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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
間章 勇者の苦悩

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第47話 響のタイマン#1

またタイトル詐欺をしてしまった。いいタイトルが思いつかなかったのです。それから、後半に出て来る人物画いるんですが、あまり今後に影響しすぎないので、名前を付けていません。若干、読みづらいかもですが、申し訳ありません。


それから評価、ブックマークありがとうございます。元気になります(●´ω`●)

 弥人と話した翌日、響はスティナと達とは別の場所で本戦での第一試合を見ていた。それはさながら男の決闘と呼ぶにふさわしい試合であった。


 まあ、こんな言い方をしているが、詰まるところ殺し合いと変わらない。なので、これを見ている響の顔も依然として浮かない。


 すると一人のガタイの良い戦士が響の横に座ると響に話しかける。


「よお、お前さん。ちったあマシな目にはなったな。あの予選の時の目よりは確実に良い」


「!.....あなたでしたか」


 響はその戦士が突然話しかけてきたことに驚きながらも、その人物が誰であるかすぐに分かった。その人物は予選の時に戦った鉄球の戦士であった。


その戦士は予選の時とは全く別の表情をしていて、特に笑う要素もないのに豪快に笑っている。すると、その戦士は響の変わりように興味を示したのか響の肩を掴むと話しかける。


「どうしたんだ?急に男の目をして?もしかして、これに諭されたか?」


 そう言ってその戦士は響に小指だけを突き立てる。つまりは「恋人と何かあったのか?」と言いたいのだ。


 いや、このニヤつきからすれば、もっと先まであったのかと聞いているようなものだ。だが、響が会ったのは弥人のみ。なので、響はその言葉を否定した。


「違いますよ。ただ、男友達に愚痴を言っただけです」


「なんだ、つまんねぇな。だがまあ、そういう存在はいて助かるよな」


「過去に何かあったんですか?」


 響がそう言うとその戦士は少し懐かしそうに言った。だが、その表情には同時に暗さも混じっていた。それから、少ししてゆっくりと話し始めた。


「これも何かの縁だ、話してやるよ。......俺はな、バリエルートという村出身なんだ。そこで俺は友人のアルドレアと細々と冒険者業をしていたんだ。言っておくが、今よりも弱かったぞ?だが、俺はそれでもその毎日が充実していた」


「意外ですね」


「ははは、そう思うだろう?あの予選の時の殺気なんざ、当時の俺には微塵もねぇよ」


 その戦士は最初こそ笑っていたが、次第に表情をわかりやすく暗くさせて、やがて怒気も混じった表情をさせた。


「だがな、しばらく前のある日異変は起きた。それは俺の村に発生した突然の伝染病。それはあっという間に俺の村に広がった。当然、アルドレアもな。だが、俺は運よくかからなかったが。そして、その原因を突きとめれば、相手は魔族と来た。......俺はキレたな」


「......!」


 その戦士は怒りが込み上げてきたのか自身の膝を殴った。そんな戦士の様子に響は思わず冷や汗を流した。


 それはあの予選の時の殺気とは違い、()()()殺す意思のある殺気であった。その殺気に当てられた響は心臓を握りしめられた感じであった。


「理由まではわからなかった。だが、俺のバリエルートという地方は位置的に聖王国と魔王国の間にあるんだ。しかも、俺の村のすぐ近くには霊山もある。その霊山は神秘の力を与えるという噂もあったから、おそらくはそれと領土拡大とかが目的だったんだと思う」


「......」


「で、俺がここにるのはそれらの情報を持っている奴を探すこと。それから、病の床に伏しているアルドレアを救うための薬と金だな」


 響は戦士の話を聞いて、その戦士の見る目が変わった。響はこの場にいるのはスティナが言ったようにこの国の兵士となるためだったり、腕試しの者ばかりだと思っていた。


 なんせ予選の時の殺気がそんな感じであったから。だが、考えてみればスティナのあげたことはそういう人たちが多いというだけで、「全員」とは言っていない。少なくともこういう連中はいるのだ。それを失念していた。


 すると、その戦士は試合を見ながらそっと口にする。試合は丁度第三試合が始まったところだ。


「優しいお前さんだから聞く。『悪』の定義っていったいどこからだと思う?」


「『悪』ですか.....」


「人を殺してからか?それとも盗みを犯した時点でか?はたまたルールを犯した時のみか?」


「僕は......人を殺してからだと思います。人がこれから生きる道をその時点で途切れさせるんですから」


「そうか、なら俺は真っ当な『悪』だな」


 その戦士がそう言った瞬間、戦士と同じく試合を見ていた響は思わず戦士の方を向いた。その言葉は「人を殺しました」と言っているようなものだから。すると、その戦士は言葉を続けた。


「......俺は違うと思う。たとえば殺人犯がいたとして、その殺人犯は別の人を殺そうとしている。そこで助けに入ったお前さんは戦いの末、その殺人犯を殺した。なら、等しく人を殺した殺人犯とお前さんは同じくらいの『悪』になるのか?」


「そ、それは......」


「少数の中には同じ『悪』という者もいるだろう。だが、ほとんどの奴はその『悪』を人を助けた『正義』という方で取るだろう。だから、たとえ等しく人を殺した殺人犯とお前さんでも明確な差が出る。そして、それは『正義』という名のもとに、お前さんが人を殺したという『悪』は霞むからだ。だから、お前さんの先ほどの意見をこの話に持って来るならば、殺人犯とお前さんは同じ『悪』ということになる」


