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第5話 魔王城が豪邸過ぎて引いた……

エベリナさんに腕を引かれて歩くこと数十分……


いかにも魔界という感じのダークな雰囲気漂う街に到着した。


「陛下、こちらが赤の国の都ヘルフレイムでございます。あちらが魔王城……陛下の居城でございます」


ヘルフレイム(地獄の業火)……なんてこじらせた名前だ……


ストラスの指差す先には少し廃れた街並みとは対照的に華美な装飾の施された巨大な城がそびえ立っていた。


「ず……随分立派なお城ですね……」


「当然です。紅魔王陛下はこの国の象徴ですから!」


エベリナさんが俺の腕を引く力が強まった。


痛い…痛い…けど気持ち良い……




そんなこんなで俺たちは城の中へとやって来たのだった。


「陛下、このあとのご希望はございますか?食事でも湯浴みでも、その……何でもご用意いたしますわ!」


なぜエベリナさんが少し恥ずかしそうにしているのか分からない。


「ありがとうございます。でも今日は少し疲れているので早めに休みたいんですが……」


今はとにかくちょっと落ち着きたかった。


「し、承知しました……ご案内いたします」


ストラスとザリオスはここで別れて、俺はエベリナさんに連れられて大きな扉の前にやってきた。


エベリナさんが扉を開くとその奥にはテレビでしか見たことのない高級ホテルのスイートのような空間が広がっていた。


「……えぇっ!?」


いやいや、こんなところ逆に落ち着かないんだけど……


俺が呆気にとられているとエベリナさんが急に慌てだした。


「も、申し訳ございません!陛下のお部屋にはまだ前王の私物が残っておりまして……このような狭苦しい客間しかすぐにご用意できなかったのです」


これ、客間?………自分の中の基準値との乖離が大きすぎて何だか先が思いやられるな……


「は…ははは……そうなんですね!大丈夫ですよ!案内ご苦労さまでした」


俺はエベリナさんに礼を言ってとりあえず部屋の真ん中のソファに腰掛けた。


「ふぅ……」


やっと一人になって落ち着くことが……あれ?エベリナさんが扉の隣に直立している……


「あの……エベリナさん?なんでまだここに?」


「お側にお仕えするのが仕事ですので!」


なぜかすごく嬉しそうだ……しかし落ち着かない……


「は、ははは……じゃぁ、何か飲み物でも持ってきてもらえたり……しますか?」


「もちろんですわ!なにがよろしいですか?」


「そんなに手間のかからないものでいいんですが……何があります?」


「何をおっしゃいますか!手間を掛けることこそ我らの喜び!ミノタウロスの生き血でも、ヒュドラの髄液でも、何でもご用意してみせますわ!」


……そんなもん要らん!


「じゃぁ……とりあえず水をください」


「え?そんなものでよろしいんですか?……かしこまりました」


エベリナさんは少ししょんぼりして部屋を出ていった。


「はぁ……とりあえずモニターの通知でも確認するか……」


俺はまず、溜まった通知を確認していくことにした。


魔王アンブラーの討伐……

経験値イチ、ジュウ、ヒャク……15……億!?


昼間まであんなに苦労してやっと10くらい溜まったExポイントが10,000近く入っている……


とりあえず、今のままじゃ弱すぎるから後で色々振っておこう。


あとは……

フレンド機能の制限


なるほど……そのせいでハヤテと連絡が取れないってことか。直接会いに行ってみるしかないかな。


次にMAPを確認してみた。最大範囲のマップに切り替えてみると、四角いマップの左隅に自分がいることが分かった……右端の方ですごく小さく表示されているのがどうやらハイランド王国のようだ。


とりあえず……同じ世界ではある、ということか……でもこの縮尺だと北海道と九州くらい離れてるんじゃないか?


まだまだ靄のかかった未知領域が多いので、時間があれば色々探検もしてみたい。



そこへエベリナさんが戻ってきた。


「お待たせいたしました。何か軽食でもと思い、有り合わせで恐縮ですが『魔牛のロースト』をご用意しました」


「魔牛!?……あ、ありがとうございます」


魔牛……見た目は普通のローストビーフと変わりないけど……


少し気が引けるが、出されたものを断るのも申し訳ない。


月島明、男見せます!というわけで一切れ口に放り込んだ。


「………」


エベリナさんが不安そうに俺の食べる顔を見つめているが……


「んー!美味い!」


いやー、昔食ったローストビーフより遥かに美味い。

肉の食感も柔らかくクセのないやや甘みのある脂が最高だ。


「エベリナさん!ありがとうございます!これめちゃくちゃ美味いっすよ!」


「本当ですか!?それは良かったです」


エベリナさんは安心してホッと胸をなでおろしている。


俺はあっという間に出された魔牛のローストを平らげてしまった。


その間もエベリナさんはずっと後ろに直立している。


「あ、あの……?」


「はい、何でしょうか?」


「俺のことは大丈夫なんで、下がってもいいですよ?」


あれ?俺としては気を利かせたつもりなんだけど、エベリナさんは少し悲しそうだ。


「いえ、お側にお仕えするのが仕事ですので……」


あぁなるほど。役立たずと思われた、とかそんな理由かな?


