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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第11章 道化師は狩る

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第246話 天空の箱庭 スカイクロノア#4

読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)


あと量的にも1ヶ月ほどですかねー

 クラウン達は巣穴の中に入るとまず目に入ったのは巨大すぎる洞窟であった。いくつもの土の橋のようなものがいろんな方向から繋ぎ合わさっている感じはまさに迷路といった感じであった。


 クラウンはすぐさまこの洞窟内で<気配察知>を行う。周囲に目立った気配は感知しない。遠くには反応を見せているが、少なくともここにはいないことは確かだ。


 加えて、この洞窟内は結界の影響を受けないらしい。恐らく地上に触れているのが条件で、その地上の中にいてしまっているからだと思われる。


 つまり制限がないということだ。「ようやく本領発揮できる」とクラウンはふと息を吐く。するとその時、シルヴィーが突然ドンッと横に倒れた。


「どうした?」


「はぁ、はぁ、はぁ.......ん、はぁ.......」


 呼吸のペースが乱れているうえに速い。先ほどからずっと飛んでいたから疲れたという可能性もあるが、表情が想像以上に苦しそうだ。


「ウォン」


「ロキ、どうした―――――――チッ」


 ロキの吠えた方向を見ると腹部の部分に三本ほど毒針が刺さっていた。ハチに襲われたとは考えにくい。だとすれば、アリが投げた毒針という辺りか。


 クラウンはシルヴィーが刺さっていたことをずっと黙っていたことに思わず舌打ちするとロキと共に毒針を抜いた。すると、シルヴィーの体は段々と小さくなり赤竜からもとの人型に戻っていく。


 ダルそうに寝転がるシルヴィーを抱えると額に触れる。酷いほどの高熱だった。通りで息切れが早いわけだ。


「バカが」


 腰のポーチから解毒薬を取り出すとシルヴィーの口に容器を押し付けて無理やり飲ませていく。


 普通の人間なら明らかに死んでそうな体温だが、それは竜人族という種族の強靭な肉体の影響があるからかもしれない。


 クラウンはシルヴィーに解毒薬を飲ませた後、背中に背負うとさらにロキへと乗った。そして、ロキに「あいつらの場所まで行ってくれ」と頼んだ。


 それから十数分後、シルヴィーの様態が安定してきたと同時にシルヴィーと同じような状態のエキドナを抱えたリリス達を発見した。


 だが、一旦その場を離れると途中で見つけた洞窟に身を隠し、ほんの少し空気の通り道を作るとそれ以外は土で埋めた。


「一先ず、これでひと段落だな」


「ええ、そうね。まさかあんた達の方でも同じことになっているとは思わなかったけど」


「ということは、そっちでも下から毒針投げられていたことを黙っていた口です」


「はあ、俺も気づかなかった責任があるからして強くは言えないが、少なくとも黙っていたことに関しては説教してやる」


 そう言いつつも、二人が無事であったことにクラウンは安堵の表情を浮かべていた。熱くなったタオルを交換しているリリスとベルもその表情には気づいていた。


 すると、おもむろにリリスは話題を提示する。


「そういえばなんだけど、ここに来る途中で石碑を見つけたわ。ほら、神殿とかでよく見るやつ」


「なんて書いてあった?」


「えーっと確か―――――――」


「『大地に蠢く蟲を避け、至るべき神の道しるべのままに空の王者へと会いに行け』です」


「そうそう、それそれ。ベルの瞬間記憶は便利だわ。それでそれを聞いてどう思う?」


 クラウンは壁に寄り掛かると顎に手を付けて考え始めた。


 ひとまず、最初の句読点までの一文の意味はそのままだろう。絶賛襲われ中でむやみな戦いを避け(あれほどの数とまともに戦うべきではない)ている今はその文にピッタシだ。


 となると、次の分にある「至るべき神の道しるべのままに」とはどういうことなのだろうか。どこかに印のようなものがあってそれを頼りに進んでいけばいいのだろうか。


 現状発見していない以上、これ以上は考えようがない。そうすると次だが、「空の王者」とはもしかしなくても竜のことではなかろうか。


 この世界にある種族で唯一空を自由に飛べる種族だ。この世界の一般的な常識としても、空の王者は竜の別称として使われている。


 そこに対しての一番の問題は「会いに行け」だ。今までは全くなかった試練だ。会いに行けばその時点で終わりということか? いや、そもそもここに竜がいるのか?


 この島は黒竜が住み着くはるか前から存在していたという。だとすれば、この島の大地にある石碑も当然ながら存在していたということになる。


 そう仮定すると.......本当に実在していたのか―――――神竜というやつは?


