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第3話 森で出会う少女

投稿していない日も意外と読んでくれている方がいて喜ばしい限りです。

「お前は左から攻めろ、俺は右から行く」


「ウォン」


 少年は左からオークの群れに突っ込むとそのまま一体に膝蹴りした。そしてその一体を<瞬脚>を使って踏み台にして奥にいるおそらくボスだろう重装備に身を包んだオークに殴りかかった。


「......チッ!」


 だが、オークボスの盾によって防がれた。ヒビも入らなければ、傷一つついていない。どうやら相当固いようだ。面倒なものをもってやがる。


 少年は体勢を整えながら着地すると四方向からこん棒、メイス、剣、バトルアックスを持ったオークが一斉に武器を振り落としてきた。


少年は冷静に動きを見極めるとしゃがんで、自身の体を一回転させながら四体のオークの足を払う。そして、少年はバトルアックスを奪い取るとメイスを持ったオークに振り落とし頭をかち割った。


「オオオオ!」


「.....うるせぇ」


 少年は静かに呟くと体勢を整え、こん棒を持ったオークにバトルアックスをぶん投げた。そのオークはこん棒で投げられたバトルアックスを防ぐと横なぎに振るってくる。


少年はその動きを見ながらこん棒を踏み台にして、オークの頭上に跳び上がると<瞬脚>を使いながら、オークの首を蹴ってへし折った。


少年はそこからさらに、そのオークを踏み台にして背後から切りかかってきた剣を避けると同時に体を捻らせた勢いを使って、少年から少し遠くにいるオークを<流爪>で刺し殺した。


「火針」


「オオオオ!」


 少年は突いてきた剣を頬の皮膚が切れるか、切れないかのスレスレで避けると手刀をそのままオークの胴体に突き刺す。すると、刺した位置からオークの体が発火して、オークは焼け死んだ。少年はすばやく周りを<気配察知>で探る......残るはオークボス一体だけだ。


「ロキ、殺ったか」


「ウォン!」


 ロキと呼ばれた白いオオカミの今は口元、手先が紅く濡れている。そして、ロキの周りには首元を齧られたり、胴体を引き裂かれたり、四肢をもがれたりして死んでいる無残なオークの死体が散らばっていた。


「オオオオォォォォ!」


 オークボスは突如として雄叫びを上げた。おそらく、同胞を殺したことに怒っているのだろう。だが、そんなことは少年には関係ない。それに対し、少年は鼻で笑うと告げた。


「うるせぇな。殺されたのはそいつらが弱かった、ただそれだけのことだ......そしてお前も弱い。己の弱さを呪って死ね」


 そう言うと少年はゆっくりとオークボスに向かって歩いていく。オークボスは盾を前に突き出して、大剣の剣先を少年の方に向けて構えた。そして、少年が間合いに入ったタイミングを見計らって大剣を突きつけた――――――――――


「!」


 ―――――――が、それが少年に届くことはなかった。少年の眼前で突如として勢いが死んだのだ。その時、オークボスはふと自身の体に細い糸が巻き付けられていることに気が付いた。


そんな驚いた様子を見て嘲笑いながら、少年はオークボスに向かってゆっくりと右手を上げ中指を立てるとそのまま中指を軽く手前に引いた。


「グファ!」

 

 少年の目の前でオークボスの頭が跳ね上がった。オークボスの首から赤色の噴水が辺り一帯に雨のように降り注ぐ。


これは、最初の四体を殺っている間に仕掛けたものだ。より細く、より強くした糸にオークボスは気づかなかった。それがあいつの弱さであり、罪であり、死である。


 少年はそっとため息をついた。一体何体目なんだろうか。最初の頃は気まぐれに数えていたが50体目を超えたあたりからもうどうでもよくなり、日が経つにつれ殺す数は増えていった。もっともっと力を欲して。


だからか、日にち感覚もわからなくなってきた。もうどのくらいこの森で過ごしているのだろうか。そのことは、少年にとって至極どうでもいいことだが、実際少年には目に見える変化が表れていた。


