57話 出国
いらっしゃいませ!
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ぜひ楽しんでいってください!!✨️
ディアさんと笑い合った後、客室に用意されているソファに対面して座る。
間にある長細いテーブルの上には俺が用意したドアーズのミルクティーを置いている。
ドアーズはアッサムに酷似している香味を持っているが、渋みはそれよりもマイルドで、ミルクティーにするとコク味が引き立てられ、美味しい。ドアーズはストレートでもミルクでも、アイスでも美味しく飲める紅茶なので飲みやすいが、旬の期間が極めて短いので珍しい紅茶だ。
「…コーヤ、これからの事について話をしたい。」
「そうですね……」
「コーヤは貴族になるのは嫌なのか?」
「…嫌です。俺はあの店の店主でありたい。それ以外は何もいらないので」
「……そうか…。改めてコーヤの気持ちも考えずに物事を進めてしまって申し訳ない。」
「……いえ」
ディアさんは頭を下げて謝ってくる。俺は紅茶を一口飲んで、少し落ち着く。
俺はあの店が大切で、一番なんだ。…早く帰りたい。そう思うと少し頬が緩む。
するとディアさんは紅茶を飲んで、少し微笑む。その笑顔には寂しさも籠っていた。
「そうか、コーヤ。長い間この国に引き留めてしまって申し訳ない。」
「え、いや!楽しかったです!!いろんな紅茶を楽しませてもらいましたし、ミアちゃんさんのお店で美味しいものも食べましたし!!本当に楽しかったので、そんな、頭を下げないでください!!」
「ククッ、そうか!楽しんでもらえてたならよかった。帰国できるのは最低でも明後日からになるから、後2日間楽しんでいってほしい。貴族云々の件はすべて私が対応しよう。」
「…ありがとうございます。ディアさん」
そうして俺とユシュとアルは明後日には出国することになった。
そして2日後の朝、出国は好天に恵まれた。
馬車に荷物を入れ、見送りをしてくれるというディアさんたちのほうを向く。
「本当にありがとうございました!茶葉もいっぱいいただいてしまって……!」
「いいのよ、こんな老婆がたくさん持っていてもしょうがないですから、せめてあなたのように紅茶の好きな人の手に渡ってほしかったのよ。」
「コーヤ。」
マーフィー・キャサリン大公閣下と話をしていると、ふとディアさんが声を掛けてきた。
俺が振り向いた瞬間、頬に柔らかい感覚がした。
「へ?」
腑抜けた声が出てしまう。
後ずさりすると、耳を少し赤らめたディアさんの顔が至近距離にあった。
「またな!」
「っ~~!はい、!また!!」
俺は馬車に乗り込み、クルトーレ王国へと戻っていくことになった。
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