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14日目~昼~

あれから何とか俺と杉田はベースキャンプに戻る事が

出来たが、ベースキャンプに入った所を

敗者復活プレイヤーに見られていたら、

セキュリティー無効で

進入される可能性もある…。


「うわああああん!!」


杉田は大声で泣き始める。


「杉田…」


俺はそっと杉田を抱きしめる。

おそらく杉田は自分が飛び出した事で

こういう事態になった事を責めているのだろう…。


俺はアプリを開く。


【野田 裕美】

状態:死亡


…この事実は杉田に話さないでおこう…。

これからは俺が杉田を支えてやらなきゃ…。


1時間ほど経ったが今の所は

セキュリティーカットされる様子は無い。


杉田も大分落ち着いたようだ。


「…ねえ。山上くん。」


「どうした?」


「あのね…私あの日偶然会ったわけじゃないんだ。」


あの日…?


「あの日って…?」


「ここに連れて来られる前。」


ああ、杉田と道で偶然会ったあの時の話か。


「私、山上くんの家に行ったんだよ…。

そしたらお母さんが出て今買い物にいってますって。

だから、お店に向かってた所だったんだ…。」


「そっか…。でも何しに?」


「イメージチェンジした私を最初に見て欲しくて…。

それで勇気がもてれば…告白もしようって…

結局、照れくさくてワザとからかってみたりして…。

でも、あの時告白しておくんだったかも…。」


杉田はちょっと辛そうに微笑む。


「あの場でかあ…」


「うん。そうすればこんな回り道…しないで

よかったのかなって…。」


あの頃…杉田に告白されたら多分OKしてただろうな。


「でも、杉田は俺の事いつ好きになったんだ?

ほとんど話した事ないよな?」


「うん、そうだね…。まともに話したのは屋上で

私が飛び降りようとした時に声かけられたのが

初めてだったよね。」


飛び降り…?あの時ただ屋上の景色

見に来たんじゃなかったのか…。


「飛び降り…って。そんなに思いつめてたのか。

俺、そうとは知らず…。」


「うん、無神経だったよね。」


うぐ…はっきり言いますな。


「でも、あの時山上くんが居てくれたから…

頑張ってみようって。ねえ…山上くんお願い

聞いてくれるかな?」


「…ん?なんだい?」


「悠斗くんって…呼んでいい?」


杉田は顔を真っ赤にして俯く。


「あ、ああ。いいよ。なら…俺も杉田の事

麻美って呼んでもいいか?」


「うん。…嬉しい。」


俺達はここに来る前の楽しかった学校での

事を話しつづけた。


裕美さんの事を考えない様に悲しい事を思い出さない様に

話題が尽きるまで話し続けた。


裕美さんと一緒に倒れていた男3人は

おそらく敗者復活プレイヤーだろう。


さっき【真実の書】を見たとき

【???】が下から3つ黒くなっていた。


しかし、銃は一体何処から…

裕美さんも撃たれてたみたいだし、

あの場に銃は無かった気がするけど…


他のプレイヤーは動いてないはずだけど…


今この島にはプレイヤー8人

敗者復活プレイヤー7人。

捕獲部隊が4部隊。


そして今日捕獲部隊の増援が行われる。


ますます動きづらくなる。そして、もう麻美だけ

置いて行動というのもマズイ。


俺の留守中に万が一セキュリティー解除なんて

されたらどうにも出来ない。


これからはベースキャンプ移動と中央管理センターの

ポイント支給を同時に行いつつ、

2人で行動していかないと…。

とりあえず、今日はもうベースキャンプから

出ない方が賢明な判断だろう。


麻美を不安にさせない為、

たわいの無い話で空気を和ませ

麻美の顔にようやく笑顔が

でるようになったのだが…


このタイミングで2人のスマホがメールを受信する。


「来たな…。」


予想通り本部からのメールであった。


『12:00より増援の捕獲部隊を島に派遣します。

今回は前回の倍の兵力投入となっております。

又、今日からランダムに1時間

(昼、夜問いません)

ヘリによる索敵を行います。

ヘリのメンバーは、麻酔と発信機を撃ちこむ

スナイパー2人による、空中狙撃を実施します。

ヘリの巡回ルートは未定です。また

発信機を撃ちこまれたプレイヤーは範囲に関係なく

捕獲部隊のターゲットとなります。

効果は24時間。無理やり外そうとすると

高圧電流が流れますので注意してください。』


前回の倍!?8部隊投入!?しかも空からの

監視も追加されただって!?


