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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第9章 道化師は堕ちる

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第198話 道化の原点#14

読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)


ここから過去編の佳境に入ります

 とある世界に一人の少年は呼ばれた。その少年は他にも一緒に召喚された仲間がいて、そして呼び出した王様に邪悪な存在が自分の国を脅かしているので救ってほしいと頼まれた。


 最初は半信半疑であったが、帰る方法が邪悪な存在である魔族が握っているというので、少年少女達は仕方なく帰るまでの間、この国に住むことを決意した。


 それから、一年もの長き渡りこの国のいろんな人と接してきた。そして、その年月だけたくさんの関係を築いていった。


 それこそ、この世界を離れることが寂しくなるぐらいに。それだけ充実していたのだ。人によってが、強くなることに楽しさを見出したり、人の命を助けることに喜びを見出したり、好きな人を作り愛おしさを見出したりと。


 誰しもが簡単には決断できないほどに見出した感情を膨らませ続けていった。だが、目的を忘れたわけじゃない。


 彼らの目的は彼らが関係を築いた人々の住む国を脅かす魔族から人々を救うこと。そのために魔族と衝突した際、彼らは一生懸命に戦った。


 最初こそ嫌悪していた人を殺すことも、彼らの大切な存在を守るために躊躇いなく魔族を斬った。痛がる怨嗟も彼らにはほとんど届いていなかった。


 それほどその国を愛していた。それほどその国を信じていた。だから、彼らは死にゆくこの世界での友の屍を超えて進行を続けた。


 そして、幾多もの戦いの中でついに魔王軍と衝突した。彼らは疲労し、傷つきながらも魔王いる場所へと辿り着いた。


 だが、彼らはその時違和感に気付いた。それは心なしかこの魔王のいる場所にやって来た通路や部屋の位置、それから魔王のいる場所がもとの場所に似ていたのだ。


 彼らが思うもの場所とは、彼らが召喚された国のこと。部屋の内装や家具や置物の位置が瓜二つであったのだ。


 しかも、そのことに魔王と戦うためにやって来た全員が感じている。なんとも不思議な現象である。


 だが、目の前に魔王がいる。あの魔王を倒せば元世界に帰れる手掛かりが見つかり、同時に自分達が愛した国は救われる。


 その思いに頭の中をシフトさせると彼らは一斉に動き出した。遠距離魔が主体の役職の数人かが魔王を守るために存在していた騎士を討ち倒し、その隙に勇者が魔王へと斬りかかった。


 だがその時、魔王は意味深な言葉を告げた。


 「どうしてこんなことをするんだ! 正気に戻れ! 戻ってくれ!」


 それは命乞いに等しい言葉であったが、なんとも疑問が残る言葉であった。なぜなら、これまで何回か戦ってきて、その全てが魔族からの進軍だったのにも関わらず、最後の最後でその物言い。


 しかし、勇者はその言葉を聞きながらも、一度振り下ろした剣を止めるわけでもなく、そのまま斬り殺した。


 戦いはあっさり終わり、なんとも手ごたえのない戦いであった。勇者の攻撃を避けようともせず、不思議な言葉を告げ、怯えた表情で死んだ。


 それは違和感しか残らない戦いだった。それぐらいのレベルなら、一年もの猶予はまるで要らなかった。


 するとその時、魔王の間に一人の少女がやってくる。その少女は斬られた魔王を見ると酷く悲しみ、また同時に勇者を不俱戴天の仇のような顔で睨んだ。


 そして、魔王と同じように不可思議なことを言う。


「どうして!.......どうして、殺したんですか.......私達が何をしたというんですか.......ずっとずっと信じていたのに.......」


 違和感が加速していく。何かがずっと引っかかっていて、でもそれが分からなくてイライラするような、気持ち悪いような感覚に彼らは襲われ始めた。


 するとまた、この部屋に一人の人物が歩いてきた。その人物は魔族のような姿をしながら、彼らの国の神官の白服とは真反対の黒服に身を包んでいる男であった。


 その服装はまるで――――――彼らの国の教皇と同じ姿だった。


 それはほぼ同時に全員が気づいた最大の違和感であり、それが分かった瞬間、清々しいほどに頭がスッキリしていくのを感じた。


 まるで淀んで濁っていた世界がクリアに見えていくみたいで........


「.......嘘だ」


 彼らの誰かが呟いた。まるでじゃなく、彼らの見ていた世界は本当に淀んでいて、濁っていたのだ。


その証拠に、目の前にいるのは自分達に優してくれていた王様に、可愛らしい笑顔を見せてくれた姫、そして黒ではなく白の神官服を着ていろいろな知識を教えてくれた司祭、それから友だと言ってくれた数々の顔なじみの騎士達。