 まずひとつは少年の肉体の変化だ。少年は細身でありながら異常なほど締まった体をしていて、魔物の特殊な魔力の影響か身長が少し伸びた。


そして、少年の筋肉は戦闘による『破壊』と<超回復>の『再生』を繰り返し筋肉密度が異常なぐらいになっていた。比較するなら、ゴリラの握力がゴルフボールを握りつぶせるほどだとするなら、少年は片手で大木を引き抜き、振り回せるほどだ。


 ここで、少年とは別に変化が起こったものがいた。


「ロキ......お前、でかくなり過ぎだろ」


「ウァフ?」


 ロキは「どうしたの?」といった顔をして少年を見る。少年はため息を吐くとオークの肉をかき集めて焼き始めた。


「お前、前は俺の半分しかなかったのに、いつの間に俺よりもでかくなったんだ」


「ウァフー」


 「そんなこと言われてもなー」といった顔をしながら、焼けたオークの肉をむしゃむしゃと食べ始めた。そして、美味そうな顔をする。そんなロキに今まで見せたことないような優しい笑みを浮かべながらロキの頭を撫でた。


 そうその変化はロキの肉体の変化だ。少年が言っていたようにロキの体は少年の半分ぐらいの大きさから2メートルぐらいまで大きくなった。それも一日でだ。考えられるのはロキの進化だが、少年は強くなったならそれでいいと思ってそこまで気にしていない。


 そしてまた、多種多様なスキルを使えるようになった。前の日まで使えなかったのが、次の日には使えるように。少年はもしかしたら自分と同じ魔力覚醒が起こったのではないかと考えた。


 それは実はその通りで、ロキはもとは<グレイファウンド>という種類の魔物であったが、少年に従属するようになってから少年の魔力を受けるようになり<デスグレイファウンド>という種に進化したのだ。


 そして、同時に覚醒魔力<王に並び立つもの(スキルグロウ)>を会得した。本来、魔物には覚醒魔力(こういったこと)は起こらないのだが、少年に仕えるものとしての意思がロキをそこまでたどり着かせた。


 それから、最後の変化は少年とロキに現れていて、これは一番大きな変化であった。それは少年がロキに対して信頼の念を向けたことだ。本来なら、少年はロキを便利な道具としか考えていなかった。


 だが、人間ではないということ、アニマルセラピーのような癒し、そして高い戦闘力と従順性から段々と少年が心を開いていったのだ。そのおかげで、最後の人間性が保たれていることを少年はまだ知らない。


 食事を終えるとロキはその場で丸くなる。少年はその状態のロキを枕にするように寝そべった。辺りはもう暗い。なら、寝てしまおうかと思いたいが、少年はこれまで昼夜とわず戦いまくった影響で熟睡することが出来なくなっていて、ついには浅い睡眠すらできなくなっていた。


だが、体はなんの問題もなく動く。体がそういう風に適応してしまったのか。しかし、体が動くなら問題ない。自分の目的はただ一つ。


「......神をぶっ殺す」


 それさえ成し遂げられる肉体があればいい。少年は目を閉じるとふと言葉にした。


「......なあ、お前は一体どこから来たんだ」


 ロキは依然丸くなりながらも片目を開けて、聞き耳を立てた。


「お前はどうして俺の前に現れたんだ」


「.........。」


「お前はどうして俺に仕えているんだ」


「........」


「お前は何者なんだ」


「ウォン」


 ロキは一回だけ吠えると目を閉じ、自身の尻尾をファサっと少年の胴体に乗せた。少年は小さく、しかし優しく微笑するとそのままロキの体温を静かに感じた。


 次の日、少年はロキとともに再び森の中を歩いていた。少年の右手にはオークボスが持っていた大剣が。そして、今現在も襲い掛かってくる魔物を少年がぶった切り、ロキが噛み殺し、少年が<流爪>で刺し殺し、ロキが<斬翔>で三つに切り刻む。


「グカァァァ!」


「ロキ、空中の敵を頼む」


「ウォン!」


 すると、ロキは空中に足場があるかのように駆けて行くと<咆雷>のスキルで口から正しく雷の砲撃を放った。鷹の魔物は頭の部分を吹き飛ばされ、地上に落ちていく。


 そして、空中にいる魔物は全て少年に近づけないように惨殺していった。


 一方、少年はというとまずオーガに左手で糸を飛ばし動きを拘束した。そして、右前方からくる2本の尻尾を生やした狐の魔物には大剣を地面に突き立て盾として攻撃防ぎ、左から来る大型の猫の魔物には<瞬脚>を使って回し蹴りをして首をへし折る。


