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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第13章 道化師は奪還し、刃を立てる

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第284話 二つの戦い

読んでくださりありがとうございます。(≧▽≦)


カムイとリルのメイン回です

 クラウンが地下へと突入した一方で、二つの戦闘が始まっていた。そのうちの一つがリルリアーゼと魔族の女使徒モドキとの戦いであった。


 リルリアーゼはファイティングポーズを取りながら、民家に突っ込んだ使徒モドキの方を見る。すると、民家の風穴から使徒モドキが現れた。


「いってぇな! 何しやがる!?」


「私はただマスターを助けるためにやっただけのことです。まあ、別に助けらしい助けは必要なかったんでしょうが、急ぎの用がありますし」


「人形風情が」


「人のことを言えないのでは?」


 冷たく無機質なリルリアーゼの瞳と怒りに震えた使徒モドキの視線が交差する。


「ちなみに、お名前を聞かせてもらってもよろしいですか?」


「ああ? メイデスだ。それがどうした?」


「いえ、ただ男勝りなくせにそこまで威厳が感じられないと思いまして、別に敬称は要らないですよね。メリデスさん(笑)」


「てめぇ!」


 メリデスは首切り包丁のような幅の広い得物を使ってリルリアーゼに突っ込んでいく。それに対し、リルリアーゼは両手を差し出し、その両腕を変形させて中心に一つ、周りに八つ穴のある腕にする。


 そして、その腕の八つの穴がある方を高速回転させ、エネルギー弾を高速射出。ガガガガガとマシンガンのように撃ちだした。


 隙間なく襲い掛かる弾丸の雨にメリデスは咄嗟に移動を方向を横向きに避けていく。だが、後を追うように弾丸の雨が続く。


 するとその時、一瞬リルリアーゼの方から瞬く光を確認した。咄嗟にその方向を見ると腕の中心部分にあった穴が眩く輝いている。


「前方に一般人の反応なし。エネルギーチャージ充填完了。高エネルギーレーザー――――――発射」


 リルリアーゼの両腕から日本の太い光が横並びに射出される。ボオオオオォォォォと大気を震わす音ともに正面の何もかもを消滅させていく。


 そして、数十秒の射出後にその方向を見てみると地面は勢いで抉れ熱で焦げ、民家の方は一部溶解していたり、炎をあげながら燃えて天へと煙を上らせている。


「ふむ。少し威力の遠慮がなさ過ぎたかもしれませんね。これは反省ものです。後でマスターに報告して褒美を貰わ(罰を受け)なければ。ですが、その前にしぶとく生き残っている害虫を駆除しなければなりません」


「こんのてめぇ.......!」


 リルリアーゼが空中を見るとメリデスが眉をピクつかせながらキレていた。いや、それも仕方ないだろう。なぜなら、先ほどので右腕が消し飛び、さらに熱波で右半分はほとんど黒く焼けているのだから。


 しかし、その状態でもなお生きていて、当たったにもかかわらずその程度に抑えている点ではやはり神の使徒であることは変わりないのだろう。


 とはいえ、結局のところ神直属の大罪シリーズ(親衛隊)でなければ取るに足らない力の差があるというところなのだが。


「てめぇ、ぶっ殺す!」


「女性があまりそのような言葉を言うもんではありませんよ。教えてあげましょうか―――――痛みによる快楽を」


 もはやどっちが悪役とも思えない発言だが、そんなことはリルリアーゼには関係ない。リルリアーゼは変わらず腕から弾丸を撃ち続けると背中からコードのような先が尖ったものを生やし始めた。


