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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第10章 決戦

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228/303

第228話 信じる勇気#1

読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)


残り数話ですね

「待ちわびたぞ、リリス。随分と遅かったみてぇだな」


「気安く私の名前を呼ばないでくれる? 確かにクラウンと呼んだけれど決してあんたのことじゃないわ。私はパートナーはもっと返事は寡黙よ」


「ははは、そりゃあ手厳しいことだな。だが、お前がオレに勝てると思うなよ?」


「言ってくれるじゃない。なら、とっとと始めようかしら」


 リリスはクラウンとの舌戦を終えると一気に古代サキュバスへと変身した。その瞬間、リリスの体に合った黒いシミは消えてもとの美しい肌に変わっていく。そして、一気に羽ばたきながらクラウンに突撃していく。


 すると、クラウンは右手を広げるとその手の黒い刀を作り出した。それから、迎え撃つかのように走り出す。


 二人が移動し始めて一秒も経たないうちに衝突音が空間に響き渡っていく。リリスの蹴りとクラウンの刀が打ち合った音だ。


 衝撃音とともに発生した風は仁の居る鉄格子を勢いよく通り抜けていくが、仁はうつむいたまま戦いの光景に見向きもしていない。


 リリスはそのことを気にかけながらも、一先ず目の前にいる敵に意識を集中した。さすがに最初から舐めてかかれる相手ではない。


 リリスとクラウンは一度離れると再び脚甲と刀をぶつけ合う。その互いの力は拮抗しているかのように見えた。だが、次第にクラウンの刀が押されていく。


「オレが力負けだと.......!?」


「知ってるかしら? 腕の力よりも脚の力の方が何倍も強いのよ」


 リリスはそのままクラウンの刀を弾くとすぐに引き戻し、蹴りつける。クラウンはそれを軌道を予測して避け斬りつけるが、その前にリリスの次の蹴りが迫っていた。


 一撃、三撃、五撃とリリスが一秒間に蹴り上げる回数が増えていった。そして、最終的にシュシュシュシュッと風を斬る音とともに幾重もの蹴りの残像が見えるほどになっていた。


 クラウンはその攻撃に防ぐの精一杯。そのことにイラ立ちが隠せないようであった。しかし、すぐに表情をニヤッとさせる。


 それはリリスの攻撃が数秒過ぎたあたりに起きた。段々とリリスの蹴りの勢いが減って来たのだ。今のリリスはまだスタミナが尽きたとは程遠い表情をしている。ということは、何か別の要因で起きたということ。


 リリスは一度止めようと最後の一撃を強めに蹴り、クラウンに距離を取らせた。そしてその間に、リリスは自分の脚に起きた違和感を確かめる。すると、そこには蹴り上げていた右脚にくるぶしから膝にかけて白い糸がいくつも絡まるように巻き付き、地面に固定されていた。


「てめぇも良く知るパートナーの魔法だ。むやみに蹴ってくれて実に助かったぜ!」


 クラウンはリリスがその場から動けないこと内に一気に突撃した。刀を構える姿勢は刺突の構え。それをさらに上段まで上げる。


 向かって来るクラウンに対し、リリスは存外冷静な顔をしていた。まるでそれぐらいの殺気なら慣れてしまっているみたいに。


 リリスは右脚が地面に平行に固定されていることを確認するとクラウンの刺突に合わせて、右脚を軸に体を捻りながら回し蹴りした。


 しかし、クラウンもその行動は予測済み。リリスの蹴りを紙一重避けながら、無防備な側面から刀を一気に突き出す。


 そんな危機的状態でもリリスはまだ冷静だった。それどころか笑みさえ浮かべていた。ようやくクラウンを自分の力で救えることに喜んでいるみたいに。


 リリスは避けられた脚をそのまま体ごと捻っていく。そして、固定された右脚には炎を纏わせて糸を焼き千切り、体の回転の勢いで蹴り上げた左脚で刀を弾いた。


 さらにそれによって無謀になったクラウンに横向きの超重力を当てて吹き飛ばしていく。その光景を見ながら上手く着地すると背後にいる仁へと振り向かず声をかける。


「ねぇ、クラウン。私、強くなったでしょ?」


「.......」


「でもね、この力は私一人で引き出したものじゃないの。仲間達にも引き出してもらったのも当然そうなんだけど、それ以上にこれはあんたがくれた力なのよ?」


 仁は思わずその言葉にピクッと反応する。依然として俯いた顔であるが、ようやくここに来たリリスへの初めての言葉を告げた。


「僕は.......君に何か与えられるほど強くない」


「そんなことないわ。現にこうして私が―――――――」


「僕はずっと恐れていただけだ!」


 仁は弱弱しさをさらけ出すように大声を張った。その言葉をリリスは黙って聞き入れる。その二人に次の言葉が紡がれることはなかった。なぜなら、その前にクラウンが復活したからだ。


「あーあー、そういやすっかり忘れてたな。この空間での力の使い方を」


 クラウンは首をゴキゴキと鳴らしていくと平然と立ち上がった。そして、憎たらしい笑みを浮かべながらリリスへと告げていく。


「ここは()()()空間だった。なら、はなから力負けなんてするはずねぇじゃねぇか。それをオレよりもお前が先に気付いていたなんてなー。まあ、その姿の時点で答えを告げているか」


