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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第11章 道化師は狩る

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第247話 天空の箱庭 スカイクロノア#5

読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)


もう250話到達しそうですね。早く感じます

 エキドナとシルヴィーの体調が回復したので、クラウン達は移動し始めた。幸い、アリが戻ってくることも、ハチが攻め込んでくることもなかったので今は比較的安全に移動できている。


「ところで、何か手掛かりは見つかった?」


「まあ、一応な」


 手掛かりとは石碑に書かれていた「至るべき神の道しるべのままに」という意味の何かである。あの石碑は最深層に行くためのヒントなので、これの答えがわかれば必然的に目的地まで行けるということである。


 エキドナとシルヴィーが復活するまでの間、それを一人で探しに行ったクラウンはそれらしきものを見つけていた。そして、同時にある仮説が思い浮かんだ。


「恐らくだが、この火山自体が神殿じゃないかと思う」


「どうしたのよ、急に」


「ずっと考えていたことだ。俺達は神殿らしき入り口をさがしていたが、そもそも神殿の入り口が人工物で固められているわけでないことを知っているじゃないか」


「そうね~、霊山の神殿もエルフの森の神殿も魔王城近くの神殿もそんな感じだったわね」


「俺らはそう言う違いに知っていながらも、気づかないで固定概念に縛られ続けていたということだ。とはいえ、それに気づいて突っ込んでいたら今頃あれだけの数のアリどもと交戦していただろうしな。怪我の功名と言ったところだろう」


 クラウンは自分の考えの浅はかさにため息を吐きつつも、面倒ごとを結果的に避けられたことには安堵を浮かべていた。


 するとその時、ベルは反対側の壁に描かれた大きな壁画を見つけた。しかも、その壁画は若干色付けされていて、神々しいような風貌の竜が多くの人達の前で君臨している絵だった。そう、それがクラウンが見つけたものだ。


「あれが恐らく手掛かりだと思われる。最もそれ以外に手掛かりらしきものが見つからなかったというのが本音だがな」


「あの絵に描かれている竜ってなんかすごくオーラを放っている感じなの。もしかして、神竜って本当に実在しているのかなの?」


 その絵にある黄色っぽい色をした竜は大きな翼の背後に御光臨の輪っかようなものを背負っていた。それはまるで<神格化>した響の姿にも似ていた。


「恐らくいるといても考えていいだろうな。少なくとも、あの絵を描くには実在する人がいなければいけない。そいつの実体験か妄想かは判断がつかないがな。加えて、ここに絵があるということはここに描く人がいたという証明でもある。この島が何なのかはわからないが、可能性は十分にあるだろう」


「ということは、私達は神竜と戦うわけになるのかしら?」


「さあな。黒竜と神竜が同じなのかは定かじゃないが、そんなものは実際に見てしまえばわかるだろう。そのためにはこの絵が描かれている場所に沿って進んでいくということだな」


