4日目~昼~
昨日は1日様子を見ていたが、ターゲットにした
プレイヤーはスポーツ選手か消防隊員系
ではないかと推測している。
昨日1日の運動量が半端じゃないのだ。
夕方迄ほぼノンストップで歩き続けていた…。
少なくとも一般人とは考えづらい。
もう一つ分かった事はこのプレイヤーは
島の地図を作っているのではないか?
と言う事である。
歩き方が海沿いを一定距離歩いては
立ち止まり、ある程度すると
また一定距離歩く。
次は逆方向の海沿いも
同じような行動をしていた。
悪人じゃない事を心から願うしかない。
だが逆に悪人ではないとしても、協力体制を
結べるかといえば、五分五分だと思っている。
このプレイヤーは自分で地図を作れたり
それなりの体力をつけている人間だ。
サバイバル術も長けていると、
考えるべきだろう。
しかし、あっちと手を組まれたら最悪だ。
やはりこちらから接触するしかないだろう。
上手く出会えたら俺のベースキャンプで
話し合えばいい。
「歩美、2日・・・いや明日の朝までに
俺から連絡がない場合、中央管理センターに
行って共有の解除をして来て。」
いきなりの話に、歩美は目を白黒させる。
「悠斗君、何いってるの?共有やめるの!?
もう一緒に居れないの?」
腕をぎゅっと握ってきて不安そうな目をする
歩美だったが、俺は笑顔でぎゅっと
歩美を抱きしめる。
「そうじゃないよ。連絡が取れないって事は
最悪IDを奪われてる可能性もあるから、
その場合、ここのベースキャンプも危険になる。
セキュリティをそのカードだけにする為にも、
共有解除はしなきゃ…。」
「そんな…私1人になったら…多分、ううん
絶対に生き残れないよ。」
「無茶はしない。でも万が一の事もあるから
明日の朝9時までに1度も連絡がなかった場合は
共有解除をしてくれ。」
「…うん。でも、絶対無茶だけは
しないでね!」
歩美と別れを告げ俺は一路、南にいる
プレイヤーと接触を図る事にした。
相変わらず地図の作成を熱心に行っているようだ。
現在は東の海岸線沿いを北上しようと
しているようだな…。
こっちからなら回り込めば接近は
そう時間はかからないだろう。
俺は南東に向かい走り始めた。
「出来れば善人ならいいけど…。
身柄売られたわけではなく自ら来た人間なら
善人って考えられないな。」
色々浮かぶ疑問を振り払い俺は
走り続けているのであった…。
やがて、相手まで500m付近までたどり着く。
これ以上はゆっくり近づかないと駄目だな…。
出来うる限り、背の高い草むらに
身を潜め相手の姿を確認する。
やがて足音が聞こえてくる。
俺は息を潜めて相手の姿が
見えてくるのを待った。
やがて目の前に迷彩服を来た
20代後半くらいの男が歩いてくる。
あの格好どこかのサイトで見た
覚えがあるなあ確か…あ!!そういえば
陸上自衛隊員か!?
なるほど動きが普通の人と違うわけだ。
…ただ。なぜ自衛隊員が
参加しているんだろう?
やはりここは直接聞き出すべきだな。
少なくても敵ではないような気がする。
とは言うものの、いきなり飛び出して
話を聞くと言うのも怪しい奴と思われてしまう。
でも、通りすぎてから出て話をしたいと言うのも
警戒されないだろうか?
「ふう、誰だか知らないけど、隠れてるの分かるぞ?
敵対の意志がないなら出てきたらどうだ?」
ば、ばれてる。
こうなったら仕方ない。
腹を括って出るしかないな。
「敵対の意志はないです。
この前のメールを見て、
危機的状況を脱するのに
仲間を探しているんです。」
「この前のメール?ああ、前々回の生き残り
がどうとかってあれかい?」
もう、草むらにいる必要はない俺は
彼の前に出て、対峙する立ち位置に
立って相手を見上げる。
デカイな…格闘ならまず勝てないと思うな。
「もし、話を聞いてくれるのなら、
自分のベースキャンプ近いですから、
そこでお話しませんか?」
立ち話もどうかと思い男を俺の
ベースキャンプに誘って、
じっくり話しをすることにする。
IDを持たない日本刀の男が
そばにいないとは限らないし、
盗み聞きされる恐れがほぼ無い
場所といえばやはりベースキャンプになる。
数分歩いた後、俺の
ベースキャンプにたどり着く
何も置いていないが
まあただ話すだけなら
関係ないだろう。
「えっと、まずは
何から話せばいいですかね
…あ、自分は山上悠斗
高校生です。まあ、
ここで高校生って言う
必要は無いですけどね。」
「俺は森山信也
陸上自衛隊員だ。まあ、
この姿見ればわかるかな。」
確かに迷彩服は自衛隊のHP
で見た覚えがある。
「詳しいことは話せないが
今回、俺は特殊任務で
この狂った殺人ゲームに
参加しているんだ。
警視庁の友人と一緒にな。」
特殊任務!?
少なくてもこの人は
私利私欲で動いているわけ
では無いみたいだ。
この人なら仲間に
なってくれるかも…。
「実はですね。
あのメールの送り主は
IDの独占とスマホアプリの
コンプリートを目的に
既に何人かを殺害している
みたいなんです…。」
「そうなのか…俺は
警察ではないから
それをどうこう言える
わけではないが
ここでは殺人も手段の1つ
として認識されている
ということか…。」
「それで、俺たち
あ、他に女性が1人仲間に
いまして…。
あの男たちに対抗するべく
仲間を探してたんです。」
「ふむ…。なるほど。
確かにその話を聞く限りでは
個人個人動くのは
危険が伴うな。」
「俺たちは戦えるわけ
ではないですが、
俺のアプリは全員のIDの
位置がわかるランクAの
アプリなんです。
ですから、ある程度の
動きはわかるんです。」
俺は携帯の画面を
森山さんに見せる。
森山さんは興味深そうに
アプリを見たあと。
「なるほど、これで俺の
行動を見て待ち伏せを
していたわけか。
便利なアプリだね。」
「森山さんは…この話
どう思いますか?」
「仲間を集める…
ってことかい?」
「そうです。」
「悪い案じゃないね。
ただ信頼関係が結べるかは
別問題だけどね。
君がその男たちのスパイ
と言う可能性もあるし
俺が嘘ついていて
実はあちらの仲間なのかも
知れないだろ?」
森山さんの言ってる事は
もっともだ。この状況で
信じろって言われても
俺だって簡単には
信用なんて出来ない。
「そうですよね…。」
「おっと、勘違いしないで
くれるかな?
仲間になる件は、大歓迎だ。
ただ、IDの共有は
お互いの相手だけを共有
って事にしないかい?」
まあ、妥当な条件だと思う
こちらが断る理由も無いし
いいと思われる。
「わかりました。
とりあえずメールアドレスの
交換をお願いできますか?」
「そうだね。では、お互い
のペアの連絡の取り合いは
山上君と俺とで取り合おう。
それと、明日でもいいんだが
全員で集まって話がしたい。
これからの事を考える
為にも全員の考えを知る
必要が有ると思う。」
森山さんの意見は
俺も言おうとしていた
事なので、異存は無い。
「わかりました。ではここに
集まりましょう。
ここは使ってませんから。
それでいいですか?」
「了解だ。では明日の
12時に全員で
このベースキャンプに
集まるという事で
構わないかな?」
「はい。わかりました。」
ある程度決まった話しを
歩美に伝えないとな…。