第37話 荒れ狂う獣王国
まだ山場は終わらないという感じね。それから、伏線が少なすぎた(-.-;)
駄文
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「なんじゃ今の振動は?」
「この感じからすると神殿の外に何かが起こった可能性が高いです」
「けど、化け物とやらはこう倒しているわけだし、どこかから攻められているってこと?」
巨大な獅子を倒したクラウン達は突然の揺れに混乱の表情を浮かべた。確かに、こうして獅子を討伐した以上神殿の外で何かが起こった可能性が高い。
なら、一体何が原因でこんな地下まで揺れることが起きたのか。
仮に魔族が攻めに行ったとしても神殿の奥底までこんな振動が伝わるはずないし、それに魔王が代替わりしてからめっきり戦うことがなくなったと聞いている。
しかしまあ、たとえ攻めたとしても結果は先に言った通りだ。だからこそ、原因がわからない。
するとそんな、中兵長が妙な胸騒ぎを覚えたのか青白い顔をした。そして、腰に括り付けている袋から何か模様が刻まれた石を取り出すとそれに魔力を流し唱えた。
「我は返らん、かの地へと。その地に我が求める答えがある」
その瞬間、その石は発光して魔法陣を作り出した。それを見たリリスは思わず「嘘......」と呟きながら手で口を覆う。
そして、その光はやがて兵長を包み......込もうとした時、何を思ったのかベルがその魔法陣に突っ込んだ。それから、眩い光を放つと二人の姿は消えた。
クラウンは何か事情を知ってそうなリリスを見ると尋ねる。
「あの石が何か知っているのか?」
「知っているも何もあれは母さんが持っていた石よ。実際使ったところは見たことないけど、あの模様は手に取ってよく見たことがあるから覚えてる。だからこそ、どうしてあの石をあの人も持っているのかがわからないのよ。『これは大切な時に使うものだから人にあげれるものではないの』って母さんも言っていたし」
「そうか。もちろん、可能性としては第3者からあのジジイもお前の母親ももらったということもあちえそうだが、それをあえて言わないのならその可能性は低いとお前は思うのだろう。なら、宝珠を手に入れてあのジジイとベルを追った方が良いだろう。なんだかきな臭いしな。......それであの石の効果は?」
「自分が一度訪れた場所でそこの風景をイメージするとその場所に転移出来るアイテムよ」
「チッ、急ぐぞ」
そして、クラウン達は動き出した。
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時は遡りクラウンが出立してから半日が経った頃、獣王国では大事件が起きていた。時は深夜、獣王は自室の外から慌ただしい声が響いているのを聞いて目を覚ました。
そして、近くにあるベルを鳴らすとその音に反応して扉から王のお付きの者の声が発せられた。
「なんでございましょうか?獣王様」
「なんでもクソもあるか。なんだこの慌ただしい声は?この城に族でも入ったのか?......まさか、神獣が神殿から出てきたのか?」
獣王は思いがけない不安を口にした。もしそうならこの慌ただしさも頷ける。むしろこれでも小さいぐらいだ。だが、そんな獣王の言葉に対してその者は冷静に答えた。
「いいえ、そうではありません。ただ一人も兵士が暴動を起こしたらしく、それを収めているところです」
「......お前、何を隠している?俺様が見抜けないとでも思っているのか?」
獣王はその者の言葉にイラ立ちを込めた言葉で返した。その声はまるで見えないにもかかわらず、噛み殺すような威圧が帯びていた。
普段の王としての激務で夜はほぼ起きることがない自分が起きるほどの明らかな騒ぎ声。暴動が起きる理由は心当たりがあるとしても、それが一人の兵士の暴動でここまで場が荒れるはずがないだからこその問いだ。
だが、そんな威圧を帯びてもなお声のトーンは関わることはなく......いや、もはや冷ややかにも聞こえた。
「我が身、獣王様を尊敬している故隠すようなことは一切しておりません。ですがだからこそ、獣王様に余計なストレスを与えぬようと配慮した次第です」
「そうか、それは済まなかった......とでも言えばいいのか?なら、なぜこの場に血の匂いが漂ってくるのだ?俺様が起きた時にはそんな匂いはしていなかった。お前は知っているんだろう?その匂いを」
獣王はさらにいら立ちを込めて言った。加えて、その発言は事実上の死刑宣告であった。
獣王が言った通り、獣王の自室は獣王が眠りやすいように催眠効果のあるハーブの香りが漂っていた。
だが、その匂いはその者が来てから濃い血の匂いに塗り替えられている。「もう言い逃れは出来ないぞ」といった怒りの表情で獣王が扉を見つめる中、その者は高らかに笑った。
「ははははは、バレてしまっては仕方ないですね」
「もともと隠す気がねぇだろクソが」
獣王が愚痴を吐いた瞬間、扉はバッと開かれお付きの者が手に剣を持って襲いかかってきた。それに対して、獣王は依然ベッドに座りながらその者の動きや周囲を見る。
......扉が開かれたときに倒れいた二人の兵士は血を流していて、動く様子はない。
つまりは一撃、それも声もなく。自室を護る二人は間違いなく手練れだ。そして、護身程度の技しか持たないはずのお付きの者がその二人を殺したであろう手で俺に向かって来る。
これはなんの冗談だ?冗談だとしてもクソ過ぎるな。夢とも思いたいが、獣の感覚がそうでないと告げている。
そして、お付きの者が動かぬ獣王の心臓に向かって一気に突き出した。それも国の精鋭を集めた近衛兵のような剣筋で。