人数の少ない今の状態ではまともに正面突破で

逃げるとかは不可能になるだろう…。


「どうしたの…?悠斗君

なんか怖い顔してるよ…?」


「ああ、まだ見てないんだな。はい、これだよ。」


俺は本部受信メールを麻美に見せる。


「…本当にここから逃げれるのかな…

21日目にも増援来るんだよね?」


不安になるのは判る。俺だって凄い不安だからな。

でも、裕美さんとの約束、自分の気持ちに

嘘をつかない為にも麻美は守らないとな。


「今日はここから出なければ問題ないよ。

のんびりしておこう。これからの為にも。」


しかし、他のプレイヤーと協力体制も

取れないのが辛い部分だな…。


今更相手のベースキャンプまで

向かうわけにはいかないしな…。


あの佐藤敏彦が生き延びている以上

【一斉送信】は使えないしな…。


俺が考えて込んでいたら麻美が立ち上がる。


「お腹すいたでしょ?何か作るね。待っててね。」


この頃は麻美が料理をメインで作っていたので

安心して任せられる。


「OK、よろしくな!」


俺はその間にどうするべきか考えてこう。

仲間を増やすか2人で頑張りつづけるか…。


何気なく、アプリを見ていてふと気がつく。

小学生…1人でここまで生き延びられるのか?


武田勝也か…

彼は何か特別なアプリかこのゲームを自分なりに

把握して上手く立ち回っているのか判らないが

約半月を1人でこなしている度胸と知識はあるみたいだ。


もし仲間に引き入れるならこの小学生がいいのでは?

【千里眼】を開き、武田勝也の位置を確認する。

う~ん。遠いな。彼は最北端に居るようだ。

ここで最後にもう一度別行動して会いに行くべきか…

考えていても仕方ない。麻美にも相談してみるか。


麻美が昼食を持ってくる。


お、チャーハンだ。日に日に上手くなっているな~


「はい、お待たせ。チャーハンでよかった?」


「ありがとな!…おお!美味い!!」


「ほんと?よかったぁ~♪」


昼食を済ませた俺達は何もせず俺はベットに寝転んで

これからの事を考えていると…


麻美が隣にやってきて腕に抱きついてくる。


「ん…?どうした?」


「ううん、ちょっと…悠斗君をすぐ側で

感じてたいなあって。」


麻美の温もりを感じる。それから俺達は

どちらからともなくキスをする。


「えへへ…なんかやっと恋人同士のキスって感じだね。

嬉しいよ…悠斗君。」


麻美が嬉しそうに笑う。俺はその笑顔に思わず

動悸が激しくなる。


麻美ってこんなに可愛かったんだな…。


「麻美、ちょっといいか?」


「な…何?」


麻美は顔を真っ赤にしてこっちを見ている。


「悠斗君がしたいなら…いいよ。」


え…それって…


「あのさ、小学生のプレイヤーいるんだけどさ。

武田勝也って奴で、未だに1人で生き残ってるんだけど

こいつを仲間に引き込めば何か有利に動けそうな

気がするんだ。それと水野愛って人は

ここでの知り合いだから出来れば手を組みたいって

考えてるんだけど、どうかな…?」


麻美は更に顔を真っ赤にして顔をそらしてしまう。


「…それが言いたかったの?」


後ろを向いたまま、か細い声で麻美は聞いてくる。


「え?…う、うん。」


「う…ううっ。私ったら…」


「それで、どうかな?」


「悠斗君がいいと思うならいいと思うよ。

…2人きりになれないけど(ボソッ)」


「わかった。じゃあ何とか連絡を取らなきゃな。」


麻美は少しがっかりした顔でベッドから起き上がる。


「お風呂入るね。」


「あ、うん。了解。」


麻美はそのままお風呂場に向かう。

…いくら俺でもそこ迄鈍感ではない。

麻美が俺となら出来ると。男性恐怖症の彼女が

そこ迄言ってくれたのだ。


でも、今はまだ完全に心の整理がついていない。

こんな状態では麻美にも、歩美にも悪い。


だから俺は、はぐらかしこの場を誤魔化した。

最低かもな…。

でも今はまだこれでいいと思う。

麻美が風呂に入っている間スマホアプリの確認を

していると突然スマホが鳴り始める。


しかも、掛かって来た番号が勝手に登録された?

一体誰がこんな事を…。


「もしもし…」


意を決して電話に出る。


「始めまして、お兄ちゃん。

山上悠斗兄ちゃんだよね?」


声の感じからすると子供…?


「お前、武田勝也か!?」


「さすがお兄ちゃん。

だからこそ連絡したんだけど

話を聞いてくれる?」


「…これはアプリの能力なのか?」


「そうだよ。システムハッカー

はこの島のあらゆるシステムを

いじることが出来るんだ。

コンピュータの知識が必要だけどね。」


そんなアプリがランクCなのか?

使いこなせれば最強じゃないか!


「使いこなせれば、最強だけど

使えない人だとEランクより

使えないアプリになるからね。

僕の所に来て良かったよ。」


なるほど、この少年はパソコンの事に関しては

半端無い知識の持ち主なのだろう。


そうでなければ、この島のシステムを

ハッキングなんてアプリだけでは不可能だ。


「悠斗兄ちゃん、僕は勝也って

呼んでくれればいいから。

僕も悠斗兄ちゃんって呼ぶね。

で、本題なんだけど。

僕と手を組まない?

