第51話 この世界は別の意味でも狂ってる
三人目のヒロインのちゃんとした登場シーンは次回になります。最後の方にチラッと出てきます。ですがまあ、すぐにどんなキャラかはわかりますね。この作品のヒロインの共通点を考えてみれば。
個人的にはこのキャラは好きです......あくまでキャラですよ?(。-`ω-)
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「暑いです......」
「そうね、ベルの毛並みじゃ仕方ないわね。なら、もう少し温度下げてあげるわ」
セレネは暑さでだらけてしまっているベルの近くに指輪からタライを取り出す。そして、そのタライに氷を置くと風を当てながら冷気を循環させていく。その冷気をベルが感じると気持ちよさそうに目を細める。
現在、クラウン達がいるのは砂漠のど真ん中。その中の環境に完全適用しているロキが颯爽と馬車を引いて駆け抜けていく。
だが、それでも暑いことには変わりはない。たとえ日差しが当たらなくても。その中で一番の被害者がベルである。
ベルはフワフワな尻尾が特徴的な狐の獣人であるため、この暑さには弱い。クラウンの手作り巫女服のおかげでかなり暑さは抑えられているはずなのだが、自身の上がった体温の暑さはその服でもどうにもならない。そのため、リリスの優しさは身に染みる。
すると、ロキと同じく環境に適応していて目を瞑っていたクラウンは、その目をパッと開けると口を開く。
「前方から小さな気配を感じる。この気配はおそらく人のものだと思われる。だが、それがなんであるかの確認はしておいた方が良い。勝手についてきたジジイ、お前が見に行け」
「老いぼれに優しくない言葉じゃの。じゃが、正論であるが故に返す言葉もないな。ならちと、行って来るかの」
兵長はその気配の近くで止まった馬車から降りるとその人物に会いに行った。そして、しばらく話し声が聞こえた後に兵長はその人物を馬車へと連れてきた。そのことにクラウンは思わず兵長を睨む。
「まあまあ、そんな目をしなさるな。この者は目的地の出身の者でそこまで最短の道を案内してくださるらしいのじゃ」
「すまないな、兄ちゃん達。帰る際に魔物に襲われてラクダをどっかへやっちまってな。それで途方に暮れていたんだ。そんな時に来たのが兄ちゃん達だ。このお礼は必ずする。道案内はその前金ってことだ」
「いいじゃない、クラウン。最短で行けるならそれに越したことはないでしょ?」
「はあ......いいだろう」
「感謝するぜ、兄ちゃん」
それから、リリスがその男と話していくと様々なことがわかった。まず、拾ってきたこの男はドワーフであった。
ドワーフとはこの世界では主に作ることを生業としている種族だ。それは武器に服、装飾品に至るまでありとあらゆるものを。そして、今向かっている先はそのドワーフが住む国【バレッジデザート】という場所らしい。
また、そこにはちゃんと神殿というものが存在しているらしく、そこの低階層まではドワーフ達の採掘場となっている。
ただ、それよりも下の階層は過去にいろいろとあったらしく降りることはないらしい。それとは話が変わるが、ドワーフはやはり酒豪らしい。酒瓶をラッパ飲みではなく酒樽をラッパ飲みだという。
加えて今は、そんな酒豪のドワーフ達をぶっ倒す酒豪が目的地の国にいるとかいないとか。しかも、風の噂によると女性らしいのだ。
「世の中にはなんとも凄い人がいるんだなー」というのが、同じ女性であるリリスの感想であった。
すると、そのドワーフは相変わらず凄い速さで駆け抜けていく馬車に驚きながら、その変わることのない砂漠の景色を見て言った。
「この砂漠はな、大昔は緑溢れる......とまではいかないが、多くの場所にオアシスが残っていたらしいんだ。
だが、ある日突然この砂漠に変わったらしい。まあ、この話は本に記されていた伝承を思い出していったに過ぎないがな」
「なら、なんでそんなことを話すです?」
