第39話 覚悟の違い
バトルシーンはクライマックス(`・ω・´)
評価、ブックマークありがとうございます。やる気が出ます(*'ω'*)
「道化師だ?.....ああ、なるほど。我らが主に仇なす存在がいると言っていたが、お前のことだったんだな」
ラガットはひとりでに呟くと納得するように頷く。そんなラガットを視界に収めながらクラウンはベルにポーチからレモンのような果実を取り出すとそれをベルに渡し、告げた。
「ベル、早くそのジジイを連れてこの場から去れ。邪魔だ。......それから、その果実の汁をジジイに無理やりにでも飲ませろ。まだ、利用もしていないのに勝手に死なれては困るからな」
「......はい、分かりました。どうか気を付けるです」
ベルはクラウンの不器用過ぎるまでの優しさにもう何度目かの心打たれながら兵長を連れてこの場を去った。
それを気配で確認していたクラウンは改めてラガットへと殺気をぶつけた。だが、ラガットは涼しそうな顔をしている。
「俺のことを知っているようだな」
「まあな。お前は有名だからな。我が主に弄ばれた挙句に仲間からも見捨てられ、処刑された。俺がそれに立ち会えなかったのは実に残念だ。......しかし、生きていると聞かされた時は驚いたがな。もちろん、それはいい意味でだ。今度は近くで見たいものだな。お前の滑稽な姿を」
「......」
ラガットを挑発するように言いながら嘲笑った。クラウンはそのことに苦虫を潰したような顔をする。だがそれは、どちらかと言うとラガットの挑発ではなく、神にやられたことだ。
神は俺の目の前で恩人を弄ぶようにして殺した。そして、その罪を全て俺に擦り付けた。全ては神自身の快楽のために。
だからこそ誓った。神を殺すことを。理由が半端であろうが何であろうが関係ない。
自分にはその時の殺意が全てだ。自分は別にこの世界で無双したかったわけでも、目立ちたかったわけでもない。ただ普通に過ごしたかっただけだ。
だが、その全てを神が踏みにじった。神が俺を選んだ理由は単純、面白そうだったから。ただそれだけ。
「御託は言い。お前が神の手下であるならば、殺すことには変わりないのだからな」
「それはお前だ。お前の再登場には我らが主のシナリオにいいアクセントになった。だが、同時にお前の存在はそのシナリオを破壊する恐れがある。故に......我が主の愉悦のために死ね」
二人は同時に動き出し、刀と拳がぶつかり合った甲高い音が響き渡った。そして、次に仕掛けたのはラガットだ。ラガットは無防備になっている。脇腹にフックをかました。
だが、クラウンはラガットが殴るために前に出した足を前蹴りで止める。すると、拳から刀を滑らせ、ラガットの頭を狙った。しかし、それはラガットが上体を逸らしたことで避けられる。
「「くっ!」」
すると、二人は同時に頭突きをした。互いの力が拮抗してかどちら一方が弾き飛ばされるということはなかった。そして、二人は一旦距離を取る。
「思ったよりやるな」
「違うな。お前がその程度だというだけだ」
「手を抜いてるとでも?......ははははは、調子に乗るな!」
ラガットは苛立ったような声を上げながら、槍の如く突き刺すようなラッシュをかました。だが、クラウンはそれを冷静に見極めながらさばいていく。その場にはただただ金属がぶつかり合う音がする。
「がはっ!」
その時、ラガットが一瞬だけクラウンにフェイントをかけた。だが、それを見抜けないほど動体視力は衰えていない......はずなのだが、なぜかその攻撃だけは拳が二重に見えた。
そして、その刹那とも言える判断の遅さが、クラウンの顎へと痛恨の一撃を加えた。
クラウンはアッパーをされたことにより脳が揺らされ、咄嗟の行動が出来なかった。そんな死に体のクラウンにラガットは《尖貫裂撃》でクラウンの胴体に風穴を開けながら、吹き飛ばす。
吹き飛ばされたクラウンは血をぶちまけながら壁に思いっきり叩きつけられた。
「なんだお前も威勢だけか......!」
ラガットはクラウンのもとに余裕の表情で歩いていこうとする。すると、突如背後から急速に何かが近づいて来るのを感じた。そして、咄嗟に裏拳を放ってみるとそれはただの瓦礫であった。
「――――――――次は俺の番だ」
「!......ごふぉっ!」
すると、ラガットは背後から強大な気配を感じた。 振り返ると先ほど完全に致命傷を与えたはずのクラウンが今まさに切らんと構えている。
クラウンは右手に刀を持つと一気に横なぎに振るった。だが、それはラガットに大きく上体を逸らされて避けられる。
しかし、クラウンはそれを見越していた。だからこそ、左手を空けていたのだ。そして、クラウンはラガットのがら空きになっている腹部に左拳を叩きつける。
ラガットは咄嗟に両腕を揃えて防御態勢に入ったが、それを無視するような強い衝撃に襲われ床に叩きつけられる。それはクラウンの<極震>によるものだ。
そこに、さらに追撃とばかりに刀を逆手に持つとラガットの顔面に突き刺した。しかし、それはラガットが床を転がるようにして動いたことで当てることは出来なかった。
「おらあああ!」
「......くっ!」
そして、ラガットはすぐにカポエラのように足を動かしながら攻撃へと移行した。それに対し、クラウンは軌道を呼んでその足を弾き飛ばそうと刀を振るう。
だが、ラガットはその攻撃を避け体勢を立て直すと片手を手刀の形に変え一気に突き刺す。そして、クラウンの左腕を切り落とした。
クラウンは咄嗟に前蹴りでラガットを吹き飛ばしながら距離を取る。