正直、一人ではそろそろ限界

何だよね。運動神経いいわけ

じゃないからさ。

もちろん、僕に出来ることなら

何でも協力するけど。」


元々手を組むつもりだったし

何よりもシステムをハッキング出来るというのは、魅力的だ。


だが、気になる事もある。


「何で俺を選んだんだ?大人の男なら

他にも居るだろう?」


「今IDの半数を持っているそして、

あの須藤と関わって無事な悠斗兄ちゃんに

興味が湧いたから。」


須藤!?何故勝也からその名前が出て来るんだ!?


「勝也、お前何を知ってる!?須藤やIDの事何故!?」


「システムにハッキングすればこの島で

起きてることなんて手に取るように分かるんだよ。

そして、色々見た結果悠斗兄ちゃんが一番信用できて

一番自分と気が合いそうだと思ったから連絡したんだよ。」


勝也を仲間に引き込めばお互いにメリットがある。

この交渉は受けるべきだな。


「OK。協力し合おう。

じゃあどうやって合流する?」


「僕がそっちに行くよ。アプリをコピーして

ヘリで向かうね。場所は中央管理センターから

南南東に25kmのベースキャンプだよね?」


アプリのコピーも出来るのか!


「何でもありだな…」


「そうでもないよ。アプリのコピーは1回使用したら

消えちゃうし、同じ物は3日経たないとコピー

出来ないしね。」


それでも、【真実の書】をコピーしてアプリを

全て把握すれば20個のアプリを1度だけ

使えるみたいなものだ。


「着いたら教えてくれ。あ…敗者復活プレイヤーが

周辺にいると問題が…。」


「そこら辺にはいないよ。

中央管理センターに4人。

僕の周辺に2人。

西の海岸沿いに1人。

だから心配ないよ。

ヘリは迂回してそっちに

向かうようにお願いするから

場所もバレない筈だよ。」


どうやらシステム管理の部分にハッキングして

位置情報も把握しているみたいだな。

これは心強い。


「詳しい事はこっちに来てから話す事にしよう。

勝也、気を付けて来いよ?」


「大丈夫、麻美お姉ちゃんにもよろしく伝えてね。」


成る程…プレイヤーの位置は全部お見通しという事か。

通話を終了して、俺はふと考える。

ハッキングした勝也であの情報量だ。

システム管理者はこの島の事は何でも判ってる

って事だよな?


本部からこっちの位置を捕獲部隊に送信するなんて

ことになって、セキュリティ解除コードが送られたら

どんなに頑張ったって最後に捕まってしまうじゃないか!


そんな最悪な事態になったら…どう対応すれば…


ここで勝也がここから1人では厳しいという

意味が理解できた気がした。


つまりは21日の

特殊捕獲部隊は相当マズイ能力を持っている

と推測できる何かを知ったんだ。


立て篭もりでは残り9日は生き残れない。

という事なのだろう…。


その時丁度麻美がお風呂から上がってきたようだ。


「麻美、今から…は!?」


麻美は風呂上りでバスタオルを巻いただけの姿で立っていた。


「悠斗君…私って魅力がないのかな。あの男の欲望の

はけ口になってたから、汚れててそういう気に

なれないのかな…?」


バスタオル1枚の姿のまま麻美はこっちにやってくる。


「そ、そんな事はない!だ、だけど今は待ってくれ!

そういう関係になると、冷静な判断とかが

出来なくなり…常に一緒に居たくなる。

麻美を歩美の二の舞にする訳には行かないんだ…。」


麻美は辛そうな顔でベットの横に腰をかける。


「こんな気持ち、初めてだよ。

男の人なんて…って思ってた。

でも、悠斗君になら…

私を好きにしてくれても

いいって思ってる…。」


麻美は濃厚なキスをしてくる。


「…でも、悠斗君が嫌なら

仕方ないよね…。

私は汚れた女だし…。」


「違う!麻美は可愛いよ。

だけど、そういう事は

2人でこの島を脱出した時

元の生活に戻った時、

改めて恋人として…麻美を

俺のものにしたいんだ。」


「本当?私…」


「だから、服着てくれよ。

口ではこう言ってるけど、

実際理性が活動限界寸前

なんだからさ…。」


その言葉を聞いて麻美は

ニヤリと笑う。


「それって、私に女の魅力を

感じてるって事?ねえねえ?」


そう言いながら麻美は

擦り寄って来る。

む、胸が…。


「そ、そうだよ!

勘弁してくれ!!

俺だって男なんだぞ~!」


麻美は嬉しそうな顔をして

俺から離れる。


「悠斗君、わかったよ。

じゃあ、ここを出たら…

約束だよ?」


「ああ、約束だ。」


ううう…俺、理性が持つかな。


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