「時間かかりそうよね。アリの巣穴って入り組んでるって言うし」


「.......まあ、時間がかかることは致し方ないな」


 そして、クラウン達はそれからしばらくの間壁画を探しながら、それがある方向へと歩いて行った。またその際、見つける壁画に変化があることも気づいた。


 最初の壁画は多くの人々の前に降臨する竜の姿だったが、次の絵では人々が竜に供物を捧げると同時に竜が人々に僕であろう竜を貸し与えている絵であった。


 そして、クラウン達が無事最深層に至るまでに見つけた壁画を全て繋げていくとこういうストーリーになった。


 ある一匹の神竜らしき竜は人々の前に降臨した。その竜は人々が捧げる供物に対しての期限付きの労働力を提供した。


 労働力である神竜の僕の小さい竜は人々とともにいろいろなものを作った。農業から建築物、水路や井戸と生活に関わっていくものをほとんど。


 そして、月日は流れ人々は裕福になった。弱かった体は健康的になり、果てはたくましい体つきになった。


 そのことを神竜は自分のことのように喜んだ。それから、期限が終わり、神竜は僕たちを返してもらおうとした。


 だが、人々は「もう少しだけ貸して欲しい」と頼んだ。そして、供物としてささげたのが、一人の若い娘であった。


 神竜は不審な顔を浮かべるが、人々を信じ、その娘を担保として受け取り少しだけ期限を延ばした。


 その間、神竜はその娘と恋をした。そして、身ごもった子供は神竜の力を一部受け継いでおり、竜人という新しい種族が生まれた。


 神竜は期限が尽きたため、貸し与えた村を訪れた。だが、その村には誰一人おらず、ましてや無惨に殺された僕達の姿だけが見つかった。


 神竜は怒り、嘆いた。その激情のまま村を炎で薙ぎ払うとどこかへと消え去ってしまった。


「なるほどね。なんとなく昔の同胞が人族を嫌っていた理由がわかったわ。この壁画から知ったという感じじゃないんでしょうけど、他にも似たような逸話があったのね」


 エキドナは見てきた数々の壁画に想いを馳せるとそれ以上の言葉は出さなかった。それは自分の目的がこれとは関係ないことであるから。


 たとえ相手がこんなにも悲しき竜だとしても、もう後には戻れないところまで来てしまっているのだから。


 先祖であっても同情はしない。自分達には自分達のやるべきことのために進ませてもらう。そんな強い気持ちで神竜に対する同情の気持ちを打ち消していた。


「さあ、着いたぞ。恐らくここが最終地点だ」


「なんか一番楽に来れたんじゃない?」


「いや、恐らく運が良かっただけだろう。俺達が来たタイミングで虫どもの抗争が起きなければ、ここまで来るのに一体何日かかっただろうか」


「確かに、あの数をこんな狭いところで相手にするとなるとジリ貧は確定かしらね」


「気持ち悪かったなの」


「相手にしなくて正解です」


 女性陣の言葉には妙な説得力を感じた。そのことにクラウンは思わず苦笑いを浮かべる。そして、クラウンはあえてこの日はここで休息を取ることにした。


 全員の体調を全快にしたうえで臨む。体力が減っている状態でボス戦に挑むなんて以ての外だ。それから、しっかりと休息を取った後、怒りの炎を吐く竜が描かれた扉の中央の円に手を触れる。


 すると、ガチャッと何かが開く音がするとともに目の前の扉が左右に開いていく。そして、日以来た扉の先は―――――――――


 グツグツと煮えたぎるようなマグマであった。物凄い熱量を感じる溶岩の海が目の前で広がっている。浮かび上がった気泡がゆっくりと弾けている。


 とてつもない熱気を感じるのは言うまでもない。クラウンとロキ以外がいくらリリスに水魔法で暑さ耐性をかけられていたとしても、サウナにいるように汗をかき、息苦しさを感じる。


 見た所のそのマグマには何もない。なら、上に何かあるだろうか。そして、クラウンが上に覗き込もうとすると―――――――


「ガアアアアア!」


「!」


 一瞬見えた外の光を覆い隠すかのような青黒い炎が天からクラウン達に向かって降り注いできた。その炎を避けるようにクラウンは仲間を後方に押し出し、同時にリリスに土で扉に蓋をするよう指示をした。


 クラウン達は全員が地面ズサーッと地面を滑っていく。周囲に僅かな砂埃が舞い上がっていく。


「ケホッケホッ.......クラウンどうしたの?」


「火山の頂上の方を見上げた瞬間、ブレスを放たれた。姿は見ていないが、恐らくあれは竜だ。それ以外にあんな広範囲に炎を放てない」


「となると、ここからはそこの蓋を開けた瞬間、急いで外に出た方がいいというわけね」


「けど、ここは竜化できるほどの場所はないなの」


 シルヴィーの指摘通りで現在クラウン達がいる場所は横に三人ほど並べる幅で、天井は二メートルほどしかない場所であった。


 エキドナもシルヴィーも竜化すれば二十メートル程にもなる。どう考えてもオーバーで竜化など出来ない。


 ということは、ここを出た瞬間マグマに触れる前に竜化しなければいけないということだ。竜化には少しのタイムラグがある。かなり危険な賭けだ。


 しかし、幸いなのは外を出ても結界を心配することはないというところか。外の火口から一直線に繋がっている感じなので、(結界の)範囲内だったら実にきつかったが、そうでないならまだやりようはいくらでもある。


「確か、エキドナは部分竜化できるんだったよな?」


「ええ、そうね」


「シルヴィーは?」


「私は出来ないなの。姉さんの場合は覚醒魔力の影響で自由自在に変身できるけど、そもそも竜化は竜になることしかできないの」


「なら、エキドナはシルヴィーを抱えて竜化に専念しろ。俺達は竜化し終わるまでの時間を稼ぐ。後は俺達の連携で片付ける。いいな?」


「「「「了解!」」」」」


「ウォン!」


 クラウンは後方にいるリリスにスリーカウントであることを伝えるように指を三本立てる。そして、「三、二、一、ゴー」という言葉ともにリリスが土の壁を崩して火道へと侵入していく。


 その瞬間、またもや青黒いブレスが火道を全て覆うように炎が迫っていく。そこにロキの<雷咆>を主軸にクラウンとベルが斬撃を放って一緒に散らしていく。


 それでも散らしきれなかったものはリリスの重力操作によって迫りくる炎を押し返していく。そこに、竜化を終えたエキドナとシルヴィーの二人のブレスが合わさって、黒い炎をどんどんと押し返して、やがてその炎を浴びせ返した。


 火道の上の方の壁には一部から煙が異常に舞い上がっている。恐らく、そこに竜がいるのだろう。


「ガアアアアッ!」


 その時、煙の奥にいる竜は吠えた。それは質量を伴った風のようでクラウン達をマグマ溜まりへと突き落とそうとする。


 瞬間的に吹き飛ばされたクラウン、ベル、リリス、ロキの三人と一匹であったが、後方にいたエキドナとシルヴィーのおかげで命拾いした。


 すると、その咆哮の影響で煙がだんだんと晴れていく。そして、見えて来たのは黒々しい足に尻尾、背中に生やした剣山のような突起に紅い目。


 全身が真っ黒なのは言うまでもなく、火口を塞ぐように飛んだ黒竜の体格はエキドナ達の二倍ほどあり、広げた翼は空を覆い隠した。


 そして、何よりも注目すべき点が翼にある輪っか。その輪っかはどこまでも闇をため込んだように黒く悍ましい色と光を放っていた。


 その黒竜の姿が壁画にあった神竜らしきものと重なったのは言うまでもない。そして、その黒竜は告げる。


「裏切り者め! どの面下げて現れた!」

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