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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
間章 勇者の苦悩

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第42話 覚醒魔力

ようやくこの説明が出来ますね。


評価、ブックマークありがとうございます。日々活力が漲っております(*^-^*)

「皆さん、お集まりいただいてありがとうございます」


 スティナはそう言うと丁寧に頭を下げる。その目の前にいるのは神の使徒、つまりは響達だ。現在、スティナと響達は講義室のような場所にいる。


 それは、帝国から帰ってきたスティナが響達にその時のことを話すためだ。また、もう1つそれ以外にも伝えなければならないこともあるが。


「雪姫さん、体調はどうですか?」


「大丈夫だよ、スティナちゃん。皆のおかげでこの通り」


 話を始める前に聖王国にいない間気がかりだった雪姫にスティナは声をかけた。すると雪姫は何ともないように力こぶを見せるようなポージングをする。


 だが、顔にまだ隈が多い。それに顔色もまだいつもの時とは程遠い。そのことにスティナは心苦しくなった。やはり帝国での海堂さんのことは言えない。


 すると響が話を促してきた。


「それで話って?もしかして帝国との話し合いの結果とか?」


「はい。端的に言えば、そうなります。それで、帝国から支援に関してしてもらうよう頼めました。ですが、同時にそれをしてもらう為の条件も出されました」


「条件?」


響は思わず聞き返した。なんせすぐに協力してもらえると思っていたから。だが、その反応しなくは仕方ない。響は勇者という肩書きを外せば、ただの高校生なのだから。国同士の話し合いなどわかるはずもない。


そして、スティナは響を見て申し訳なさそうに答える。


「その条件というのは、響様に帝国主催のコロシアムに参加して頂くというものです。詳しい内容は言われてませんが、あの人のことではまず優勝してもらわなければならないでしょう」


「コロシアム......」


「なあ、それって決められたフィールドで1対1で戦うって解釈でいいか?」


「はい、その解釈で間違いありません。ですが、1対1とはかぎりませ。平等に予選から参加させられると思われます。またこのコロシアムは世界中から多くの方が参加するので、その場合はバトルロイヤルといった感じになります。」


響の代わりに弥人が質問した。するとスティナの返答は響はそれを聞いてなんとも言えない顔にさせた。


 響は今まさに人と戦うことにすら少し抵抗を持っているというのに、まさか人とそれも多人数と戦うことことになろうとは。


そこにスティナはさらなる言葉を続けた。


「それに今回、帝国には復興支援を頼みましたが、これに優勝すれば魔王討伐の協力も仰げるかもしれません。なので、どうかお願いします」


 スティナは頭を深々と下げる。この行動は卑怯だとわかっている。しかし、こうするしかない。そして、そのスティナの思惑通り響は考えるような顔をした。


 だが、その顔を明らかに苦悩といった表情で、なかなかそれに対する返答をしなかった。


 そして、悩んだ末、響は静かに答える。


「......分かった。僕がそうしてこの国の助けになるのであれば、ありがたく任せてもらうよ」


「ありがとうございます。無理言って申し訳ありません」


「いや、大丈夫だよ。いずれ乗り越えなければならないことだったしな」


 スティナはもう一度丁寧に頭を下げると響はそれを制止するように言葉をかけた。響とてスティナがどのような思いでそのことを言ったのかわかっているつもりだ。


 だからこそ、拒むことは出来なかったし、それに自分は勇者である。勇者が弱気では立つ瀬がないというものだろう。


 するとスティナが話題を変えた。それも響達に関係することで。


「それから、話は変わりますが、皆さんに言わなければならないことがあります。それは本来ならば、もう少し鍛錬を励んでから言うつもりでしたが、こうなっては出来る限りのことをしたいと思い伝えようと思いました。そして、それは覚醒魔力のことです」


「覚醒魔力......名前の響きから自分の持っている魔力が進化するってこと?」


 朱里の言葉にスティナは静かに首を横に振る。そして、その内容について話し始めた。


 覚醒魔力、それは一種の新しい魔法のことで、しかもそれを人それぞれの固有魔法である。そのため他人が同じ魔法を発現させることはほぼない。


 ここで、「ほぼ」と言ったのはあくまで全く同じ気持ちの人がいたらなる可能性があるというだけで、それはあまりにもゼロに近いほど確率は低い。なんせ全く同じ同じ気持ちであっても1から10まで同じとは限らないから。


 なので、まずないと考えてもらって構わない。それから、その魔法はその感情に特化した能力を発動させることが多い。


 例えば、人の傷を治したいと思えばその気持ちの度合いによって、人の欠損した部分も治す.......いや、この場合は再生させると言った方が早いほどの異常な魔法を発現させることもある。


 しかし、その魔法を発現させることは容易ではない。その魔法を発現させるには自分の気持ちを極限まで高める必要があるからだ。そして、その極限まで高めるというのがとても難しいのだ。