「なんというか、それがただの伝承だとは俺は思わなくてな。ただ、少なくとも俺が生きている間には何もなかったから、おそらくこれからも何もないとは思うんだけど。まあ、なんにせよただの他愛もない話だ。あまり気にすんな」
そのドワーフは冗談っぽく笑った。だが、クラウンと兵長にはその言葉がなんとも冗談ぽく聞こえなかった。
まずこの話を聞いて率直思ったのが「これってフラグじゃね?」ということだ。これが本当にフラグかどうかはわからないが、少なくとも面倒ごとになりそうな感じがしてならない。
そのことにクラウンはため息を吐きながら、それから三日間馬車に揺られていった。そして、ついに目的地が見えてきた。
すると、その国を見ながらベルが一体どこに持っていたのかというスケッチブックを取り出すと目に映る国の姿をスケッチしていく。
「ベル、絵の趣味があったのね」
「はいです。描いていると時間を忘れられて良かったです。ですが、今は時折しかやってないです」
「ふふっ、それは良かったわ。ねぇ、少し見せてもらえない?」
そうしてリリスはベルからスケッチブックを受け取るとそのスケッチブックをめくっていく。いろんな花や鳥、はたまた魔物まで特に決まったジャンルはなく気ままに描いているという感じだ。
すると、あるページでリリスとクラウンの二人の絵があった。それは後ろ姿だけであったが、リリスにはなんとも喉から手が出るほど欲しく見えた。
「ベル、これだけもらっていいかしら?」
「どうぞです。気に入っていただけたなら何よりです」
リリスはベルからの言質を取るとクラウンにバレないようにササッと切り取り、指輪の中にしまう。
そして、またページをめくっていくとそこには兵長の姿であったり、ロキとリリスが戯れている姿であったり、ロキを枕にしながら寝ている姿だったりと意外と日常風景を切り取った人物画が多い。
「この絵、よくバレなかったわね」
「<隠形>を使って探知に引っかからないギリギリを狙って描いたです。特に後ろの方に描いたやつは自信作です」
「どれど......れ......!」
リリスは思わず妙な恥ずかしさを感じながらも、ため息を吐いていしまった。それはしばらくの空白のページがあってスケッチブックの最終ページに近い当たり。そこには様々な角度から描写したクラウンのお尻が描かれてあった。
もちろん、それだけではない。そのほかにもまるで写真集のごとく様々なクラウンの姿が描かれてあった。そして、その描かれたクラウンの姿にはもれなく筋肉についての自身の考察がメモされていた。
「......なるほど」
リリスはそれを見ると流れるようにスケッチブックを閉じた。これ以上見るのは何か違う気がする。だから、そんな目でこっちを見ないで。「どうです?」じゃないわよ。これを見て喜ぶのはベルだけよ。そして、正気に戻りなさい。
リリスとベルがそんなことをやっていると入門所に辿り着いた。そして、そのドワーフが話をつけてくれたおかげでスムーズに入ることが出来た。それから、馬車から降りてみると獣王国とはまた違った光景に思わず辺りを見回す。
そこにいるのは小学生のような身長でありながら、ボディービルダーのような体格をしているドワーフが右往左往している。しかも、そのドワーフ全員が手になにかの道具らしきを持っている。
「ああやって道具を持ってないと落ち着かないんだ。利き手がなくなったようで不便なんだ」
「それをたとえで使っているならとんでもなく酷わよ」
「それにしても男女の区別が恐ろしいほどにわかりやすいの」
兵長が言ったのは、そのドワーフの特徴ともいえる髭。それは拾ってきたドワーフが腰辺りまでの髭を伸ばしていたことが異常かと思えば、その他のドワーフ(男性)も総じて長い。髭を生やしていないのは、おそらく女性の方だろう。
もちろん、人族や獣人族もいるのだが、ドワーフのインパクトが大きすぎて霞んで見える。すると、拾ってきたドワーフがクラウン達の方を見て言った。
