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14日目~夕~

麻美にも勝也の事を説明し仲間になる事を

納得してもらう。しかし、連絡が入らず

夕方近くになってしまっていた。


「遅いね…ヘリならすぐだと思ったのにね。」


麻美の言う通り、1時間もかからず来ると

思ってたのだが何かあったのだろうか?


「電話してみるか…?」


その前にアプリを見てみよう。武田勝也、

勝也…あれ?地図上に存在しない!?


まさか!!俺は真実の書を開く。

武田勝也

状態…生存


生きてるか…てっきり敗者復活プレイヤーに

殺られたのかと思ったけど…。しかし…

地図上に反応無しってどうなってるんだ?


その理由は5分後に判明した…。


アプリを見ていると南から高速で移動する

勝也のIDの信号が現れる。


そういう事か!つまり、島の外から

大幅な迂回を行い、南から一気に

合流する場所に来るつもりなのだ!!


子供だと思って馬鹿には出来ないな。

ちゃんと捕獲部隊の場所も理解して

一番安全なルートを選んできたのだろう。


確かに南は、ほとんど障害になる人間は居ない。

成る程、賢いな。小学生と思っていたら

いけない。彼の意見はしっかり受け止めよう。


そして5分後、勝也から電話が掛かってくる。


「もうそろそろ着くから

着いたら又連絡するね~。」


パソコンのプロフェッショナル勝也の姿を

これで見る事が出来る。


俺と麻美は外に出て勝也の到着を待つのであった。


ヘリコプターが着陸する。こう考えると、

ベースキャンプ周辺には必ず広場が存在する。

ヘリポート用に考えて作ってあるんだろうな。


「来たな。」


ヘリから降りてきたのは12歳と言うには幼く見える、

眼鏡をかけた細い少年だった。黒髪にいわゆる

坊ちゃん刈りと言われる髪型で利発そうな印象を受ける。


「へ~。悠斗兄ちゃんは意外にまともなんだ。

麻美姉ちゃんは美人だね~。」


麻美が少年の前に歩みよる。


「君が武田勝也君?」


「そうだよ!よろしくね♪」


「よろしく、勝也君。…あれ?何で名前を?」


勝也はにっこり微笑み手を差し出す。


「この島の事は何でもわかってるよ。色々…ね。」


麻美は握手を返そうと手を出す


「よろしくね。勝也君。」


「うん、よろしく~。まずは

ベースキャンプに入らない?」


確かに立ち話は危険だ。

俺達はベースキャンプに向かう事にした。


ベースキャンプに戻り、まずはこれからの事を

話す為にこれまでの事を整理してお互いに

説明を始める事にする。


「悠斗君、コーヒー砂糖1杯だよね?どうぞ♪」


麻美がコーヒーを作って持ってきてくれた。


「すまない、ありがとう。」


俺が微笑むと照れ臭そうに微笑んでいる。


「勝也君はオレンジジュースでいいかな?」


「僕もコーヒーで。あ、ブラックでお願いします。」


子供なのにブラックとは生意気な…。


「子ども扱いは止めてくれますか?

悠斗兄ちゃんとは5つしか離れてない

んだからね。」


「な…。」


「表情や雰囲気、仕草である程度

相手の気持ちっていうのはわかるものなんです。

そろそろ、僕も子供のような振る舞いは

止めてもいいですか?」


こいつ…ただの子供じゃない。精神年齢は

12歳とはとても思えない。


「あ、もちろん12歳というのはホントですよ?