だが、獣王は臆することも驚くこともない。ただ一匹の獣のような目をしていた。
「忘れたか?この国を統べる王は最強でなくてはならないことを」
「がはっ!」
お付きの者が剣を突き出した瞬間、獣王はその目の前から消えてその者の背後に現れた。そして、右手で剣を持った手首を、左手で頭を鷲掴みにした。
それから体重を加えるように膝を背中に乗せるとその者を完全に動けないようにした。
「で?お前は何者だ?俺の知ってるやつじゃねぇ。それにこんな状況になっときながら何を笑ってやがる」
獣王の言葉通りその者は獣王に捕らえられながらも、醜い笑みを浮かべている。そして、獣王を嘲笑いながら告げた。
「俺はお前が良く知っている人物だ。知りたくば探してみろ。もっともお前にそんな時間があればだがな」
「......!」
そう言いながらその者は窓へと視線を移した。獣王はそれを不審に主ながらもその者の手足を縛り動けないようにすると窓を見た。
そして、その光景に思わず息を飲んだ。その光景とは見る限り広がる火の海とかした城下町。
そして、そこで暴れる神殿の前にいる像と同じような巨大な獣達。逃げる人、食い殺される人、怪我で動けなくなっている人、絶望で呆然と立ち尽くす人。そこはまさに地獄を絵に描いたようであった。
これにはさすがの獣王も言葉を失った。失わざるを得なかった。一体これをなんと言葉にすればいい。怒りも通り越してしばらく呆然としていた。
そして、我に返るとお付きの者に問い詰めようと振り返る。が、その者は泡を吹いて倒れていた。獣王はまさかと思いその者に近づくと舌を引っ張り出した。そこには細かい白い破片が舌の上に散乱していた。
「クソ、毒か......」
獣王はその事実に苦虫を潰したような顔をする。これでこの事件の犯人が誰であるか特定はできなくなった。その悔しさや腹立たしさから床に向かって一発思いっきり殴った。
その地面は当たった場所から放射状にヒビが入る。そして、獣王は自室を出るととにかく状況を把握するために走り回った。その際、見える殺された兵士やメイドを見るたびに心が痛み、怒りが滾る。
そして、王の間近くへ来るとまだ新しいような濃い血の匂いを感じ取った。すると獣王はそこに向かって全力で走る。それから、王の間の扉を開くと勢いよく扉を開けた。
「やっと来たか」
「お前は......!」
獣王は思わず目を疑った。なぜならそこにいたのは一番に仕えていてくれた大臣であったからだ。その大臣が王の椅子に座りこちらを嘲笑いながら見据えている。
「どうしてお前が......」
「どうしても何もこの方が我らが主がお喜びになると思ったからだ。まあ、それまでにお前から信用を得るにはとても長い時間を有したのが面倒だったがな」
「主?いや、それは後でいい。そんなことのためにお前はこの国の民を!」
「そんなことのため?それは心外だな。いや、論外か。この世界は我らが主のもの。その主が何をしようとお前らにそれを拒否することは出来ない。お前らは盤上の駒でしかないからな」
「なんだとクソがぁ!」
獣王は一気に飛び出しその場から消えた。そして、一瞬にしてその大臣の前に現れると残像で複数の腕が見えるほどのラッシュをした。
だが、そのただの一つも大臣に届くことはなく、大臣を動かすことも出来なかった。その攻撃全てが片手であしらわれる。
そして、全てを払い終えるとその手を獣王の額へと伸ばし指ではじいた。すると同時に獣王が凄い勢いで飛んでいき、地面に引きづられた。
「がはっ......クソがぁ」
「お前にはこの国の最後を見届ける当事者になってもらいたいからな。殺すわけにもいかない」
「......お前がこのタイミングを狙ったのは、クラウン達が神殿に潜ったからか?」
獣王は痛みを堪えながらも大臣にそう問いた。すると大臣は嬉々として答える。
「その通りだ、よくわかったな。......いや、タイミングが良すぎるからそう思ったのだろう。まあ、そんなことはどうでもいい。あいつらがいると何百年と立て続けた計画がパアになるからな」
「何......百年?」
獣王はその言葉に思わず顔をこわばらせた。その言葉が本当だとするともしかしたらこいつがあの化け物を......
するとその時、大臣は立ち上がると獣王に向かった。そして、獣王の言葉を察したように言葉を発した。
「そうだ。お前らが苦しめられ続けた化け物は俺達が放った。俺達が襲わせた。全ては希望を見出されながらもその前に絶望へと引き吊り込まれて死んでいく哀れなお前達を見るためになぁ!」
「クソ野郎が!......ぐふぉ!」
獣王は立ち上がるとすぐに大臣に向かおうとした。だが、その前に大臣が目の前に現れ腹部を蹴り上げるとすぐに背に踵を落とし、地面に叩きつけた。そして、苦しめるように足でグリグリと踏みつけながら嘲笑う。
「だから言っただろう?お前らは盤上の駒だと。これら全ての動きも我が主の読み通り。さすがこの魂を捧げるに相応しい至高の存在だ」
「魂を......捧げるだと?」
「ああ、聞く余裕が案外あったんだな。なら、特別に答えてやるよ。俺はもう獣人ではない。神の使いの一人だ」
「なんだと!?」
獣王はその事実に思わず目を見開く。なんせ神という存在自体人族が作り上げた思念の存在だと思っていたからだ。
だが、こんな所でわざわざ嘘をつく必要も無い。なら、こいつは本当に神の使いで、この国を何百年と悲しみに突き落とした化け物を放った存在。
大臣は段々と顔が青ざめていく獣王を見ながら笑みを深める。
「さあ、どれだけ絶望に耐えられるか試してみようじゃないか?」
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