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誕生日

いつのまにか僕は夢の中へと落ちていた。

ふと目が覚めると幼少期を過ごしていた家にいた。

目の前には…僕?どういうことだ。訳がわからなくてあたりを見回す。


「誕生日、おめでとう」


笑顔の母親が何やら台所から運んできた。ケーキだ。蝋燭が5本立っている。父親は背中にプレゼントを隠してそわそわしている。わーっと駆け寄る僕。みんな席についてお誕生日の歌を歌う。拍手と同時にふぅーっと火を消す。おめでとう、と順番に言っていた。


みんな笑顔だ。小さい頃は、こんな風に団欒でお祝いしてたなぁ。


リビングに立ち尽くしてパーティの風景を眺めている。だが、僕の姿は見えていないようだ。


安堵した次の瞬間、



ばちっ



5歳の少年と目があった。身体中に電撃が走ったようにぞくっとした。僕には僕が見えているのか。じっとこちらを睨みつけている。何か言いたいことがあるのだろうか。フォークに刺さっていた苺をボトッと皿に落としたことで視線が逸れた。



ケーキに気を取られているうちに僕は僕の部屋へと向かった。正直言うと、記憶にはない。部屋の場所は、昔の記憶を体が覚えていたのだ。




外国ではサクサクとしているらしいが、日本ではフワフワなショートケーキ。生クリームたっぷりで苺が沢山のっている。僕はこのショートケーキが好きだった。また食べたいなあ。


はっと我に帰る。椅子に腰掛けて少しばかりぼんやりしてしまった。僕には小さすぎる勉強机が目の前にある。小さな棚があり、そこには辞書やノートがでこぼこと立てかけられている。サイドにはワゴンがあり、戦隊ものの変身ベルトやゲーム機がごちゃごちゃと入っていた。




ズンっ



と、刺さるような視線を背中に感じた。


僕は恐る恐る振り返る。まず首を少しだけ捻り視線でなんとか確認すると、入ってきたドアは閉まっている。一旦視線を前に戻し、意を決してえいっと、その方向へ向くと、ぬいぐるみとなんとかレンジャーの剣があるではないか。おもちゃ箱から柄が覗いており、その箱に寄りかかるようにぬいぐるみが置かれていた。

ぬいぐるみと抱き上げると、何やらヒラヒラと舞い床に着地した。

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