精神年齢が高すぎだと思われるのは

仕方ないですね。僕は子供で居る時間を

飛び越して育った人間だから。

俗にいうIQが高いとかそういう類のやつですよ。」


「こっちが思った事を先読みそして

こっちが聞きたい事を答えてくる…確かに

ただの子供ではないな。」


勝也は苦笑いをする。


「高校の教育課程は7歳で修了しちゃって

大学も去年卒業してしまったからね。」


「大学…卒業!?よく漫画であるアメリカの

有名大学を主席で卒業!とかそういうやつか!?」


「流石に主席ではないですよ。ほら、

色々問題あるんで他の人に譲りましたよ。」


話していると12歳とはとても思えないが、

見た目が幼いので違和感が大きい…。


「そんな天才くんが何故このゲームに?」


「うーん。ノーコメントは…駄目かな?」


「少なくても自分の意志で来たという事だよな?」


勝也はその問いに沈黙する。そして、少ししてから

重い口をようやく開ける。


「ん~。参加は自分の意志だけど、目的は

別の意思が絡んでくるかな?」


「それって、つまり勝也君はこのゲームを

理解した上で参加したって事なの?」


麻美が疑問に思った事を聞いてくる。

自分の意志だというのだから間違いない

とは思うが、勝也の回答を待つことにした。


「そうだね。このゲームの目的、動いている金の流れ

関係者の割り出し。それを現地で探し当てる。

これが僕の仕事かな?」


「勝也、それで楽しいのか?子供時代は

2度と戻ってこないそれなのにお前は早く大人に

ならなきゃと背伸びして無理してる風にも見えるぞ。」


勝也は遠い目をして苦笑いをして、

ブラックコーヒーを一気に飲み干す。


「急がせたのは大人たちだ。この才能を

無駄にしないために色々したからね。

子供の遊びってどういう物なのか、

僕は知らない。でも、必要とされている限り

僕はこの頭脳を皆のために使うよ。」


何でだろう…俺には泣いている

勝也の姿が思い浮かぶ。


「そういう事なら、水野さんも仲間に

なってもらえば勝也も助かるんじゃないか?」


水野さんの名前を出すと、勝也はスマホで調べ始める。


「水野愛。警視庁捜査一課…ふぅん。成る程ね。

確かに強力な助っ人だ。」


「でも、悠斗君。水野さんと連絡取れない

って言ってたよね?」


麻美が困ったような顔をして考えているようなので…


「勝也、俺にしたように水野さんの番号に

アクセス出来るのか?」


「時間かかるけど、可能だよ。二~三時間位かな?」


「悪いけど、頼む。それと、もしよかったら、

他のプレイヤーの情報を提供してくれると

今後の参考になるんだけど…」


「うーん。まあ、いいけど代わりに

中央管理センターに使い走りして貰える?」


パシリ!?

小学生に高校生がパシらされる

なんて…ありえねえ!!


俺はふざけるな!と言おうとして、冷静になる。

勝也は俺がどう出るか試しているのだろう。

普通なら怒って当然だろう。だが、今は

お互いに協力しなければならない。


勝也が情報を提供する。俺は勝也が

出来ない部分をフォローしてやる。


「…OKだ。何が必要なんだ?

紙かなんかに書いてくれ。」


勝也は意外そうにこっちを見る。


「悠斗兄ちゃん、こんなガキにパシリに

されて怒んないの?普通怒るでしょ?」


「そっちは情報の提供。俺は労働で返す。

俺はお前を子ども扱いしないぜ。

…今はな。」


「今は?」


勝也は興味深そうに聞いてくる。


「俺もまだ大人って訳じゃないけどよ、

でも、大きくなると色々失うものが多いんだぜ?

お前はIQが高いだけであとは普通の子供なんだ。

同じ年代の友達を作って…。」


「いいよ。そんな話題今は関係ない。

僕がお願いしたいのは、IDの共有化と

このパーツを持ってきて欲しいんだ。」


俺の話を遮るように勝也はメモを

俺の前に差し出してくる。


「…OKだ。でも、システムハッキングで

共有化は出来ないのか?」


「出来ない。そんなこと出来たら、全部の

ID共有しちゃえばいいでしょ?

このカードは特殊なシステムで管理されてて、

中央管理のシステムにIDを入れて

書き換えないと駄目なんだ。


更新位なら可能だけど、共有化は直接

中央管理センターに行かなきゃ出来ないんだ。」


勝也の言うとおりだ。

確かに共有化がハッキングで出来るなら

全部共有化してしまえば使いたい放題になる。

まあ…セキュリティが全く無意味になるけどな…。


「わかった。じゃあ麻美、勝也と

ここで待っててくれ。」


「うん…。気を付けてね。」


「それと、勝也。敗者復活のプレイヤーなんだが

中央管理センターに着く前に連絡入れるから

その時に詳しい位置を教えてくれないか?」


「了解だよ。」


行動開始は夜の9時。流石に捕獲部隊が大量に

展開している状況で動くのはまずいだろう。


9時になると待機する。

そのタイミングで動くしかない。


「あと3時間か…」


「それなら、情報を先に提供するよ。

悠斗兄ちゃんなら、信用できそうだし。」


そう言って、勝也はパソコンにスマホを繋げ、

データ転送を行っている。


「リアルタイムの情報は共有化しないと

見れないからこのデータは今日の朝までの

データだけど、まあその間何も起きてなきゃ

これが最新の情報だよ。」


今日の朝…もしかして裕美さんの

生死も出ているんじゃないのか…?


「真実の書とどう違うんだ?このデータは。」


俺はさりげなく聞いてみる。


「うんと、アプリは省略。ID所持も省略。

状態は分かるようになってて参加条件が分かるのが

アプリにない機能かな?」


参加条件?

生存状態などは見れるのか…


「あ、麻美、悪い。コーヒー作ってくれないか?」


「え?あ、いいよ♪まっててね。」


麻美が台所に行ったのを確認した所で

勝也に耳打ちをする。


「勝也、ちょっといいか?」


「何?内緒話?」


「ああ、麻美に野田裕美の情報を

見られないようにして貰いたいんだけど…

出来るか?」


「浮気相手?」


「そうじゃない。麻美は裕美さんは

捕まっただけとまだ思っているんだ。

死んだ事は俺と…お前だけしか知らない事なんだ。」


「…そうだね。これにも死亡となってるから

死んでるんだろうね。」


勝也にしてみれば画面に書かれている事だから

あっさりしている。


俺は昨日まで一緒に過ごしていた仲間…

いい関係だったから胸を突き刺すような

痛みを今も感じている。


「それを捕縛とかに書き換え出来ないか?」


「データ改ざん?まあいいけど。捕縛とか

は無理だから行方不明でいいかな?」


「ああ、それでもいい。頼むよ。

今真実を知ったら麻美は立ち直れなくなる…。」


「優しいねえ…分かったよ。」


俺の目の前で書き換えをしてくれる。


野田裕美

状態:行方不明


とりあえずはこれでいいだろう。


「はい、悠斗君、コーヒー。勝也君も飲むでしょ?