「―――――――!」


 リリスはその言葉に思わず歯噛みした。最初こそ気づかれていないことが好都合だったのにこんなにも早く気づかれてしまうとは。


 だが、もはや気づくのは時間の問題だった。遅かれ早かれ気づいていたのは確かだ。ただその時間が早すぎたのは痛いが。


 そうなるともうここからは自分のイメージの補填勝負となる。とにかく、明確な勝つビジョンを考えないと―――――――


「リリス、もういい。もうここから逃げろ。リリスじゃ勝てない」


「!」


 仁の口から吐き出された言葉にリリスは思わず後ろを振り向く。そして、背後の鉄格子にいる仁の顔は―――――泣いていた。


 まるでこれから起きうる結末を知っているかのように。あんなに弱気な仁はリリスにとって初めてだった.......いや、それすらも目を背けていたことなのかもしれない。


 リリスはそっと目を瞑ると良い笑顔で告げた。


「いーや」


「――――――え?」


 リリスの言葉に思わず仁は呆けた表情をしてしまう。そんな仁の表情を「いいもん見た」とでもいうかのような口元を緩めた表情でリリスはクラウンへと構えた。


「さあ、かかってきなさい!」


「減らず口を!」


「リリス!」


 仁の言葉も虚しく鉄格子の外では二人の戦いが始まってしまった―――――――否、一方的な攻撃が始まってしまった。


 クラウンが消えると本来なら動いているはずのリリスは全く動きを見せなかった。それはクラウンが背後に回った時も。


 がら空きの背後をリリスは思いっきり蹴り飛ばされるとそれよりも早くクラウンが先回りする。そして、頭上に掲げた刀を思いっきり振り下ろす。


 ドゴオオオオオンッ!という強烈な爆発音とともに精神空間でありながら、砂煙のようなものが立ち込める。


 その砂煙からリリスが後方に下がりながら飛び出てくる。そのことに仁は思わず安堵の息を吐くが、すぐに気づいた。傷つけることも禁忌とされるような顔に血が流れていることに。


 どうやら額を切ってしまったようだ。その血がリリスの顔を血濡れに染めていく。それを見た瞬間、仁の心は激しく締め付けられた。それでも体は動こうとしない。


 するとその時、リリスは立ち上がりながら仁に告げる。


「ねぇ、クラウン。どうせ道化ならさ。もっと私を笑わせてよ。もっと仲間を笑わせてよ」


「ははは、笑って殺してやるよ!」


「あんたじゃないっつーの」


 リリスは正面から向かって来る気配に目を凝らし、自身の羽を微振動させた。そして、クラウンが自身の側面に現れた時、その場から咄嗟に距離を取る。しかし、まだ動き出しが遅いようで振り降ろされた刀で腕をかすってしまったが。


 それでもクラウンを一時的に動揺させることが出来た。このわずかな時間が仁の心の変化に必要だとリリスは信じている。


「不器用でもいい。不格好でもいい。そんな不慣れな仁を笑っちゃうかもしれないけどさ。それが道化師(あんた)じゃない?」


 クラウンは再び高速で動くとリリスを中心軸に<流爪>を放っていく。四方八方から五本の尾を引く鋭い斬撃が飛び交う。


「おらよおおおおおおお!」


「くっ!」


 リリスは咄嗟に上空へと羽ばたいていく。するとその時、真上からクラウンが刀を振り下ろしながら落下してきた。


 リリスは咄嗟に避けるが右の羽がクラウンによって切断されてた。そして、落下していくクラウンはリリスの背中に糸を張りつけると力任せに振り回し地面に叩きつける。その瞬間、盛大な衝撃音が周囲を駆け巡り、砂煙がリリスを隠した。


 そんな砂煙の中、リリスは地面に手をつきながら立ち上がろうとし、同時に変わらずに仁を鼓舞する言葉を送っていく。


「クラウン.......あんたは強いわ。私が知っている中で誰よりも強い。私が強いのはね.......あんたが強くいてくれるからよ。私はあんたの隣で並びたい。歩きたい。だから、強くなれるのよ。いつまでも、どこまでも」


「戯言だなぁ」


 刀を担ぎながらクラウンが着地した。そして、リリスの言葉を吐きながら嘲笑い毒を吐く。そんなクラウンに構うことなくリリスは言葉を続ける。


「クラウン、今のあんたの姿.......とっても好きよ。いくらでも頑張れる。いくらでも期待できる。もし.......もし、今のあんたがその姿で弱いと思っているなら大間違いよ」


 リリスは四つん這いまで何とか起き上がる。美しかった肌には切り傷、擦り傷が見え、唇を切ったのか血が流れている。そして、その血は止まることなく地面に滴る。


「今のあんたは姿が前に戻ってもあんたのままよ。私が知っている強いクラウンのまま。このニセモノも言ってたじゃない――――――『オレの空間』だって」


「黙ってろ、クソ女」


「うぐっ!」


 リリスはクラウンに横っ腹を蹴られ、大きく吹き飛び地面を転がっていく。それでも、リリスはめげずに地面に手をつけ立ち上がろうとする。


 手をつけ体を起こし、膝を立て四つん這いになる。そして、気合で立ち膝になると足を立てて立ち上がる。


 そして、リリスは右手で左腕を押さえながらも、まるで心配をかけさせないような笑顔で鉄格子の中にいる仁へと告げた。


「クラウン――――――信じてるわ」

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