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第34話 煉獄の檻ガランザラス#1

第2章の山場突入です


評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(^v^)

 その空間に入ると5体のミノタウロスが待ち構えていた。そのミノタウロスに違いがあるとすれば角がまばらに生えていたりするぐらいか。


「『順に倒せ』ってどれから倒せばいいのかしらね」


「さあな。だが、あまり考えている時間はなさそうだぞ」


 クラウンの言葉通り5体のミノタウロスがそれぞれに向かって突撃してきた。速さは申し分ない。さて強さはいかほどなのか。


 そして、クラウンに接近してきたミノタウロスは持っていたこん棒を大振り振るう。だが、それは簡単にクラウンに避けられる。しかし、次の攻撃が本命とばかりに後ろ回し蹴りを放ってきた。


「やるな」


 だが、それすらもクラウンに左腕一つで止められる。すると両手を地面につけ、足を開くとその状態から回転蹴りをするというトリッキーな動きに出た。これにはクラウンも思わず感想が漏れた。


 これまで、同じようなミノタウロスと戦ってきたことがあるが、それはただの直線攻撃でフェイントもなければ力任せ。おまけに対した能力も持ってないという良いことなしづくめであった。


 それに比べればこのミノタウロスは格段に違う。さすが神殿の試練というわけか。だが......


「それだけだ」


「ウゴォオオオオオオ!」


 クラウンはその動きを見切ると<瞬脚>で一気に懐に入り、足で両手を払った。そのことで、宙で死に体となったミノタウロスにクラウンは一気に抜刀。


 そして、その首を跳ね上げた。「実に他愛もない戦闘だ」そう思った瞬間、この空間にブザーのような音が鳴り響く。


「何の音です?」


「クラウン、何かしたんでないでしょうね?」


「俺はただミノタウロスを切っただけだ。それ以外は何もしていない」


『試練失敗。ただちに魔物ゲートを解放します』


「「「「!!!」」」」


 そのアナウンスのような声が流れた瞬間、他の4人にいるミノタウロスが消え代わりに、この空間の端々から無数の穴が開き、大量の魔物が飛び出してきた。その数は数百体以上。


 それに加え、この空間は広いと言えどそれはあくまでこれまでに通ってきた空間に比べれば広いだけ。例えるならこの空間は教室を4つ繋げたぐらいの大きさしかない。


 つまりは、その魔物によって動くスペースのほとんどが潰されて、身動きが取れない状態に近い。


 それは魔物達も同じなのだが、我先に襲いにかかろうとして山積みになってそれが津波の如くクラウン達に向かってきた。


 これにはクラウンを除く全員が驚きを隠せなかった。だが、逆に言えばそれだけだった。クラウンが完全な戦闘態勢に入り、刀を上段に構える姿を追うように他の4人の目つきに鋭さが増した。


「殺るぞ」


「「「「了解/ウォン」」」」


 まず動き出したクラウンは構えた刀を大きく横に振った。すると、その一刀によって放たれた一文字の斬撃がその魔物の津波を上と下に分け、さらに上から下へと振り下ろしたことにより出来た斬撃がそれら2つずつに分けた。


「「「「炎蹴弾/嵐旋/光刃/ウォン」」」」


 そして、その4つに分けられた魔物の軍勢の左上をリリスが蹴りで放った巨大な炎が焼き殺し、左下をベルがリリスからコピーした魔法を駆使して、逆手に持った剣を振るうことで嵐の斬撃が切り刻む。


 それから、右上を兵長が剣を振るったことで生じた光の刃が消滅させ、右下をロキの<雷咆>が感電死させ消滅させた。


 その一連の流れで先ほどの魔物の津波はきれいさっぱりなくなっていて残るのは無残な死体だけ。


「あーあ、楽しめなかったわ。もっと抵抗して欲しかったのに......って変なこと言ってるわ。しっかりしなさい、私」


「なるほど、失敗するとこうなるです。ですが、問題はなさそうです。それより主様の引き締まったお尻の筋肉に見惚れてしまったです」


「フォフォフォ、しっかりクラウン君に染まってしまったの。これはもう責任取ってもらうしかなさそうじゃい」


「ウォン!(やったよ、活躍したよ!)」


「......黙ってろ、ジジイ」


 突如として現れた魔物の軍勢に襲われたにもかかわらずなんとも緊張感のない言葉を言う3人。この光景を見てクラウンはため息を吐くが何も言うことがない。


 ただこの程度じゃ脅威になんてなり得ない、それだけ......だが、これで失敗した時の起こり得ることは確認できた。これが全てではないと思うが、おそらくは問題ないだろう。それより......