ブラックでいいよね?」


いつの間にか麻美が後ろに立っていた。

危ねえ…ギリギリだったな。


「あ、ああサンキュー。」


「麻美姉ちゃんありがとう。」


「いいえ。じゃあ私そろそろ夕飯作るね。

今日は頑張って奮発しちゃうからね♪」


麻美は再びキッチンのほうに戻っていった。


「ふうん…。あんな絶望的な顔してたのに、

悠斗兄ちゃんを本当に好きなんだね。

愛の力ってやつなのかな?」


「え?」


絶望的な顔…?


「じゃあ僕はあっちの部屋で寝てるね~。」


俺が聞こうとする前に勝也は隣の寝室に入っていった。


少し疑問に思ったが、裕美さんの事で悩んでた顔を

見たのだろうと勝手に解釈する事にした。


データを見ていると俺の名前を発見。

一応見てみる。


山上悠斗ヤマガミ ユウト

17歳 男性

状態:生存

依頼人:山上隆人ヤマガミ タカヒト

参加条件:

山上隆人の全借金○×○×

金融株式会社に全返済で

山上悠斗の身柄を買い取り。


山上悠斗が死亡した場合

60%を山上隆人に手渡す。


…そこには信じられない事が書かれていた…。


博打と酒と女に狂って俺達を捨てた親父…

山上隆人が俺を売った!?


じゃあ…俺は親父の借金のせいで

ここでこんな目に!?


俺はこの事実に怒りをこらえきれず、

ベッドを殴りつける。


「あのクソ野郎!家庭を壊すだけじゃ

飽き足らず、息子を売るのかよ!!!」


あいつはもう親父でも何でもねえ!

生き残って絶対ぶん殴る!!


次は麻美か…


麻美の名前をクリックする。


杉田麻美スギタ アサミ

16歳 女性

状態:生存(候補1)

依頼人:杉田美穂子スギタ ミホコ

参加条件:

報酬はゲーム主催者に80%

譲渡。依頼金として受諾。

杉田麻美はゲーム終了後

死亡扱いとなる。

杉田麻美を捕獲した場合

海外に情婦として売却。

プレイヤーの1人に情報を

与え、杉田麻美を拘束させる。

さらに生き延びた場合

そのプレイヤーに杉田麻美の

身柄を売り渡す。


「なんだって…。」


確か美穂子って麻美の

お母さんの名前だった気がする。

麻美は母親に…しかもあの佐藤って男は

ゲーム側の人間なのか!?


こんな酷い話があるか!俺達が生き延びても

佐藤が生き延びたら麻美はあの男に

身柄を売られる!?


しかも戸籍上は死亡扱いにされるって事は…

人権が全くなくなるって事か!


そうだ…佐藤敏彦の情報を…


佐藤敏彦サトウ トシヒコ

27歳 男性

状態:生存

依頼人:主催者

参加条件:連続婦女暴行犯と

して指名手配を受ける前に

ゲーム主催者にて身柄を

買い入れ。生き残りの報酬は

身柄の自由と杉田麻美(16)

の身柄の譲渡。

又、杉田麻美と接触するまで

彼女の位置をサーチできる

アプリを始めから所持。

杉田麻美を吟味し買い取るか

どうかを判断。

(7日目に捕獲部隊に杉田麻美

の身柄を譲渡する事。)

気に入らない場合、他の参加者

から新しい報酬品を見つけるか

金品で払うかは要相談。


追伸:(佐藤敏彦は2日目に

買取の承認を本部に連絡済)


許せねえ…このゲームの主催者も、

佐藤って野郎も…。


人はモノじゃねえ!!買取とか

譲渡とか吟味とか…ふざけるな!!!


「ただ生き残るんじゃ駄目だ。アイツを…

あの佐藤を何とかしないと駄目だ!」


他の人物も気になるが今はこれ以上

見るのは止めておこう…。


丁度、麻美が夕飯の支度を終わらせ、

呼びに来たからだ。麻美はプレイヤー情報を

見るだろうか…?

見たら…どう考えても今の明るい杉田を

(明るく振舞ってるだけかもしれないが…)

失うような気がする…。


夕飯前に勝也にデータを消してもらおう。

見た事に後悔をしていたが知らなければ

麻美を失う事を知らないでただ生き延びる事

に集中してしまっただろう。


逆に真実を知ることが出来てよかった。

俺は勝也を起こすついでにデータの消去を頼む。

勝也は快くOKしてくれてデータの消去をしてくれた。


…しかし、この時全員のデータを見ていれば

…更なる真実を知ることが出来たのだが。

この時の俺には知る由もなかった…。

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