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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第13章 道化師は奪還し、刃を立てる

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第278話 捕虜との接触

読んでくださりありがとうございます。(≧▽≦)


二話目~

 翌日、響はいつも通りに起きた。そして、簡単な支度を済ませると朝稽古には行かず、適当に城の中を歩き始めた。


 それは昨日にとんでもない作戦を聞かせてきた二人の様子を確認するためだ。というのも、二人は話しを終えた後に「もしこの行動に勘づかれていたら、夜のうちにでも殺されている可能性が高い」と告げていたのだ。


 一応、その対策として女子部屋の方で二人で結界を張りながら万全な状態で一夜を過ごすようだが、心配がないと言えば嘘になる。


 鍛錬は後でいい。ともかく、不自然にも思われない程度に辺りを見回しながら、二人の姿を探していく。すると、バイキングの朝食がある会場へと歩いて行く姿が見えたので、少し足早に歩いて近づいていく。


「おはよう。眠そうだな」


「あ~、響君かぁ~。朱里の抱き枕にされてて寝付けなくってぇ~.......ふぁ~~~~~」


「そして、その相方はとてもつやつやした顔をしているが.......」


「雪姫式抱き枕は最高だね! 一家に一台欲しいくらいだよ! 安眠感がものすごいんだよ!」


「うぅ、そのせいでこっちは寝不足なのにぃ~」


「なんか大変そうだな」


 響は思わず苦笑いしながらも、内心では喜んでいた。それは当然二人が今もこうして生きていることに。

しかし、これ以上の接触は避けるべきだ。それは何を言おう二人からのお願いだったからだ。


 というのも、相手は常識で推し量ってはいけない人物なのだ。それ故に、雪姫がいくら寝ている時に結界を張ったからといって万全ではない。


 もっと言えば、程遠いのだ。そういうわけで、二人は「翌日の朝に生きていたとしても信用し過ぎないで」と忠告を送っていたのだ。


 響は二人が確認できるとそのまま修練場に向かって行き、久々に復活させた朝稽古を始めていく。雪姫達から聞いた言葉が本当なら体がなまっていることは大変不味いことになるから。


――――――それから、午前中は何事もなく時だけが過ぎ去った。しかし、正午に異変が起こった。


 響は久々に動いたのでたまには街に出ようと思った。これまで何もせず部屋に閉じこもりっぱなしだったので、急に飛び出したのはおかしく見えるかもしれないが、雪姫達のおかげで口実があるのでなんとかそこら辺はなんとかなる。


 むしろ、勇者がいつまで経っても閉じこもっている方が他の兵士達からは不審に思われるかもしれない。それにやはり体は動かしておきたいのだ。


 それから、ずっと後ろめたい自分の気持ちで何もしなかったスティナの捜索。それもレグリア(教皇)がかかわっているのなら、一人で探すしかない。


 そんな気持ちで街をふらついていると遠くから大きなざわめきが聞こえてきた。


 もともと喧騒が多めの国ではあるが、それでもそう思わせるほど一方から聞く声は大きかった。そして、その声はその方向に向かっていく野次馬をどんどん増やしている。


 その方向は丁度、正門から続く大通りの部分である。大戦終わりの帰還パレードも行われた場所だ。とはいえ、今日に何かがあるとは聞いていない。


 響も気になってその方向に向かって歩き出す。そして、その通りにいる人だかりに勇者特権の顔パスで通り沿いまで道を開けてもらうと正門方向を眺めた。


 正門方向には多くの馬車がやってくる。見たこともない数だ。もしかしてどこかの、それこそ帝国のエルザ姫が来たのだろうか。


「.......!」


 いや、違う。この魔力の感じは知っている。戦ったことがある相手だ。ということは、これは―――――捕虜を運んでいるのか?


 しかし、この魔力の相手は大戦の時に一緒に仁と逃げたはず。それにあの強さはそうそう捕まる相手じゃないし、この国の人間では誰も捕まえられない――――――一人を除いては。


 馬車がゆっくりと近づいていく。やがて、先頭車両が響の前に通り過ぎ去ると手綱を握っていた兵士が丁寧にお辞儀した。


 まあ、恐らく顔を知っていたのと不自然に自分の周りだけ空間が出来ているからわかったのだろう。随分と律儀なことで.......いや、この行動も嘘かもな。


 なぜならあの人物を捕まえられる奴はこの国で一人しかいない。となると、先ほどの兵士といえど、過去の自分がやられたような魔法を使えば簡単に操られてしまう。


 どこまで信用できるかわからない。弥人にも言えないことを実行しようとしているんだ......いや、あいつの場合はたとえ信用できるとわかっていても黙っていそうだな。あの作戦は嫌いそうだし。出来るなば自分もやりたくない。


 馬車は一台、二台......と次々に響の目の前を通り過ぎ去っていく。その度に徐々に知っている魔力が自分の方向に近づいてくる。


 その度に記憶が蘇る。あの時戦った記憶が。もっともあの時介入してくれたことには感謝しているかもしれない。おかげで殺さずに済んだ......この結果を知っているからかもしれないが。


