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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第3章 道化師は嘆く

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第50話 束の間の休息

第3章に入りました。まあ、最初は軽いジャブです。ちなみに、先に予告しておくと次回は三人目のヒロインが登場します。


評価、ブックマークありがとうございます。励みになります。(>_<)

「今日はいい天気ね。風も心地いいし、空気も美味しい」


「......」


「こんな日はのんびりするに限るわね。ねえ、そう思わない?」


「......なにか用なのか?」


クラウンはリリスの言葉に鬱陶しそうに返事した。せっかくこっちがロキ枕で夢見心地だったというのに。しかし、リリスはそんなクラウンの態度にもいら立ち一つ見せずに笑って言う。


「いいじゃない。私はあんたと話したいのよ、どんな他愛もない話題でもね。それが楽しいんだから、仕方ないじゃない」


「こっちはいい迷惑だ。おかけで無駄に会話量も増えた気がしてならない」


「それはいい事ね。やっぱり、『信用』って会話からだと思わない?」


「それじゃあ、主様の腹筋触るです。ちなみに、ボディタッチも必要だと思うです」


「それは無い」


「フォフォフォ、皆、楽しそうでなによりじゃわい」


そんなクラウン達の会話を端で聞きながら、兵長は快活に笑う。


現在、クラウン達は次なる目的地【重量の遊技場 マチスカチス】の神殿がある国へと向かっていた。


 そこから、獣王国はそこそこに距離はがあるため、時折馬車を引くロキを休ませるために少し開けた場所で休憩してるのだ。


そして、今は大きな木の陰でクラウンを中心に寄って休んでいる。クラウンは寝そべっているロキを枕にしながら、リリスはクラウンの頭近くに寄って座り、ベルはクラウンの腹部を狙って座り、兵長はそんな三人が見える位置から。


そして、クラウンはリリスの言葉には同意していた。それは最初の発言ではあるが、こんな心地いいのは久々かもしれない。


 まあ、おそらくはこれまでもこんな日はあったのだろうが、今までは感じる余裕がなかった。ということは、今は感じる余裕が出来たということなのか。


「お前も少しは黙って寝てろ」


「あら、寝れるようになったのね。もしかしなくても私のおかげかしら?それはとても嬉しいわね」


「......まあ、否定はしない。その可能性の方が高いからな」


「!」


リリスは冗談っぽく言ったのだが、クラウンの思わぬ返しに目を見開いた。気のせいかここ最近のクラウンは実に素直になってきたような感じがする。


そう思ってリリスは、サキュバスの能力でクラウンの好感度を見てみた。すると......


「嘘......!」


クラウンのマイナス好感度を示す黒い靄が薄れ、少しピンク色の靄が現れ始めたのだ。それ即ち、クラウンが自分に好意的、いやこの場合は、信用し始めているということ。


それはリリスにとって、とてつもない喜びであった。これは自身でも認めざるを得ないほどに。きっと、これまでの利用する関係であるば、こんな喜びはしなかっただろう。やはり、もうこの気持ちを隠せそうにもない。この気持ちの名はなんと言っただろうか......


すると、リリスはクラウンが寝ている場所の隣に座って、同じようにロキを枕にした。そして、そこからクラウンの横顔をふと眺めた。


「ふふっ」


眺めるとすぐに笑みがこぼれた。全くこんな男に惚れるなんて飽きてたサキュバスだと思う。男を惑わすサキュバスの名折れだと。


しかし、仕方ないではないか好きになってしまったもの。小さい頃に友達の母親から「惚れさせれば勝ち」とは聞いていたが、全くその通りだと本当に思う。まあ、今は惚れさせられた方だが。


好きになった経緯なんて聞かれたなら、「わからない」としか答えようがない。まあ、一番有力なのは長く一緒にいて強いところ、堂々としたところを感じたところではなく、ちゃんと無くしきれない優しさや弱さを知れたことだと思う。


逆にいえば、それがなければただの傲慢で、自己中心的で、冷めた残虐野郎としか思わなかったと思う。


 まあ、その気持ちが完全に払拭出来たわけではないが、それでもそれを超えるぐらいは好意的な気持ちを持っているということだ。


全く自分でも「なにやってんだか」とは思うけど、何度でも言おう「仕方がないのだ」と。今はあばたのえくぼと言うべきかどんな些細な反応でも、嬉しく感じてしまうどうしようもない時期なのだ。ミイラ取りがミイラになった感じだ。


