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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第10章 決戦

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第219話 現れた化け物

読んでくださりありがとうございます(=´∀`)


魔王と勇者という在り来りさがいいですね

 クラウンは響がついに殺し合うことを覚悟したことに笑みを浮かべると高らかに叫んだ。


「全力の殺し合いだ! 俺も全力で屠ってやるよ!」


 クラウンは自身の魔力を溢れ出させると頬にある紅いラインが首を伝っていくように枝分かれして伸びていった。


 そして、クラウンは黒い魔力を具現化させて作り出した黒いリングを背中に宿すと響に告げる。


「いくぞ、クソ勇者。最後に立っていられるのはどちらか一方だけだ」


「.......わかった」


 響は強く歯噛みすると重たい口でクラウンの言葉に同意した。心の底からクラウンの言葉に納得出来ているわけではないが、覚悟は本物のようである。


 響とクラウンは互いに鋭い目を向けた。その瞬間、気迫のようなものがぶつかり合い、突風が吹き荒れる。


 そして、阿吽の呼吸のようなタイミングで同時に動き出した。


 クラウンは狙いを定めるように左手で標的を定めるように掲げながら右手の刀を大きく振り上げ、響は両手に持った聖剣を右下方に向けながら徐々に上方へと移動せていく。


 その移動時間は一秒とかからずに―――――――衝突した。


 同時に振り下ろした刀はオレンジ色の火花を散らしながら交わり合い、互いに武器を押し付け合う。どちらも引かない意志が現れているかのようだ。


 すると、二人は同時に右脚を蹴り込んだ。互いの胴体に重たい蹴りが食い込んでいく。そして、同時に吹き飛ばされていく。


 ここですぐに体勢を立て直した響は低い体勢から少しずつ体勢をもどしつつ、トップスピードでクラウンへと急接近していく。


 それを見たクラウンは背中にある黒いリングから四つの球体を作り出し、その球体に魔力を込め圧縮していく。


「破黒弾」


 その球体から響に向かって高速の弾が射出される。その弾は一つ一つが高エネルギーを持っていて、響がその弾を避けた瞬間、大地を抉るほどの爆発を起こした。


 それでも向かってきた弾が見切れない速度ではないので、響はスピードを落とさず駆け抜けていく。すると、クラウンはリングから現在の二倍の数を作り出し、十二個ある球体から大量の<破黒弾>が発射される。


 視界を埋め尽くさんばかりの玉の数は響の顔を曇らせる。弾と弾の距離が絶妙な位置であるために隙間を縫って進むのは危険と思われた。


 そう考えた響は一時クラウンに接近するのを止め、周囲を回り始めた。その響きを覆うように黒色の弾は容赦なく響を襲っていく。


 響が紙一重で避け続ける弾は一つ一つが地面に着弾すると地響きを鳴らしながら、大きく砂煙を上げていく。


 バババババババッとマシンガンと如く連続で射出されるたまに大して、響はずっと隙を伺っていた。しかし、どうにもどちらかがアクションを起こさなければ現状は変わらないようだ。


 そう考えると響は走るのを止めると向かい来る黒弾に向かって光の斬撃を放っていく。すると、黒弾は響の威力に押し返されるように飲み込まれ、クラウンに迫りくる。


「どうした! こんなもんか!」


 だが、クラウンにはその程度では通用しない。刀を一振りされただけで斬撃を蹴散らされてしまった。しかし、響にとってそれは大した問題じゃなかった。


「そんなわけあるか!」


 クラウンが斬撃を弾いた時、黒弾の砲撃が一時的に止まったのだ。それはつまり<破黒弾>に意識を割いている間は他のことは出来ないということ。


 一撃で大地を抉るほどの威力だ。しかもそれがマシンガンのように連続射出されるとなれば、それだけその攻撃に意識を割くことになるだろう。


 そこを見逃す響ではない。その場から一気に駆け出すとクラウンへと急接近していく。それを見たクラウンはニヤリと笑った。


「読めてんだよバァ~~~~カ」


「こっちこそ読めてんだよ、仁!」


 クラウンはリングから球体を量産し、響を囲うように配置し始めた。まさに鳥かごのような状態で、そこから発射されればタダでは済まないだろう。


 しかし、響も隙が生まれたかといってそれが罠である可能性を考慮しないで動いたわけではない。伊達に代償は払っていないのだ。


 響の背中の翼が急激に神々しく光るとはためかせるように大きく広げた。そして、その翼にある羽がわずかに微振動していく。


「浄白の羽」


 響の周囲に襲いかかる黒い殺意の弾に対して、その殺意を浄化するような白き羽が向かい討つように発射された。


 その瞬間、空中で黒い爆発と白い爆発が同時に起こり始める。どちらとも自身の意思を押し通すかのように色分けされたその爆発は周囲で一斉に展開された。


 ―――――――――バババババババババババッ!!!