「あ、そうじゃなくて!これから一人で少し集中したい事がありまして……」


「そ、そうでしたか!これは失礼いたしました。では扉の外におりますので何かあればお呼びつけください」


「えっと……」


いやいや、扉の外でずっと立ってるつもり?でもあの人ならやっていそうで怖い。


少し申し訳ない気もするけど、まぁこれで一人になれたことだしExポイントの割り振りをやっていくか。




まずはステータスか……死んだらやばいからその辺はしっかり備えておきたいな。


今は全くいじってないから初期値なんだけど、どれどれ……


VIT(生命力):2

ATK(攻撃力):1

DEF(防御力):1

INT(知力):3

RES(耐性):2

DEX(器用さ):5

AGI(素早さ):5


低っ……


DEXとAGIが少し高いのは小人族の種族特性だ。

とりあえず各ステータスMAXまで振って、と。



VIT(生命力):90

ATK(攻撃力):95

DEF(防御力):90

INT(知力):100

RES(耐性):95

DEX(器用さ):110(+10)

AGI(素早さ):110(+10)


基本の上限は100だったけど、種族によって最大値があるらしい。

DEXとAGIは100まで上げたら種族ボーナスで+10された。


これだけステータスを上げるのにExポイントをほぼ使い切ってしまった……


スキルについては慎重に行きたい。とはいえ、一個ずつ獲得して次をアンロックしていかないと何があるかも分からないんだけど……


と言うわけで、結局のところスキル獲得についても勘でやるしかない。


と思っていたが「魔王」という謎のスキルに「★SSR」と付いているのが気になる……


スキルの説明はなく、アンロックに必要なExポイントは500……


これを獲得するとほんとにもうExポイントは残らない。


しかし……ステータスも最大にしたし滅多なことでは死なないだろう、ということでポチッ


【★SSRスキル「魔王」が解除されました】


スキル特典

・ステータス150%up

・魔法威力500%(初撃のみ)

・自動回復

・闇属性無効

・対光属性弱体化

・魔王覇気解放

※自分より弱い魔物が敵対しなくなる

・第2形態


最初の4つはありがたい!光属性に弱くなるのは仕方ないか、魔王だし。


最後のは……俺変身すんの?嘘!?どうやんの!?


気になる……すごく気になる……


なにか新しいコマンドがないかモニターを色々探っていたらエベリナさんが慌てた顔で室内に戻ってきた。


「陛下!?」


「あれ……?エベリナさん、そんなに慌てていったいどうしたんですか?」


「どうした、ではありません!突然凄まじい魔王覇気を感じたので、もしや何者かの奇襲かと慌ててやってきたのですよ!」


あ……そういうことか。


「あぁ……すいません。ちょっと調子を確かめてたらつい……」


「い、いえ……ご無事であれば何よりです」


そこにザリオスとストラスも大慌てでやって来たのだった。扉の外には他にもたくさんの兵が待機している。


俺は二人にもエベリナさんに話したのと同じように伝えた。


「そ……そうでしたか。それにしても何という覇気の強さ……」


ストラスは額に汗を浮かべている。


「むぅ……まさかこれほどとは……」


ザリオスも表情が硬いようだ。


話しながらモニターを見ていると魔王覇気のON/OFFボタンを見つけたので解除してみた。


「心配かけてごめんなさい……もう大丈夫ですか?」


「だ、大丈夫です。こちらこそ先走ったようで申し訳ございませんでした」


ストラスは額の汗を拭って頭を下げた。


「覇気が……完全に消えた……そのようなこと軽々とやってのけるとは……」


ザリオスはなぜか感服している。


「ま、まぁ今日は俺ももう休むんでまた明日色々とこの国のことを教えて下さい」


そう言って皆には下がってもらった。


………

……


異世界、しかもゲームの世界にやってきて一日目……めちゃくちゃ色んなことがあったな。


いきなり死ぬかと思ったし、魔王になってしまったようだし……


元の世界にどうやれば戻れるのか?いや、戻れないのか?


うーん……考えてもわからない。とりあえず明日考えよう。


と言うわけで今日は寝よ、と小人族にはやたらとでかいベッドに寝転んだ。


寝る前に特に気にせず魔王覇気のON/OFFを切り替えて遊んでいたのだが、そのたびに城内が騒然となったというのは後で聞いた話だ……





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