全く早く素顔見せなさいよ。あんたがたとえどんなに醜かったって惚れてやる自信があるわ。


 まあ、少なくとも今見える鼻筋と口元は嫌いじゃないわ。ほんと、あんたの隣にいると安心してしまう。おかげでとても......ねむ......い......。


**********************************************

「ん?......あれ?私、寝ちゃってた......」


「やっと、起きたか?随分とよく寝てたものだな」


「クラウン!?」


リリスが目覚めると辺りは夕暮れ。寝ぼけ眼を手で擦っているとクラウンに突然、声をかけられた。そのことに驚くと同時に顔を赤らめる。


 それはクラウンに寝顔を見られていたのではないかということ。おそらく、きっと、確実に見られていただろうことにリリスは恥ずかしさが隠しきれない。


すると、そんなリリスにクラウンはため息を吐いた。


「なにを今更恥ずかしがってやがる。お前がスイッチ入った方がよっぽど恥ずかしいだろ」


「あれはもう半分以上諦めてるからいいの!......というか、あんたは何してんのよ?」


そう言ってリリスが怪訝そうに見つめた先は、何故か裁縫をしているクラウンの姿であった。いつものことを知っているリリスにとっては、その光景があまりにもアンバランスで笑いすら込み上げて来るほど。


すると、クラウンは特に恥じらいを持った様子もなく答えた。


「これは俺の家の特技だ。母の仕事柄な」


「へー、あんたからそういう話をするのは珍しいわね。でも、知れてよかったわ。それで、今は何をしてるの?」


そう思って、覗き込むとクラウンは赤と白の何かを作っていた。それをよく見るとベルが着ている巫女の服にも見えなく無い。なので、思い切って聞いてみた。


「それってベルのための?」


「そうだ。これは俺の魔力の糸で作っている。もちろん、俺の魔力のパスが切れても、崩れることは無い。あいつだけ基礎能力値が低いからな。少しでも底上げするためだ。他に他意はない」


「ふーん、そうなんだ」


リリスは思わず嬉しそうに笑った。それはクラウンの言葉に感じた優しさ。どうせ「他意はない」と言いながら、実はその服に色々な能力を付けたりしてると思うし。


「それにはなにか付けてるの?」


「まあな。これは俺の魔力で紡いだ糸だ。だから、俺の魔法ならなんでも付与することが出来る。まず、手始めに〈身体能力強化〉、〈魔力強化〉、〈自動微小回復〉、〈能力増幅〉、それから――――――――」


クラウンはつらつらとどこまでも付与していった魔法の名称を言っていく。リリスが「そんなに!?」と思ったのも無理はない。しかし、今までのクラウンから見れば、驚くべき成長である。


そして、同時に「なるほど」とも納得した。それはクラウンが神殿に入る際に、その服に興味を示していたことだ。きっとあの時からこのことを考えていたのかもしれない。


そうなると少し欲が出てくるというものだ。それはベルだけはなく、「自分にも作ってくれないかなー」という邪にも似た気持ち。しかし、こうも自分の気持ちをハッキリさせたならば、欲しくなるのも当然とも言えよう。


そして、リリスがクラウンに提案しようとした時、先にクラウンから言葉をかけられた。


「ちなみに、これはベルだけではない。お前らにも総じて少しでも強くなってもらう。だから、お前らの分も作る。だが、センスには期待するなよ」


「......そう、分かったわ。なら、こちらでデザインでも考えておくわ」


リリスは思わず込み上げる思いをグッと堪えながら、気丈に振る舞う。ここで、喜びを声に出そうものなら、これまでのイメージが崩れてしまいかねない。最低限、それだけは防がなければ。


そう思うと一回咳払いをして、話題を変えた。


「そういえば、あのおじいさんとベルはどこに行ったのよ?」


これは起きてから、真っ先に把握した情報だ。まあ、この時間帯でもある事だし、おそらくは食料調達に行ってるのかもしれない。


 だが、あのおじいさんはともかくベルは自分の指輪の能力について知っているはずだ。だから言ってしまえば、食料調達をする必要はない。この指輪に全て入ってるのだから。


それで、しばらくクラウンと会話していても帰ってこないということは、別でなにかしている可能性もある。すると、クラウンはそれに対する答えを返した。


「あいつらは修行している。主にベルのだがな。なんでもベルが強くなりたがっているらしいんだ。やっとあいつにも駒としての殊勝な考えが身についたようだな」


クラウンはそんなことを言いながらカラカラと笑う。それに対して、リリスはどうしようもないため息を吐いた。それは仕方がないだろう。なんせクラウンが盛大な勘違いをしているのだから。


ベルは駒になろうと......してなくもないが、少なくともそういう気持ちでやってはいないだろう。あくまでクラウンを支えようとする気持ちだ。これはもはや私と変わらない。さすがにこの気持ちに気づくのはもう少し後か。


「全く、あんたって実にめんどくさいわね」


「そう言うが、結局こうしている時点で説得力は皆無だぞ?」


「分かってるわ。それを一番実感してるのは私だもの」


リリスは自分自身に呆れたため息を吐いた。何を思おうと何をしていこうとクラウンの行動を肯定的に捉えてしまいそうだから。


 自分の村を壊滅させた同じ人族であるにも関わらず。それだけ特別視してしまっているということか。男の趣味が悪くなかろうか?


「ま、なんでもいいわ。いつか私の過去を話してあげる」


「俺は別に聞く気は無いんだが......」


「だったら、聞きなさい。私が言いたいのよ」


「はあ......」


クラウンは呆れたため息を吐きながら作業を続けた。

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