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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第4章 道化師は知る

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第78話 寄り道

やっと出発ですな。


評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(≧▽≦)

「ロキ、待たせて悪かったな。これからはまた一緒だ。よろしくな」


「クゥ~ン」


 クラウンはロキと頭を小突き合わせながら、そっと顎下を撫でていく。それにロキは気持ちよさそうに目を細めながら甘えたような声を出す。


 そんなどこよりも1人と一匹だけの空間を作り出している光景を見て、リリス達はちょっとしたジェラシーを感じる。


「ほら、行くわよ」


「わかった。それじゃあ、任せた」


「ウォン!」


 リリスの一言でクラウンは馬車へ入り、ロキはその馬車を引いて歩き始めた。そして、向かう先はもちろん霊山。もっと言えば、そこにある神殿だ。


 だが、まず向かうのは霊山に一番近い村であるバリエルート。そこで、改めて準備をして霊山へと向かって行くつもりだ。


「そういえば、リリスの母親から聖王国と帝国の情報を聞くのを忘れていたな」


「安心して、それなら別で情報は受け取ってあるから」


「そうなのか。だがなぜ、その情報を俺達に直接渡さない。会った当日の時は、話の内容が重かっただけに別日にその情報を移すことはわからなくもない。


 だが、俺達はまだ数日間はあの街にいたんだ。だったら、そのどれかの日に伝えることは出来ただろ?その情報が欲しいのは俺ぐらいだからな」


「まあ、そうは言っても情報屋っていうのはいろいろとあるのよ。人によってはどうしても伝えなければならない情報のためにお尋ね者になる人も少なくないの。でも、リゼリアさんの場合は別の可能性の方が高いかもね」


 クラウンはエキドナの言葉の意味を理解していた。エキドナが示唆している「別の可能性」とは、おそらくは神に関すること。


 そして、リゼリアがクラウン達に伝えた情報は、「どうしても伝えなければならない情報」と言っても過言ではない。


 それに、リゼリアは元神。今の場合では咎人として、神からこの世界で逃げまわっているというところだろ。


 そして、リゼリア自身がもう後がないと判断しての俺達への助言。居場所を隠すのは当然の成り行きというわけだ。


 それがわかると、クラウンは改めて尋ねた。


「それで、何か動きはあったか?」


「現状では目立った動きはないわ。ただどこかへと動く様子ではあるみたい。でも、その場所はわからないわ。それに、バリエルートのような辺鄙なところでは情報屋もいないから新しい情報も得られない」


「それは仕方ないことだと分かっているからいい。情報屋は商人と同じだ。その違いは売るものが物体か非物体であるかどうかだけ。商人と同じなら、それは金儲けするためにやっていることと変わらない。そうでなければ、裏取引ぐらいでしか田舎村なんて行かないからな。一銭も儲けられない場所にいるほどバカじゃないしな」


「ふふっ、私達の職業のことを良く知っていてくれて嬉しいわ。そんな言葉を聞いてるとなんだか下腹部が熱くなってきちゃった♡ねえ、着くまで時間があるから試しに――――――――――」


「するか、発情竜が。暇だったら寝てろ」


「興奮して寝れないわよ」


 クラウンは思わずリリスへと無言の圧力的視線を送る。その視線の意味は「この駄竜をなんとかしろ」という意味。


 しかし、リリスは顔を逸らしてなんとしてでもその視線を受け取らなかった。そのことに、クラウンは頭を抱える。


 この状況で止められるのはリリスしかいない。ベルはエキドナに「俺のため」とでも言葉を言われれば、その内容がなんであれすぐに取り込まれてしまう。


 そして、俺に限っては真面目な話以外は、どんな言葉でもあっても全て快楽へと変換されてしまう。


 そして、放置してしまえば、それは放置プレイという形で快楽へと変えられる変態オールラウンダー。厄介極まりない生物である。


 そんな生物を唯一止められるのが、リリスの催眠魔法なのだが、リリス自身もかかわりたくなさそうにしているので、頼むのは無理だろう。


 なら、こちらがシカトするしかないのか。だが、目にも、耳にも悪いこいつの淫語に耐える手段が......一つだけあった。


「ベル、ここへ来い」


「あ、主様......本当です?」


「本当だ。来い」


「あ~、主様~。尊いです~」


 クラウンがベルを呼んだ場所はあぐらをかいた脚の上。そこに座れというのだ。その目的はベルの尻尾に触れてストレスを解消するため。本来なら、それはロキで補っているのだが、ロキは仕事中なのでベルで補おうというわけだ。


 ただ一つ、侮っていたことがあるとすれば、ベルが筋肉フェチであるということだけ。ベルは座る前から顔を上気させ、座るとさらに上気させた。もうその顔は蕩けているようだ。


「主様の大腿直筋、内転筋群の張りがやばいです~。それに背中に感じるは極上の大胸筋、至福です~」


「降ろすぞ」


「それだけはダメです」


 クラウンがベルの尻尾を触れながらそう言うとベルは即答で答えた。ただ、その光景を見ていたリリスは、クラウンの説得力のなさがあまりにも滑稽に映った。


 そのことにリリスは思わず笑みがこぼれる。しかし、同時にジェラシーが湧く。とはいえ、自分が行動すれば、もれなく今朝みたいなことになるので近づくことは出来ない。(欲求)不満は募るばかり。


