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13日目~夜~


何だかひやりとしたものが俺の首筋を

すうっと通り抜ける。


そして甘い香りが俺の鼻をくすぐる。


誰か…いる?


気がついた時には裕美さんにキスをされていた。


「んあ!?」


「寝るの早すぎだぞ♪夜はこれからでしょ?」


あまりに突然の事態に状況が把握できない。


「悠斗君、若いんだから我慢しちゃ駄目だぞ?」


裕美さんが俺に馬乗りになっている。てか…

下着姿!?


「ちょ、ちょっと!裕美さん何の冗談ですか!」


俺だって健全な高校生、こんな状態いつまでも

耐えれるわけが無い!!


「ふふふ、我慢しないでいいのよ?ほら、

お姉さんに身を委ねちゃいなさい。」


そう言って裕美さんは耳元で何かを囁く。


「え…?」


それから10分が経ち…


裕美さんはコーヒーを飲んでいた。


「う~ん。絶対止めにくると思ったんだけどなあ…。」


結局、裕美さんはあの後何もせず横で

マッサージをしてくれた。


特に足のふくらはぎの部分をしっかりマッサージ

してくれたおかげで、大分楽になった。


「しかし…いきなりキスは止めて下さいよ。

俺だって男なんですから。」


「まあ、キス位あいさつよ。ねえ、悠斗君聞いてもいい?」


なんだろう?いつにもまして真剣な表情だな?


「なんですか?」


「まだ、桜井歩美を忘れられない?」


裕美さんからその名前が出るとは思わなかった

俺は思わず起き上がってしまう。


「どうして今歩美の事が出てくるんですか?」


「悠斗君、私がもし好きだから付き合ってって

話したらなんて答えてくれる?」


裕美さんはいきなりとんでもない事を言い出す。


「そ…それは…。」


「歩美に悪いから…無理?悠斗君、

君はまだ若いんだよ?そりゃすぐになんて

忘れられないでしょうけど、死んだ彼女に

操を立てつづける必要も無いんだよ?」


裕美さんが言うことはわかる。俺だってこのまま

1人って事は無いだろうけど…。


「でも、まだそんな気になりませんよ…。」


それを聞いてガックリと肩を落とす裕美さん。


「あんたねえ…ああもう!!何で

こううまくいかないの!」


何に対して怒ってるのかよくわからないが、

俺には俺の恋愛感がある。


「裕美さん、俺はね…」


その瞬間、寝室から杉田が出てきて、そのまま

ドアのロックを解除し出て行ってしまう。


「お、おい!杉田!?」


「麻美ちゃん!?」


あの馬鹿!!!今出て行って、敗者復活プレイヤーに

遭遇したら大変じゃないか!!


「悠斗君大変!!!麻美ちゃん、自分のIDしか

持っていってないわ!!」


寝室から3枚のIDを持ってくる裕美さん。


「なんだって!?」


俺は慌てて電話を掛ける。


「寝室から電話がなってる…ああ、ちきしょう!!」


ツールを開く。どうやら中央管理センターに

向かっているようだ。


まさか…自分から失格になるために行ったのか?


「杉田の馬鹿野郎!裕美さん!ここで待ってて!」


しかし、裕美さんも出る準備を整えている。


「わたしも行くよ!麻美ちゃんを

追い詰めたの私だから!!!!」


その真剣な目に何も言えず2人で杉田の後を追う。

走れば5分もしないうちに接触できるだろう。


「でも、どうしてこんな…」


「…悠斗くん、何で麻美ちゃんの事をいまだに

杉田って呼んでるの?」


裕美さんが疑問をぶつけてくる。


「なんでって…学校でもそう呼んでたし、杉田も

俺のこと山上くんって呼んでたし…。」


「鈍感男。」


「な!?」


「麻美ちゃんはね、あんたに麻美って

呼んでもらいたいの!ただのクラスメイトではなく

1人の女性として扱って貰いたいって思ってるの!」


それってつまり…


「杉田が俺の事を…?」


「普通気付くでしょ!!…まあこんな状況じゃ

そんな余裕もないでしょうけど…。

それにあんたは桜井歩美に心を完全に

埋められていたから麻美ちゃんに入る隙なんて

どこにも無かったからね。」


確かにこの状況で好きだ嫌いだとか言う余裕も無いし、

そもそも歩美の事で頭が一杯だったから、

杉田の気持ちにまるで気がつかなかった…。


「鈍感男に消極的女。見ててイライラするわけ。

で、まあ…私なりに動いた訳なのよ…。」


それが夜這いなのかよ!!


「やりすぎですって!」


「反省してる…。」


全くもう…。


「でも、あんたは麻美ちゃんをどう思っているわけ?」


俺が…杉田を?


杉田は人並み以上に可愛いと思う。

料理は下手だが気は利く方だと思う。

もちろん嫌いではないが…

なんと答えればいいか分からず、沈黙してしまう。


「あんたねえ…ただの仲間というなら

それはそれではっきりしてあげなさい!

彼女の為にもあんたの為にも

はっきり決めたほうがいい!」


裕美さんにピシャリと言われる。…いつの間にか

あんた呼ばわりされてるけど。


突然、裕美さんは立ち止まる。


「裕美さん?」


「…私がいると、2人共何もいえないでしょ。

先に戻ってるから、しっかり麻美ちゃんを

連れ戻すのよ?」


裕美さんは優しく微笑む。


「でも、1人は危険です!」


俺が立ち止まろうとすると


「私は戻るだけだから平気。早くしないと捕獲部隊が

活動開始しちゃうよ?」


確かにあと1時間で6時になる。

これ以上のリスクは背負えないのは事実だ。


「分かりました! 先戻って下さい!」


「気をつけなよ!」


「裕美さんも!!」


俺は中央管理センターに裕美さんは来た道を戻ろうと

したが、歩くのをやめる。


「…隠れてないで、出てきたら?そんなに

女に飢えてるの?」


森の先に男が立っている。目を見れば分かるが

どう見てもやばそうな目をしている。


「…なるほど。これはまともではないわね…。」


「ID…女…」


「悪いけど捕まるわけには行かないのよ。」


相手はまだ森の中。こっちは歩きやすい歩道

今駆け出せば追いつかれる心配は無いと裕美は考えるが…


ただ、ベースキャンプを知られないように

途中でうまく撹乱しないと。


そう頭の中で考えて裕美はゆっくりと後ずさり、

もと来た道を戻ろうとする

その瞬間!!


日が昇ろうとする空に銃声が響いたのであった…。

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