 花火のような白と黒の鮮やかな光を放ちながらも、花火よりも殺伐とした爆音と爆風をバックに響はクラウンへと直進していく。


 そして、両手で力強く握った聖剣を思いっきり振り下ろす。それをクラウンは剣を横に持つことで受け止める。弾き返すとそのまま横なぎに振るった。しかし、響の剣がすぐに下に向けられ、受け止められた。


 互いの視線と死線がぶつかり合う。それでもなお両方とも引くことを、やめることを放棄した。


 響はクラウンの刀を弾くとすぐに下段に降ろし、切り上げる。それに対し、クラウンは後方に下がることで紙一重で避け、左脚で上段に蹴り込んでいく。


 だが、響に左腕で受け止められ、右手の聖剣で刺し込まれる。それを刀で軌道をそらしていくと体を無理やりねじりながら、右脚で再び上段蹴りしていく。


「ぐふっ!.......はあああああ!」


「がはっ!.......おらああああ!」


 クラウンの蹴りは響の顔の右半面を捉え大きく傾け、体を吹き飛ばす。だが、響はそらされた剣を咄嗟に逆手に持ち変え地面に刺すと吹き飛ばされるのを押さえた。そして、右脚でがら空きの脇腹へと前蹴りしていく。


 クラウンはそれですぐに吹き飛ばされるが、すぐに雄叫びを上げながら体勢を整える。そして、向かい来る響に対して剣を振るった。


 そこからは剣と刀が激しく衝突し合う音と金属が激しく衝突して散る火花だけがその戦いを支配した。


 互いに引かない想いの乗った重い一撃はいくつもの剣筋となって相手へと届かせようとしていく。


 その光景はさながら演武とも言えようか。互いの力がほぼ拮抗していていくつもの残像を生み出しながら、交わらせていく。


 その互いに無駄のない、最短で攻撃を届かせようとする攻撃モーションは洗練された美すらあった。


 しかし当然ながら、現状はそうではない。どちらかが死ぬまで終わらないまさに死闘の剣戟なのだ。


 それは誰にも止めることは出来ず、見届けるしか出来ないと思われた。なぜなら一部の兵士や魔族兵がもはや棒立ち状態でその異次元とも言える戦いを見ているからだ。


 到底自分達が届くことはないだろう場所にいる存在。天上界に住む者、超越者、少なからずそのような存在であるという認識であり、もはやレベルという概念は吹き飛んでいた。


 それはある種の恐怖感を周囲に植え付けていた。なぜならただでさえ強いとわかっていた人が化け物だった。


 そして、その化け物はもう一人の化け物と思考を止めるような、正常な判断を狂わせるかのような光景を作り出しながら戦っている。


 認識はすでに化け物なのだ。つまり勝った方は―――――――化け物を超える化け物。命がいくつあっても足りない現存する生物の何かということになるのだ。


 よって、連合軍の中ではもうすでに響に恐怖する者がいた。味方であり、正常に会話できる響にまだ勝って欲しいと思うが、それ以上に近づきたくない、関わりたくない。そのような思考回路を生み出させてしまっている。


 しかしながら、これは仕方ないことともいえよう。この世界の人々は異世界から召喚された勇者達よりも明らかに弱い。


 .......いや、勇者達が強すぎるという方が適切であろう。それは当然味方であればどんなに心強いことだろう。


 しかし、何かの理由でもし反旗を翻されたら? それだけで兵士たちはたちまち全滅するだろう。ならば、触らぬ神に祟りなし。これ以上に関わる必要はない。この戦争だけで終わり。そう考えている兵士も少なくない。


 そして、その考えに至っているのはその光景を後方から眺めているエルザとて同じ気持ちであった。


 基本エルザは物怖じしない性格ではあるが、この戦争においては違った。今も繰り広げられている壮絶な剣戟に目を奪われている。当然、恐怖にも似た感情を抱きながら。


 そんな光景を知る由もなく、二人の剣戟は地上での打ち合いからやがて空中での打ち合いへと変わり始めた。


 絶望を纏った黒い光の筋と希望を纏った白い光の筋が離れたり、近づいたりしながら打ち合いを繰り返していく。


 そこにはまともな会話は存在しておらず、互いの雄叫びだけが周囲にこだまするかのように響き渡り、その刹那に衝突による爆発にも似たぶつかり合いが行われていく。


 追いかけ、追いつめ、反撃され、距離を取る。互いに蓄積し始めたダメージなど関係なく、どちらかが先に剣を相手に突き刺すまで終わらない戦い。


 これが兵士達が異世界人に任せていた勇者の本来の魔王討伐の光景であるならば到底信じたくない光景だ。


 やがて黒と白の二つの光は二重螺旋を作っていくかのように動き始める。それだけ二人の戦いが勢いと激しさを増しているということだ。


 するとその時、ある兵士が「なんだあれ?」と言いながら空の一部に指を指した。それを他の兵士や魔術師たちも思わず目線を動かす。


 そこにいたのは―――――――


「あれは.......竜か?」


 二つの光のさらに上の方に一匹の竜が滞空している。普通ならこんな異常な波動を起こす場所にはなんであれ近づかないというのに。


 すると、その竜の背中に突然ピンク色の発光が起こり、その発光体は二つの光に向かって真っ逆さまに落ちていくと衝突。二つの光を地面へと叩きつけた。


 その異常現象にエルザは思わず困惑した。化け物と化け物の戦いに割って入ってきた存在はなんなのかと。


 いや、そんなのは決まっている。化け物と化け物を御せるのは同じ化け物でしかいないだろう。


 そして、遠くからエルザに見られているそのピンク色の光を纏った人物は地上に落ちた魔王の方を見ながら告げた。


「全く......あんたはどうしようもないバカね。そんなバカを取り戻すために帰って来たわよ」


 誰もが目を奪われそうな圧倒的とも言える美を放ち、美しき紅の髪を揺らしながら魔族特有の羽を生やした女性――――――リリスは愛おしそうな表情を浮かべた。

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