 その数全部で十本。それを触手のようにうねらせてメリデスに襲わせていく。メリデスはそれに気付くと舌打ちしながら、避けることに専念した。


 左手に持った首切り包丁で触手を弾きながら、紙一重で弾丸と触手を避けていく。それでいて、リルリアーゼに近づくための隙を逃さず探し続ける。


 すると、リルリアーゼが再び先ほどのレーザーを撃つためなのかコンマ一瞬、周りにある弾丸の射出が止まった。


「そらよぉ!」


 そこに向かってメリデスは首切り包丁を横に回転させながら、リルリアーゼに投げていく。そして、後に続くように一気に空中を蹴って走り出す。


 リルリアーゼは相変わらず感情の見えない瞳を向けるとその包丁を首を傾けるだけで避ける。そして、すぐさま両腕を正面から向かって来るメリデスに向けた。


――――――ガンッ


「!」


 リルリアーゼが弾丸を放とうとした瞬間、右側の首に先ほど避けた包丁が直撃した。固く作られた外皮で切断されなかったが、隙を生むには十分すぎた。


「しまいだよ。死ねや」


――――――ガギンッ


「なっ!」


「可哀そうに。マスターなら切断できましたよ?」


 メリデスが包丁の柄を左手で掴み、押し込むように振るった。だが、包丁はリルリアーゼの首の硬度に耐えられず、その場で自壊する。


 メリデスはあまりのことに一瞬頭の中を白くしながら、リルリアーゼの顔を見る。すると、小馬鹿にするように口角を上げていた。


「てめぇ、謀りやがったなああああああ!」


「まあ、それが戦いというものですし。わざと見せた隙に誘われたのはあなたでしょう?」


 リルリアーゼは両腕をもとの腕に戻すと目の前にいるメリデスを抱擁する。それはもう動けなくなるほどに。


「くそ、この! てめぇ! 放しやがれ!」


「同士テストです。ぜひ受けてください。放電準備完了。周囲に一般人の反応なし。開始します」


「があ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」


 リルリアーゼは愛する我が子を抱く母親のような笑みで体内のエネルギーを電気エネルギーに変換させてそのまま周囲に解き放つ。


 メリデスには焼き焦げるような電撃が全身に襲っていく。電気によって体が反応するのかピクピクと小刻みに震える。


 そして、三十秒も経たずして放電は終了。メリデスは口から煙を吐き出しながら、動かない。生命反応もないので感電死したようだ。


「これに耐えれたならあなたを同士として迎え入れるようマスターに言うつもりでしたが、やはり痛みはそうそう快楽に変換できるものじゃないんですね。勉強になります」


 もはやサイコパスな悪役をが言いそうなセリフを並べていくとふと空を見る。空中にいる竜が多数の神獣と交戦中のようだ。適度にブレスも放っているのか煙が縦に伸びている。


「さて、私も残党狩りに参加しましょうか」


************************************************


―――――――キンキンキンキンッ


 城のすぐそばからそんな金属音が何度も接触する音が鳴り響く。オレンジ色の火花とともに幾重もの剣戟を散らしていく。


 二つ目の戦いはカムイと竜人族の使徒モドキの戦いであった。そして、二人は一旦離れると乱れた呼吸を整えていく。


 城に入った正面ホールは地面や壁にいくつもの剣や薙刀で出来たであろう斬った跡が出来ていた。それだけで城内部はだいぶボロボロになっているという様子であった。


「いやー、サウズさん......だっけ? やはり竜人族だけに力が強いな」


「カムイ殿も素晴らしい太刀筋である。得物を交えただけでかなりの修羅場をくぐり抜けたとわかる。それに......その刀にその角。込められた魂によって能力を持つ刀を使い、刀に生き、刀に死ぬ誇り高き鬼人族。随分と前から戦って見たかったと思っていたのである」


