1日目~ゲームスタート~
どれくらい時間が経ったのであろうか…
俺はボーッとした意識のまま周りを見渡す。
真っ白な広い空間にベットと
パソコン機器があるだけ…
「ここはどこだ?」
少し頭痛はするが、ある程度意識が戻ったところで
周りの状況を理解する為に部屋の内部を見渡す。
上部にスピーカーらしき物を発見する。
ほぼ同時にスピーカーから何かの放送が始まる。
『ようこそ楽園島へ。』
機械音の混じったような
無機質な声がスピーカーから響いてくる。
「楽園島だって!?」
楽園島…聞いたことない名前だな。
『君達は選ばれし者。今から一ヶ月の間、
この楽園島で生き残り我々を楽しませてくれ。
ベットの横にあるケース。
その中身が君達の所有品だ。
詳しい内容は各自の部屋にあるパソコンで
確認してくれたまえ。それでは健闘を祈る。』
一方的に話を進めた挙句詳しい内容は一切話さず
そのまま放送は終了する。
「なんて滅茶苦茶な話だよ…。ベットの
横のケース…これか?」
俺はケースをつかみ開けてみる事にする。
そこには見たことの無いタイプのスマートフォンと
何も書いてないがICチップのような物
がついているカードが一枚入っていた。
スマホの電源をつけるがまったく
稼動する様子もない。俺のスマホや財布などは
回収されているようだ。
仕方ないのでパソコンを見ることにした。
パソコンの電源を立ち上げると…
【カードスロットにIDカードを挿入して
キーを押してください】
と画面に出る。
IDカード…。多分これのことだろう。
ケースからカードを取り出し、
スロットに差し込みキーを押す。
するとパソコンが起動して勝手に
ファイルを更新し始める。
しばらくすると画面が切り替わり
3つのアイコンが現れる。
一つは、楽園マニュアルというアイコン。
その下に個人データベースというアイコン。
そして一番下がスマートフォン更新
チェックというアイコン。
なにがなんだか判らないがとりあえず
マニュアルに目を通すことにした。
【楽園島は日本領域内に浮かぶ無人島です。
この島は外部から完全に隔離されております。
このゲームは20名のプレイヤーが存在します。
あなたの目的は生き残ること。
ここに来た理由はそれぞれ
あるとは思いますが1ヶ月後無事にこの島から
脱出できた時、あなたの持っているIDカードを
3億円で買い取らせていただきます。】
「さ、3億円!?」
一体こんな事をしてなんになるって言うんだ。
俺は疑問に思いつつもマニュアルを読み続ける。
【ご自分の意思で来られた方は
すでにご存知だと思われますが、
身柄を売られて来た方もいらっしゃると
思われますので、改めて説明をさせていただきます。
このゲームは現実世界の中で生き延びるものです。
生死にかかわることもありこの島で死んだ場合
事故死として処理されます。その場合、開始日から
死亡した日までの日数×500万が
契約書に書かれた受取人に渡されます。】
生死にかかわるだって?受取人って、誰が俺を!
悔しいが今はわからないし、
まずは全部読んでしまおう。
【島の設備について。この島には全部で
21のベースキャンプが存在します。
20個はそれぞれのベースキャンプ。
そして島の中央に中央管理センター
というベースキャンプが存在します。】
【基本的に管理センターでIDカードを更新すれば
1日1000ポイント加算されます。
このポイントで食料や道具を購入できます。
ただし3日以上放置、又は自分のベースキャンプで
個人データベースを更新しなかった場合、
集めたポイントは0となりますので
こまめな更新をおすすめいたします。】
「これなら1ヶ月位なら
生き延びれそうな気もするが…」
【7日目より当方の精鋭部隊を
島に派遣します。彼らは武装しており
(殺傷力はない装備)プレイヤーを捕獲する
ためだけに動きます。
捕獲されたプレイヤーは失格扱いとなり
違約金として1000万円を回収いたします。
(支払能力がない場合は特殊な工場の労働で
返済していただきます。)】
精鋭部隊って…一体何を考えてやがる!?
【14日目には部隊の増援。
21日目には特殊部隊の増援をそれぞれ行います。
部隊と争い死亡した場合事故死になり
補償額は2倍となります。】
何だよ、この死ぬって想定されたマニュアルは!
【部隊の特徴
彼らはベースキャンプの百メートル以内に
進入することは出来ません。
彼らは1km範囲でのカードから出ている
信号をキャッチすることが出来るレーダーを装備。
夜は決められたポイントで部隊は待機します。
21日目に増援される
特殊部隊は暗闇でも索敵専用装備を
持っており特殊部隊は昼夜関係なしに
行動するので注意してください。】
【また、装備としてスナイパーライフルを
1部隊につき1丁支給されます。
ただしベースキャンプ周囲100m内に対しての
麻酔弾の狙撃は行わない。
ベースキャンプ内に3時間待機した場合、
部隊のターゲットから外れる。
(ただし部隊長がプレイヤーを
レーダー感知出来る状況では、
そのプレイヤーは
ターゲットから外れない。
レーダーから外れる必要がある)】
部隊に見つかると面倒になりそうだな…。
【スマートフォンの使用法について。
このスマートフォンは島内でしか、使用できない。
最初にパソコンからアプリを
インストールしなければ一切使用できない。】
なるほど、まずはパソコンから
アプリを入れないと使い物にならないわけか。
【スマートフォンには固有の電話番号と
メールアドレスが登録されています。
これらは変更する事は一切出来ません。
またスマートフォンに電話番号登録は2つまで、
メールアドレスは3件まで登録を行えます。】
ずいぶん少ないな?何か意図があるのか?