「「「「「ウゴォオオオオオオ!!!」」」」」


 クラウンの目線の先には先ほどの試練がリセットされたのか、またしても5体のミノタウロスが現れた。そのミノタウロスに対してクラウンはよく観察する。


 あの石に刻まれていた言葉は「順に倒せ」であった。そして、あのミノタウロスには倒す順番が決まっている。


 自分は同時に抹殺するのではなく、1体1体殺していけばといけると思った。まあ、さすがに安直すぎるとは思っていたが。なら、さすがになにか順番を示す何かがあるはずだ。


 すると、クラウンは角の数に気づいた。ただの角だと思ったが1体1体で角が生えている数が違う。額に1本の奴もいれば、2本の奴もいる。


 額に2本の角と胸の中心に1本の奴。額に1本、胸の中心に1本、両肩に1本ずつの奴。両肩に1本ずつ、両肘に1本ずつ、胸の中心に1本の奴。


 ......なるほど生えている角の数が倒す順番を示しているようだ。観察力が足りなかったのは今後の課題だな。


 クラウンはそう思うと全員に声をかける。


「お前ら、目の前にいるミノタウロスは角の数が倒す順番になっている。俺が一番手をいく。リリス、ベル、ロキ、ジジイと俺の後に続いて瞬殺しろ。こんな奴に時間をかけている暇はない」


 そう言うとクラウンは突撃した。そして、宣言通り一本角のミノタウロスに近づくと居合切りで首を切り落とす。


 すると、今度は警告音はならなかった。どうやらクラウンの推論で正しいらしい。そのことがわかると全員が動き出した。


 リリスは天へと足を伸ばすとかかと落としででミノタウロスの頭を潰し、ベルは<隠形>で近づくと心臓にぶっ刺した。


 ロキはミノタウロスの首に噛みついて引きちぎり、兵長は上から下へと無駄のない太刀筋で一刀両断した。


 すると「試練成功を確認しました。ゲート、開きます」と声が響き、ミノタウロスの後方にあった扉が開いた。


 クラウンは「行くぞ」と告げてその扉を通っていく。それから15階層を巡ったところで一旦の探索は終えた。


 しばらくの休憩の後、さらに5階層降りたところで再び石碑を見つけた。そこに書かれていたのは「耐え抜け」という言葉であった。


「今度は実にシンプルね。それにこれぐらいだったら余裕じゃないかしら?」


「フォフォフォ、そうかもしれんが油断は大敵じゃぞ」


「主様がいれば問題ないです」


「ウォン(ベルの言う通り)」


「なら、さっさと行くぞ」


 そして、その空間に入るとミノタウロスと戦った時よりもさらに狭い空間で、例えるなら教室を3つ繋げた大きさだ。


 となれば、刀を大振りに振るうことは制限させられるし、全体魔法はまず使えない。もし襲ってくる魔物の数が先ほどと同じかそれ以上なら物量戦に物理で対応しなくてはいけなくなる。まさに耐久戦。「煉獄の()」とはよく言ったものだ。


『試練を開始します』


 その声が聞こえるとすぐに空間の端々から大量の魔物が排出された。


 クラウン達は背中合わせになるように向きを揃えるとそれぞれその魔物に対処していく。出来る限り相手を邪魔しない最小限の動きで。そして、動くならば連携で。


 クラウンは目の前にいる魔物を横なぎで切り伏せると瞬時にしゃがむ。すると、リリスがクラウンの背に手を置いて体操のあん馬のように動きながら体勢を変え、足を振って周囲の魔物を蹴り倒す。


