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第5話 再戦

最近1作品目の内容にお困り中、流れは出来ているんですがそこまでをどうつなごうかと(笑)

「ねぇ、クラウンは一体いつからここにいたの?」


「さあな、もう忘れた頃にだ」


「まあ、おおよそどんな生活をしてきたのかは察しがつくわね」


 そう言ってリリスはクラウンの姿を見た。


 クラウンの現在の姿はズボンを履いているだけで、上は半裸で下は裸足の状態であった。加えて、おそらく長かったであろうズボンはひざ下から千切れていて、ズボン自体の質も相当悪くなっている。


 それに、あの木で出来た仮面。だが、それとは別に引き締まった肉体に見惚れている自分がいる。ええい、何を考えてるんだ私はー!


 リリスはぶんぶんと頭を振る。大丈夫、少し前に薬は飲んだし、まだストックはあった.....はず。


 「とりあえず味方に引き寄ることは出来たが、いろんな意味で先が思いやられる気がする」リリスは思わずそんなため息を吐いた。なんかため息を吐きすぎて幸せ逃げてないか?と思うのは仕方がないことだ。


 リリスはどうにか気を取り直すとクラウンにあることを聞いた。


「そういえば、どこに向かってるのよ」


「リリスが向かおうとしているところに行く前に、白黒はっきりさせないといけない奴がいる」


 クラウンはそう言いながら襲ってきた魔物を大剣で切り裂いた。先ほどから、かれこれこんな調子でしばらく歩いている。すると、クラウンは突然止まった。そして、何かを見つけたように不敵に笑うと「ロキ、行くぞ」と言いながらロキと共に走り出す。


 リリスはあっという間に遠ざかっていくクラウンとロキを呆然とした表情で見送る。すると、ふと足元に輝く何かを見つけた。


「これは......」


 リリスが拾い上げたのはエメラルド色をしたペンダントだった。その中央はひびが入って割れている。これはおそらくクラウンが落としたものだろう。


 なにも信じないような目をしていたあの男が持っているとは思えない代物だ。だが、持っているということはなにかクラウンにとって意味があるのだろう。


 リリスはそれをポケットにしまうとクラウンとロキが向かった先へと走り出した。


―――――クラウンとロキ


「......見つけた」


 クラウンが目にしている先にはこの森の生えている大木と負けず劣らずの大きさで、のしのしと歩いている黒い毛並みをした筋肉隆々の魔物。宿敵であるゴリラの魔物だ。


 クラウンは一度あのゴリラの魔物と戦い、屈辱的な敗北をした。あの時は弱かった。だが、今は違う。その屈辱を力に変えて、大剣の柄を握りしめる。


 そして、クラウンは<隠形>で気配を消すと一気に接近した。それから、ゴリラの魔物の背中に向かって跳ぶと大剣を思いっきり背中にぶっ刺す。


「ウホォォォォォ!」


 ゴリラの魔物は突然の痛みに悲痛の叫びを上げると、そこからノールックの裏拳で背後にいるクラウンを薙ぎ払った。すると、その場には大木も軋むほどの風が荒れ狂う。だが、クラウンは<天翔>で空中を足場にして難なく攻撃を避ける。


 すると、ゴリラの魔物の下方ではロキが大きく口を開けている。そして――――――――――


「ウボオオオオォォォォ!!」


 ゴリラの魔物の腹部に雷光の砲撃がぶち込まれた。これはロキの<咆雷>のスキルだ。直撃したゴリラの魔物はドスの効いた声を上げた。だいぶ苦しんでいて、痺れて一時的に動けないようだ。


 そこに畳みかけるようにクラウンは<天翔>を常時発動させながら、一気に正面へと近づく。その瞬間、ゴリラの魔物は首だけをこちらに向けると大きく口を開けた。これは......不味い!!