「あーあ、左腕失っちまったな。これでお前の勝機は万に一つもなくなったわけだ」
「そうでもない。お前の動きは全て読めた。もうお前に俺がやられることはない。」
「ほざけ。ハッタリもそこまでくると笑えねぇぞ?」
「試してみれば早い」
「そうかよ!......がはっ!」
ラガットが一気にクラウンに向かって突っ込むと目の前にいるクラウンが蜃気楼の如く揺らめいて消えた。そして、背中から強い痛みが走った。
ラガットは吹き飛ばされながらも後ろを振り返るとそこにはクラウンが。それからクラウンは右手の刀を雑に振るった。それでも当たるかのように。
「ああああ!!!」
ラガットは咄嗟に避けながら距離を取ろうとする。すると、横から何かが顎を強く打ちつけた。それによって脳が揺らされバランスを崩しながらも、それを見るとラガットは思わず目を見開いた。
それは先ほど切り落としたはずの左腕。それがどこからともなく飛んできたのだ。
そして、その事実と脳が揺らされたことによってクラウンの刀をもろに受けた。その刀は深く胴体を切り込む。ラガットはその激痛に思わず叫びの声を上げた。
「これで終わると思うなよ?」
クラウンは残虐な笑みを浮かべながら左腕を糸で引き付け<超回復>でもとに戻した。軽く感触も確かめてみるがどうやら問題はなさそうだ。
そして、クラウンは刀の先をラガットに向けるように構えると一気に突き刺した。
「なめんな......ごはぁっ!」
ラガットは半身でその突きを避けると突き抜けるような拳圧を放とうとする。しかし、その拳はクラウンの左手で受け止められ、逆に横っ腹を胴体が曲がるかのような勢いで蹴られた。そして、そのまま吹き飛ばされる。
クラウンはそれを<瞬脚>で先回りすると刀を下から上へと一気に切り上げた。ラガットは咄嗟に相殺させようと刀に向かって殴ったが、その殴った拳ごと切り上げられ今度は上空へと再び吹き飛ばされる。
「おらああああ!!」
「ごふぉっ!」
クラウンは<天翔>と<瞬脚>をほぼ同時に近い速さで使うと吹き飛ばしたラガットを追いかけた。そして、空中で死に体になっているラガットに向かって回し蹴りをぶち込んで勢いを殺す。
そして、刀を思いっきり振るって床へと叩きつけた。ラガットが床に叩きつけられるとこれまでにない轟音を王の間に響かせた。
クラウンは言葉通りにやられることはなかった。そして、一方的にラガットを嬲った。クラウンの野蛮さが残る戦い方はそれだけ恨み辛みが深いということか。その事実はラガットに大きな衝撃を与えていた。
クラウンは着地するとゆっくりとラガットに近づく。
「どうして......どうして俺が......」
「それは覚悟が違うからだ」
「覚悟......だと?」
ラガットは思わず聞き返した。自分は主のためにやっているその覚悟は本物だ。だったら何が違うというのか?
その答えをクラウンは言った。
「お前は自身のために動いていない。神のために動いている。だが、俺は違う。俺は俺自身のために動いている」
クラウンは倒れ伏しているラガットに近づくと刀を逆手に持ち、刀の先をラガットの心臓に向けた。
「それが俺とお前の差だ」
クラウンが刀を突き刺すと二人の戦闘でもろくなっていたのか王の間の床が崩壊した。そして、そのまま多くの瓦礫とともに下へと落ちていく。
最下層に辿り着くとクラウンは刀を戻して思わず座り込んだ。左腕を切られた時思った以上に血を流し過ぎた。動けないわけではないが、あまり動く気もしない。その時、前方から聞き覚えある声が聞こえた。
「クラウン!」
「主様!」
「あ?ああ、お前ら......か!?」
前から走ってきたリリスとベルは深刻そうな顔をしながらクラウンに抱きついた。クラウンは一瞬、思考が停止する。
「な、何なんだお前ら!?早く離れろ!」
「うっさいわよ、バカ!人が心配してんのよ!大人しく心配されなさい!」
リリスは涙を流しながらも怒ったような口調で返した。そのことのクラウンは困惑する。
「何なんだその理論は......お前は俺がやられると思っていたのか?」
「思ってないわよ!思ってないけど.......それでも心配だっただけ。神の使いを一人で相手するなんて無茶し過ぎよ!」
クラウンは混乱が拭えなかった。こういう時の対応はどうすればいいのか。
人を信用することをしなくなったクラウンは過去のこともあり、人の心をもあまり読もうともしなくなった。それはある意味当然の成り行きとも言える。だがらこそ、この時の行動の解がわからなかった。
「主様......願いを叶えてくれてありがとうです」
「お前もか......あれは俺が勝手に言ったことだ。お前に同情して言ったわけではない」
「わかってるです。それでも嬉しいです。主様はやはり優しい方です」
「俺は優しくなんてない」
とは言いつつもクラウンはもう半分諦めているのか二人を引き離すことを止めている。するとロキまでもが背後から擦り寄ってきた。そのことにクラウンは思わずため息を吐く。
そして、近くにいる兵長に視線で引き離すように促すと兵長はまるで「抱擁しろ」というようなジェスチャーをするだけで、こちらの意思を読み取ろうともしなかった。
「クソ、うぜぇ......」
そう言いながらもリリスとベルの肩に手を置き、泣き止むのをひたすら待った。
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『凶気が 10 上がりました。現在の狂気度レベル 25 』
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