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2日目~昼~

いつの間に寝ていたのだろう。


気がつくと既に昼近くになっていた。


「山上君、おはよ。

ぐっすり寝てたから起こさないでいたけど

朝…もうお昼ご飯かな?作ったけど食べる?」


目の前に微笑み話しかける女性が…


一瞬事態が把握出来なくなり

パニック状態になるが、昨日の事を思い出す。


昨日、彼女…えっと桜井さんに帰らないで欲しいと

言われてここに泊まり、欲望と格闘して

理性が勝った時点で眠った…んだと思う。


今置かれてる環境を再認識、状況を見る為アプリを開く。


この場に二人、周辺はいない。


最北端は六人が固まっている。


後は中央管理センターに三人。


残りの人間は昨日と同じ場所、


おそらくベースキャンプに待機してるんだろう。



なんにせよ、まずは生きるために

中央管理センターへ向かわないとな。


「桜井さん、よかったらIDカード貸してもらえる?」


「え、いいけど?」


「二人で行くより一人で動いたほうが安全だから。

必要なものはメモしてくれるかな?」


そして昼飯を食べおわり、出発の準備を

している所に桜井さんが近づいてくる。


桜井さんは必要なものをメモした紙と

IDカードを渡してくれる。


「ゴメンね、なんか悪い気がするけど…」


申し訳なさそうにしている

桜井さんに俺は笑顔で答える。


「いいってば。美味しい食事

食べさせてくれたお礼だから。」


「あ、…ありがとう。」


「カードないから出入り出来ないけど、

逆に安全だから。待ってて。」


「わかった。気をつけてね…」


中央管理センターに少し急ぎながらも、

アプリを使用して周りに警戒しておく。


「バッテリーも70位か、一旦

俺のベースキャンプに戻って充電しないとな…。」


しばらく走っていると

中央管理センター前にたどり着く。


中に人が二人いる。恐らく北入口と

南入口の二ヶ所から別々に入っているのだろう。


中は別れているから会う心配もないし。

などと考えていると、南入口から人が出てくる。


スーツを着たサラリーマン。

まさに印象はそれだけだった。

三十代位か、疲れ切った顔に

ずり落ちた眼鏡が印象的だ。

場違いな格好だが、

やはり拉致された部類なのか?


サラリーマンが居なくなったのを確認して、

二枚分のデータ更新と中央管理センターに入る。


まずは頼まれたものを購入。

次に自分のIDを差し込むと、

画面に新しい項目が増えている。


「パソコン共有システム?二枚以上の

IDカードを所持しているプレイヤーは

システムを購入する事で所持IDの

ベースキャンプ全部の場所でデータ共有、

データ更新が可能。成る程、確かに複数所持して

いちいちベースキャンプ回って更新してたら

体力がもたないか。考えてあるな…」


便利なシステムだけど、

独断で買うわけにはいかないな。

俺は桜井さんに電話をかける。


「山上君?何かあった?」

「実はさ…」



システムの話をして桜井さんの意見をまつ。


「いいと思うよ?二人でパソコン共有出来る

なら便利だし、一緒にいられるなら、全然OKです。」


「ならシステム共有するね?」


「うんわかった。」


改めて、システム共有を選ぶと、画面に指示がでる。

『メインユーザーのIDカードを差し込口に

差し込み直して下さい。』

指示通り、カードを差し直す。


『共有したいIDカードを差し込口2に差し込んで

共有システムボタンをクリックしてください。』


指示通り差し込むと画面に共有システムボタンが現れる。


クリックすると、ポイントが100消費され、

『山上と桜井のIDを共有化しました。

以後どちらのベースキャンプでもデータ更新

が可能となります。また、セキュリティも

共有されますのでご了承ください。』


成る程、これで俺のIDでも桜井さんの

ベースキャンプを自由に出入り出来るのか。

しかも、片方を更新すれば共有したIDも更新されて

二度手間にならないんだ。


システムの使い方、買い物に目を奪われ、

俺は大事なことを見逃していたのであった。

アプリが光っていたことに…


買い物を済ませ、桜井さんの待つ

ベースキャンプへ戻りながら、アプリを起動させる。


え?