 そんなこんなの数日を過ごしながら、クラウン達はバリエルートへと辿り着く。


 その村の外見はまさに自給自足といった感じの暮らしをしていて、一部の冒険者らしき体格の人達が住み着いているぐらいだ。


 ただ、クラウンが訪れた一番最初の村よりは人が多く、栄えた村であった。そして、ロキにはいつも通りに待機してもらいクラウン達はその村へと入っていく。


 すると、多くの人達がクラウン達に注目され始めた。また女連れであることを疎まれているのかと思ったが、そういう風な様子では無さそうだ。どちらかというと期待の目を向けているような。


 その時、一人の男が駆け寄ってくる。


「あの、もしかして勇者様ですか?」


「あ?今なんて―――――――」


「クラウン、静かに。ごめんなさいね、違うのよ。ただ依頼のために霊山近くの持ちに向かおうとしていたのだけど、その前に少し休憩したくて寄っただけなのよ」


「そうなんですか......」


 クラウンの代わりにリリスが答えた。すると、その男は途端にしょんぼりとした顔をする。その表情を怪訝に思ったリリスは思わずエキドナを見る。


 だが、エキドナはただ頭を横に振るのみ。その事を確認するとリリスはその男に聞いた。


「何かあったの?」


「それがですね。最近、不審な人影をこの村の周囲で見るんですよ。しかも、見かけた一人が言うには、その人は魔族らしくて、それで勇者様にどうにかしてもらえないかと依頼を送ったんです。それで、ここにはめったに人は訪れないですから、私達が勝手に期待してしまっただけなんです。本当にすいません」


「ふふっ、礼儀正しいいい子ね。大丈夫よ、事情がわかればいいだけだから」


「勇者様が来るなら安心です」


 クラウン達は事情がわかるとすぐに興味を失った。助ける気はゼロ。すぐに離れるし、勇者が来るとなればこの村は助かるだろうし、そもそも(クラウン個人が)勇者との鉢合わせは避けたい。


 なので、聞きはしたが、こちらの都合を優先させてもらうことにした。


 そして、そんなクラウン達の行動をその男は止めることはなっかった。まあ、表情を見れば勘違いしていることはすぐにわかる。すると、クラウンに先ほどのことに対してリリスが言う。


「どう?私、滑らかな嘘は?」


「存外助かった」


「でしょー」


「ナイス舌使いです」


「ベルちゃん、それは誉め言葉としては間違っているけど、私的には大成功よ。特に舌使いとかフェ―――――――」


「黙れ、淫竜が」


「黙りなさい、淫竜が」


「ふふっ、良いユニゾンね」


 「クソ、ノーダメージか」とクラウンとリリスは思わず悔しそうな顔をする。「どうすればこの駄竜にダメージを与えられるのか」二人は時折、そんなことを話していたりする。それからしばらく、クラウン達はその場で多少の食料を確保した。


 一応、移動最中でも調達は出来るが、それは大概肉ばかり。肉料理ばかりは料理を作るリリスのポリシーに反することらしい。


 基本はバランスの取れた健康第一の料理という。クラウンからしれ見れば、リリスはどんどんとサキュバスから離れてるが気がしなくもない。


 そもそもリリスはエッチなことが苦手だ。サキュバスのくせにそれらを避けている。それでいて、他のおは大概できる。サキュバス要素はスイッチが入った時ぐらいだ。どこがサキュバスなのかと疑う日々は多かった。


 まあ、もうそんなことには慣れてしまったのだが。慣れとは実に恐ろしいものだ。自分の仲間が全員変態とは誰が思おうか。


 だからこそ、もうこの環境に適応している自分が恐ろしくてたまらない。出来れば、まともな奴に出会えればと思う。


「それじゃあ、お互い買いたいものがあるかもしれないから2時間後に中央広場ね」


「わかった。エキドナ、頼んだ」


「もう人使い荒いんだから。舌使い荒いぐらいなら全然構わないんだけど」


「主様、ついて行きたいです」


「......まあ、いいだろう」


 そして、クラウン達はその場で解散した。


**********************************************

「ははは、凄いね。さすが我らが主だ」


 一人の小柄な少年ははるか遠くの木の上からその村の様子を眺めてそう言った。


「けど、さすがにタイミングを合わせるのは難しかったみたいだね。まあ、それは仕方ないか意志を従わせ続けたらそれはマリオネットと変わらない。それは我らが主が求める絶望の幕開けじゃないからな」


 その少年は腕を組みながら、一人で頷く。


「それにしても、魔王だなんて......我らが主も酷いことをするもんだ。ことごとく心を壊していこうとするんだもの。もう恨むべき相手はこの世界にいないというのに。それだけ怒りが湧いて出るということかな。だとすると、この世界はさながら憂さ晴らしのためにあるようなものか。まあ、もう何度も見てきたから、知ってることなんだけどね」


 少年はそう言いながらもニタニタとした笑みを見せる。


「さて、そろそろ行くとするか。怠惰のヘマを僕が払うことになるとは思わなかったけどね」


 そして、その少年はゆっくりと姿を変え、角を生やした魔族へと変身した。

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