「......」


「で、それを聞いた上でだとどう思う?」


 響はその言葉に俯きながら考えた。まず、率直に思ったのは同じ悪にはならないということ。


 結果的に殺人犯と同じく人を殺しているが、人を救っているかいないかで大きな差が出来ている。


 だとすると、この場合を明確に判断するならば、自分は悪ではないということになる。しかし、それだと自分が最初に言った言葉と対立する。


 もし、悪ではないと捉えたなら、自分は一部の人殺しは悪ではないと言っていることになる。それは本当にそうなのか?もしかしたら、何か思いついていないこともあるんじゃないか?わからない。全然わからない。


 すると、考えたまま黙っている響に対して、その戦士が静かに立ち上がると答えた。


「俺はな本来『悪』なんかないと思っている。それはあくまで基準を定義したうえでの判断でしかないからな。そして、俺が思うにこの世界はどこもそこも正義と正義のぶつかり合いだと思っている。まあ、これは個人的な価値観の話だがな」


 そう言ってその戦士は去っていった。響はその戦士の「正義と正義のぶつかり合い」という言葉が酷く心に刺さった。


 それは誰も「悪い」と思って行動していないこと。そう思ってたとしても行動している時点で気づかぬ本心では正義(正しい)と思っているということ。


 響はその言葉を聞いてまた深く考え込んだ。


 そして、それをフードの戦士はニタニタと笑いながら見ていた。



――――――――第七試合


 響は依然として観客席にいながらこの試合に注目していた。それは先ほどの戦士とフードの戦士との戦いであったからだ。


 鉄球の戦士とフードの戦士とではタイプが全く違う。鉄球の戦士が信念のために戦うとするならば、フードの戦士は快楽のために戦うといった感じだ。


 それにフードの戦士は無抵抗の戦士を殺した人間でもある。だからこそ、ここは鉄球の戦士に勝って欲しいところだ。


響がそう思っていると二人がなにか会話しているのに気付いた。だがもちろん、フィールドから観客席からでは聞こえないし、観客の声もあるので届くことはない。そして、銅鑼(ドラ)の音が鳴ると二人は動き出した。


 まず動いたのは中距離にも対応している鉄球の戦士であった。鉄球の戦士は右手で鉄球を持つとフードの戦士に向かって投げた。


 だが、それは簡単に避けられる。しかし、それを見越したように鉄球の戦士は鉄球から伸びている鎖をフードの戦士の動きに合わせて引っ張り、鉄球を襲わせた。


 しかし、フードの戦士は人間とは思えない軟体を活かして避けると太ももにある針を取り出して、鉄球の戦士に投げた。だが、鉄球の戦士はそれを鎖でガードする。


「くくくっ、そーれ!」


「!」


 鉄球の戦士がガードのために一瞬意識を外した隙にフードの戦士が近づいていた。そして、フードの戦士は逆手に持った短剣で首を切ろうと下から上に振り上げた。


鉄球の戦士はまだ明らかに距離があった道を、一秒にも満たない間に詰められていたことに驚く。同時に、上体を逸らすことでギリギリ短剣を避ける。


「そら!ブ――――――ッ」


「くっ!」


 だがその瞬間、フードの戦士は一度歯を食いしばると一気に何かを噴き出した。それは白い粉。


 それから、逆の手で太ももにある針を三本指に挟むと鉄球の戦士の横っ腹に突き刺した。鉄球の戦士は最初の攻撃で思わずバランスを崩し、次の攻撃で刺されるとすぐさま距離を取る。


「そんなことをやってるから、お前も甘ちゃんなんだよ!」


 それから鉄球の戦士は防戦一方となっていった。途中、拳や蹴りで反撃をしているが、もともと鉄球の戦士とフードの戦士とでは戦闘タイプが違う。


鉄球の戦士は近接戦闘も出来るが、武器的に言えば中距離戦闘型だ。だが、フードの戦士は完全な近接戦闘型。しかも、じわじわと小細工を使って攻めていく感じのその動きは暗殺者の動きのようにも見える。


 観客席にいた響はその試合を見ながら、自分のことのように唇を噛んだ。見ている限り、残念ながらフードの戦士の方が強い。


 それは見てればわかる。だが、個人的には何としてでも勝ってほしい。たとえこの試合に悪がないとしても、自分の基準で悪と判断したあの戦士だけには。


 しかし、響の願いは無情にも打ち砕かれる。


「くくくっ、それそれそーれ!動きがとろいぞ?」


「がはっ!」


 フードの戦士は段々と動きが鈍くなってきた鉄球の戦士を短剣でめった刺しにした。鉄球の戦士はよろめきながら後ずさりする。そして、体からは大量に流血させたせいか顔は青ざめている。


「やはり、お前もどうやら舐めた口の方だな。あのガキに自分の吐き出したかった思いを言えてスッキリしたか?......それにこの即効性のある毒は良く効くだろう?まるであの伝染病に似ているなぁ」


「!......まさか、お前が!?」


「さて、それはどうかなぁ?まあ、死人に口なしってことで」


 そう言ってフードの戦士はゆっくりと歩き始める。そして、短剣を舌で舐めながら近づいていく。


だが、鉄球の戦士は動かなかった。否、動けなかった。毒の他におそらく針に塗られていたであろう痺れ薬で。


「じゃあな、甘ちゃん」


「ごほぉ.......」


 フードの戦士は短剣で心臓を一突き。鉄球の戦士は口から血を吐きながら前のめりに倒れた。そんな鉄球の戦士をフードの戦士はゲラゲラと笑うと響を一瞥する。


 響は握った拳を震わせながら、そのフードの戦士を睨んでいた。

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