5日目~昼~PART1
翌日、俺と歩美は約束の時間より早く
ベースキャンプへとたどり着いていた。
開けることが出来るのは俺と歩美しか
いないので当然と言えば当然だが
歩美がせっかくなので全員で昼食を
食べようと提案したので、
色々作ったものを運び込んだり
していたので早めに出て支度を
しているところだったのだ。
俺は外で彼等が来るのを待っている。
森山さんは昨日会ったけれど刑事の
知り合いって人はどんな人かも聞いていない
12時5分前にメールが鳴る
『もうすぐ着くけれどそちらはどうだい?』
と書かれたメールが届く。
メールを返信しようとして打ち始めると…
「お、もう来てたのか。時間に
ルーズそうだったのにな。」
「それは失礼じゃない?
見た目で判断するのは
君の悪い癖よ。」
森山さんがやってくる。隣には
ジーンズにTシャツという
ラフな格好ながらどこか知的な雰囲気を
感じる女性が並んで立っていた。
「初めまして、山上悠斗君。
私は水野愛。警察のお姉さんよ
宜しく、少年。」
手を差し出されたので握手で返す。
じっとこちらを突き刺すような視線を感じる。
思わず目を背けてしまう。
「なるほど。確かに悪人ではないようね。
いや、すまなかったわね。悪気はないのよ。
職業柄癖で。相手を観察しちゃうのよ。」
「は、はあ…。」
「すまないな。愛は俗に言う
プロファイリングのエキスパートで
今までの君の挙動で君と言う人間を
分析していたみたいだ。悪気は
ないんだがこちらも仕事なんでな
気を悪くしないでくれ。」
森山さんがフォローを入れてくるが
あまりいい気持ちではない。
まずは中に入って色々話をしないと
いけないな…。
IDを使ってドアを開ける
「あ、丁度よかった。準備できたよ…
あ、この人たちが今回手を組む人達?」
歩美が色々昼食の準備をしていたらしく
いい匂いが部屋を包んでいる。
「あら?いい匂いね?あなたが作ったの?」
水野さんが目の前に置いて並べてあった
サンドウィッチをパクリと食べる。
「美味しいわ~私にもこういう才能
あれば良かったのにね。ねえ~森山君。」
「まあな…。」
森山さんが苦笑いをしている。
この水野さんって人と森山さん
は元々知り合いらしい。
まずはこの前の出来事を話して、
意見を求める。
「成る程ね。森山くんはどう思った?」
水野さんが森山さんに話を振る。
「まあ、聞いてるだけでは頭脳労働と
肉体労働に別れてIDの独占を
しようとしている…って感じか?」
それは最初俺も思った事だが、
あの2人、コンビと言うより…
「多分違うわね。IDを欲しがっているのは
銃を持っていた男。日本刀の男は…そうね、
自分の欲求を満たせればいいんじゃないかしら。」
「俺もそう思います。」
水野さんの意見に賛同する。
「どうしてそう思うの?」
「まず、もし2人がIDの独占を理由に
組んでるなら、最低でも自分のIDは
保管したいと思うんですよ。
でも、そうしないと言う事は、
少なくとも日本刀の男に
その気がないか、別に目的が
あって、行動しているか…」
俺の考えを聞いているうちに
水野さんの笑い方が妖艶な笑み
に変わっていく。
「山上君、あなたいいセンスしてるじゃない。
山上君の推測は私も同意見よ。ただ、
付け加えさせてもらうなら、日本刀の男は
殺し屋を生業にしてる可能性大ね、
普通人間の首を切り落とすなんて
簡単には出来ないはずだもの。
銃の男はこのゲームのことを完全に把握
しているのは間違いないと思うけれどね。」
さすがプロファイリングで相手の行動を推測か。
「殺し屋…。」
歩美の顔が見る見る青ざめていく…。
3日前の夜に俺と歩美で話していたことが
どうやら現実味を増して来たようだ…。
大江が歩美の殺人請負人で、銃の男がそれを
利用して手を汚さずにID獲得を狙っている。
俺を見逃したのも俺の想像通り、
歩美との共有しているのを知って
大江を最後まで手駒に利用するために
俺をわざと泳がせるつもりなんだろうな…。
歩美の顔を見ると想像が確信に変わった
らしく、暗い顔をしたまま何かを考えている。
「歩美…?」
「大丈夫…。私はいいから、
話し続けてください。」
「じゃあ桜井さんはちょっと休んでて?
山上君、森山君3人で話したいことあるの。
いいかしら?」
水野さんが意味有りげな目線を
俺と森山さんに向ける。
「じゃあ、私、食事の後始末してますね。」
歩美が台所に行ったところで
水野さんが声のトーンを落として話し始める。
しかしその内容は到底認められないものだった。