第82話 やっぱり同種か
この作品では恒例の変タイムです
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「よし、そろそろ移動するぞ。日が落ちまでに進めるだけ進む」
「わかったわ......ん?」
クラウンがリリス達に声をかけながら立ち上がる。すると、同じく立ち上がったリリスはふと後ろを振り返ると地面に落ちているピンク色の何かに気付いた。
それはカムイの近くにあったため、カムイの物であろうと拾いに行こうとする。その時、その行動をクラウンに止められる。
「......どうしたの、クラウン?私の肩なんか掴んで」
「リリス、悪いことは言わない。お前は何も見るな、知るな、触るな。あれはお前の手に負える代物じゃない」
「なんかカッコいいこと言ってるけど、あれってただの布よね?それにどれだけ警戒してるの......ってまさか!?」
「そのまさかだ。お前らと同種だ」
「同種じゃないわよ!」
クラウンの言葉に思わず怒鳴り声をあげるリリスであったが、宿舎であったあの一件以来自分の行動を振り返り、もうクラウンに強く出れないことはわかっていた。
しかし、変態と言われるのだけは、やはり抵抗があるようで咄嗟に体が反応してしまうのだ。
しかし、同時に内心ではため息を吐いていた。また、集まるのかと。今度は何であろうかと。
もうこの面子の時点でお腹一杯だというのに、まだ増える要素があるのかと。ある程度の常識を持っていて、尚且つ強いからこそ余計な欠点が目立つのだが。
すると、リリスはより厄介なエキドナが、その地雷原へと向かって行く。そして、クラウンが止める間もなくエキドナがそれを拾うと思わず固まった。
加えて、それを見えてしまったリリスもまた固まった。ちなみに、ベルはクラウンに目を隠され見ることは叶わず。
「ね、ねえ、これは?」
「ん?ああ、すまん。落としてたか。これは俺が国を出る時に持ってきたものでな、大事にしてるんだ」
「その言葉だけで随分とツッコミ要素があると思うんだけど......まず確認するわね、これはまさか......」
「妹の下着だ!」
「ドヤ顔で言うことじゃねぇぞ」
「ドヤ顔でいうことじゃないわよ」
「ドヤ顔でいうことではないわね」
カムイはエキドナから下着を受け取るとハニカミながら、サムズアップで答えた。そのことに思わずクラウン、リリス、エキドナは突っ込まざるを得なかった。
さすがに見てしまって、こんなものを放置できるはずがない。ちなみに、ベルは言葉は聞こえているものの、どういう状況かはわからないので、あたふたしている。
「なんで、そんなものを持っている?それが妹の手掛かりとでも言うんじゃないだろうな?まあ、たとえなんと言おうと肯定する気はないがな」
「これは手掛かりなんかじゃないぞ?俺が妹成分を補給するためのものだ。やっぱ、定期的に補給してないとダメでさー。これって何て言うんだっけ......あ、誇り高きシスコンだったな」
「バカが、お前はただの変態だ。シスコンなんざ生ぬるい」
「何を言う。好きなやつならば、相手の身に着けた衣服ぐらい持ち歩いて、匂い嗅ぐだろ。逆にしない方が失礼だ。だが、お前さんは俺の親友の刀を大事にしてくれていた。だから、特別の俺の妹の下着を嗅ぐ権利をくれてやろう。もちろん、一回だけだぞ」
「お前、自分が今とんでもないパワーワードを言ってることに気付いてるか?それに、嗅ぐわけねぇだろ。たとえどんなものであっても普通は。そもそも人の衣服の臭いを嗅ぐとかどうなってんだ?ロキとは全然話が違うんだぞ?そこら辺をわかってるのか?」
クラウンはカムイの言動に対して、どんどんとディスの言葉をかけていく。その度にカムイは苦笑いを浮かべていく。
そんな様子を見て、クラウンは「これで少しは自分の異常性に気付いたか」と思った。だがそこで、ふいにカムイがクラウン以外の三人を見渡す。
クラウンは思わずその行動が気になって、同じく見渡して見てみるとプルプルと顔を真っ赤にしたリリスとエキドナがいた。
クラウンは思わず言葉を失った。
そして、思わず手元にいるベルの顔を見てみるとその顔も何かを堪えるように口を堅く結びながら、顔を真っ赤にして小刻みに震えている。
そんな様子を見てクラウンは思わず頭を抱えた。変態性が悪化していると。
まさか自分の知らぬところで衣服が嗅がれてるとは思わないだろう......それも全員に。一体いつからなのか、動機はなんなのかと問い詰めたいところだ。だが、聞いたら後悔しそうな気がしてならないので聞かないが。
そんなことを思っていると、リリスが羞恥で半泣きになりながら勝手に自白し始めた。
「その......最初はほんの出来心だったのよ。ベルが、たまたま脱ぎ捨ててあったコートの匂いを嗅いでいて、獣人族だからやはり気になるのかなと思ってたんだけど、ふと気になって嗅いでみたら、その......意外と嫌いじゃない匂いだったというか.......」
「......」
リリスはもう顔は見せられないとばかりに顔を覆うとクラウンから背を向けた。また、リリスの自白によって、最初に嗅ぎ始めたのがバレたベルはビクッと反応する。
すると、ベルがまたもや勝手に自白し始めた。
「主様が悪いです。あんな性癖に刺さるような匂いをしているせいです。獣人族はもとは神獣の血を引くものです。故に、嗅覚、つまりは匂いに敏感です。そして、獣人族は自分の好みの匂いに執着する傾向にあるです。つまり、言いたいことは主様の匂いのせいです」
「それはおかしいだろ......」
ベルの自白は最終的にクラウンが悪いという結論で終わった。そのことに思わずクラウンは言葉が漏れる。
そして、ちょっとした罰も兼ねて、ベルの頭を雑に撫でる。しかし、これは正当な反応だと思いたい。
勝手に衣服の臭いを嗅いでおいて、獣人の特性だかなんだか知らないが、そんなことで攻められる筋合いは全くない。あってたまるか。
「それじゃあ、私も正直に話さないとね」
「いや、お前はいい。想像がつくからな」
「私はある日にたまたまリリスちゃんのその光景を目にしてしまったの」
「話を続けるのか......」
「その瞬間、思ったのよ......その手があったかと!まあ、それからは想像の通りよ。でも、時折だから安心して。それにしても、あの匂いは嗅いでるだけで全身を刺激してくるわね。なんというか、裸で全身を包まれているみたいで......とても興奮したのを覚えてるわ。さすがに嗅ぎながらオイタはしなかったわよ」
「何にも安心できないんだが。むしろ、聞いたことで恐怖が増したんだが」
「大丈夫よ。やる時は許可をもらうつもりだから」
クラウンは頭を抱えた。痛い、痛いぞ。頭に鈍痛が響いてくる。頭がおかしいことこの上ないか?いや、それは偏見なのか?
