午前中の雷鳴は珍しくて
夫との死別の記録です。
辛い方はどうか読まないでください。
あの日は朝から曇天で
ホスピスで目を覚ました私は
窓からぼうっとバラ園を見ていた。
苦しそうな浅い息を聞きながら
看護師さんが入ってきて
「少し外の空気を吸ってきたら?」
と微笑した。
私にはわからなかったけど、
友人にはその意味がわかっていたらしい。
庭のあずまやに座ると突然雷鳴が轟いて
友人は「アイツらしい」とささやいた。
私は「ああ、竜神様のお迎えかな」って。
2分間の土砂降り
その後病室に戻ったら
窓から青空が見えた
灰色は割れて白い雲さえ浮かんで
あなたは私に顔を向けて
くちびるを動かす。
「先に行っているよ」「待っているよ」「愛している」
読唇もできなかったけれど、私には届いた。
「追いかけるから。どこにいようと見つけるから」
空に昇って行ったのだろう。
苦しい体から解放されて
縦横無尽に存分に
私を包んでいるのだろう
どこで会ってもあなただとわかるだろう。