 正門の方に少し顔を覗かせると鈍い輝きをした鉄格子が乗せられた馬車が近づいてくる。すると、その鉄格子の後ろの布で荷台が覆われた馬車に突然巨大な魔力が現れた。


 荷台の中からの反応なので周りから眺めている人達にはわからないし、魔力が大きすぎて普通の人では魔力酔いするかもしれない。


 そんな魔力が突然現れた。自分の魔力に気付いて威嚇するように存在を表したのか。それとも全く別の用事でか。


 ともあれ、現れたのなら好都合だ。こっちは道化にならずに済みそうだから。だから、自分は出来る限り不自然にならないように言いたいことを言う。


 響は携帯していた聖剣を鞘から引き抜くと柄を両手で持ち、下段に構える。その突然の行動に周囲の人達は思わず動揺した顔を見せる。


 しかし、そんな反応を気にすることもなく、響は一気に地面を蹴って目の前にやってきた鉄格子を斜めに斬り裂いていく。


 そして、鉄格子の中に白昼堂々と侵入すると鎖や錘で動けなくなっている赤髪のサイドテールの少女に向かって聖剣を掲げ――――――振り下ろす。


「止まりなさい」


 不意に声が聞こえてきた。その瞬間、聖剣は少女の頭の数センチ手前で止まった。もちろん、響が意図したわけではなく、体が勝手に止まったのだ。


 押し込もうとしてもビクともしない。逆に引こうとしてもビクともしない。まるで体が石像か何かになっていて、意識だけはハッキリするそんな状況。


「恨む気持ちもありましょうが、落ち着いてください」


 響の突然の奇行とも呼べる行動に誰も声を荒げない。吹き抜ける風の音と遠くから聞こえる喧騒がハッキリと聞こえる。驚いて今にも声を上げそうな人物もいたが、不自然に落ち着いた顔に直っていく。


 響の体も勝手に戻されていき、勝手に鞘に聖剣を収めさせられる。響は全く体が動かないこと以上に、これであの時も操られていたのだと理解して思わず歯噛みした。


「落ち着きましたか?」


「......ああ」


 響は尋ねてくる教皇―――――もとい、レグリアに不審がられない程度に嫌悪感を出しながら、残りは殺意の如く赤髪の少女――――――リリスに向けていく。


 リリスはうつむかせていた顔を上げる。その顔は絶望に悲観した顔ではなく、実に眠たそうな顔であった。


「あら、もう着いたのね。それにしても、この体勢で寝るのはやっぱりきっつ。首が寝違えたように痛い。あー、しばらく上を向けていなきゃね~。で、何?」


「名前は?」


「本来なら教えるのも嫌なんだけど、『お前』ってあんたに呼ばせるのは嫌だし。というか、もう決まっているし。『君』って呼ばれるのも気持ち悪いわね。はあ、仕方ない。特別に名前で呼ばせてあげるわ。リリスよ」


「どんな立場かわかっているのか?」


「ええ、わかっているわよ。今は捕まってるの。そう、()()。だから、別にこんな態度でも構わないわけ。そもそもあんたらに態度変える方がおかしいし」


「魔族であることを忘れてないか? そして、ここが人族の、敵の国だということを」


 響は冷たく言い放った。その瞬間、聞いてた人々から一斉にヤジをが飛んでくる。「魔族を殺せ!」「いたぶって人族の恐ろしさを教えてやれ!」「死ぬよりも恐ろしい屈辱を!」とか散々なヤジがやたらと響く。


 しかし、リリスは涼しい顔をしながら見下す響の視線に自分の視線を合わせていく。近くにいるレグリアを無視するように。


 響はレグリアも楽しんで様子を見ている今が好機だと思って告げる。


「仁は生きているんだろ?」


「ええ、悪運は強いようだからね」


「そして、ここにリリスがいると知ればすぐさま向かってくるだろう」


「かもしれないわね。あいつはサキュバスの私にメロメロだろうからね」


「なら、やることは決まっている。俺はあいつと殺し合いをする。こうなっている以上、もう邪魔はさせない。本気の殺し合いを、だ。これでもう仲間は死なないだろう。本気の僕にあいつは勝てない。せいぜい、助けを願うままに生き続けてみればいいさ」


「へぇ~、言いたいことはそれだけ?」


「そうだな。強いていうなら、お前らの企みは全て知っているぞ。今にも裏切った二人が教えてくれる」


 響はそう言って鉄格子から降りると騒ぎに走り向かってきた朱里と雪姫の姿を見た。そして、二人は「何があったの?」「魔族がどう乗って聞こえたけど」と軽く息を切らしながら聞いてくる。


「この二人がお前達を裏切った二人だ。大戦の時に仲間のふりをして情報を聞き出してくると俺に伝えてくれた」


「「!」」


「......なるほどね。大戦のあの時に妙に話し込んでいると思ったらそういうことなの。あんたも相当狂ったわね」


「もう信用という言葉は聞き飽きたんだ。もう誰を信用していいかもわからない。だったら、利用すればいいと思っただけさ。もはや利害の一致の方がやたらと信用できる」


「はは、ははははは、やっぱりあんたはクラウンの親友のようね。よく似てることで」


「......あなたが仁を語らないで」


「海堂君の何を知っているというの?」


「......そうね。あなた達よりも知らないわ。でも、私は信じてるの。あいつの意思の力にね。さあ、さっさと出しなさいよ。勇者様から特別待遇を受けてるけど?」


「相変わらず減らない口ですね~。ですがまさか、あの時にあなた達があんなことをしていたとは驚きましたね」


 レグリアはギロリと雪姫と朱里を見る。その視線に怖気づきそうになったが、なんとか踏みとどまって答える。


「だって、響君の話を聞いたら選択肢がないよ......」


「一人よりも多くの命が救われるなら、朱里達はこちらを選ぶだけ」


「ははは、はははははははは! あなた達がそんな考えを持つとは知りませんでしたよ。てっきりもっとも身近な人を選ぶと思っていましたが、こんな収穫があるとは」


 レグリアは笑いながら足で床をタップする。すると、馬が思いっきりいなないて、ゆっくりと馬車が動き始めた。


 その馬車を響達は大きく息を吐きながら眺めていく。

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