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 それからしばらく、僕は山岸と共に不思議な二重学園生活を送ることになった。


 といっても、僕はただ異世界の学校に行って、日本の学校とは少し違う勉強をするだけという感じだったが。日本での僕は山岸以外話せる相手がいなかったが、エリサ魔術学園では普通にクラスメートたちと打ち解けることができた。そういう意味ではそれなりに楽しくはあったのだが、魔法のある世界にわざわざ行って、やってることが勉強と友達ごっこというのも普通すぎた。しかも魔術は全然できないし。ワッフドゥイヒにはやっぱり引け目を感じてしまうし。クラウン先生にはことあるごとに居残りと課題を出されるし。もっとクールな人のつもりで書いてたのに、実際は妙に教育熱心で、なんかイメージ違うし。自分で設定しておいてアレだけど、変なお面だし。


 また、クラスメートのうちの二人、ルーとアニィについて山岸に話したところ、どうやら彼女の漫画には登場しているキャラクターらしかった。二人が描かれているコマを僕に見せてくれた。


 それは確かにルーとアニィだったが、背景の一部にしか見えないような描かれ方だった。いわゆるモブキャラクターってやつだ。登場しているのも、百枚以上の原稿のうち、たったの一コマだけだった。


「山岸さん、このモブ二人の名前とか考えてたの?」

「うん。ここではモブだけど、そのうち何かの話に使えればいいかなって」


 なるほど。あの異世界は僕達の共同の創作になるわけだから、それぞれが知らないこともそれなりにあるわけだ。例えば、まだ構想段階で、原稿には書いてないような設定とか……。


「ねえ、山岸さんのこの漫画、どういう方向性で行くつもりだったの?」


 ふと気になって尋ねたら、


「そうね……フェトレとワッフドゥイヒの恋愛がメインかしら」


 明らかに僕と目指してるものが違うじゃないか。


「恋愛って……魔法があるファンタジー世界でわざわざ恋愛もの?」

「ファンタジー世界だからこそ描けない恋愛ってあると思うの」

「まあ、言われてみれば……」


 お姫様と平民との身分違いの恋なんて、現代日本が舞台じゃリアリティなさすぎだよな。


「早良君はどういう物語にするつもりだったの?」

「そりゃ、魔法がある世界なんだから、主人公がそれで活躍する話だよ。俺ツエーって感じで」

「ふうん? でも、早良君の小説、まだそんなに主人公の活躍描かれてなかった気がするけど……」

「それはその、これから……」


 実のところ、具体的にどういうプロットで行くかどうかはまだ何も考えてなかった。ただなんとなく、ワッフドゥイヒというイケメンのリア充魔術学園ライフを書きならべていただけだった。


「これから? じゃあ、今からそれを書いてみない?」

「え」

「だって、あの世界はあくまで物語なんだから、主人公達が活躍できるようなイベントを作者が用意すればいいだけでしょ?」

「そうか!」


 またしても、山岸の思いつきは冴えていた。そう、あの世界はあくまで創作なんだから、サワラ・ヨシカズというキャラクターは落ちこぼれの転校生で終わる必要はないのだ。


「じゃあ、山岸さん、次はどういう話にしよう?」

「そうね……舞踏会とかは?」

「ごめん、それは無理……」


 それだと恋愛もの一直線になってしまう。


 そうだ、僕は「俺ツエー」で主人公が活躍する話が書きたかったんだから……。


「やっぱり、バトルだよ。戦闘、これしかない」

「いいけど……誰と戦うの?」

「そ、それは……これから考えるよ、うん」


 正直何も考えてなかったが、とりあえず、この話の続きは僕一人が小説で描くと、山岸と約束した。

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