第59話 重力の遊戯場 マチスカチス#4
考えてみれば、この神殿攻略し始めてから走ってばっかですね。羨ましい体力です。根から体力がない作者ですし
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クラウンは扉を開けると大きな空間に出た。しかし、そこには特に目に付くものは見当たらない。ただ周りが、岩で覆われているのみ。そのことに不自然すら感じている。
しかし、クラウンだけはただ一点、正面のみを向いていた。なぜなら、そこから巨大な気配が感じるからだ。しかも、この空間の全面から。
「なによここ、何もないじゃない」
「ですが、嫌な予感がするです」
「そうね、この肌がピりつく感じは何と言えばいいのかしら?」
「ここで淫語を使ってたとえを言わないとは相当なものということかの」
全員も何かを感じ取ったのか各々に感想を口にする。そして、クラウンが見つめる先を同じく見た。するとその時、ガガガガガと全部の壁が激しく揺れ出した。それからやがて、正面の壁が崩れ始めて巨大すぎるゴーレムが現れた。
そして、そのゴーレムは大きすぎるが故に頭を天井に擦りつけながらもクラウン達に向かって歩いていく。そのせいで天井は崩れ始めた。にもかかわらず、ゴーレムはお構いなしと次第に歩行スピードを上げていく。
「クラウン、ここに留まるのはまずいわよ!」
「あれを倒すには時間がかかるです」
「その間に私達は生き埋めになってしまうわね」
「......走るぞ」
クラウンはせっかく苦労してここまでやってきたのにすぐさま引き返すことになって、思わず苦虫を嚙み潰したような顔をする。
しかし、死ぬとなれば、背に腹は変えられない。クラウンは重い足を無理やり引き吊りながら走り出した。
そして、扉の先を抜けるとなぜか知っている空間とは違っていた。その空間に来た時はそれぞれのペアが通ってきたような3つの道があった。
だが、今はない。あるのはトンネルのような大きさの一本道。まるでこういうことをさせるかのように。
しかし、迷っている暇は全くない。今も後ろからはあのゴーレムが迫って来ていて、それに伴って神殿の瓦礫が崩れ落ちている。
クラウン達はトンネルに突入すると一気に体グッと重くなった。動けないほどではないが、これが来た時みたいに長ければ、かなり体力が持ってかれる。
しかも、加えて魔力が使えなくなった。先ほどまでは使えていたのだが、このトンネルに入るとまた制限された。そのことにクラウンは再びイラ立ちの顔をする。
「!」
すると、トンネルの壁から巨大な刃が振り子のように降られてきた。そのことに全員、思わず目を見開く。体が動きにくい状態でこれはかなり危ない。
だが、そこは伊達に神殺しを誓った少年とその少年についていく仲間達ではない。それぐらいならまだ余裕で避けていく。
「エキドナ君、<竜化>は使えんのかの?」
「先ほどからやっているわ。でも、それでも出来ない。ということは、魔力による体内での魔法でも発動できないということね」
「つまりは本来の力で逃げ切れってことか......チッ、面倒だな!ロキ、頼めるか?」
「ウォン(任せろ)!」
ロキはこの中では体の耐久値が低いリリスとベルを裾を咥えて背中に乗せる。そして、負荷がより増えたにも関わらず依然として変わらぬ速さを保ち続けている。そのことにリリスとベルは思わず悲しそうな顔をする。すると、ロキが声をかける。
「ウォン、ウォン!」
「え、何て?」
「『気にするな』と言っているんだ。これはお前らのことを思っての行動だ。それに合理的な判断な結果でもある。だから、そんな顔をするな。ロキに失礼だ」
「そうね......頼むわよ、ロキちゃん!」
「お願いするです、ロキ様」
「ウォン」
ロキは元気よく返事する。すると、今度は連続で巨大な刃が振り下ろされた。しかも、全てがバラバラ。タイミングを見計らっていかなければならない。
しかし、それを考えるにはあまりにも時間がない。となれば、タイミングを見つけ次第、腹をくくって突入するしかない。
そして、勢いよく通り抜けていく。すると次は、四方八方から通り道を制限するように棒状のブロックが跳び出してきた。しかも、その跳び出すタイミングは明らかにぶつけようとするタイミングだ。避けるなら、出てきた個所から予測するしかない。
クラウン達はクラウンを筆頭にブロックを通り抜けていく。すると、ある時を境にそのブロックの形状が変化した。クラウン達の思考を読み取るように軌道を変えてくる。
そのことに思わず沸点を超えたクラウンはそのブロックを思いっきり殴った。その時、そのブロックは破壊できた。
その事実はクラウンに驚きを与えた。なぜなら、ロキと共に走り抜けた時の壁は破壊できなかったから。それ故にこのブロックも破壊できないと思い込んでいた。
そのことにクラウンはイラ立ちすら感じた。自分自身の浅はかさに。自分がもう少し早く気づけていれば、その少しでまだ余裕が持てていたはずだからだ。やはり弱い自分は嫌いだ。力ばかり追い求めていたが、思わぬところで自分の浅はかさが露見した。
するとその時、左肩に手が置かれる。その手はエキドナのものであった。そして、エキドナはクラウンに言葉をかける。
「それでいいのよ。それが普通。それを隠そうとすれば、辛いのは旦那様よ。時には心の鬱憤を吐き出すことも重要よ。まだ子供なんだから、私に言ってもいいのよ?」
