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第2話 ついに!冒険者デビューしました!

見渡す限り一面の草原……キョロキョロと辺りを見渡していると突如背後でガサガサと音がした。


「お、君が今回の新入りであるな!」


振り返るとさっきまで誰も居なかったはずの俺の背後に軽鎧を着たおっさんが立っている。


おっさんと目を合わせると、自然と画面上におっさん情報がポップアップされた。


名前:ジェフ

種族:ヒューマン

クラス:教官

勢力圏:ーーー


白ネーム、NPCか。


「あ、どうも」


そして相手がNPCだと分かっても、あまりに自然なのでつい返事をしてしまった。


「そんなに警戒する必要はないのである!吾輩はジェフ、君たち新参者にこの世界で生きるすべを教える指導教官なのである!」


チュートリアルというわけか。


そしてその後しばらくはジェフからシステムについての基本講義とアクションのレクチャーを受けた。


大事そうなことだけまとめておく。

まず、この世界のあらゆる行動では必ず経験値が入るようになっている。もちろん何かを食べるとか誰かと話すとか、そんな普通のことだけでもだ。

そして経験値が一定以上になると「Exポイント」が溜まっていく。このポイントを使ってステータスを強化したり、新しいスキルを獲得したりする、というわけだ。


「てことは……ひたすら誰かと喋ってるだけでもそのExポイントで腕力の強化とかできちゃうのか?」


気になったのでジェフに聞いてみた。


「うむ……一応は可能である!ただし、そういう日常の行動で貯まる経験値は驚くほど少ないゆえ、普通に戦闘や生産を頑張るほうが遥かに効率的ではある、のである!」


まぁそりゃそっか。


「では、最後にこれは吾輩からの選別なのである!」


ジェフが魔法カバンをくれた。アイテムボックスがないと思っていたけど、ここでくれるってことだったのか。


そんなこんなでチュートリアルが終わると、おっさんが使った転移アイテムで俺はハイランド王国の神殿へと飛ばされたのだった……


………

……



そこでまた神官のおっさんの話を聞かされた。

どうやらプレイ中に死亡したら毎回ここにリスポーンすることになるらしい。


「まぁ初日だしこんなもんか」


などと一人呟きながら神官に言われた通り街なかにある冒険者組合の建物へとやって来たのだった。


お上りさんのようにあちこちを見回しながらカウンターの方へ歩いて行くと、途中でエルフの男性キャラに声をかけられた。


名前:ハヤテ(青ネーム)

クラス:新参者

勢力圏:ハイランド王国


お、初めてプレーヤーに出会ったぞ。


「おはつっす!今チュートリアル終わった感じですか?」


「ええ、まぁ」


「あれ、ちょっと長すぎっすよね〜。あ、俺はハヤテって言います。よろしくです!」


「あ、ダブルムーンっす!長いと思うんでムーンでいいっす。よろしくおねがいします!」


そうそう、挨拶は基本だ。


「んじゃお言葉に甘えてムーンさんで。いやぁ〜、冒険者登録終わってしばらく掲示板の前にいたんすけど、誰も来なくて寂しかったとこだったんすよ」


ハヤテさんは目を輝かせている。


「俺も、初めてプレーヤーに会いました!冒険者登録ってこの先で合ってます?」


「そうですよー!あ、ムーンさん初回限定版買った人?」


「あ、はい」


「俺もっす!それなら、あの隣のカウンターで、限定版の特典アイテムももらえるんでお忘れなく」


そっか、限定版にはいくつか特典アイテムがついてたな。


「あ、はい!ありがとうございます!じゃぁ、ちょっと行ってきますね」


「はーい、俺ここで待ってるんでもしまだ時間大丈夫ならちょっと散策しにいきません?」


「良いっすね、ぜひ!」


そして俺は冒険者登録を行い、初回限定版の特典を受け取ってハヤテさんの待つテーブルに戻った。


ちなみにもらったアイテムはと言うと

■身代わり人形×3

※死亡した際に一度だけ身代わりとなる

■エリクサー×3

※あらゆる状態異常を治癒し、HPを全回復させる

■覇王の証×1

※使用すればどんな敵も必ず逃げ出す(倒したことにはならない)

