第60話 怪獣大乱闘#1
怪獣(ゴーレム、アンキロサウルス、エキドナ(竜)、クラウン、ロキ)これメンツが個人的な怪獣です
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リリスとベルはロキに乗って、兵長はエキドナの背に乗るとアンキロサウルスに向かっていく。アンキロサウルスはそんなリリス達に向かって突進しようと勢いよく駆けていく。しかし、そのような大きな攻撃は当然リリス達に当たるはずもない。
そして、リリス達がアンキロサウルスの攻撃を避けて、その背までやってくるとリリス、ベル、兵長はロキとエキドナから離れ、エキドナを除くリリス達はその背に向かって飛び降りていく。
一方、エキドナは自身の姿を(地)→(闘)へモードチェンジさせた。
そして、アンキロサウルスの頭部に向かってその巨大な竜の腕を振り上げ、振り下ろしていく。その攻撃はアンキロサウルスも避けようとしなかったためか直撃した。
「痛った~~~~!」
エキドナの拳は確かにアンキロサウルスの頭部を捉えた。しかし、その頭部があまりにも固すぎた。それこそ、竜であるエキドナの方がダメージを受けるほどに。しかも、その頭をピクリとも動かせていない。
エキドナは痛みを堪えながらすぐさま思考を切り替えた。たとえ竜の力を持ってして傷つけられない装甲を持っていたとしても、全てを固くすることは出来ない。
必ず(ダメージが入る)薄い部分はあるはずだ。それこそ、目とか口内とか。
そう思うとエキドナはアンキロサウルスの目に向かって拳を振り下ろした。しかし、それはアンキロサウルスが固い装甲を持つ頭の部分で受け止め、その場で回転し始めた。
そして、振られてきたのはハンマーがついた尻尾。その尻尾はエキドナの横っ腹へと直撃した。
「がはっ!」
その攻撃でエキドナは激しく吹き飛ばされた。そして、砂漠へと叩きつけられるとそのまま引きづられて行く。
その光景を空中で見ていたリリスは思わず苦虫を嚙み潰したような顔をした。だが、今やるべきことのためにすぐに思考を切り替えた。
あの装甲がとんでもなく固いことはわかった。なら、その装甲の一点に目掛けて攻撃を放ったら、あの装甲を壊せないか?
「あんた達、真下に向かって一斉攻撃よ!」
「了解じゃ」
「わかったです」
「ウォン」
リリス達はその場で一斉に魔法を放った。リリスとベルは<風突>を、兵長は<光刃>を、ロキは<雷咆>を。
その魔法はやがて空中で一つとなり、真下に向かって真っ直ぐ降りていった。そして、その魔法は直撃して、激しい爆発を起こした。
しかし、その装甲は傷一つついていない。まるで4匹のアリが象に挑んでいるように。すると、アンキロサウルスは頭、手足、尻尾を亀のようにしまった。
そして、その場でグルグルと回転し始めた。その影響で砂塵が起こり、リリス達を巻き込んでいく。
リリス達は激しい乱気流に身動きが取れない。加えて、巻き起こった砂によって目もロクに開けることは出来ない。
すると、アンキロサウルスはその回転をおもむろに止めるとその装甲の背の中心が突然上下に開き、目のようなものが浮かび上がった。
巻き上がった砂を防いでいた腕の隙間から見ていたリリスは、その目に戦慄した。
「全員、なんとかしてこの場から離れ―――――――――」
リリスが言い切る前にその瞳から天に上るような極光が放たれた。その極光の太さは砂塵を飲み込むほどだ。
しかし、その攻撃はリリス達から僅かに逸れて天へと昇っていった。なぜなら、エキドナがアンキロサウルスにタックルして軌道を逸らしたから。
「この距離で外せると思わないで.......モードチェンジ(砲)」
エキドナはアンキロサウルスの頭の方に立つと足を短くしながらも、首を長くして、頭をアンキロサウルスに向けた。
そして、開けた口に光を収束させていき、その光を一度飲み込むとレールガンとはいかないが、腹部に溜めた空気で光の玉を押し出し、加速させながら放出した。
その光の玉は極光が進む速さよりも倍以上の速さで、アンキロサウルスの頭に直撃した。その瞬間、辺り一帯を激しい爆発と轟音が包み込んだ。
