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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第4章 道化師は知る

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第71話  再会

1章以来に久々に登場


評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(≧▽≦)

「まずここが『白き鳥が高らかに鳴く時』って場所」


「なるほど、鳩時計のことを指していたのか。そして確かに、この位置に時計があるとは思えないな」


 クラウンがエキドナに案内されてやってきた場所は西側にある教会の一つの時計。クラウン達は東側の入り口から入ってきたため、当然気づくはずもない。


 加えて、この教会にある時計が鳩時計であるなんてことはさらに気づかない。それはもちろん、エキドナがいなければの話だが。


 やはりあの時、エキドナを連れてくるという判断は正しかったようだ。まあ、変態性に目を瞑らないといけないのは何とも言えない話だが。


 クラウンはそう思いながらも、思わず睨んだように目を細めながらその境界を見据えている。思い出すは二つの記憶。聖王国で戦った人形と兵長を殺したあの男。


 するとその時、クラウンの肩に手が置かれた。それはもちろん、エキドナの手である。エキドナは何も言うことはなく、ただ慈愛の籠った笑みを浮かべながらクラウンを見るだけ。そのことに、クラウンは思わず驚きの表情を浮かべたが、すぐに怒りを霧散させ笑みで返した。


 すると、教会にあった時計がある時刻を指したところで、その時計から音を立てながら鳩が出てきたり、戻ったりと繰り返し始めた。


 そんな光景を見ているとエキドナがふと東側にあるとある家を指す。その方向を見るとその家から一人の女性が、太陽のマークのような看板を外へと出してくる。


「あれが『東に太陽が昇る』って意味。ふふっ、そんな不満そうな顔しないの。この世界を知らない旦那様には仕方ないことだもの」


「!」


 クラウンはそのエキドナの言葉に思わず警戒の姿勢を見せた。それは、まだリリスにしか知っていない秘密の情報。


 故に、仲間といえどそういう態度は取らざるを得ない。だが、エキドナはそんなクラウンの様子を気にすることなく、話を進める。というか、そうしないと危険な状況になってしまうからだ。


「私は情報屋よ?それに情報屋でなくても、相手を信用するためにはまず相手の簡単な素性、性格、思想とかは知っておくでしょ?だから、申し訳ないけど、旦那様のわかる範囲で調べさせてもらったのよ。そして、その......ごめんなさい。詳しい原因まではわからないけど、この秘密は確かに先に知るべき情報だとは思わなかったわ。だからせめて、知ったことは伝えたかったの」


「そうか......まあ、そうだな。その言い分は間違っていない......なら、それを知ってどう思う?」


 クラウンはエキドナの言葉を聞くとエキドナの予想とは違い威圧を向けることはなかった。そして、警戒を解くと不意にそんなことを聞いてきた。


 それに対し、エキドナはクラウンの情報を頭の中に鮮明に思い出すと言葉を紡ぐ。


「そうね......もし、私もあんな状況になれば、間違いなく同じような態度になるでしょうね。信じているが故にそうなってしまう。恐怖してしまう。裏切られたと感じてしまう」


「......」


「私が知っているのは、旦那様が聖王国の法のもとに裁かれたという情報とその際に旦那様の仲間が助けてくれなかったということだけ。だから、いつか私にも聞かせて。その辛さを一緒に背負って行く覚悟は決めてあるから」


「法のもとに裁かれたか......あんなものじゃないがな。それにしても、お前がそんなことを言うとはな。青天の霹靂というところだ」


「私だって真面目な時はあるわよ。そうじゃないと竜人として誇りが失われてしまうわ。それとは別なんだけど、私が旦那様の果たすべき目的を手伝う代わりに、私の果たすべき目的も手伝ってくれると嬉しいわ」


「情報屋は信用で動く。だがまた、利害の一致で動くってか?」


「そういうことよ」


 クラウンはエキドナに不敵にも似た笑みを浮かべるとそう言った。その笑みでエキドナはクラウンにまた信頼を深めると次の暗号が示す場所へと向かった。


「次は『大地より吹き出るしぶき』であったな」


「それは北側にある噴水を意味しているわね」


 エキドナはそう言いながら歩いていくと時計塔の近くにある噴水へとやって来た。


 その噴水には多くの人達が安らぎを求めてやって来ている様子で、噴水の|縁《ふち》で座りながら談笑しているカップルが多く見られる。もちろん、冒険者の姿もあるが、この街はあまり冒険者が住みやすい場所ではないようだ。


「時間ね」


 エキドナはポーチから懐中時計を取り出すと時間を見た。そして、静かにそう呟くと時計塔を見る。時刻は丁度12時となり、鐘の音が響き渡る。


 すると、噴水にいた人達は全員がその時計塔の方へ姿勢を向けると膝を地面につけ、両手を合わせ祈り始めた。


「これは?」


「旦那様は知らない方がいいと思うけど.......まあ、知りたいのなら教えてあげるわ。簡単に言えば、創造主への忠誠のようなものよ。聖王国の信仰は意外と広い範囲で布教されているのよ」