「随分と母親のような言い方をするんだな」
「それはそうよ。母親ですもの」
「......お前には聞くことがありそうだな」
「大丈夫よ。そう思わなくても、こちらから話そうと思っていたから」
エキドナは言い終わるとクラウンの邪魔をしないように距離を置いた。その言葉にクラウンは思うところがありながらも、先ほどよりも冷静に判断することが出来た。
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「よう、調子はどうだい?」
「んまあー、ぼちぼちってところだな。上手く仕上げられるものもあれば、仕上げられないものもあるって感じだ」
「同感だな」
二人のドワーフはクラウン達が突入して以降、変わらぬ日々を過ごしていた。ただ、少し違うとすれば、炭鉱に誰も行っていないということぐらいか。
「それで炭鉱まで魔物が現れるようになったって本当か?」
「ああ、そうなんだよ。しかも、俺達を襲う訳でもなく一目散に神殿を出ていきやがる。これは何かあるんじゃねぇかってことで、今回の発掘作業はやめたんだ......ん?」
「どうした?」
「感じないか?この揺れ。ほら、段々大きくなってる」
「本当だ!」
二人のドワーフは慌てて外に飛び出すと周りの人々の反応を見た。すると、同じような反応を示している人が全員だ。
そしてやがて、二人は跳ね上げられるような揺れを感じた。もうこれは異常としか思えない。その時、神殿が突如として崩れ始めた。
そのことに外に出ている全員が呆然とした表情をした。そして、そのままの表情で神殿を見つめていると神殿の入り口からクラウン達が出てきた。
クラウン達が入ったことを知っているドワーフはこんなにも早く出て来ることにも驚いた。「神殿の攻略に失敗したのか?」と思ったが、この揺れの時点でそれは違うだろう。
だが、それ以上に驚く事案が次に起きた。それは神殿を破壊するように出てきた巨大なゴーレム。大きさ的に30メートルぐらいはあるだろう。その光景には思わず叫びを上げずにはいられない。
「「「「「えええええええ!!!」」」」」
そんなドワーフ達の様子を知る由もなくクラウン達はこの国を抜けて砂漠まで駆け抜けていった。そして、砂漠に来るとロキと<竜化>したエキドナに、クラウンが糸で作り出した綱の両端を持たせた。
クラウンはその綱を引っ張るように命じると自分はタイミングを計って、一気に加速してゴーレムの方向かっていく。
それから、ゴーレムの足が綱に引っかかったの確認する。すると、その足を一気に蹴り込んだ。その蹴りはゴーレムの体勢を崩して、砂漠へと叩きつけた。
「やったわね、これで畳みかければ終わりよ」
「......いや待て、気配を巨大な気配を2つ感じる」
「気配はあのゴーレムだけではないです?」
「違う。これは確かな気配だ......来るぞ」
クラウンがそう言った瞬間、砂漠の地が揺れ始めた。そして、丁度ゴーレムの下あたりから砂漠が山のように隆起していく。
「ガア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ン"ン"!!!」
「なによ......あれ?」
「まるで巨大なアンキロサウルスのような姿じゃの」
「あの装甲はダメージが与えにくそうです」
兵長とベルが言ったようにまさに恐竜と言ったいでたちで、頭や背中は厚い鎧のような皮膚に覆われていて、尻尾の先にはハンマーのような球体がついている。その姿を見たエキドナは思わず呟く。
「まるでこの国の昔話に出てきそうな魔物ね」
「「昔話......」」
クラウンと兵長はエキドナの言葉を聞いて思わずその単語を呟き、頭の中で反芻させた。それはこの国に来る途中で一人のドワーフが話したことだ。あれは確か......
『この砂漠はな、大昔は緑溢れる......とまではいかないが、多くの場所にオアシスが残っていたらしいんだ。だが、ある日突然この砂漠に変わったらしい。まあ、この話は本に記されていた伝承を思い出していったに過ぎないがな』
クラウンは思わず眉をぴくつかせた。それはものの見事にフラグを回収したからだ。その話を聞いていなかったら、現れなかったかと言われるとそれはどうかはわからない。それでも、面倒ごとが増えたことには変わりないのだ。
しかも、その魔物とゴーレムが潰しあってくれれば、楽でいいのだが、なぜか二体ともこちらを標的として向かってきている。その事実にクラウン以外も「面倒だ」という顔が隠せないでいる。
「俺がゴーレムを相手する。お前らはあのデカブツを殺れ」
「あんた、一人でゴーレムを相手にする気?それはさすがに無茶よ」
「あんなのはただデカいだけだ。あれぐらい一人で殺れなければ、この先は死が待っているだろう」
「はあ......あんたを言いくるめようとしても無駄ね。それは前からわかっていたことよね」
「主様なら大丈夫です」
「それに心配なら、私達がサッサと片付ければいい話だしね」
「なら、ちょいと張り切ってみるかの」
「ウォン(怪我すんなよ)」
クラウンは仲間達の言葉を聞くとほんの僅か口角を上げた。そして、両手にヨーヨーを持ち、構える。二体の魔物は依然として砂漠で地響き鳴らし、砂塵を巻き上げながら向かって来る。
「お前ら......殺せ」
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