 竜であっても神の末席ならほぼ悠久の時を過ごすかもしれない。そう考えるといたという裏付けはないが、いなかったと証明できるものも何もない。


 そう考えて浮かび上がった仮定がある以上、蔑ろにするのは良くないだろう。いないに越したことはないが、いると仮定して考えた方がいいだろう。


 クラウンは一先ずこれまでの情報からここまでを整理するとリリスに話していく。すると、リリスは「あんたってやっぱこういうこと考えるの早いわよね。なんというかリスク計算ってやつ?」と呆れた表情をしていた。


 クラウンは思わず「解せぬ」という思いを抱くも言葉には出さない。この考えに至った過程も含めてエキドナとシルヴィーが起きてから全員で話し合うことが最善策。


 それまではクラウンもロキも待機と言ったところだ。しかし、何もしていないわけではない。クラウンは<気配察知>でロキは聴覚と嗅覚で周囲に敵がいないか調べている。


 現時点ではほぼ空っぽだ。どうやらクラウンの判断は正しかったようだ。というのも、クラウンが巣穴に入る理由は虫が暑さを嫌がるという理由以外にも、総力戦で数が少ないからという理由があった。


 虫の、それもアリとハチの争いとなれば基本総力戦のぶつかり合いだろう。人間のような頭脳があるわけではないから、ある程度の知能は見せても陣形を組んでその都度その都度考えて動くというのは難しい。


 故に、結局のところどうしても数で押すゴリ押しプレイになりがち。しかも、クラウン達が見かけたのは黒い波と思わせるほどの数だ。大半は外に出払っている。


 そう考えれば、後は内部にいる女王護衛隊のアリや卵を守っているアリに避けてさえ進めばいい。しかし、いつ戻ってくるかわからず、早々に決着がついて戻ってきたり、逆に押し負けてハチがなだれ込んできたりとなる可能性もあるが。


 移動は慎重にかつ迅速に出来るだけ(時間的に)早く進んだ方がいいのだが、エキドナとシルヴィーが復活しないままに最終層に辿り着いて守護者(ガーディアン)と戦うなんてことになれば目も当てられない。


 だからこそ、ここは一人も欠けないようにエキドナとシルヴィーの回復を待つ。最悪、どっちか来てもゴリ押しで突破していく。


 クラウンはふと思い出したように塞いだ土を壊し、今いる場所から出た。リリスは思わず何か言おうとしたが、その前に「塞いどいてくれ」と言ってクラウンはどこかへ行ってしまう。


 そんなクラウンの姿を見てリリスは思わずため息を吐く。しかし、もう慣れているかのように「しょうがない奴ね」と呟くと少しだけ隙間を作り、穴を塞いでいく。


 それからしばらくすると、エキドナとシルヴィーの二人は目を覚ました。


「あれ.......ここは.......?」


「クラウン兄さんの姿が見えないなの.......」


「二人ともまだ少し安静にしてなさい。ここはあなた達が入ったアリの巣の中の.......どこかよ。一先ずあんた達の治療が優先だから避難してきたの。それから、クラウンは現在手掛かりを探しに外に出ていってる。帰ってきたら怖いわよ。まあ、私も言いたいことがあるんだけどね」


 エキドナはリリスの言葉に思わず目を瞑って笑みを浮かべる。大体言われることはわかっていて怒られることも承知なのだが、それ以上に生きていたことに。


 実のところ毒針の毒の回りはかなり早く、エキドナとシルヴィーはロキが大爆発の一撃を与える少し前からグロッキーだった。


 しかし、エキドナもシルヴィーも普段と変わりないように態度を装ていたためにリリス達もクラウン達も気づかなかった。


 特に、こういうことにいち早く気づきそうなクラウンが気づかなかったのは、純粋のシルヴィーが嘘をつかないし、ついてもすぐわかるだろうと過信していたからという理由があったりする。


「全く、いいこと? 次から黙って我慢しない! わかった!」


「ふふっ、そうね.......」


「うん.......」


「返事が違う! わかった?」


「「はい.......」」


「ならばよろしい。私からの説教は以上よ」


 二人はふとまだ両親が生きていた頃に一緒に母に怒られたことを思い出した。その時と全く同じ言葉を言われたような気がした。


 悪さの原因はやった本人が一番分かっているから、その原因を見てもいない人物がやたらめったら起こっても意味がないし、疲れるだけという理由で。


 するとその時、壁の外からクラウンの声がした。その声に二人はビクッとする。辛さはないがまだ少し痺れが残っているためにその場から逃げることが出来ない。


 クラウンが入ってくると二人は顔を少し上げながら苦笑いを浮かべる。そんな表情とリリスの顔をチラッと見るとクラウンは大きくため息を吐いた。


 そして、エキドナとシルヴィーの寝ている間に座り込むと雑に両方の頭を撫でていく。髪がグシャグシャになろうと関係ない。むしろ、その乱れた分だけ言いたいことなんだぞと言わんばかりに。


 それから、一言呟く。


「心配かけさせんじゃねぇ」


「「.......ぷっ、あははははは!」」


「なにがおかしい」


 その言葉に二人は思わず吹き出して笑った。その言葉も行動もまるで父親をトレースしたような動きであったから。


 母親似のリリスに父親似のクラウン。確かにお似合いだ。そう思うと二人には怒られている最中にもかかわらず笑いが溢れて止まらなかった。


 さらに言えば、今は身を隠している最中でもある。しかし、どうにもおかしく、二人には止めることが出来なかった。故に出たのは――――――――


「静かにしやがれ」


「「いたっ!」」


 こめかみに怒りマークをつけたクラウンの拳骨であった。

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