、『モノトーン』の足元の地面から両手が伸びてきた。『モノトーン』の足を掴み取る。


 『モノトーン』はすぐに、自分の両足を切断し、背筋の力だけで後ろへと跳び込んでいく。空中に居ながら、『モノトーン』の足元は再生されていく。


 この危機的状況にようやく気が付いたのか、荒巻火憐はすぐに戦闘態勢に入る。


 とはいっても、荒巻火憐に出来ることなど、ただ構えることだけなのだが。


 「……けったいな話やなあ!」


 木陰から突然、長髪の女性が歩いてきた。また、赤髪さんの仲間ですか。


 「オキルドはどうした!」


 「私のスキルには敵いませんので。ばっちり撮らせてもらいましたで。『英雄』さん。始まりの森にこんな大所帯で来るなんて、『赤髪』の名が泣きまっせ。


 そんなにこの少女が欲しいですかい?」


 「誰かは知らんが、なぜ邪魔に入る?」


 「私はジャーナリストのもんでな。スクープ映像としてあんたの交渉を見とったっけんど、あんまり酷くないですか。目の前で仲間を殺すなんて」


 「サブスキル『(ソウル)脱出(バスター)』」


 あ!


 ドクン。


 ドクン!


 ふらりと、『モノトーン』が崩れ落ちた。


 「『モノトーン』!」火憐がモノトーンの傍へ寄る。


 ジャーナリストは立っていた。「すまんな。全部録画しとる。拡散して『英雄』の没落を回して回りますわ」


 「それは出来ねえはずなんだけどな。まあ、いいや。寂しさが消えたらまた追いで。追いでというか俺が来るのかな。


 とりあえずはオキルドが先だ」


 そう言うと赤髪は去って行った。旅団と共に。オキルドとか言う人の所へと向かって行った。


 存在が消えかかっている少年と、それを抱きかかえる少女。『英雄』をじっと見つめる淑女だけがその場に残されていた。


 旅団が消えると、それはそれは静かな、始まりの森に相応しい特に何もない夜がやって来ました。

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