5日目~昼~PART2
「彼女、プレッシャーに弱いタイプみたいだから
言えなかったんだけど…銃の男と大江って殺し屋を
分断しないことには私達では手に負えないわ。
だから、彼女に大江をひきつける仕事をして
貰いたかったんだけど…」
「歩美を危険な目に合わせたくありません!
確かに歩美が奴の目の前に現れたら
狙ってくるでしょうけど、分断するか
どうかは判らないですよ!」
「愛、俺もその作戦は肯定できないな。
リスクの割にメリットが少ない。」
森山さんも反対のようだ。
「でも、あの2人が組んでいる限り、
私達ではどうにも出来ないわよ…?」
「でも、プレイヤーの位置の探索系のツールは
2種類しかないってあの男が言ってましたよ?」
俺の言葉に水野さんはため息を吐く。
「あのね。その男が本当の事言ってるとは
限らないでしょ?そもそも真実の書だった
かしら、Sランクは?それ自体に探査能力が
あっても、男が隠したままなのかもしれない。
私達では分からないことだから少しでも
危険性をなくす道を選ばなきゃ駄目よ。」
確かにあの2人をこのまま放置していたら、
必ず後で後悔する…。
歩美を危険に晒したくないのだが
水野さんの作戦も必要なのも分かる。
そして時間もないのだ…。
「この作戦を行うのは明日しかないですよね?」
俺がそう言うと、水野さんは無言で頷く。
「山上君、愛?何故急がないと駄目なんだい?」
森山さんが疑問に思っているようなので説明をする。
「この作戦は敵を分断、各個撃破でなければ
駄目というのは判りますか?」
「ああ、もちろんだよ。」
「今日は何日目ですか?」
「今日は5日目…そうか!
特殊部隊が7日目に!?」
ようやく森山さんも分かったらしい。
そう、7日目になったらプレイヤーを捕獲に来る
武装部隊がやってくるのだ!
彼等を避けながら、あの2人に戦いを挑むのは
障害を増やして戦う事になる。
捕まるならまだマシだが、武装部隊に気をとられて、
あの大江に殺されてしまったらどうしようもない…。
危険は承知だが、水野さんの作戦が現段階で
一番ベストなのかもしれない。
「…分かりました。でも条件があります。
まず彼女に作戦を全て話した上で
彼女が作戦に参加するかを自分の意思で
決めさせたいんですが…。」
「そうね。彼女の意思を聞かないと
いけないわね。」
水野さんと森山さんもうなずいている。
「それともう一つ。俺も彼女と一緒に
行動します。場合によっては彼女を
ベースキャンプに閉じ込めてでも守ります。
それでもいいですか?」
無言のままこちらを見る水野さん…。
俺も引かずにじっと睨む。
「…OK。分かったわ。本当は森山君に
護衛してもらいたかったけど…。貴方に任せるわ。」
それから歩美も呼んで作戦の概要を説明される。
まず、IDカードを持った男達が中央管理センター
に来るタイミングを計りそこに俺と歩美が現れ
大江を引き連れて出来る限り2人を
離したところで水野さんと森山さんで
IDを持つ男を抑え束縛してどこかの
ベースキャンプに閉じ込めてしまう。
もちろん上手くいく保証はまったく無い。
しかし、チャンスは明日しかないのも
事実でもある。
「でも…逃げ続ける事は大変だと思う。
歩美も危険な目にあうし、
歩美が嫌ならこの作戦は…」
俺の言葉をそっと人差し指で遮り、
歩美は笑顔をみせる。
「ありがとう。でも、私もその作戦は賛成。
危険は承知だけど、悠斗君が傍に
いてくれるなら、私も頑張るよ。」
「歩美…」
「じゃあ決まりだね。作戦は、二人で大江を
このベースキャンプに誘い込む事。
ベースキャンプにこの2つを置いておくから
上手く使って閉じ込めて。」
水野さんの言葉に俺と歩美は頷く。
「山上君は2人の動きをアプリで把握。
中央管理センターに着いた時点で森山君に
メール送信。返信を合図に作戦行動を開始。
山上君と桜井さんは大江の前に現れ、
上手く誘導して。私と森山君でもう一人を
捕獲するわ。」
作戦はあくまでも捕獲。
あちらは殺人を何とも思わない
そのハンデはかなり大きい。
刀はまだしも、銃を持っている
奴を相手にする森山さん達は
常に危険な状態で作戦を実行
しなければならない。
「今日はゆっくり休んで、
明日は体調万全でいくわよ?
ちゃんと寝なきゃ駄目よ?」
水野さんがニヤニヤ笑う。
「な、何言ってるんですか!」
歩美も顔を真っ赤にしている。
「あはは、じゃあまた明日森山君、行こうか。」
2人は笑顔でベースキャンプを出ていった。
残された俺達は真っ赤になりながら
そのまま座っていたのだった。