「まあ、俺達島国は基本的に外出ねぇしな。だが、お前さんだったら空を飛べるだろ? 竜人族なんだからよ?」


「拙者は生まれつき飛べない身なのである。故に、不遇の子として神より力を受け取ったのである」


「なら、可哀そうなやつだな。本当だったら実力で俺と戦いたかっただろ? こんな使命もなにもなくてよ」


「.......わかるのか?」


「同じ武人だろ?」


 サウザは少し嬉しそうに口元を歪めると薙刀を構える。その動きに合わせるようにカムイも二刀流の構えを見せた。


「いざ尋常に」


「始め!」


 サウザが唱え、カムイが叫ぶ。たった今この瞬間から、ただの武人としての誇り高い戦いが始まった。


 長さを活かしたサウザが少し遠めから薙刀を振り下ろす。カムイが紙一重で避けた瞬間、地面にまた大きな亀裂が出来た。


 カムイは炎を纏わせた右手の刀<炎滅>を下から上に向かって振う。サウザはそれを体を逸らして避け、薙刀をそのまま横に薙ぎ払っていく。


「氷壁!」


 カムイは咄嗟に冷気を纏わせた左手の刀<氷絶>で氷の壁を作り上げると薙ぎ払いを防ごうとする。だが、竜人族の膂力は暑さ三十センチもある氷の壁をいともたやすく砕き割った。


 そして、サウザは薙刀を素早く引き戻すとカムイに向かって鋭く突く。その突きを二本の刀で受け流し、薙刀の柄を滑らせながら、同時に横薙ぎに振るう。


 しかし、サウザが持ち手の部分を地面につけ、そのまま筋力だけで体を持ち上げると攻撃を躱す。そのまま地面に突き立てた薙刀の尻の方でカムイは叩き飛ばす。


 薙刀の太い胴部分がカムイの腹部に直撃し、そのまま壁へと叩きつけた。しかし、サウザは追撃せず、地面に降り立つと薙刀を構える。


「あの一瞬で後ろに飛んだであるか。見事な反射神経である」


「ほんと俺の友には動きが早い、力が強い、容赦がないの三拍子揃ったとんでもないやつがいるんだ。まだまともに勝てたためしがねぇ。でも、そいつに勝つことが俺の目標だからまあ......こんなところでコケるとあっという間に置いてかれちまうわけで――――――」


 カムイは立ち上がると軽く服のホコリを払うと二本の刀を鞘に納めた。そして、左腰に差している二本の鞘のうち<氷絶>の鞘を右腰に差していく。


 そして、それぞれの鍔に手を合わせていく。


「二刀流の居合であるか?」


「ま、そいうことだな」


「面白い」


 カムイは居合の構えのまま間合いまで歩いていく。武人として矜持が互いにあるためか不意打ちなど一切せず、互いの準備が整うまで待ち続ける。


 カムイの立ち位置が決まり、サウザの薙刀の構えが決まると互いに深く腰を落としていく。


 薙刀の刃はカムイに向いており、その刃にカムイの顔が映る。互いに呼吸は静寂、それでいて溢れんばかりの殺気が互いの精神を掌握しようと張り詰め合う。


 するとその時、切り刻まれた内部の壁の一部が音を立てて崩れ落ちた。それを合図に同時に動き出す。


「竜人武闘術―――――――竜閃喪(りゅうせんそう)


「天元鬼人流二刀の構え――――――白氷紅炎」


―――――――勝負は一瞬だった。


 サウザの突き出した薙刀はカムイが鍔を指で押し出して、腕をクロスさせてから刀を引く抜くという動作をよりも明らかに速かった。


 そして、それはカムイの顔面に届き、先に屠れるはずだった。


 しかし、カムイが腕をクロスさせてそれぞれの刀に触れた瞬間、薙刀がカムイに届く速さを上回り、薙刀を斬り払いながらサウザの胸にバツ印の傷をつけた。


 その傷の一つの斜め傷は発火し、もう一つの傷には氷が生えた。そして、刀の軌道に沿ってサウザの血が飛んでいく。もとはこの世界の住民であるために赤い血が舞う。


「悔いのない.......戦いだった」


「俺もそう思うぜ。もっともまた戦いたかったがな」


 カムイは血で滴る刀をそのままに地面に倒れたサウザを見てそう言葉を吐き捨てた。

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