何かの間違いじゃないのか?


六人が凄い速度で中央管理センターに

向かって来ている!


すると、メールがなる。宛先は不明。

俺は内容を確認する事にした。

メールの内容は以下の通りだ。


『皆さんはじめまして。

私はこのゲームの攻略を知る者です。

前々回の参加で見事生き残り三億円を手に入れました。

今回偽名を使い、再びこのゲームに戻って

来ましたが生き残りには皆さんとの協力体制が

必要となります。興味がある方は

中央管理センターに来て下さい。

夕方6時迄お待ちしております。』


これは!?協力体制は確かに必要だが、

恐らくこのメールは全員に送られているはず!?


どうやってアドレスを調べたんだ?

よくよく見ると相手のアドレスは空白だ。

何かの特殊なアプリで送ったのか?


それに彼らのあの移動速度はなんだ?

まさか、車でも乗っているのか?

俺の想像は悪い意味で裏切られる。


中央管理センター方向から風切り音が聞こえてくる。


あれは…


ヘリコプター!?


どういう事なんだ!?

プレイヤーがあんな移動手段を

持っていると言うのか!?

混乱していく頭の中で、このメールの送り主は

信用してはいけない、何故かそう感じていた。


プルルルルル…


その時、スマホが鳴り始める。

桜井さんがかけてきたようだ。


「桜井さん、どうしたの?」


『ねえ、メール見た?皆で協力しあえば、

生き残れる可能性大じゃない!?』


「メールを素直に信じるなら、そうだけど、

何かおかしい気がする。だから様子見で行こうよ。」


『何でよ!?何が変だと言うのよ!!私は信じるわ!』


彼女が言う通り人数が多い程、生き残りやすいとは思う。

ただ、引っ掛かってる事が一つだけある。


それはあのヘリコプターに六人も乗れるものなのか?

見た感じ小型ヘリコプターみたいなのだが、

ヘリの定員なんて判らないが、疑問点が

何故わざわざ全員で移動する必要があるのか?

顔見せみたいなものなのか?


どうであれ、見に行く必要はあるかもしれない。


「桜井さん、今から様子を見に行ってくる。

大丈夫そうなら電話するから、少しだけ待ってて。」


桜井さんは納得していないようではあったが、

様子見には渋々ながらも賛成をしてくれる。


「じゃあ後で連絡するから桜井さんは

ベースキャンプで待っててね?」


『…わかった。』


電話を切りアプリを開く。中央管理センターに六人。

センターに向かっているプレイヤーが七人。


残りの五人はベースキャンプを出る様子はない。

鉢合わせしないように、慎重に進まないと…

しかし、気になるのはヘリコプターと

本来見れないはずの宛先不明メールが開けた事。

(マニュアルには登録メール以外は

開けないと書いてある。)


あれもアプリなのだろうか?

草陰から中央管理センターを覗き見る…

中年の男が一人立っている。

あれが、メールの男か?


アプリを見ると…


違う!


あの男はカードを持ってない!

カードは…俺の後ろ!?

しまった!


「おや、気付かれましたか。という事は

あなたが【千里眼】の所有者、

ふむ…山上悠斗君か、高校生にしては

冷静沈着ですね。」


背後には冷たい眼差しが印象深い、

中肉中背の男が立っていた。


「な、何故アプリに俺の名前迄判るんだ!」


「ふむ、本来なら教えませんが

特別に教えましょう。私のアプリは

ランクS【真実の書】この島全員の

状況が見れるのですよ。まあ、場所迄は

判りませんがね。」


ランクS!?

真実の書だって!?

全員の詳細が判る?


「カードの持ち主の位置が判るアプリは

ランクBの【探査密偵】か

ランクAの【千里眼】しかないからな。

ただし【探査密偵】は相手の名前か、IDが必要だ。

と、なれば【千里眼】しか考えられない。

お前では俺の情報など判るまい。」


こいつ、他人のアプリの性能まで判るのかよ!


