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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第11章 道化師は狩る

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第244話 天空の箱庭 スカイクロノア#2

読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)


地球防衛軍を参考にしていたりしますね

 クラウン達はロキとベルの体力が回復するとさらに密林の奥に進んでいく。奥に進めば進むほど、太陽の光は生い茂った大きな葉っぱに防がれて地上まで届かない。


 少し薄暗い足場の悪い道を木々の間を縫っていくように歩いて行くと目の前に不自然に抉れた木の跡があることに気付いた。


 その抉れた感じは何かで削ったというより、かみ砕いた感じの方が近かった。そして、それがいくつもあり、跡が多いところでは倒れた木々がたくさんある。抉った大きさからかなりの大きさかの何かが存在しているかもしれない。


「随分と多く存在してるわね。葉っぱの部分はキレイに残されていて、幹の部分はキレイさっぱりなものがちらほら。竜って木とか食べるの?」


「さすがに食べないわよ。遥か昔には植物を食べるだけの竜種もあったらしいけど、もう絶滅してしまってるわ。それに、食べるとしても幹じゃなくて葉の方よ」


「でも、この感じって普通じゃんないと思の。考えうるに幹は何かに使うために運ばれていったと思うの。ほら、一部だけやらたと木のカスが落ちているなの」


「ということは、ここには竜とは違う生命体がいるということです?」


「生き物なんてどこにでもいるだろ。いなきゃ島が成り立たないだろうしな」


「いわゆる相互関係ってやつね。とはいえ、この島から何かが出てきたようなことは過去の一度も見ていないのだけれど」


「この島だけで自己完結できるってことだろ。そもそも、俺達の前に何が現れようとも前に進むことには変わりない」


 クラウンはそう告げながら周囲に気配を飛ばし、入り口からひたすら真っ直ぐ歩いて行く。そして、やがて日が暮れるまで歩き続けたが、その日は神殿の場所を見つけられなかった。


 リリスとエキドナが夕食を作っている間、クラウンは木に登って天辺から辺りを見渡すが、どこもかしこも見渡す限り生い茂った木ばかりで神殿の「し」の字も見つからない。


 クラウンはため息を吐きながら大人しく地上に降りると近づいてきたロキをそっと撫でる。まるで日頃の疲れをペットに癒してもらうように。


 それから、夕食を取るとリリスが張った結界内で、クラウンとロキ以外の女性陣は全員が早めの睡眠に入った。


 リリスの結界がある以上、クラウン達に夜番など必要ないのだが、なんとなく寝付けないクラウンは木々の葉の隙間から見える星を眺めていた。


 その体勢は当然、丸くなったロキを枕にするという安定のスタイルだ。いつもならすぐに寝付くはずの極上のモフモフの毛並みが妙に名残惜しく感じているのだ。


 まるで今のうちに触っておけと急かされているように。もしかしたら、魔王化の間に一切ロキの毛並みを触っていなかったための禁断症状か何かなのかもしれないが。


「ロキ、起きてるか?」


「クゥ~ン?」


「どうしたってか。まあ、そうだな.......なんか急に話したくなったんだよ。ほら、なんだかんだで案外蔑ろにしてしまってるだろ? その埋め合わせって言うかなんというか」


「ウォン!」


「嬉しいのはわかったが、もう少し小さな声でな」


 クラウンは嬉しそうに尻尾を自身に打ち付けてくるロキを見てほころぶも、さすがにリリス達が起きるほどの声は不味いとなだめる。


 ロキは頭がいいのでその言葉を理解するとすぐに口を閉じ、尻尾を動かすのもやめた。しかし、目は嬉しそうに細めている。


 クラウンは頭の下にある胴体を手で撫でながら、星空を眺めているとふと呟く。


「お前との付き合いはリリス以上に長いよな」


 クラウンとリリスが出会う前、丁度クラウンが「道化師(クラウン)」として成り立ての頃、クラウンはロキと出会った。


 初めは疑っていたクラウンも動物は嘘をつかないと思い、最初に信じた相手であった。もちろん、完全に信じたわけではないが。


 それから、数が月後にクラウンはリリスと出会う。ロキとリリスの時期の差はたったそれだけであったが、体験した思い出はそれ以上の時間を共にした気分であった。


「あの時のお前を思うと、お前はもしかしたら同じ匂いを辿って俺のところまでやって来たのかもな」


 ロキはもともとグレイファウンドという魔物の種族で暗い森に擬態するために全身は真っ黒なのだ。しかし、ロキは対照的な真っ白―――――遺伝情報の欠損によって引き起こされるアルビノであるのだ。


 本来真っ黒のはずの魔物が真っ白。それはもはや「狙ってください」と言っているようなもので、ロキは生まれた頃からほとんど村八分状態であった。


 誰も味方がいない状態で誰にも頼ることが出来ずに、自分の力だけで生き残らなければいけなかった。それはその当時のクラウンのほとんど同じ境遇だった。


 故に、出会い相棒としてここまで過ごしているのはもはや運命と言うべきなのだろう。運命の()が手繰り寄せたものだとしたら、このような状況も少しは報われるというものだ。