「ウホオオオオオオオオ!」


「......ぐはぁぁぁ!」


 少年はゴリラの魔物が放った咆哮をまともに受けた。これは前の闘いの時、自分を吹き飛ばした防御無視の攻撃だ。


 クラウンに頭のてっぺんから足の先まで軋むような強い衝撃が断続的に走った。前回のドラミングチャージが無い分威力は小さいが、それでも堪える。だが、今は一人じゃない。


「ウホォォォォン!」


 ゴリラの魔物がクラウンに意識を向けている間に、ロキは森のハンターである威厳を示すような完璧な<隠形>をするとゴリラの魔物の側面まで辿り着く。そして、<斬翔>で胴体を大きく引き裂いた。


 ゴリラは突然のことに驚き、痛みでよろめく。その隙をクラウンは逃さなかった。


 クラウンは再び近づくとゴリラの魔物の背後に回り込み、大剣を引き抜いた。すると、その背中から血がどっと溢れ出る。


 それから、クラウンは大剣を持ったまま<火針>を発動させる。するとその瞬間、大剣はクラウンの燃える手から熱を伝って赤く輝いた。


「おらあああああ!」


「ウボァァァァ!」


 クラウンは赤くなった大剣を、懐に入り込んでゴリラの魔物の腹部にぶっ刺した。刺した瞬間、猛烈に熱せられた大剣がゴリラの魔物の皮膚や内臓を焼いていく。


 ゴリラの魔物は悲痛な声を叫んだ。そして、その口から血を垂れ流す。だが、森の王の威厳を見せるかのように歯を食いしばって体勢を立て直すとクラウンを殴り飛ばし、背後に回り込んでいたロキに思いっきり裏拳をかました。


「がはっ!」


「キャウン!」


 クラウンは地面に大きくクレーターを造る勢いで叩きつけられた。そして、ロキは裏拳で発生した突風によって加速しながら大木をなぎ倒し、ある大木で止まると崩れ落ちる。


 ゴリラの魔物はクラウンを優先して、大きく腕を振りかぶると全体重を乗せるように殴りかかってきた。その攻撃に対し、クラウンは急いで体勢を立て直すと大剣を横にして、足を大きく開き、受けの体勢に入った。


「ウホオオオオオオォォォォ!」


「なめんな.......ぐふっ!」


 クラウンは確かにゴリラの魔物の攻撃を受け止めた。その瞬間、クラウンを中心として放射状に地割れが起きる。


 クラウンは確かに受け止めたが、全身を嬲られるような衝撃を受けた。これはゴリラの魔物が咆哮した時と同じような揺れの感じだ。まさか、あれはもっと別のスキルなのか。


 クラウンは数秒の硬直を要した。その数秒でまた追撃の一撃が――――――――


「ウォン!」


「ウホォォォ、ウホオオオオ!」


 ――――――来なかった。ロキが<斬翔>でゴリラの魔物の首筋を大きく切った。そして、血がまた一気に噴き出す。その攻撃により、ゴリラの魔物の攻撃は中断させられたのだ。


「おらあああああ!」


 クラウンはその隙を逃さなかった。大剣をゴリラの魔物の左胸に向かってやり投げのように投げる。すると、<天翔>と<瞬脚>でその後を追うように空中を走った。そして、その大剣が左胸に突き刺さるとクラウンは大きく腕を振りかぶる。


「剛腕!」


「ウホオオオオォォォォ!!」


 クラウンは振りかぶった腕を金属のように固くすると刺さっている大剣の柄の頭に向かって思いっきり殴った。その瞬間、大剣の柄はポッキリ折れたが、刀身部分はその姿が見えなくなるほど左胸にめり込み、心臓を破壊した。


 ゴリラの魔物は断末魔の叫びをした。そして、口からドッと血を噴き出す。それから後に、脱力するように地面に伏してピクリとも動かなくなった。


「あの時、俺は弱かった。そして、俺はまだ弱い......だが、その時の俺を殺さなかったことが、お前自身の(敗北)を招いたんだ。恨むなら、お前自身の驕りを恨むんだな」

 

 クラウンはその死骸を空中()から捨て台詞のように吐きながら見下した。クラウンの死んだゴリラの魔物を見る目はただただ冷えきっていた。


 そして、クラウンは地上に降りるとこちらに向かってリリスが近づいてきた。


「お疲れ様......まさか、森の主を倒すなんてね」


「あんなのが森の主だと?......興覚めだな」


「その割には手こずっているように見えたけど?」


 リリスは近くにすり寄ってきたロキを労いながら、クラウンに向かって煽るような言葉を返した。だが、クラウンは苛立ったような様子は見せなかった。ただ静かに自身の握りしめた拳を見つめている。