■幸運のお守り×1

※使用すると良いことが起こる可能性が上がる

■コスチューム『アルカディアロゴ入りマント』

■冒険者のすゝめ

※冒険者ギルドオリジナルのワンポイントアドバイス集

■50万ゴールド


「お待たせしました!」


「いえいえ〜、じゃぁ行きましょっか!」


「はい!とりあえず簡単そうなクエストでも受注します?」


やっとゲームらしくなってきたところで、俺のテンションも上がってきた。


「うーん、その前に行きたいとこあるんですけど、いいっすか?」


ハヤテさんは俺もさっきもらった『冒険者のすゝめ』を開いてみせた。


「へぇ……ペットっすか。面白そうっすね!」


「でしょ?こういうのワクワクするから好きなんすよー!」


というわけで『冒険者のすゝめ』に従ってやってきたのは……養鶏場。


まさか……ハズレはニワトリなのか……


パトレアというおばちゃんNPCに話しかける、と書かれているが……


そのパトレアは俺たちの目の前で今まさにニワトリの卵を集めているところだった。


「お先っす!あの〜、すいませーん」


俺がニワトリを引いてしまったときのことで悩んでいると、ハヤテさんはそそくさとパトレアに話しかけた。


「あら、冒険者さん。丁度いいところに来たじゃないの!今、この子たち(ニワトリ)の生んだ卵を集めてるところなんだけど、どうも1つだけ奇妙な卵が混ざっててね……」


「へぇ……じゃぁ、それください!」


「なんの卵かも分からないけど……いいのかい?」


「はい!」


ハヤテさん……凄まじい決断力だ。


「あ、でもちょっと待って!」


ハヤテさんはパトレアとの会話を一度中断させ、バッグから幸運のお守りを取り出した。


光のエフェクトがハヤテさんを包む。

なるほど、この使い方は正解っぽいぞ。


「お待たせしました!じゃぁこれ貰いまーす!」


と言ってパトレアの取り出したピンクの卵を受け取った。


「つぎ、ムーンさんの番っすよ!」


「あ、はい。じゃぁ俺も幸運のお守りを、っと」


先ほどと同じように光のエフェクトが俺を包む。

俺はパトレアに話しかけて同じように卵をもらった。


「ハヤテさんのはピンクの卵でしたね」


「はい、でもムーンさんのは……真っ黒っすね」


そう、パトレアがカゴから取り出したのは大涌谷の温泉卵のような真っ黒な卵だったのだ。


パトレアには何度も取り替えてくれと言ってみたが当然却下されてしまい、渋々この黒たまごをもらったのだった。


「ま、まぁまだハズレと決まったわけじゃありませんし……元気出しましょ!」


ハヤテさんはそう言って俺の肩を叩いた。

パトレアの話では数日以内に卵がかえるらしい。


きっとその場で結果が分からないようにしたのはリセマラさせないためだろうな。


「そうっすね!こうなったら気晴らしに雑魚狩りでもしに行きますか!」


「お!良いっすね!じゃぁ適当に武器買ってちょっと行ってみましょっか!」


………

……


そして、街の武器屋で安めの装備を揃え、二人で簡単そうな雑魚狩りクエストをいくつかこなした。


「ふぅ……野良犬、強かったっすね!」


「はい、何度も死ぬかと思いました……でも、めっちゃ楽しかったっすね!それにムーンさんかなり戦闘うまい!」


「はい、楽しかったっす!ハヤテさんの方こそ相当動き良かったですよ」


「あ、ハヤテでいいよ!」


「じゃぁ、俺のこともムーンでいいよ!」


「「アハハハハハ」」


俺たちはすっかり長年の戦友のように打ち解けていた。


今日やったのはネズミや野良犬を狩るクエストばかりだったが、これがなかなか良い経験値稼ぎになったようだ。


溜まったExポイントを早速各パラメータに振っておいた。


二人で冒険者組合に戻ると、他にもプレイヤーがいたので挨拶がてら軽く情報交換なんかを行った。


「じゃぁ俺、今日はもう落ちるね!」


ハヤテさんが立ち上がった。


画面のモニターに目をやるとすでに現実世界は明け方の4時……


「うわ、もうこんな時間か。俺も今日はここまでにしとくよ。明日も会えたらまた一緒にクエ進めない?」


「ええ、ぜひぜひ!フレンド登録いい?」


「もちろん!………承諾した!」


「ありがとう!今日は楽しかった!明日は多分夕方くらいにはinすると思う!」


「了解!」


「じゃ、また明日お会いしましょう〜」


そしてハヤテは手を振りながら消えていった。


俺もメニュー画面から終了を選び、PhantomVRを脱いでそのままベッドで眠ったのであった。

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