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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
間章 勇者の苦悩

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第43話 響の失敗

日に日にPV数が増えていて、それだけ多くの方が読んでくださっていることに心から感謝いたします<m(__)m>

これからも楽しんで読んでいただければと思います。よろしくお願いします。それから、評価、ブックマークありがとうございます。(●´ω`●)

 帝国の大通りはいつも賑やかなのだが、今年はいつも以上に賑わっている。それもほとんどの人が様々な装備に身を固めた冒険者や傭兵達だ。それもそのはず今日は年に一度帝国主催のコロシアムが開かれるのだ。


 そのコロシアムは一種の選別試験のようなものであって、この試合には多くの兵隊長が見ている。


 というのも、このコロシアムに参加する人達の多くはこの国で兵士として雇用されようとしているのだ。この国は一度兵士になってしまえば、大金か抱えて暮らしていけるという噂が流れているのだ。


 もちろん、それはただの噂だ。そして、言ってしまうならそれを流したのは全て帝国である。それは全てクラウンによって殺された兵力を取り戻すため。


 そんな甘い(香り)に誘われた冒険者や傭兵達(チョウ達)は今この場に集まっている。残りの者達はただの腕試しか賞金稼ぎだ。


 そして、この帝国に一人全く別の目的でやって来た者がいた。


「この国はこの国で賑わってるな」


「そうですね。ただ、この国ではケンカなんかは日常茶飯事なので、血の気が多いとも捉えられますが」


 響は大通りで活気あふれる光景を目にしながら思わずそう呟く。それに対して、スティナは少し嫌そうな顔をしながら若干毒気のある言葉で返した。


 スティナは「響様の付き添いで仕方ない」と思いながらも、またこの国に足を踏み入れていることになんとも言えないため息を吐いた。


 逃れようとしても逃れられない運命なのか。いや、むしろこういう風になるように踊らされていたという方が正しいか。まあ、それを今更考えても仕方がない。


 そして、スティナは響の方を一瞥する。響はのんきに帝国の雰囲気を味わっている.......かと思えば、実のところそうではない。


 この顔は不安にさせまいと平静を装っている顔だ。昔から聖女として多くの人達と関わって来たスティナだからこそわかること。そして、そのことは同時にスティナを苦しめた。


 すると響はスティナに声をかける。


「安心してくれ、僕は必ず勝つよ。そして、魔王討伐の協力も掴み取ってみせる」


「ありがとうございます」


 響は笑顔でそう言い切った。だが、その笑顔はスティナからは歪に見えた。おそらくこれだけの参加者を見て、抵抗をもってしまっているのだろう。


 だからこそ、心配だ。この試合には確実に勝つために手段を選ばないものもいる。しかも、それを帝国は黙認している。


 なので、中では勝敗が決まっているのに相手を殺す狂人も潜んでいる。そのことに響は耐えられるのであろうか。そして、打ち勝つことが出来るであろうか。


 スペック的には勇者に勝てる者などクラウンを除いてこの世界にはいない。なので、負けることに関しては心配していない。


 しかし、ただ勝つという意気込みだけでは済まない者もいる。その相手にちゃんと対応できるのか。特に殺す気で来ている相手には。そのことが心配でならない。


「とりあえず、今回のコロシアムでは勇者という肩書は外して参加されるよう通達が来ました。なので、たった今から()()()()()()()反応しないよう心掛けてください」


「?......わかった」


 スティナは響に注告のような言葉を告げると歩き始めた。響はその言葉に半分わかったような、わかってないような反応をしながらスティナの後に続いた。すると響はその意味を理解した。


「ほら、さっさと歩け!このガキ!てめぇもだ、クソ犬!」


「「くっ!」」


 それは見すぼらしい服を着た小さな男の子と犬耳をした女性。その2人は首輪も鎖もつけられていないのに、派手なシルクハットをかぶった太った男に抵抗もせず鞭で叩かれている。しかも、その行為を受け止めるかのように声を出すこともない。


 響はその光景を見て思わず目力を強め、眉間を寄せた。そして、怒気を放ちながらその男のもとへと向かおうとする。


 だが、スティナが響の手首を掴み、その行動を制止させた。そのことに響が声を荒げる。


「どうして止めるんだ!あのままで二人が―――――――――」


「先ほど言ったはずです!『何を見ようとも反応しないように』と!」


「......」


 スティナの目は響以上に怒気が籠っていた。そのことがわかると響は思わず押し黙る。だが、同時に疑問が生じた。それはスティナが我慢しているということ。


 スティナは聖女として多くの民と接してきた。そして、その中で人との上下がないやり取りを大切にしてきた。なら、そんなスティナがこのことを見過ごすはずがない。


 するとスティナが響にゆっくりと説明し始めた。


「この国では奴隷制度があるのです。しかも、それは国として認められていることで、そこでは奴隷は所有物なのです。そこでもし、人の奴隷を勝手に解放してしまえば、それは人の持ち物を盗んだということと同じ意味になり、窃盗罪で処罰されます。ですが、そのほとんどは奴隷堕ちでしょうが」