「そう言えば、兄ちゃん達、ただもんじゃないだろ?俺の職人の勘がそう言っている。そんでもって朗報だ。ここはドワーフの国ではあるが、言い方を変えれば世界中の職人が集まる国でもある。お前さん達の武器も強化できると思うぞ?」
「......そうか」
クラウンはただ静かにそう答えた。武器を預けるのは癪だが、仮にも職人を名乗っているなら職人のポリシーに反することはしないだろう。そう考えるとクラウンはこの国を探索し始めた。
先のドワーフが言った通り、通りを歩くたびに様々な多種多様な店を見つける。広幅い範囲で武器を扱っている店なのまずなく、剣なら剣、ハンマーならハンマー、盾なら盾、防具なら防具とそれぞれ専門的にそれのみで扱っている。
そして、クラウン、ベルと兵長、ロキとリリスと別れていく。
「ここか」
クラウンが見つけたのは剣を扱っている店ではなく、むしろもっと根本的なもので材料を売っているところだ。
そして、そこに入っていくとこの世界で手に入る一番固い鉱石を購入。それを飛び道具屋へと持っていく。
「おう、いらっしゃい」
「こんなのって作ったことあるか?」
「ん?これは......ないな。だが、作れんこともないぞ?」
「なら、話が早い。それをこの鉱石と糸を使って作ってくれ。値段はいくらでも構わん」
クラウンが掲示したのは一枚の紙。そこには簡単な図が乗っていた。そして、その道具を使った時の動きの図も加えられていた。
ドワーフの男はクラウンの太っ腹な言い方に気分を良くすると今作業中だったやつの手を止め、早速作業に取り掛かった。どうやらそれほど気合を入れてやってくれるらしい。
それを確認すると店を出て、次の目的に移った。それはこの国にいる情報屋だ。一番取引がしやすいのはリックの部下とだが、その部下を見つけるための合図か目印を聞き忘れるという痛恨のミスをしていた。
それはとてつもなく痛かったが、リックは「部下は各地にいる」的なことを言っていた。なら、その情報が入り浸りそうな場所を探すのが妥当か。
それを考えてまず一番最初に思いつくのは酒場。そこは日々いろんな種族が入り混じり、いろんな会話をする。その会話内容は時には大金もの価値がある情報が流れることだってある。
クラウンはその思考に至るとこの国にある一番大きな酒場に向かった。
「いらっしゃい。新規のお客さんのようだね。なにを飲んでみるかい?」
その酒場に入ると一直線でマスターもとへと歩いた。その際、多くの酒豪と言われるドワーフが床で倒れていて、また多くのドワーフが一部に集まって一人のセミロングで水色の髪に、黄色がかった翡翠色の瞳の女性と飲み比べをしていた。どうやら噂は本物だったらしい。
だが、そんなことは関係ない。たとえその女性が露出度がかなり高めなベリーダンスの衣装を着ていたとしても。そして、クラウンが席に座るとマスターがそのようなことを言ってきた。
「俺は今気分が良い。この場にいる全員に高い酒を奢ってやる。だから、その収益の見返りをお前から貰う」
「なるほど、そういうお客さんかい。まあ、いいだろう。今までも情報を求めに来たお客さんはいたが、総じて店の酒の扱い方がなってなかったからな。そういうお客さんは今は生きているのかどうか。そういう意味では私も気分が良い。それで何が聞きたい」
「聞きたいのは一つだけだ。この国にいる一番の情報を持っている奴を紹介してくれ」
そう言うとマスターは拭いていたコップの手を止め、ある方向を指さした。その方向を追って、クラウンが振り返った先には......
「ふふふっ、また一人、食べちゃった♡それで、次はどなたが相手してくれるの?私の体の火照りを早く最高潮まで高めたくてうずうずしているの。......あら?熱い視線を向けてどうしたの?もしかして、あなたが私を気持ちよく濡らしてくれるのかしら?」
「くそ......なぜ俺の近くは変態ばかりなんだ......」
クラウンは思わず一番疲れたであろうため息を吐いた。
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