 一方、兵長は突きで的確に目をついて視覚を潰すと兵長の下で気配を隠していたベルがその魔物の首を切り裂いていく。


 ロキが両前足を大きく宙に上げるとそこから地面に叩きつけた。その地揺れでロキの近くにいた魔物達は宙に浮き上げられる。


 すると、ロキの背を蹴って現れたクラウンがその魔物達をバラバラに切り裂いていく。それから兵長の方へと向くと兵長もクラウンの方へ向いた。そして、互いの背後にいる魔物を切り裂いていく。


 リリスは蹴りで的確に頭を潰していくと1体の魔物に対してはバク転するように足を蹴り上げた。その目的は背後にいるベルに対して。


 ベルはリリスの足に自身の両足をつけると蹴りに合わせて一気に飛び出した。


 そして、両手を前に出してクラウンからコピーした蜘蛛糸を飛ばすと前方にいる魔物をロック。動けなくなっている間に首を切って、心臓を抉る。


 その際返り血を浴びようと冷たい目をしてなんのその。そして、糸で自身をもとの位置に戻す。


 それからも阿吽の呼吸とも言える連携で次々と魔物達を殺していく。「人を信用してない割に随分と良い連携ね」と思わずリリスは思わず笑みを浮かべる。


「さあ、来てみなさい!この足を崇めさせながら蹴り殺してあげるわ!♡」


「ベル、これがお前の知らないリリスの(スイッチが入った)本当の姿だ」


「リリス様、いつもより活き活きとしてるです」


「じゃが、返り血のせいで、昔クラウン君にやらされたヤンデレゲームのバッドエンドのヒロインに似てるの」


「そんなことをジジイになってまで覚えてやがるのか。どんだけしつけぇんだ(お前)は」


「ウォン!(みんな楽しそう)」


 現在戦闘開始から軽く1時間が経とうとしている。その間溢れんばかりの魔物が現れて、クラウン達はずっと動き続けているなのに今の会話だ。


 神殺しを誓って覚醒した道化師のクラウンに、謎が多い母親に育てられた女王様モードのリリス、クラウンに鍛えられて動きが暗殺者の動きになり始めているベル、クラウンと共に歩むため魔物を超越したロキ、元勇者の兵長。


 この中で少なくとも二人と一匹が.......いや、これだけ戦い続けて余裕で話せるのはもはや全員が異常と言っていいだろう。


 そして、次第に魔物の数が減り始めた。その代わり大型で力の強い魔物が現れ始めた。だが、結局やることは変わらない。


 クラウンはその魔物が振り下ろした剣を受け流すとその剣に沿わせて刀を動かし、持っている手を切り落とす。するとおもむろに上体を大きく逸らした。


「ナイスよ、クラウン。さあ、私の足を舐めさせてあげるわ♡」


 クラウンの動作と同時にリリスがクラウンの逸らした上体の上を通るようにハイキックをかました。その攻撃で大型の魔物の頭が180度回転する。


 それから、クラウンは上体を戻すと左腕を伸ばし、左手だけを後方へと向けた。


「主様、お願いするです」


「蹴散らしてこい」


 そして、後方から跳んできたベルをその左手で掴むと前方へぶん投げた。同時に刀を自身の目の前に掲げると地面に刺す。その瞬間、周囲にいた魔物はピタッと動かなくなる。


「雑魚に用はない」


 クラウンの言葉に全員が動き出した。そして、首を切り、頭を潰し、心臓を抉り、四肢を噛みちぎり、最後に......


「この世界を生きるのは強者だけだ」


 残りの魔物全てが細切れになった。そして、そこかしこに赤い汁を滴らせる糸が張り巡らされている。


 これはクラウンが連携で動いていた時についでに飛ばしていたものだ。それに気づかなかった魔物は先ほどのように細切れにされ、気づいたものはクラウン以外に殺された。


 そして、声が響く。


『試練成功を確認しました。ゲート、開きます』

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