だとしても、こいつらの行動は普通じゃない。もはやさすが変態といったところか。逆に感心するかもしれない。もちろん、微塵も感心したくないのだが。
「どうして俺の周りにはおかしなやつが集まってくるんだ......」
もう愚痴ぐらい言ってもいいだろう。これぐらいなら許される。それほどの変態がここに集まっているのだ。
リリスは最近スイッチのかかりがやたらと甘くなっていたり、ベルはより筋肉フェチに拍車が掛かっているような気がする。それに、たった今さっき匂いフェチであることも公言した。
エキドナは一児の母でありながら、もう言い表しようもないド腐れビッチであるし、カムイは妹の私物を(予想だがおそらく勝手に)持ち出して、妹成分の補給という呈で匂いを嗅ぐという変態性を持った重度のシスコンであるし。
「類は友を呼ぶ」という言葉があるが、実は自分も変態なのではないかと思い始めてくる始末。この中で唯一まともなのはロキぐらいだ。
そう考えると真の意味で心休まる場所はロキの場所なのだなと再認識。あとで少しモフらせてもらおう。
「お前らがどうなればそうなるのか、俺は実に知りたいところだ」
「知りたいも何もあんたのそばにいたからそうなったんだけど?だから、どっちかって言うとベルの言う通りあんたのせいよ。もうそれで決まり」
「お前はただ自分の恥ずかしさのための隠れ蓑にしたいだけだろ」
「お前さん、実は自分の性癖をちゃんと知ってないな?それはダメだぞ、知ってなきゃ。知らないところで拗らせると周りがフォローに大変だからな」
「お前に言われたくない。それに、俺にそんなものがあるわけないだろ......はあ、ロキ、こっちに来い」
クラウンはもう構うのにも疲れてきていた。そして、ロキを呼んで、そのモフモフの毛並みに顔をうずめた。もう耐えきれなかった。
普段では感じることのない......というか、予定なら感じるはずもなかった何とも言い難いストレスをそのモフモフで解消していく。
そんな光景を見てカムイは悟った。そして、リリス達は知っていた。自分達とは趣向性は違い、誰よりも軽いが、クラウンもロキのモフモフの毛並みが好きすぎるという立派な変態性が存在していることに。そのことに気付いていないのはクラウンだけ。
しかし、それならリリス達はなぜ言わないのか。言ってしまえば、リリス達と同じ変態と認定できるのに。
だが、そんなカムイの思いを裏腹にリリス達の気持ちは一つであった。それは「クラウンがあの毛並みに顔をうずめた光景が見られなくなってしまうから」ただそれだけ。
「なんだなんだ、お前さんもちゃんと―――――――ん!?」
「ここから先は言わせないわ。クラウンに気付いたことをバラさないこと、それが私達の仲間としてやっていくための条件よ......わかった?」
「ん、んん!」
カムイがリリス達の思考を知らず、クラウンに教えようとするとその口を鋭い眼光のリリスが押さえた。
そして、カムイの耳元でそっと囁く。その瞬間、カムイの体に電流が走ったかのような恐怖による痺れが生じた。
案外逆らってはいけないのは、クラウンではなくその仲間達ではないかと。だからこそ、同意するようにブンブンと頭を縦に振る。
「良かったわ、理解力のある人で。私は魔族でサキュバスなの。男であるあんたはどうとでもできる。でも、出来る限り仲間には手を出したくないの.......ね?」
「!」
そう語尾を強調して言った先はカムイではなく、背後にいるエキドナとベル。その二人は実に満足そうな笑みでリリスの言葉に頷いていた。そのことにカムイは恐怖を隠せない。
そして、リリスがカムイの口から手を離すとカムイはすぐさま膝をついた。
「お前さん達に忠誠を」
「よろしい」
クラウンの預かり知らぬとことで上下関係が成立していた。
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