「そういうことか」


 クラウンはその言葉の意味を正確に理解した。創造主、つまりは神トウマに対する信仰。それはクラウンが一番に殺したい相手の名。


 エキドナが思わず口を重たくして言ったのはそういうことらしい。だが、クラウンはそれを深く捉えることは止めた。この憎悪を向ける相手が間違っているからだ。八つ当たりなど強者はしない。


 すると、エキドナは時計塔の、鐘の方へとおもむろに指を向けた。


 するとその時、空に昇っていた太陽の光が鐘へと反射し、その光がクラウン達の背後にある建物の扉へと当たった。その時、全ての暗号を理解したクラウンは確認のためにエキドナを見る。


「ここか?」


「そうらしいわね」


「なぜこんな回りくどいやり方をするんだ?場所に向かわせるだけなら、こんなことをしなくても済んだはずだ」


「そうね、私も毎回そう思うわ。でも、これは相手の信用を測ると同時に、簡単な力量を測っているのよ。この言葉の意味、地形の把握、建物の所在、他にもいろいろあるけど、情報を渡す相手が渡すに相応しいかを確認するためとか」


「そういうことか」


「それに、こんな情報だけの暗号がわからないようでは、情報屋には向いていないし、その人は渡した情報を上手く利益につなげられない。まあ、結局のところは信用に値しないってところかしら?......まあ、それは仕方ないと思うわ。情報を扱う情報屋がその情報に惑わされたら本末転倒だもの」


「なるほどな」


クラウンはエキドナからの言葉を聞くと理解するように頷いた。言葉の表現としては浅いかもしれないが、とにかく情報屋としていろいろあるのだろう。


 だが、それをクラウン達が考える必要は無い。専門外というのもあるし、それを生業として生きているわけではないからだ。


クラウンはその光が当たる扉を開けると中には1人の男が立っていた。


 その男は特に祈るといった行為もせずに、食器を拭いているとクラウン達をチラッと見て、無言で関係者以外立ち入り禁止の扉を開けると元の位置へと戻っていった。


要するに、この扉の先を進めということだろう。クラウンはエキドナに目線を向け頷き合うとその扉の先へ歩いていく。


 すると、その場所は食料庫に繋がっているらしく、その場所には地下への入口であろう蓋があった。


そして、クラウンがその蓋の取っ手を持って開けるとその蓋の下にある階段へと降りていった。その階段は薄暗く、明かりもない。


 しかし、クラウン達はその道を躊躇せずに突き進んでいく。すると、遠くの方で複数の気配を感じた。そして、その気配がする扉を開ける。


「やあ、待ちくたびれたよ。お得意さん?」


「回りくどい暗号のせいだ」


「嫌だなー、あれはほんのイタズラ心だよ。他に他意はない。でも、その様子だと楽しんでくれたようで何よりだ。しかし、出来れば1人で解いて欲しかったなー」


クラウンが扉を開くとリックが開口一番にそんなことを言った。「イタズラ心にしては随分と面倒なことをしてくれる」とクラウンは思わざるを得ない。


 だが、ここまで寄越したということは、渡したい情報があるということ。それが何なんのかは分からないが、直接会うぐらいだ。おそらく重要な内容なのだろう。


「それで、伝えたい内容があるんだろ?それはなんだ?」


「まあまあ、落ち着きなって。そんな焦っても仕方ないし、ここは1つ僕の暇つぶしに付き合ってよ」


「さすがにそんなことに付き合う義理はない。」


「ははは、そう言うと思ったよ。それにしても随分と丸くなったね......いや、一部は物凄く鋭利になったけど何かあった?」


「......」


クラウンは相変わらずの勘の良さに思わず眉間のシワを寄せる。この鋭さはどこから来るものなのか。おそらくはこの仕事で培われた勘だと思うが、あまり詮索されるのは厄介だ。


そして、クラウンがリックに本題を促そうとするとそれを遮るようにリックが話しかけてきた。


「僕の煽りにもキレなくなった。その心の変化はもしかしなくても、あの時にいた少女のことだよね?いやー、羨ましいな。僕はそういう人がいないんだ。ねえ、誰か居ないかな?」


「いい加減にしろ」


クラウンのその一言でこの場は一気にピリついた雰囲気へと変貌した。だが、リックはその中でもニコニコとした表情を浮かべながらクラウンを見る。そして、マウントを取るように声をかけた。


「『キレないな』って言った瞬間にキレないでよ。それに今は僕が上だ。それはちゃんと理解してるよね?してなかったら、悲しいなー」


「してる。その上で言ってるんだ」


「ははははは、やっぱり大物だね。その気概にはさすがに恐れ入るよ」


「何が言いたい?」


クラウンはイラ立ちながらそう言った。さすがにリックの行動がウザいところまで来た。だが、そこまで引っ張るような奴ではないことぐらいは分かる。


 故に、何を考えているのかが読めない。あまりにも時間を稼ぐような行動。時間が経てばわかるということなのか。


「僕は暇を潰したいのさ」


「はあ......何をすればいい?」


「お!理解が早くて助かるよ。やっぱり、見込んだかいがあったってもんだね」


そう言うとリックはにこやかな笑みを浮かべて答えた。


「ゲームをしよう」

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