1日目~夜~PART1
中央管理センターから買い物を
終わらせ、ベースキャンプへ
向かおうとしたときには、
既に夕暮れだった。
色々悩んで買い物していたから
時間が経つのが早く感じるな。
桜井さんのベースキャンプに
たどり着く頃には、
すっかり日が暮れていた。
俺たちが中央管理センターから
出た後に何人かのプレイヤーが
中央管理センターに入って
色々やっていたのをスマホの
ツールで確認する。
今はみんな警戒しているのだろう。
ちなみに中央管理センター内に
プレイヤーが入ると入り口に
【現在使用中】と
デカデカと表示される。
中に誰かいますと言ってるようなものだ。
桜井さんのベースキャンプに入る前に
千里眼で周りの状況を確認。
近くにプレイヤーはいないことを
調べた後、桜井さんにドアを開けてもらう。
中は俺のベースキャンプと変わらず
机のパソコンとベッドだけの
シンプルな構造だ。
桜井さんは机に向かい
パソコンの電源を立ち上げる。
「疲れたわ…。スマホをパソコンに繋いで
購入したパスワードを読み込ませるのよね?」
設置を購入したさいに、パスワードが出たらしく、
スマホにデータを落とさせて保存させておいた。
20桁だから目で見て覚えるなんて
無理だと思ったし、保存させて正解だな。
「パソコンのスタート画面の一番下にある、
PW確認ってやつじゃないかな?」
「えっと…これを打ち込むのね…
…5849っと。」
全部打ち込み、Enterキーを押すと…
右側の壁が上に自動的に上がって
新しいスペースが出来あがる。
そこにはキッチンが
しっかり設置されていた。
成る程…俺は周りの壁をたたいてみる。
空洞があると判る。あからさまに音が違う。
元々全部必要なものがついていて
パスワードを入力することで
初めて使用可能になる仕組みなのか。
キッチンと浴室を購入した
桜井さんは、まずお風呂にお湯を入れる。
水は制限なしで普通に出るのか。
ならキッチンだけでも設置するべきだな。
お湯が溜まる間に、今回のゲームに
参加した理由をお互い明かす。
まあ、俺は誘拐同然なんだが…
「俺は山上悠斗。高校2年です。
ここには黒服の男に誘拐されてきたんだ。
正直、状況が把握できてない。」
「私は、桜井歩美。先月20歳になったわ。
都内の企業でOLやってたのだけど
私も黒服の男に薬で眠らされてここに…」
桜井さんもほぼ同じように
自分の意志とは無関係に
参加させられたらしい。
しかし彼女の環境はひどいものだった。
「私ね、ある人の隠し子で
本来生まれたらいけない存在だったんだ。
お母さんはもう死んでしまってあとは
私の存在さえ無くなれば父も安泰らしいわ。
だから、参加させられたのよ。
ここでは全て事故で済まされる
私はここで事故に見せ掛けられ
殺されてしまうのよ!」
肩を震わせながら、しかし
泣きそうな顔を見せまいと
じっと俯いてまま桜井さんは話を続ける。
「山上君だったよね?私といると色々
巻き込まれちゃうから、もう戻った方がいいよ…」
こちらを見ることなく、突き放すような言い方で
話しているが、彼女は助けを求めている。
「殺されるって聞いては無視出来ないな。
俺、美人の涙に弱いから。」
変に暗くならないように明るく
笑いながらそう答える。
「でも!!」
桜井さんは顔を上げてこっちを見る。
涙をこらえようとしているが
今にもあふれてしまいそうだった。
「それに、1人よりは2人のほうが
生き残りやすいとおもう。
どの道ここでは皆が敵だと思って
良いだろうし…。
でも、俺は桜井さんと一緒に頑張って
生き残っていきたい。」
そういって彼女の肩をポンっと叩く。
それが限界を知らせるかのように、
彼女は俺の胸で泣き始める。
俺はそっと肩を抱きしめ
泣き止むのをずっと待っていた…。
「…ごめんね、ありがとう。」
しばらくして落ち着いたのか
彼女は立ち上がり風呂のお湯を止めに行く。
しかし…一体ゲームの選出基準って何なんだ?
彼女がこのゲームに参加したのは厄介払いって
そういう都合でなのか?
「少しお風呂に入って落ち着いておいでよ。」
お湯を止めにいった桜井さんに声をかける。
「え…でも…」
「大丈夫。覗かないから。」
俺が笑顔で親指を立て、そういうと
「ふふ、ありがとう。
じゃあ少し待っててね。」
俺が気をつかって言ってることに
気がついたのか笑顔で風呂場へ
桜井さんは入っていく。
彼女が風呂に入っている間に
ほかのプレイヤーの動きを見ることにした。
ん!?なんだ??
一番北の所に4人が集まっている…?
しかも全員で移動中??
なぜわざわざ4人で行動しているのだろうか?
それと、西の端に2人が固まっている。
気になったがこのツールでは
場所しか把握できない。
そういえば…
桜井さんはどんなツールを
持っているのだろうか?
風呂から上がってきたら聞いてみよう。
俺は他のプレイヤーの動きをチェックしながら
桜井さんが上がって来るのを待つことにした。