第89話 氷獄の花園 ヒュードレイア#4
第4章お~わり。次はしばらく勇者サイドに入ります。もちろん、意味あることです。なので、良かったら読み続けてくれると嬉しいです。
それから、今回戦う敵はイメージしづらかったら、パッ〇ンフ〇ワーのような感じと思えばいいです。
評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(≧▽≦)
クラウン達が探索を始めてからしばらくの時間が経過した。
そして、辿り着いた場所の壁には「神殿の守護者を倒せ」という言葉が書かれた文字を見つけた。
この内容を見た瞬間、クラウン達はため息を吐いた。それはもう神殿攻略をしなくてもいいということ。
これまでに攻略してきた神殿は途中で試練があった。その試練は大抵がめんどくさい内容であった。そして、酷く体力を消費されるものであった。
故に、これで神殿攻略が終わるというのは、クラウン達にとってとても喜ばしいことなのだ。なぜなら、もうすでにかなりの疲労感があるから。
「これで、勝てば終わるのね。あの溺死寸前までいった時の疲れを早く癒したいわ」
「また主様の筋肉を感じて寝たいです」
「ふふっ、そこは匂いじゃないところがベルちゃんらしいわね」
「いつもこんな感じなのか?」
「......まあ、そうだな」
「ウォン(当然だね)」
クラウンは思わず頭が痛くならないことに安堵した。最近のリリス達の言動は(まあ、変態なので仕方ないが)常軌を逸していることが多い。
そしてその度にクラウンは頭が痛くなったりしていたのだが、さすがに今はそのような調子ではないようだ。ベルが一発かましてきたが、それぐらいなら問題なく安全圏内だ。
クラウン達はその壁を通り過ぎて空間に入っていくとその空間はとてもキレイなものだった。
地面も天井も全てが氷に覆われていて、そしてその氷は一枚一枚が長方形で半円を描くように張り巡らされている。
また、その氷全てがクラウン達の姿を捉えていた。加えて、雪も降っている。一言で言うならば、鏡のスノードームというところか。
そして、そのんな幻想的な世界の中央に立と突如として、クラウン達が入ってきた入り口は閉じられる。
それから、クラウン達の正面には地面から双葉の植物が生えてきた。氷の植物ではなく、普通の植物だ。
すると、その植物はゆっくりと伸びていき、太い茎になっていき、その茎からは二本の枝が伸びていく。
「ロキ、切り飛ばせ」
「ウォン」
クラウンはロキに命令して<斬翔>を枝二つへと飛ばさせる。そして、その二つの斬撃は簡単に枝を切り落とした。
だが、切り落としたそばから枝を伸ばしていく。すると、クラウンはその植物に突貫していった。
それから、茎を切ろうと抜刀した瞬間、クラウンの足元から何かが飛び出してきた。それは太い根っこだった。
そして、その根っこは至るところから現れるとクラウン達を襲い始める。その襲撃に対して、クラウン達は各々で対処していく。
その間に、その植物は天井ギリギリまで茎をのばすと一気に花を咲かせた。すると、枝はさらに分岐させて枝を伸ばしていき、細かい葉が生えてくる。
「シャアアアアア!」
「おう、勇ましいことだな。それじゃあ、ここからが本番ということか?」
「まあ、そうだろうな」
「なら、一発目は私に貰うわよ。頭を下げなさい!」
リリスはその植物に向かって地面に体を叩きつけるような超重力を発生させた。すると、その植物は思惑通りに地面に叩きつけることが出来た。
だが、それだけ手ごたえがない。それに、何かを狙っているような。
「ウォン!」
「『下がれ』って?わかったわ」
リリスへと何かが向かっているのを最初に気付いたのは、ロキであった。ロキはリリスへと注意を促すとリリスはロキの言葉に従って、後ろに下がった。
すると、リリスがいた場所から根っこが飛び出してきた。それによって、重力を解除してしまった。
今度はエキドナとベルが植物に向かって動き出す。すると、その植物は細かく枝分かれさせた枝先を手のように使って、振るった。
だが、エキドナは竜化(闘)してその枝を取り押さえるとベルがその枝を切り落としていく。
また、クラウンは刀を戻してヨーヨーを取り出すとその一つを枝へと飛ばした。
そして、そのヨーヨーから仕込み刃を出すとそれはチェーンソーのように回転しながら枝を切っていく。それから、もう一つのヨーヨーは花へと殴りつける。
「二度目の見せ場だ」
「どうも、ご苦労さん」
「シャアアアアア!」
カムイは植物に突貫していくと太い茎を思いっきり切り落とす。しかし、その植物は切られた途端に一気に生え伸びる。
カムイはもう一度切るが、また生える。そして、もう一度切ると生えなくなった。だが、代わりに最初に切った茎の残骸から一気に根っこが生え、花が咲いた。
すると、その花は大量の雪ほど大きさの花粉を噴き出した。その花粉は雪と共に舞い降りて、壁や地面に付着すると一気に植物が生えていく。
それは戦っている植物の中型犬ぐらいの大きさであったが、とても長い蔦を生やしていた。そして、その植物らは蔦を一気に伸ばして、クラウン達に突撃させていく。
その攻撃をクラウン達は避けるとその蔦は鏡の氷に反射して様々に屈折していき、再びクラウン達を襲った。それをまた避けるが、追うように壁に反射して向かって来る。
「カムイ!全体を焼き払え!」
「あいよ――――――――――天元鬼人流 海炎」