「ギャア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ン"!!」
その時、初めてアンキロサウルスが痛みを感じたような声を上げた。その装甲から頭を出すとその頭から血が流れている。
その影響で弱点とも言える背中に開いた目が閉じようとしている。それを逃すリリス達ではない。リリス、ベル、ロキ、兵長の中で空中を行き来できるベルとロキがその目に向かって垂直に走っていった。
そして、ベルとロキはその目に斬撃を放っていく。しかし、そこだけは攻撃されるわけにはいかないとアンキロサウルスは急いでその場を離れるとベルとロキに咆哮を放った。その咆哮は激しく体を揺さぶるように痛みが全身を駆け巡っていく。
加えて、その咆哮は遥か遠くまで伸びていき、砂漠の国へと到達しようとしていた。もしこの咆哮が直撃すれば、その国にいる人達は確実に死ぬであろう。
「そうはいかせんぞ。儂が守るからな」
兵長はその咆哮の延長線上まで降りてくるとその咆哮を断ち切ろうと光魔法で剣の刀身を伸ばしながら思いっきり切りにかかった。そして数秒後に、その壁に咆哮が直撃した。
「ぐぬぬぬぬぬ!」
兵長は押されながらも、砂漠へと足がつくと押し返すように足を踏ん張り、腕を伸ばす。その咆哮の威力は凄まじく容易に兵長を押していく。
しかし、ここで負けてしまっては、自分の後ろにいる人達の命が危ない。
「たとえ引退した身でもな、儂は変わらず勇者として生きてきたのじゃ!それは全て、大切な人達を護るため!老いぼれとて舐めるでないわ!」
守れなかった人がいる。自分のために死んでいった命がある。その記憶を今の兵長、もとい響は知っている。
だからこそ、守れるものは全て護る。大切な人達の笑顔を知っているから。それを破壊されるわけにはいかない。その心だけはいつになっても変わらない。
「ふぬぬぬぬ!はああああああ!」
兵長はさらに力を込めた。それはあのアンキロサウルスからしてみれば、微々たる力の違いかもしれない。
しかし、この時ばかりはその力の違いが結果として生まれた。それは砂漠の国の入り口で、兵長がその咆哮を届かせなかったこと。疲労は困ぱい。それでも、やり切った。
しかし、ベルとロキの状況は依然として悪いものだった。なぜなら、衝撃が全身を揺さぶったせいで、痺れ状態のようになり動くことが出来ない。そんなベルとロキを完全に潰す気で、アンキロサウルスはその大きな口を開けた。
「止まりなさい!その子達を傷つけることは私がさせないわ!」
そして、そのまま一気に走り出す。そうはさせないとエキドナはモードチェンジで(砲)→(闘)に戻すとアンキロサウルスの尻尾を掴み、足を踏ん張らせてその勢いを殺そうとする。しかし、エキドナの力を持ってしても止まる気配が感じられない。
「ベル!ロキちゃん!」
リリスは叫んだ。しかし、自分は落下していくだけで何もできない。たとえベルとロキを風魔法で場所を移動できても、今度は自分が狙われる。
あの魔物が魔法耐性があるという訳ではないだろうが、基本防御が高すぎるため。おそらくどの魔法を叩きこんでも無意味。
リリスはそのことに歯噛みする。それは自分の体に羽が生えていないこと。リリスはサキュバスだ。
そして、この世界のサキュバスは有翼種に分類される。しかし、リリスには生まれつきその羽がない。もし、その羽があれば、自分の身も安全にベルとロキを救出できただろう。
しかし、その羽がない以上、自分かベルとロキ、必ずどちらかは犠牲になる。
『勝手に死ぬな』
クラウンの言葉が脳内に響き渡る。死にたくない。せっかくクラウンと言う人物を知って、心を開き始めているというのに、ここで自分がいなくなってしまったら今度こそ心は二度と開かなくなってしまうだろう。それこそ、ロキがいても。
そんなことはさせない。それはロキとベルであっても同じこと。比べるわけではないが、ここでロキを失ったら、クラウンの悲しみは底知れないものになるだろう。
そして、その憎しみを止める者は誰もいなくなってしまう。なぜなら、ロキがその最後の砦だから。それからの結果は自分の結果と同じ。