「だから、解放してはいけないと?」


「はい、そうです。奴隷は王族の方でも重宝されています。なので、奴隷を解放することはこの国に宣戦布告をしているのと同じ意味になり、戦争に発展しかねません。加えて、この国では神トウマの信仰はありません。なので、たとえ勇者という肩書があったとしても、戦争こそなりませんが敵対してしまうことは変わりありません」


「......」


「なので、見てしまっても、聞いてしまっても気にしないようにしてください。それがこの国での常識なのです。少なくともこの奴隷制を撤廃させるには、この国を治める王を屈服させるしかないのです」


 そう言うと響は少し考えるような仕草をした。そして、スティナに告げた。


「それって僕が優勝すれば叶えられないかな?」


「!......可能性はなくはありません。ただそれはその人次第でしょうが......」


 スティナは何とも言えない顔をする。エルザは自分の愉悦のためなら案外気前の良い行動することが多い。


 なので、もしエルザの機嫌がとても良ければ可能性はゼロではない。しかし、そうでなければ逆鱗に触れる可能性もある。そうなれば今まで稼いできた好感度と信頼が全てパアになる。それはあまりに危険な博打をするようなものだ。


 しかし、それが成功した時の報酬は大きい。見るに堪えない奴隷が解放されるということもあるが、それ以上に帝国より上の立場に立てるという点が一番大きいのだ。


 今こうして帝国の言われるがままにしたがっている時点で、帝国よりも自国は下の立場であるということ。


 それは帝国(相手)の意思一つで国が動くということだ。それが逆転するとなれば、それはこの上ないことなのだ。


 だが、リスクがあまりに大きい。それがスティナの判断を鈍らせる。まさに生か死か。ここは.......

かけてみる!


「......わかりました。その時はお願いします。それから言うときは決して臆してはいけません」


「ああ、任せてくれ」


 その会話を済ませると出来る限り奴隷を視界に移さないように城の方へと移動していった。そして、城に辿り着き、そこにいるメイドに案内されるまま歩いていくと王の間までやって来た。


 その王の間の扉を見て響は思わず緊張する。こういう時の対応はある程度教えられてきたが、この妙な緊張感はもちろん教えられていないし、教えられるはずもない。スティナからは「耐えてください」と言われていたがこれは.......


 そして、二人は王の御前へとやってくる。そこで膝をつけ、頭を下げた。


「面を上げよ、勇者殿。この度は我が国へようこそおいでくださった。どうやらコロシアムに出場なさってくれるようで、それならこの城でゆっくりされるといい。開催までもう少し時間がかかるのでな」


「その親切な心遣い、感謝致します。そのお言葉に甘えさせていただきます」


「それでよい。変に遠慮されてもこっちが困るからな」


 なんの変哲もない普通のやり取り。だが、スティナにはそれが異常に感じた。なぜなら盗み見た王妃(エルザ)の顔が笑みを浮かべたまま微動だにしないからだ。


 いつもであれば、王よりも王らしくこの場を掌握するというのに。勇者がいるから本性を隠しているのか?いや、エルザであればそうではないはずだ。その異様な不気味さが、スティナに冷汗を流させる。


 すると、ついにエルザが動き出した。


「時に勇者様、尋ねたいことがあるのですが宜しくて?」


「はい、なんなりと」


「人と戦うことはお好きでしょうか?」


 エルザがその質問をした瞬間、スティナの顔からさらに多くの汗が噴き出した。なぜだかわからないが、とてつもなく嫌な予感がする。これはもはや確信に近い。


 そして、この時ばかりは響に嘘をついて欲しかった。しかし、ここに来るまでに「嘘をついてはいけない」と言ってある。それが、裏目に出た。


「僕は好きではありません。人と戦わなければいけないとわかってはいるつもりですが、出来れば会話で平和的解決を望みたいと思っています」


「それは一体どこまでかしら?相手が武力行使しても尚それを望むのかしら?」


「出来る限りはそのようにと思っています」


「......腑抜けが」


「え?」


 響はエルザが小さな声で何かを呟いたような気がした。するとエルザが立ち上がって、響のもとへ歩いてくる。


「!」


 そして、響の前に立つとつま先で響の顎を捉え、強制的に顔を上げさせた。エルザの瞳はまるで氷のように凍えていた。


「まさか勇者がこれほどまでピ―――――野郎だとは思わなかったわ。これが勇者?つまらな過ぎて笑いも出来ない。まだ、あの仮面野郎の方が好印象だわ」


「......え?」


「いい?私の善意を持って特別に教えてあげるわ。相手が武力行使を始めた時点で、会話による解決の余地なんて微塵も残っていない。どちらかが死ぬまで終わらない。それが戦いというものよ?それにそれは相手の死の覚悟を軽んじている恥ずべき行為だわ!皮剥いて出直してこい、ピ―――――――野郎!」


「かはっ!」


 エルザは響の顎からつま先を離すとその足で思いっきり顔を蹴った。響はその蹴りで口内を切ったのか唇から血を流した。


 そして、エルザは「興覚めだわ」と言いながら王の間から出ていく。これには王様、スティナ、周りの兵士に至るまで全員の時が止まったかのように動くことが出来なかった。


 それから王様はこの時点で謁見を終わらせ、響とスティナを部屋へと案内させた。

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