 覚醒魔力は1%以下であっても別の気持ちを抱えていれば発現することはなく、あくまでも100%でなければならない。


 そして、それを意図的に行うことはまず不可能といっても過言ではない。なんせ自分がどう思っているのかなんて一つとは限らないからだ。


 正の感情でさえ、嬉しさ、喜び、楽しさ、といった3つの感情があり、しかもその感情は人によって若干異なってくる。


 自分がこれを楽しんでいると思っても、その楽しいの中には嬉しさや喜びも混じっているかもしれないという事だ。


 そして、覚醒魔力というのはその中の楽しさなら楽しさだけで心を満たさなけば、発動しないということ。だが、逆に言えばそれ故に覚醒魔力はけた違いの魔法を発現させるのだ。


「なので、皆さんがこれから覚醒魔力を発現させるには、鍛錬の時に魔王討伐とは別の個人的な目標を立ててください。希望的観測にはなりますが、それがきっと発現につながるはずです」


 これでスティナの連絡は終わり、この場は解散した。


 修復された大教会にやって来た雪姫と朱里はその場でスティナの話思い出していた。そして、雪姫はすぐに頭の中に「仁に会いたい」という気持ちで満たした。


 だが、当然の如く発現することはない。ということは、自分が思う「仁に会いたい」という気持ちの他に別の気持ちも抱いているということ。


 そして、その気持ちは自分でもわかっていた。それは恐怖。「仁に会いたい」という気持ちは本物。しかし、あの夜に見た仁の顔に、言動に今も恐怖している。それから、仁に対する謝罪の気持ちもある。


 これだけ多くてどうしてすぐに発現すると思ったのか。自分の気持ちもハッキリしていないというのに。雪姫は自分に呆れて思わずため息を吐いた。そして、思わず暗い顔をする。


「雪姫ちゃん、大丈夫?顔色が良くないよ?」


「大丈夫だよ。さっきも言ってたでしょ?」


「そうは見えないからそう言ってるんだよ。やっぱり、酷いようだけど海堂君のことは忘れた方が良いんじゃない?」


 朱里の言葉は本気であった。それは目を見ればわかる。そして、その朱里の気持ちを雪姫はわかっているつもりだ。それでも、雪姫は忘れることなど出来ない。


 仁はたとえあんなになろうと大切な幼馴染であるし、大切な.......。だから、無下にすることは出来ないし、したくもない。


 それはわがままな気持ちだとはわかっているけども、たとえ微かでも繋がりが持てるならその可能性にかけたい。


「心配してくれてありがとう。でも、ごめんね。私は諦めることが出来そうにないの。......確かに仁のことは今でも怖い。でも、嫌ってはいないのよ。むしろその逆であることは朱里もわかっているでしょう?」


「それはわかっているけど......それで取り返しのつかないことになることが嫌なんだよ。ここまで戻ってこれたのだってどれだけ時間がかかったかわかってるの?これでもし同じようになってしまったら.......もう雪姫が帰って来ないような気がして嫌なんだよぉ」


 朱里は悲しさのあまり泣き出してしまった。雪姫はそんな朱里をありがたく思い、そっと慰めるように抱きしめる。


 朱里はこれだけ自分のことを大切に思っていてくれている。その気持ちがすごく嬉しい。だから、私も大切に思っている。


 だからこそ、こんな気持ちを抱いてくれていただろう仁が自分達に裏切られた気持ちは相当なものだろうと思う。


 自分も朱里に酷いことを言われただけで、とても悲しい気持ちになるというのに。仁はそれ以上のことを受けた。となれば、仁がああなってしまうのも頷けるというもの。


「どうしてこうなっちゃったんだうね.......」


 この後悔の思いはいつまで経っても尽きることはない。それこそ仁と会って謝罪をしたとしても。でも、これ以上後悔はしたくない。だから、どんなに辛く険しい道でも歩んでいくつもりだ。


「やはり無理をされていたのですね」


「スティナちゃん.....」


 すると雪姫は後ろの方から声をかけられた。その方向へ振り向くとそこにはスティナが。スティナは雪姫の隣に座ると一つ息を吐く。


「皆さん、辛い気持ちを抱えているというのにもかかわらず、私は皆さんを頼ることしかできない。嫌な女です」


「そんなことないよ。私達にはこの世界に召喚された時に与えられた役割がある。それをこなすのは当然のこと。だってそうしなきゃこの国の人々がさらに悲しい目に合ってしまうから」


「雪姫さんは優しいですね。その優しさが私にとっては救いになります」


「そんなことないですよ。私よりも優しい人がいましたから......」


 そう言って雪姫とスティナは正面にある神の像を見た。その神の像はステンドグラスによって色付けされた光に当たり、幻想的な雰囲気を残している。


 そして、二人は両手を合わせるようにして握りしめ、祈りを捧げた。二人とも思いは同じであった。


 「仁に会いたい」というその思いだけ。この思いが届くかどうかはわからない。でも、どうか伝わって欲しい。この気持ちは変わることはない。


「それでは戻りましょうか」


「そうだね。立てる?朱里ちゃん?」


「......うん」


 雪姫は朱里を静かに立たせるとスティナと共に歩き始めた。そんな三人の姿を神の像は見つめるようにたたずんでいた。

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