表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/29

14日目~朝~

「見つけた!」


俺はこちらに気付いていない杉田の肩を掴み、

無理やりこっちを向かせる。


「や、山上くん!?」


俺は何も言わず、杉田の頬を平手打ちで叩く。


「杉田、お前何考えてる!今こうしてる事が

どれだけ危険なのか分かってるのか!?」


「分かってるわよ!!もういいじゃない!!

裕美さんと仲良くしてればいいじゃない!

私はもう2人といられない!!」


感情的になった杉田をみたのは…そうだ、

あの屋上で2人で話した時以来だな…。


「なんだよ、それ!?」


「山上くんと裕美さんがああいう

関係になって…私は居場所なんて無いよ!」


「馬鹿な事言ってるなよ。何でそんなに

ヒステリックになってるんだよ。」


「そんなの…山上くんの事好きだからに

決まってるじゃない!!好きな人が

他の人と仲良くしてるのを見てるなんて

私には耐えられない!」


…裕美さんが言う通り杉田は俺の事

そういう風に思ってたんだな…。


涙をボロボロ流しその場に泣き崩れる杉田。


「…杉田。」


「もういいよ…同情で一緒に居てくれなくても。

私は歩美さんにも裕美さんにも勝てないから…

私が山上くんを好きになっちゃいけないんだ。

もう…同情しかないなら…

このまま私を自由にしてよ…」


俺は…同情で杉田と一緒に居るだけなのか?


歩美の代わりに杉田を…?

自分の気持ちが判らない。


「でも、杉田を1人には出来ないよ。

危ないし…仲間は多いほうがいいし…」


「それだけなの…?あはは…やっぱり私じゃ

駄目なんだね…。」


そのまま杉田は立ち上がり中央管理センターに

向かって歩き始める。


俺は…本音を言うとあの屋上の1件以来

杉田の事はなんとなく気になってはいた。


大人しいあまり目立たない

彼女の事を時々見ていた。


基本的に引っ込み思案な性格で自分から

何かするってことは杉田は苦手らしく、

よく友達に振り回されてた。


歩美…


俺は杉田を放っておけない。

お前を忘れたわけじゃない。


必ず、お前の無念は晴らす。


だけど、俺には新しく守りたいと思える相手が

出来てしまったんだ…。


そっちに行く事があったら

思いっきり罵ってもいいから…


俺は杉田の手を掴む。


「杉田。お前を行かせない。」


「同情はいいって…!?」


俺は無理やり杉田にキスをする。

杉田の体の力が抜けていくのが判る。


「気持ちの整理がついたわけじゃない…でも、

今一番守りたいと思う相手は杉田…お前なんだ。」


その場に力なく座り込む杉田。


「や…山上くん…。」


「杉田…さあ、戻ろう。裕美さんも心配してる。

あの人は俺たちをくっつけようと頑張って

空回りしてただけなんだ。」


「…うん。」


杉田はようやく戻ってくれる。


ここまで来てしまったので中央管理センターに

よって食料などを補充し他に

必要なものを色々購入する。


…ここで時間をかけなければ

運命は変わっていたかもしれないのだが

俺と杉田は知る由もなかった…。


帰り道に俺と杉田は衝撃的な場面に遭遇する。


「あそこに誰か倒れてる!」


杉田の指差す方向に複数の人間が倒れている。


まさか…裕美さんも!?

俺の想像は最悪の形で現実のものとなった…。


駆け寄ってみると男3人が頭を何か銃のような

物で打ち抜かれて死んでいた。


そしてボロボロに破られほとんど裸のような

裕美さんも彼らの側で倒れていた。

足と肩から血が流れている。


「裕美さん!!!」


「裕美さん!わ…私が…私が…飛び出したから!!」


裕美さんは反応しない。

息は…まだしている!


「杉田!手を貸してくれ!」


呆然としている杉田を揺すって気持ちを

切り替えさせて、2人で裕美さんを

連れてベースキャンプへ戻ろうとするが…


「まずい…このままだと。」


このタイミングで捕獲部隊が接近している。

アラームが反応したら逃げ切れるとは思えない…。


「…2人とも…私を置いて逃げなさい。

…足手まといは切り捨てる非常さも必要…

でしょ…?」


「裕美さん!意識が戻ったんですか!?」


「…麻美ちゃん…ごめんね。私、悠斗君と

麻美ちゃんをくっつけたくて…

わざと嫌がらせみたいな事…」


よく見ると背中に切り傷が…

どんどん顔色が悪くなっている


「裕美さん!私が…私が…」


苦しいはずなのに裕美さんは杉田の頬を

そっと触り微笑む。


「こら…泣くんじゃないよ…。死にはしないよ…

でも、もう一緒に居られないかな…」


裕美さんは俺に3枚のカードを手渡してくる。


「これは…渡したID!?」


「私が捕獲部隊の囮になるよ。捕まって

治療してもらえば死なないですむだろ…?