 つまり彼らは殺したのだ、自分を信じていた人を。壊したのだ、自分を助けてくれた人を。斬ったのだ、これまでの全ての縁を。


 それを理解した瞬間、誰もが武器を足元に落とした。自分がやってしまったことに、今起きている状況に理解が追いついていなかったのだ。いや、正確には止まっていたのだ。


 見たくない、あり得ない現実を目の前に彼らは絶望した。しかし、同時に疑問もある。どうして自分は、自分達はこんなことをしてしまったのだろうと。


 普通なら気づくはずだ。気づかないはずがない。にもかかわらず、犯すことすらあり得ない過ちを彼らは犯した。


 するとその時、司祭は酷い顔をしている彼らを見ると醜く笑って見せ、姫に近づくとその頭を跳ね飛ばした。


 たった一度の腕振りだけで。それこそ剣を使ってでしか出来ない芸当をいとも簡単に。そして、彼らはまた理解できない現実を突きつけられる。


 そんな彼らを笑いながら、教皇は面白おかしく告げた。


「いやー、実に滑稽だったよ。まさかこんなにも上手く嵌ってくれるとは全く思わなかった。予定外のことも起こり得ると思っていろいろ予測していたのに、その労力こそが無駄だったみたいに。この結果はさぞかし我らが主もお喜びになるだろう。ということで、僕はまた新しいおもちゃのためにこの国を建て直さきゃいけない。だから、()()()()()()勝手に死んで?」


 その言葉に勇者が発狂した。そして、狂ったように剣を持って襲いかかるも心臓を一突きで殺され、それに続いた二人も勇者を刺したはずの腕から腕が伸びて刺されて死んだ。


 恐怖は過ぎればある一定値で絶望に変わり、また絶望はある一定値で笑いに変わる。もちろん、理性などない狂った笑いだ。


 ()()()()()()に体が恐怖して、自らを壊していく。どっちが生でどっちが死かわからなくなる。こんな単純なことにもわからな自分がおかしい。おかしいおかしい、ああ笑えてくる。


 そんな三人の無残な姿に何人かは絶望で瞳を黒く染め上げて、生気もないままに自害した。また何人かは狂ったように叫びを上げながら、その場を去っていく。


―――――――これが封印されていた記憶よ。目を覚まして。


「!」


 まるで長い夢を見ていたかのように一人の冒険者風の男性は目を覚ました。その顔はあらゆるところから滝のような汗を流していて、また体中の汗腺から大量の汗をかいていた。


 その姿はまるでその男性一人に大雨が降ったかのような感じで、濡れていない場所の方が少ないという感じだ。ふと周りに視線を映せばそこは道の真ん中だった。両サイドは森の囲まれていての一本道。


 すると、男性は自分の頭を正面から押さえている女性の存在に気付いた。その女性は美しく、また艶のあるような表情と容姿でありながら、強い眼差しで目を合わせてくる。


 何事もなかったら惚れてしまいそうな完璧な女性だった。だが、あいにく男性にはそのように感じる余裕はまるでなかった。


 すると、その女性は依然男性の顔を押さえたまま告げる。


「これがあなたが体験してきたこと。嘘じゃないわ。それにそれはあなた自身が一番分かってること」


「どうしてこの記憶を.......」


「あなたが一番まともだったから。あなたの前にも似たような人を見つけたけど、全員がダメだった。そして、私には目的があるの。そのために、あなたの外部からプロテクトされた記憶の封印を私が解除したのよ」


「目的?........何をしろと?」


「理解が早くて助かるわ。もう二度とあんな悲劇を繰り返さないために、私の頼みを聞いて欲しいの。それは絶望か希望かの未来の鍵を握る少年に会って、強くして欲しいの。肉体的にも、精神的にも。もう私の魔力は少ない未来予知の精度も落ちてきて、精一杯やってそこまでしか()()()()()()()。もう何度も何度もあんな未来はごめんよ.......だからお願い、どうか私の頼みを聞いて!」


 その女性は男性から手を離すと思いっきり頭を下げた。恥もプライドも捨てたような姿勢はそれに女性の何かの全てをかけているようであった。


 男性は女性にもう一度詳しく目的の経緯を聞くとその頼みを聞くことにした。


********************************************************

「その少年が僕なんですか?」


「そう言うことになるね」


 彰は長い独白を告げると「少し疲れた」と少しだけおどけてみせた。それはあまりに重たい空気になってしまったために空気を変えようという意味合いだったのだが、仁にはあまり効果がなかった。


 するとその時、仁は彰の話を聞いて思わず気になったことを尋ねた。


「そう言えば、彰さんが召喚された国ってどうなったんですか? もしかしてあのまま崩壊して消えたとか?」


「ははは、いっそのこと消えた方が良かったかもね........」


「?」


 仁はその含みのある言い方が気になった。彰は何かを知っている。だが、その何かを仁に言うつもりは無いらしい。


 だが、気になって仕方がない。結局あの国はどうなったのか? そして、黒幕だった司祭はどこへ行ったのか?


 怖いもの見たさというやつかもしれない。しかし、自分にも関係するようなので知っていおく権利はある。


すると、彰は太ももに肘をつけるとそのまま猫背に曲げて、頬杖をついた。そして、本当に仕方なさそうにため息を吐きながら告げる。


「仁、君は僕の何だっけ?」


「何?.......ええっと、後輩です」


「何の?」


「『何の?』って、そりゃ勇者の.......!」


 仁はその言葉を呟いて気づいた。確か、教皇はこの国では二回目の勇者召喚と言っていた。ということは、一度目もここでその司祭というのは――――――――


「どうやら時間切れみたいだ。勘が鋭くて嫌になる」


「二人で密談とは感心しませんね~」


「!」


 教会に突然響き渡るもう一つの声。その声に仁は思わず振り返るとそこには全身を白い神官の服で身を包んだ教皇の姿があった。

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