「ああ、それはわかっている。こんなんじゃ、全然足りない」


「あら、意外と素直なのね」


「こんなことで見栄を張っても仕方がない。だが、俺(の心)が砕けることはない」


 そう言うとクラウンはゴリラの魔物に近づき、解体し始めた。そして、ある程度解体が進むとリリスが「待った」をかける。


「ちょっと待って、その手に持ってるものくれない?」


「これか?」


 クラウンが手にしてるには地球儀ほどの大きさの魔石であった。その魔石は血で濡れているが、見る限りでは半透明の水色をしていて、研磨された宝石のようだった。クラウンにとっては価値は無いが、リリスにとってはあるのだろう。


「......好きにしろ」


「あ......ぶない!ちょっと、いきなり投げないでよ!」


「取ったからいいだろ」


 リリスはムスッと顔しながらも言い返さなかった。クラウンはこっちのことを少しも気にかけてくれないが、ここは我慢だ。だが、リリスはまた別のことに待ったをかけた。


「ねぇ、待って」


「今度はなんだ?」


「クラウン、あんた、生で食べる気!?」


「あぁ?......そうだが?」


「はあ、ちょっとその肉を持ってきて」


 クラウンの行動に呆れたようなリリスはそう言うが、クラウンはリリスの言葉にめんどくさそうな表情をすると「めんどーだ」と言ってその場を動かなかった。その代わりに、律儀なロキが肉の一部を持ってきた。


 リリスは「ありがとう」と呟きながらロキを撫でた後、右手をそっと胸のあたりまで上げた。


「開け、宝物庫(テゾーロ)


「......!」


 そう言うとリリスの右手人差し指に嵌っていた指輪が輝いた。そして、その光に包まれて調理器具が飛び出しくる。これにはたまたま見ていたクラウンも思わず目を見開く。


 そんなクラウンの様子も露知らず、リリスはクラウンからもらった魔石をついでにしまうと一呼吸を置く。


「さ、作っちゃいますか」


「おい待て、それは何だ?」


「ん?......ああ、これね。これは『宝物庫の指輪』って言って魔力を流して使うとほぼ無限に貯蔵出来て、念じたものを取り出すこともできるのよ。あ、言っておくけど、お母さんからもらった大切なものだからあげないわよ」


「......わかっている」


「その顔はぜっっっっっったい、わかってない!」


 リリスは指輪を隠すようにして、クラウンを睨むように見るとその後調理を始めた。


 するとしばらくして、これまでに嗅いだことのない美味しそうな匂いがクラウンを襲い、ロキを襲い、周囲一帯に広がった。クラウンもロキも思わずよだれが出てくる。すると、匂いに釣られて魔物が近寄って来る。


 だが、クラウンの食欲という力によってパワーアップした殺気によって蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


 クラウンは食欲のそそられるままにリリスへのもとへと近づいた。もうクラウンの目にはリリスの作った料理しか映っていない。そんなクラウンにリリスは勝ち誇ったような笑みを見せる。


「なに、あんたも食べたいの?」


「..........グゥゥ」


「体は正直者ね」


 リリスの問いにクラウンの腹の虫が反応した。リリスはまたもや勝ち誇ったような笑みを浮かべると出来上がった料理を振舞った。その料理にクラウンとロキは噛り付くように食らっていく。そして......


「おかわり」


「ウォン」


 ものの数秒で食べつくすとクラウンは皿を差し出し、ロキは皿を咥えてアピールした。一人と一匹は見たことないほど目が輝いている。


 そして、「1回なら、いいか」と思って続けていくと1回で済まず、2回3回と増えていき......


 やがて、リリスは嬉しそうに笑みを浮かべながら言った。


「あたしの食べる分がなくなるでしょうが。」

評価、ご感想、ブックマークありがとうございます。励みになります。


それではまた次回

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