「隠すだけ無駄みたいだな。

確かにアプリは千里眼で俺は山上悠斗だ。」


「ふむ、なかなか見所があるじゃないか。

その様子だと手を組まないかと

言っても無駄みたいだな。」


俺は何も答えない。


話しているうちに、雰囲気が変わってきている。

言葉使いも変わってるし。


「そんな警戒しないでいい。

今はお前にかまう余裕はない。

無能なプレイヤー狩りが待っているからな。

邪魔する気なら殺らせてもらうが、

まあ賢明な君なら言わないでもわかるだろ?」


確かに今抵抗した所でかなわないと思う…。


「了解、邪魔しない。ただし、どうなるのか、

ここで見せてもらうが、構わないか?」


「口の聞き方に気を付けたまえ山上悠斗君。

君は今の状況を分かっていないようだね。」


男は背後に手を回すとゆっくりと拳銃を構える。


「なっ!?」


「銃は素人なのでね。急所狙いは出来ないから

撃たせないでくれたまえ。」



俺は背中から汗が流れているのを感じながらも

目は背けず男を見つめていた。


「ははは、冗談だよ。邪魔しないなら勝手にしたまえ。」


男らは銃を下ろすと草陰に入っていったのだった。

あの男…本気だった。


人を殺すのに躊躇しない目をしていた。


「あ、足が…」


膝がガクガク震えてまともに立ち上がれない。

初めてみた凶器…。

なんで銃なんて持ち込んでるんだ!

あの男、協力体制なんて絶対嘘だ。

目的はIDの独占と、アプリコンプリートボーナス

つまり金目当てなのだろう。


なら、いつかは俺も狙われる…という事か。

と、考えていたその時、中央管理センター前に

さっきのサラリーマンが中年の男の前にやってくる。


「あ、あんたがさっきのメールを送った人か?」


ずり落ちた眼鏡を直しながら

サラリーマンの男は聞いている。


「ああ。そうだ。で、私と協力して生き延びたいのか?」


中年の男は目線を合わせようともせずそう呟いたようだ。


この中年の男は何故さっきの男と協力して

いるんだろうか・・・?


IDを持ってないという事はさっきの男に

IDカードを渡してしまっているはずだ。


「そ、そうだ!俺は、こんなゲームしたくない!」


サラリーマンの言葉を聞いてニヤリと笑う中年の男…。


「そうか…。じゃあ…。」


次の瞬間俺は戦慄する!!


「あ…が…」


サラリーマンが何かに

斬られて血飛沫をあげる。


「フフフ…やはりいい!この感触…この切れ味

なんて素晴らしいんだ!」


中年の男は日本刀を握り締めている。


いつの間に…


よく見ると仕込み刀のようだ…。

杖みたいのを持っていたのか?


「や…やめてくれ!

し、死にたくない!!」


サラリーマンは逃げようとするが出血が酷く

朦朧としているようだ。


そこへ銃を持ったさっきの男が

サラリーマンの前に出て来る。


「残念ですけれど、時間が無いものでね。

大江さん…。そのゴミ始末しておいて貰えますかね。」


銃を懐にしまいながらサラリーマンを

見下したまま大江と呼んだ中年の男に近寄る。


「ふん、あんたが何しようが俺の知ったことではない。

だが、お前について行けばまだまだ人を斬れるのなら

ここは従おう…。」


大江はニヤリと笑うとサラリーマンに近寄っていく。


「ひい…や、やめ」


次の瞬間には首がゴトンと音を立て地面に落ちていた。

あまりの残酷さに俺は目をそむける。


「終わったぜ。じゃあちょっと着替えてくる。

流石に血だらけでは、次の獲物が逃げてしまうからな。」


大江は中央管理センターへと入っていく。

残った男はサラリーマンの成れの果てを物色している。


「ふむ、IDは…筒井真、ランクE

【物価変動】か…。あまり使えるアプリ

ではありませんね。」


次の瞬間、あいつはこっちを見てニヤリと笑っていた…。


なんてことだ…。平然と殺人が行われて

いるこの状況は異常だが逆に言えば

それだけここでは何をしてもいいという事だ!


あの大江って男は殺人快楽者…

それを利用してあの男は全員のIDを

奪うつもりだ!!!


俺は桜井さんの待つベースキャンプへと

逃げ帰ったのだった…。

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