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第11話 登録者数1122万人のインフルエンサーになったんだから、ちゃんと自覚した動画配信をしなきゃダメだぞ!

 「はいこんにちは。異世界ラジオパーソナリティの荒巻火憐(かれん)です! 十一歳!


 今日はですね。新しくスキルとして覚えました……あー。何と言って良いのかあ。なんかね。私もね。少しずつ分かってきたんだけど公の場で自分のスキル名言わないほうがいいらしいね。


 いやー。不思議に思わない? 大人の人達ってみんな『仕事に行く』って言うけれどさ、具体的に何しに行くとは言わないよね。『銀行で営業行ってくる』とか、『返済金の徴収に行ってくる』とか。取引先の名前も一切言わないじゃん。あれが大人ってやつなのかな。


 ここで私が秘密を守れば私も大人の仲間入りなのかなあ。まあでも遅いかなあ。幸運(ラック)系とか言っちゃてるし。


 ん。なになに。『幸運系はそんな特別でもなんでもない』いやー。なんか特別っぽいらしいですよ。なんか周りの雰囲気とか変わりましたし。峯音(みねね)ちゃんも余計なことを言うなって言ってたし。


 言いたいことも言えない世の中じゃあー。そうそうこんな風に歌を歌って頑張っていきましょう。


 今日はですね。瞬間移動ホームランゲームを披露したいと思います。


 都合の良い木が四本ありますね。そのうちの一本に手を添えます。


 はい。(えさ)に釣られてゴブリンSが来ました。さあ、瞬間移動の始まり。えいや!


 ほら、四本の木をこうやって瞬間移動していきます。え? そのスキルを教えてほしい? いやー火憐は大人ですからねえ。ちょっと言えませんが。


 んで。混乱しているゴブリンSの頭をぱこーんと打ち込むんです。木製バットで。さあ、ゴブリンがふらふらになりました。この間にランナー荒巻、一塁へ猛ダッシュ! お? まだゴブリンSは立ち上がれていません。その間にランナー荒巻、二塁、三塁を回って……今、ホームイン! 荒巻選手、ランニングホームランの達成です。


 これで五回の表、荒巻火憐は一点追加。『モノトーン』との差は拡がっていくばかり。解説の吉田さん。今シーズンの荒巻は絶好調ですねえ。これは猛打賞も狙えるのではないのでしょうか。


 さあ、瞬間移動で目が回っているのか、荒巻選手、タイムを要求しましたね。


 あー。疲れた。あ、ゴブリンSが立ち上がっている。もう一度打つしかないのか。ちなみに倒したらアウトがワンカウントされます。出来るだけ倒さずにゴブリンを討伐していく。……あれ。このゲーム最初の趣旨とずれてきてない? 峯音ちゃんに怒られちゃうかなあ。


 でも討伐数を稼げばいいんだから。……うーんこのゲームをしていたら一万回の討伐には到底追い付かないかなあ」


☆☆☆

☆☆☆


 「クズみたいな動画が出来てしまったね。『モノトーン』これは再生回数は伸びないよ。自分で分かるわ。見ようとは思わない」


 「……もっと瞬間移動のところを見せ場にする動画にすれば良かったのかな」


 「なんかゴブリンを虐待しているみたいだしね。良いことないよこの動画」


 「……とはいえ再生回数は三日で10万回を超えている」


 「登録者数1122万人のみねやまちゃんねるにしては全然再生されてなくない」


 「……なんだろうな。どんなに適当なコンテンツであっても元々のフォロワー数が多ければ勝手に評価されていくこのシステムは僕はあまり好きではないな」


 「もうせっかく現世異世界共々最強インフルエンサーになったんだし、それなりの動画を撮らなくちゃ批判が殺到しそうな気がするなあ。


 一回炎上しちゃったし、ちゃんとしたのを撮りたいなあ。スパチャの反応もなんか渋いし」


 「火憐! 戻ったで!」


 「ああ。クゥさん。よくここが分かりましたね。ってうわ。峯音ちゃん!?」


 「ああ。峯音は全く動けんくなった。こうやって空中浮遊して移動させんと、もう一歩も動けへん。今は寝とる。食事と修行以外はずっと寝とるな。寝とる間は起きようともせん。ぐっすりや」


 「討伐どれくらい行きましたか」


 「適当に言えば五万匹くらいは倒したな。多分、六千回くらいは戦闘したんちゃうかな」


 「……いやあ。まさかですけれども。その回数を私にもさせるためにクゥさんはやって来たとか」


 「まだ五百もいっとらんやろ。瞬間移動ホームランゲームじゃあ無理や。『収縮(ラプス)』とかも教えんと。


 これからは四人で行くで。今度は峯音は遊びで。火憐にあれこれ指導する番やな。まあ、峯音はよう頑張った。峯音が起きるまでは、最後の遊びにせいぜい精を出しなさいな


 峯音が起きたらまずは四人で宴会でも開こうや。明日からは火憐の猛特訓が始まるんやで」


 「私は『閉塞(クローズ)』だけで良いんだけどな。幸運系持ってるし」


 「笑かすな。幸運系でゴブリン倒したことあったんかいな」


 「無いね。(ゼロ)だ。幸運系って考えてみれば最弱じゃないの」


 「だからオレが付いているんや。安心せい。幸運系が役に立つ時はきっと来るで。自分が幸運系で良かったと思う時がきっと来る。というか必ず来る。というか、幸運系にならざるを得なかった理由を知るときもきっと来るで。


 そのためには、スキル以外の基礎ポイントを上げていくことも重要なんや。


 人並みには修行しとかんと。幸運系スキル『望んだ未来』が泣いてまうで」


 今さら気付いたけれども、クゥさんの関西弁が強くなっている。


 これは、峯音ちゃんとのタッグ効果なのだろうか。


 私とクゥさんがタッグを組んだら、一体どうなるんだろうか。


 何でも巫山戯(ふざけ)る方向性に行っちゃうのかな。


 止める人がいないと事故るもんね。今回の動画みたいに。


 炎上すらしないレベルのどうでもいい動画になってしまったよね。巫山戯た先に誰も笑ってくれないのはただつらいだけだよね。すべりもしない。

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