1000万位、本気で稼げばすぐ作れるさ…。

フフフ…裕美お姉さんを舐めないでよ…。」


「裕美さんを置いていくなんて出来る無いです!

山上くん!!頑張ろう!!」


「ああ!見捨てる事なんて出来無いですよ!!」


しかし、裕美さんは俺と杉田の手を振り払う。


「馬鹿言うんじゃないよ!ここで、もたついたら…

皆捕まっちゃうでしょうが!悠斗!あんた…

麻美ちゃんを守るんだろ!?だからこそ

追いかけたんでしょう!?」


そう…正直このままでは全員捕まってしまう。

捕獲部隊に捕まったらどうなるのか…

それは判らないけれど…


「悠斗!あんた男でしょ!!決断しなきゃ

いけないの!守るべきものは何!?」


「守るべきもの…。」


俺は…


杉田の手を取る。


「山上くん!?」


「…行こう。」


杉田は信じられないという顔でこっちを見る。


「ここで…3人が捕まる訳にはいかない…。

裕美さんの覚悟を無駄にしたくない!!」


その言葉に裕美さんは笑顔で立ち上がる。


「そうだよ。世の中ってのは踏み越えなきゃ

ならない苦渋の選択ってのがあるんだ。

社会に出るとそういう選択が何度もある…

そう他人を傷つけても進まなきゃ

いけないときもあるんだよ…。」


杉田は納得いかない顔で裕美さんに駆け寄ろうと

するが、俺が手を離さないので近づく事が出来ない。


「そんなの!私は嫌です!人を

傷つけるくらいなら…自分が傷つきます!!」


裕美さんはそんな杉田を見てやさしい顔で微笑む。


「ホント…麻美ちゃんは私の妹にそっくりだね…。

人よりも自分が傷つくのを選ぶとこまでそっくりだ…。」


「妹…?」


裕美さんの家族の話なんて

初耳だ…。


「私の妹は麻美ちゃんみたいな優しい子で…

馬鹿な男に騙されて…その男の莫大な借金を

肩代わりして…後は転落人生さ…。

私が早く気付いてあげれれば

…だから、このゲームに私は参加したんだ…。

妹の借金をチャラにする為に。


でも…もういいんだ…。」


裕美さんはそういう理由で

このゲームに参加したのか…


「それなら尚更捕まっちゃ駄目ですよ!!

私達と頑張って行きましょうよ!」


杉田は必死に説得をしようと頑張っているが…


「唯一の肉親だった…島に向かう1日前に…

首を吊って…自殺したのさ…

私が頑張る目的は無い…でも、

あんた達に会えてよかったよ…。」


「裕美さん!!!!」


「麻美ちゃん…その優しさは仇となるから…

悠斗にしっかり守ってもらいなよ。

悠斗。あんたは麻美ちゃんを守ってあげるんだよ。

この島でも、戻った後でも!あんたが

麻美ちゃんの支えとなって頑張るんだ。いいね?」


その時、俺と裕美さんのスマホの

アラームが反応する。


捕獲部隊が1km範囲内に

近づいたという事だ!!!


「別にこれが永遠の別れじゃないでしょ?

全てが終わったら今度は友人として会いたいね。


さ…もう、時間が無い。2人共、頑張るんだよ?」


「裕美さん!!嫌だよ…私…こんなの嫌だよ…」


杉田は泣きじゃくってこの場から

離れようとしない。俺は、杉田の手を

無理やり引っ張りこの場から離れる。


「杉田!!裕美さんに悪いと思うなら

最後まで生き残れ!それが俺達の裕美さんの

思いに応える事だから!!」


俺に引っ張られていた杉田だが

…やがて俺の言葉を理解したのか、

自分で走りはじめる。


「私…頑張る…。

裕美さんにまた会えるように

頑張って生き残るから…。」


俺達は全速力でベースキャンプ

に向かって走り出した…。


裕美は笑顔で2人を見送るとその場に

崩れ落ちるように倒れる。


「まったく…怪我人に無茶させないでよね…

捕まるのと出血多量で死ぬの

どっちが早いのかしら…」


もう立ち上がる力も無い裕美は

首にかけていたペンダントを手に取り

ペンダント部分を開く。


そこには裕美と麻美によく似た

女性が微笑んで並んでいる

写真が入っていた。


「ほんと、そっくりで…びっくりしちゃったね…。

裕子…お姉ちゃんは間違ってないよね…?」


そのまま空を見上げ、裕美はそっと目を瞑る。


スマホのアラームは鳴りっ放しでバタバタと

数名の足音が近づいてきていた…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