【また、各スマートフォンに特別なアプリを
用意しております。基本的には他の
スマートフォンには使えませんが、データを
完全移行するならば他のアプリも
使用出来るようになります
(ただし元のアプリは使用不可となります。)】
アプリ?まずはパソコンから
データを落とさないと駄目か。
【また、このスマートフォンは
登録された相手しか通話出来ません。
メールも登録したアドレス以外の
メールは開くことが一切出来ません。
一度登録したデータをクリアする場合、
登録されている全ての番号、
アドレスデータは全消去になります。】
何だって!!とんでもない制約があるのかよ。
…まあ、登録する必要もないという考えで
作られてる可能性もあるよな。
【最後に、スマートフォンのバッテリーは
使用しない状態なら4日、
アプリ連続使用で約1日、
メール送受信を繰り返しで約2日、
連続通話は約12時間でバッテリーが
切れる仕様となっております。】
バッテリーを100として通常は1時間で約1消費
メール送受信は2消費アプリは1時間に4消費
連続通話は1時間で8消費というのが
目安となっております。
バッテリー残量は画面に表示されています
ので細かなチェックを行うようにしてください。
なお充電は自分のパソコン、
または特定の施設でしか行えません。
充電は約3時間で満タンとなります。
なお、スマートフォンはあなたが持つ
唯一の武器ともなりえるアイテムです。
IDカードとスマートフォンは
肌身離さぬ様ご忠告申し上げます。】
一通り読んで要約すると
まずここは日本領域の無人島だということ。
俺を含め20人のプレイヤーが存在する。
ゲームの目的は30日間生き残ること。
報酬は3億円
(死んだ場合の補償金もあると言うが
俺には関係ない話だ。)
7日目に俺達プレイヤーを捕まえる役目の部隊が
派遣される。以後14日、21日に増援される。
俺に与えられたのは制限つきの
スマホとIDカードのみ。
中央の管理センターでポイント支給と
生活用品の交換が行えるらしい(未確定)
「とりあえずは、スマホを使えるようにしないと。」
パソコンにスマホを接続し、
スマホ更新のファイルを起動させる。
しばらくすると画面にダウンロード完了
インストール中という表示があらわれ、
その後100%OKと画面に出る。
「これで使えるの…か?」
スマホの電源を立ち上げると…
画面に時間と、バッテリー残量、
ツールアプリ電話帳フォルダが表示される。
いたってシンプルな作りだな…。
早速アプリを立ち上げてみるか…。
ツールアプリをタップして起動すると…
この島の地図と思われる画面がでる。
拡大縮小できるのか。縮小していくと青い点を
中心にどんどん地図が小さくなっていく。
そして全体図まで縮小したとき、
バラバラな位置に緑の点が多数表れる。
全部で19個…これってまさかほかのプレイヤー??
俺はアプリの右上にあるヘルプマークをタップし、
ヘルプを開く。
【あなたの所持するツールは『千里眼』
このツールは他のプレイヤーの
行動をアプリで逐一チェックできます。
IDから発信される信号を受信しアプリに
リアルタイムで送信いたします。
青はあなたのID 緑は他のプレイヤーのID
そして赤は特殊部隊の部隊長の持つ
発信機をあらわしています。
ツールランクA 】
捕獲部隊の位置も確認できるのは大きいな。
【ツールランク
ツールランクはSからABCDEと
6段階のランクがあり、
上のランクほど優秀なツールということになります。
ツールの配布は先着順となっております。
なお全20種フルコンプされたスマートフォンを
もって30日生き延びた場合20億が別途、
賞金に追加されます。】
先着順…じゃあ、あの説明の時点から
すでにゲームは始まっていたのかよ!
しかし、フルコンプってどうやってやるんだ…?
まあ、今はそれよりもランクAを
手に入れられてラッキーだったかな?
改めて地図を見直す。
「うへ…どんだけ広いんだよ、この島。」
中央管理センターまででも20キロはあるぞ??
そして北東10キロにプレイヤーが一人。
おそらくそこがベースキャンプなのだろう。
西に25キロ離れた場所にさらに1人、
南西15キロに1人…
後は50キロ以上先にいるようだ…。
なるほど、ほかの
プレイヤーの正体が判らないなら
不用意に接触しない方が得策だしな。
このアプリかなりいい感じじゃないだろうか?
そういえば、一緒にさらわれた杉田もこのゲームに
参加させられているのだろうか?
あの状況から考えたらまず間違いなく
参加させられているだろう。
このアプリは対象を細かく認識は出来ないみたいで
近くのプレイヤーが何者かすら判らない。
安易に見にもいけないな。
杉田と協力体制が取れればかなり楽になるが…
「考えても仕方ないか。こっちには相手の
居場所が判るアプリがあるんだ。ある程度
冒険しなきゃ先はみえないな。」
独り言だとはわかっているが、
口に出さなきゃ行動に移るきっかけも出来ない。
まずは中央管理センターでデータ更新と、ついでに
一番近くのプレイヤーの様子を見に行くか…
俺は意を決して中央管理センターへ向かうことにした。