それから、少年はおもむろに左手をギュッと握るとそのまま腕を引きながら振り回した。すると糸で動けなくなっていたオーガは少年の動きに合わせて動き始め、頭から大木に叩きつけられた。


 そして、少年は首を左に傾けるとそのすぐその近くを何かが通り抜けた。それは尻尾であった。ということは狐の魔物だ。少年はその場で振り返り、眼前まで迫った狐の魔物のもう一本の尻尾を掴むとそのまま引き寄せた。


 だが、狐の魔物は自身の爪で掴まれた尻尾を切ると即座に地面を蹴って空中に留まり、少年から距離を取った。


「!......お前......」


 少年は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。ずっと欲しかった能力をあいつが持っている。あのスキル()があれば、さらに俺は強くなる!


「そのスキル()をよこせぇぇ!!」


 少年はそう叫ぶと狐の魔物に<流爪>を飛ばした。狐の魔物はその場を蹴って少年の攻撃を避ける。そして、すぐに少年のいる方向に目を向ける。


 だが、そこには少年の姿が無かった。その瞬間、後方からおぞましい気配がした。


 思わず後ろを振り返ると大木の幹に少年の姿が!少年は狐の魔物の意識を逸らすと<隠形>と<瞬脚>を同時併用して狐の魔物の後ろへと回り込んでいたのだ。


 そして、そこからさらに<瞬脚>を使い、狐の魔物の顔面に膝蹴りをぶちかます。それから狐の魔物を掴むと地面に垂直に腕を立てた。


 その時に狐の魔物が見た少年の瞳は殺戮の狂気に包まれていて、強者(少年)への恐怖、弱者(自身)の憎しみ、死への絶望しか与えられなかった。


 そんな狐の魔物を見て笑いながら、クラウンは地面へ降り立つ勢いを利用して少年は狐の魔物の頭を粉砕した。そして、醜い笑みを浮かべながら、そのまま噛り付いた。


『スキル 天翔 を獲得しました』


「......ゴクンッ。はあ、やっと手に入った」


 少年は手で血を拭いながら、喜びの笑みを浮かべた。ただ、目が殺戮者の目なので全然嬉しそうに見えないが。少年が手に入れたかったのは理由がある。


 それは、自分よりも先にロキがその能力を会得していたからだ。ロキは進化と同時に会得したのだが、それが羨ましくてたまらなかった。もちろん、戦略の幅が広がるという意味でだ。だからこそ、絶対に会得したかったのだ。


「......!」


 少年はふと後ろを振り返った。誰かに見られていたような気がした。勘違いの可能性もあるが、あの視線は確かに()の視線であった。


 こんなところにいるとは......自殺願望者か?だが、こんな森の奥深くまで生きれることは考えにくい。だとすると何者か。少年は<気配察知>で慎重に探っていく......見つけた。


「ロキ、連れてこい」


「ウォン!」


 ロキは少年の命令に従うと丁度少年が視線を見つけた方向に走り始めた。そして数秒後、絶叫が響き渡った。


「きゃあああああ!」


 そして、ロキの姿が見えなくなってしばらくすると若い女の叫び声が響き渡った。ロキの姿が見えてくると赤髪でツインテールの少女の服の裾を噛んでブラブラさせながら歩いてきた。


「......誰だそいつは?」


「.......?」


 ロキは「さあ?」といった顔をしながらペイっと少女を放り投げる。しかし、少女に動く様子はない。だが、呼吸の動きから生きてはいるようだ。おそらく、ロキの存在に驚いて気絶したのだろう。


 少年はジッと少女の顔を見た.....どうやら全然知らない奴のようだ。記憶にある人物だったら、秒で殺していたところだ。


「ロキ、こっちへ来い」


 少年が呼ぶとロキは少年の傍でゴロンと横になった。そして、少年はロキに寄り掛かりながら座ると少女が目覚めるまで静かに待った。

評価、ご感想、ブックマークありがとうございます。励みになります。


それではまた次回

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