リリスはとにかくベルとロキのもとへ急いだ。風魔法で落下速度を上げながら。自分かベルとロキか。そんな選択肢は無いし、あってはならない。
なら、新たな選択肢を作るのみ。自分も助かり、ベルとロキも助かる選択肢を。
リリスは手を伸ばす。落下速度が上がっているせいで、風魔法で空気抵抗を減らしても指が曲がりそうなほどの圧を感じる。それでも、リリスはその腕を伸ばした。その先にはベルとロキがいる。
「届いて.......いえ、届きなさい!」
リリスのスイッチが完全に入り、その瞳からは強い意志と感情が一つになったかのような光が宿った。その瞬間、リリスの魔力の色が変わった。
通常、魔力に色など存在しない。つまりは透明。しかし、それはあることを除いての場合である。そして、色がつく時、それはリリスの気持ちが一つに、そして極限にまで高まった時。
要するに、リリスは魔力を覚醒させたのだ。
クラウンは青に黒が混じったような色、ロキは毛並みに近い白銀の色、ベルは黄金のような黄色、兵長は優しい黄緑の色、エキドナは慈愛の赤と桃色が混ざった色。そして、リリスは魂を燃やすような情熱の赤色、いや紅の色。
そして、リリスはその魔法の行使が感覚的に分かった。その覚醒魔力の名は【自由に飛びたい】。
リリスはその声と共に魔法を発動させた。それによって、リリスの落下は止まりその場で浮遊して、ベルとロキの近くでは重力が横に働いた。
その影響でベルとロキは横へとずれ、アンキロサウルスの噛みつきから逃れた。そして同時に、アンキロサウルスの周囲一帯を超重力で囲った。それによって、アンキロサウルスは自身の体重の負荷により止まる。
「さあ、リリスちゃん。こちらへ」
エキドナはリリスのもとへやってくるとその背へとリリスを乗せた。そして、(闘)→(空)へとモードチェンジさせると一気に上空へと飛び上がっていく。
その二人を危険視したのかアンキロサウルスは背中の目を開けて、再び極光を放った。
しかし、速さに特化したエキドナにその極光は追いつかない。けれど、その極光はいつまでも止むことはない。
「先ほどのお見舞いです!」
「助太刀するぞ!」
「ウォン(倍返しだ)!」
アンキロサウルスがリリスとエキドナに注視している時、ベル、ロキ、兵長はそいつの顔面へと急接近した。そして、目に向かって思いっきり攻撃を放った。
「ギャア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ン"!」
アンキロサウルスは激しく声を響かせた。そして、痛みに極光は止まったが、その場で暴れ出した。そうなるとリリスとエキドナがしたかったことが難しくなる。その時であった。
横から倒れてきたゴーレムがアンキロサウルスにぶつかったのだ。それによって、アンキロサウルスの動きは止まった。
その隙をエキドナを見逃さない。一気に直滑降していくと(空)→(闘)へと姿を変え、手刀を思いっきり背中の目へと突き刺した。
「ギャア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ン"!!!」
「「はあああああああああ!」」
エキドナはその手刀をより深く押し込もうとし、リリスはその手を重力を操作して重くしていく。そのたびにアンキロサウルスの叫びは大きくなっていく。
「これで終わりよ。この状態の時はね、口からじゃなくても出せるのよ」
エキドナは突き刺した手刀を崩し、大きく手を広げるとその手から極光を放った。その極光は放たれた瞬間、どんどんアンキロサウルスの体内を焼いていく。
「ギャア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ン"!!!!」
アンキロサウルスはやがてまさしく断末魔のような声を上げた。そして、激しく身を揺らしたが、それは最初のうちだけ。次第にその動きを小さくしていき、そして沈黙した。
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