「本当にお前はずっと変わらないでいてくれるな。俺がどんなに迷っても、血迷ってもお前は気高く、凛々しい。本当は俺が最初に惚れたのはお前かもしれないな」


「ウォフ」


「ドヤ顔気味に吠えたな、お前。やっぱり、リリスに対しての密かな敵対心とかあったんじゃねぇか」


「クゥ~ン」


「『そんなことないよ』ってそれこそそんなことないだろ。少なくとも、最初の頃はリリスがお前を枕にするのちょっと嫌がってたじゃねぇか」


「ウォン」


「『リリスをそれ以上悪く言うな』っていつの間にそんなに仲良くなってたんだ? まあ、ここまでずっと一緒にやって来ておいてずっと敵対心持っていたらそれはそれでおかしいか」


 クラウンは少しだけ口角を上げながら、手を頭の後ろに組む。そして、そっと目を瞑る。


「ロキ、お前は俺の果たす目的を見届けてくれよ」


 そのそっと投げかけた言葉に対して、ロキは答えることはなかった。


 ***************************************************


 翌日、クラウンは周囲から近づいて来る大量の気配に気づいた。そして、勢いよく目覚めるとすぐさま近くの木に登る。


 その木の上から周囲を眺めるとクラウンは思わず「昨日結界内で寝なくてよかった」と内心で思った。


 それはクラウンでも冷汗をかくほどの()()()()が地上を侵食するように迫って来ていたからだ。


「お前ら起きろ! すぐさまここから退避する準備をしろ!」


「クラウン? どうした?」


「いいから早く!」


 リリス達は普段見せないクラウンの切羽詰まったような声を聞くとすぐさま動ける準備を整えて、クラウンがいる木の周辺の木へと登っていく。


 そして、クラウンが指差す方向を見ると思わず全員がそのあまりの数に引いた。


「何のかしらあの数......」


「もしかして、あれは全部――――――アリ?」


 リリスがそう告げたのは正解で、一斉に黒い何かがひしめき合ってクラウン達に向かって進んでくるのは全てアリであった。


 その数は軽く数万はいくだろうか。しかも、それがよく見るアリのサイズでなく、クラウン達よりも大きい二メートルほでどであった。


 それがガサガサと不快音と出しながら木々を埋め尽くしている。まさに黒い波。かなり広い範囲まで黒でジャングルが塗りつぶされていく。


 このままここにいればアリの大波に襲われるのは必須。さすがに相手にしていられる数ではない。


「エキドナ! シルヴィー! 一旦ここを離れる! 竜化しろ!」


「わかったわ」


「了解なの」


 エキドナとシルヴィーはすぐさま白い竜と赤い竜に姿を変えるとクラウン達を乗せて空中を羽ばたいていく。


 上空からアリの進軍を見てみるとまさしく気持ち悪いほどの数であった。どこもかしこもアリ、アリ、アリで一体どこから湧き出ているのか。


 そのせいか頭に浮かんだ気配察知(レーダー)はあり得ないほどの敵の数を示している。さすがに量が多すぎて脳が悲鳴を上げそうだ。するとその時、ベルが叫んだ。


「主様! 後ろを!」


「なっ!」


 その声にクラウンは振り向くと大量のスズメバチは空中を埋め尽くすように存在していた。しかも、その数はアリと一緒で数万匹ほど。


 もう一生分の虫の数を見た気がする。どうやらそのせいでクラウンの<気配察知>はキャパを超えるほどの異常な数に悲鳴を上げていた(頭痛がしていたらしい)


 地上はアリの波が黒く塗り潰していて、空中はハチの大軍が青空を覆い隠している。そして、そのアリとハチはクラウン達に目もくれず衝突しようとしている。


 なんだろうかここは巨〇列島か何かだろうか。現時点で確認できている虫はアリとハチしかいないが、他にもなにかいたりするかもしれない。ともかく、今はとにかくこの争いに巻き込まれないように避けなければ。


 そして、クラウン達はその二軍から距離を取るとアリとハチが激突した。ハチは有利な空中からおしりについている毒針をショットガンのように射出している。


 それに対し、アリは飛べずに一方的にやられている――――――と思っていたら、アリの死体に乗ったアリ.......の上にさらにアリが乗って、またそのアリに他のアリが乗ってと繰り返していき、アリのタワーを作っている。


 あの動きは軍隊アリにあったような動きだ。仲間の体をアゴで咥えて、加えられたアリは別の仲間をアゴで咥えて道なき道を体を使って作っていく.......どうやらそれで空中すら徐々に自分達の行動範囲にしているらしい。


 ハチがそのタワーを壊そうと毒針を射出しても、壊れたそばから別のアリが補強していく。そして、ハチが少しでもアリにアゴで掴まろうものなら地上の集団で一斉に襲いかかられている。


 昆虫バトルをまさか実写で見る日が来ようとは。いや、そんな感想よりももっと端的に表せる言葉がある。そうそれは―――――――


「「「「気持ち悪い」」」」


 リリス、ベル、エキドナ、シルヴィーは揃って同じ言葉を吐いた。「それはそうだろうな」とクラウンも苦笑いでその光景を見て思っていた。


 力量差は丁度五分五分といったところでいくつものアリタワーが出来ている一方で、ハチも無限に射出している毒針で殺しまくっている。


 そんな他人事みたいに静観しているクラウン達に二軍の魔の手が迫っていることをまだ彼らは知らない。

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