クラウン達はカムイを地上に残して全員が空中に上がる。すると、カムイは刀を逆手に持ち変えた。そして、刀に炎を纏わせると地面へと突き刺す。
その瞬間、その刀を中心に炎の波が広がっていく。そして、その炎は地面を覆いつくすと次は壁を覆いつくしていく。
すると、その炎は小さな植物を全て焼き払っていく。だが、本体だけは氷の膜のようなものをいつの間にか作り出しており、攻撃が当たることはなかった。
だが、そこへロキが向かって行く。ロキは落下の勢いえを利用ながら、前回りで回転していくとそのまま氷の膜まで急接近した。
「ウオオオオ!」
「シャアアアアアアアア!!」
ロキはその回転を活かしながら思いっきり爪で切り裂いた。その瞬間をクラウン、リリス、ベルが突撃する。
クラウンは植物の花を、リリスとベルはそれぞれの枝を向かった勢いのまま一気に切り落とす。
そして、茎のみになった植物にエキドナが近づいていくとその茎を両手で挟むように掴んでいく。それから、思いっきり引っこ抜いて、上空へと投げ飛ばした。
「いくぜ、今度は復活できねぇほど焼き尽くしてやる―――――――――――破城閃!」
「ジャア"ア"ア"ア"ア"ア"!」
カムイは飛ばされた植物へと跳ぶと一気に刀を振るった。
すると、その植物は真っ二つに両断されて、その両断された部分から燃え盛んばかりの炎が植物を焼いき、包み込んでいく。
そこへ追撃とばかりにもう一太刀振るって完全に消滅させていく。
「ふぅー、終わったわね」
「面倒な相手だったです。ですが、思ったよりも余裕があったです」
「慣れが出たんじゃない? 砂漠の国の神殿よりは面倒な仕掛けはなかったし」
カムイによって、炎が消された地面へと着地すると戦闘が終わったことに、全員がどっと体に溜まっていた疲れを息とともに吐いた。
だが、今回の守護者討伐は前回以上に楽だった。まあ、前回の敵が固すぎたというのもあるだろうがそれでもだ。
そして、カムイによって植物が焼き尽くされるとある壁が突然開いて、そこには宝珠が置かれていた。その宝珠をクラウンは手にする。すると、それを見ていたカムイが思わず呟いた。
「へぇー、キレイなもんだ。そういえば、この宝珠は取った後、どうなるんだ?」
「さあね。ただ、神殿が実力者を選ぶものだとしても、ただの1回で終わらせることはないんじゃない? まあ、要するに時間をかけて宝珠がまた復活するんじゃないってこと」
「まあ、その可能性はあるかもしれないわね。私達ほどがやっとここまで辿り着けるんですもの。他の冒険者ではまず無理でしょうね」
「まあ、今回は正攻法でここまで来れたかは怪しいです」
「結果が良ければいいんだ。そんなことよりも、問題は帰る手段だ」
クラウンが言う問題は途中であった水中を通ってきたことだ。
この世界の神殿は一応ダンジョンという分類に入る。ただ、難易度がけた違いだったり、歴史的逸話に基づいて名前で分けられているだけ。
そして、ダンジョンは攻略されるために存在している。そうでなければ、そこはただの墓場だ。
故に、この神殿も攻略できるようになっているのだ。だが、今回クラウン達は正攻法で来たか(ほぼ来てないだろうと思われるが)わからない。
それに、クラウンが仲間を引っ張って水面に上がった時にざっと見まわしたが、どこからか抜けられるような場所は見当たらなかった。
まあ、おそらくは見落としか、何かクエストを成し遂げることで開くものだろうと思われる。
さすがにあの水中を通って来るなどクラウン達にしか、いやクラウン達にも出来ないかもしれない。
なぜなら、その時はたまたま巨大生物に食われて、途中まで運んでもらったからだ。そして、エキドナがいて初めて渡りきれた。つまり、その二つの幸運が無ければ、実質不可能と言っていいからだ。
「それにしてもどうやって......え?」
リリスは思わず変える手段がないことの愚痴をこぼしそうになった時、突然地面がパックリと二つに裂けて、巨大な穴が出現した。
そして同時に、天井が上から下へと一気に迫ってくる。そのあまりのことに全員が一瞬だけ放心し、すぐに逃げようと動き出すがどこにも出口がない。
そして、クラウン達は天井に押されるがままに穴の中へと落とされた。
だが、落とされても尚天井は丁度穴を満たすような大きさでクラウン達を押し出し続けていく。それから、クラウン達は氷の滑り台のような道を壁に押されながら、加速しながら突き進んでいく。
「光です!」
「出口かしら」
「なあ、このままってヤバくね?」
カムイがその言葉を言った時には、全員が外の日の光を浴びながら―――――――――外へと強制排出された。
壁に押された勢いのまま空中へと飛んでいく。そして、クラウン達は大きく弧を描きながら、クラウンとカムイが戦った森の位置まで落下していく。
だが、そこは持ち前の身体能力に魔法。全員が各々の能力を活かして、安全に着地していく。
するとその時、前方から声が聞こえた。
「どうして......ここにいるんだ?」
「え......嘘......」
「マジかよ......ここで会っちまうなんて......」
「落ち着いて、雪姫ちゃん」
「!」
クラウンはその聞き覚えのある声、そして名前に思わず目を見開いた。そして、ゆっくり顔を上げると正面にいる複数の見覚えのある人物達を見た。
そこには元仲間達が複雑な表情で立っていた。
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