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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第9章 道化師は堕ちる

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第184話 背負っているもの、背負ってもらうもの

読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)


改めて思うけど割りと超大作な気が......あくまで自分ではね

「!」


「気が付いたのね」


 クラウンはパッと目を覚ますと荒く呼吸を繰り返していた。その額には汗をかいていて、それが頬を伝って流れている。


 するとすぐに、リリスが話しかけてきた。その姿を確認するとクラウンはすぐさま自分の容姿を確認する。


 今までと変わりない容姿だ。どうやらあれは夢であったらしい。いつの間に眠りこけていたのだろうか。それも、見た夢があんなのとは.......なんとも目覚めが悪い。


「悪夢です?」


「.......まあ、そうかもな。普段見ないのにまさかこんな所で見るなんてな」


 クラウンは近くに来て尋ねてきたベルの質問に頭を撫でながら答えると周囲を確認していく。すると、ここはどこかもわからない一室であることがわかった。


 あまり大きくない部屋ではあるが、本棚や机らしきものがあることから隠し部屋のように感じなくはない。


 クラウンは寝ていたロキ枕から上体を起こすとリリスへと聞いた。


「ここは神殿の先か?」


「ええ、そうよ。あんたが突然倒れたから、たまたま見つけたここで目覚めるまで休もうということにしたのよ。それにあんたも苦しそうな表情していたしね」


「そうか.......どれぐらい寝ていた?」


「そんなに時間は経ってないないわよ。時間にして三十分ぐらいかしら?」


「そんなにか。なら、悠長に過ごしている暇はない。すぐに移動するぞ」


 クラウンは重だるく感じる体を無理やり動かして立ち上がろうとする。だが、その行動をすぐに止めたのはカムイだった。


「待て待て。俺のために急いでくれるのは嬉しいが、この中での中心軸がそんな様子で行ってもすぐに瓦解するだけだ。行くなら、万全な状態でな」


「.......そうだな。悪かった」


「気にするな。俺とお前さんの仲だ」


 カムイはそう言うと本当に気にして無さそうにニカッと笑う。大切な妹が目と鼻先で舞っているというのにこの落ち着きようは何だろうか。そのことにクラウンは少し疑問に思う。


「ここに来るまでに変わったことはあったか?」


「いいえ、特にないわ。リルが罠とか仕掛けについて注意を払ってくれていたけど、安全な通り道であることがわかっただけだった。まあ、それくらいかしら。魔物すら何もいなかったし」


「そうか」


 クラウンは朱里と雪姫にも視線を送る。すると、その二人も平気であることを伝えてくるが、それに関してはエキドナに目配せして確認。エキドナも頷くようなので、本当に何もなかったようだ。


「にしても、あんたが突然倒れるからびっくりしたわよ。ダメージ食らってもへこたれないあんたが外傷もなく倒れるから」


「俺を無敵超人か何かと勘違いしてないか? 俺はまだまだ強くない。だからこそ、もっと力を求めている」


「マスターの戦闘レベルはこの世界からしてもトップだと思いますが」


「それはお前の情報がアップデートされてからの言葉か? たとえそうだとしても、お前の認識を掻い潜っている奴は必ずいる。そいつと戦えば、俺はまだわからない.......」


 クラウンはそう言ってラズリとの戦いを思い出した。その戦いは苦戦に苦戦を重ねてようやくギリギリで掴んだような勝利だ。


 だが、完璧な勝利ではない。ラズリを確実に排除できなかった以上、再び同じように襲ってくるかもしれない。


 そう考えると、ラズリの性格上確実に自分を狙ってくるだろう。それに飽き足らず、仲間も全員殺しに行くかもしれない。


 そうなれば、自分が殺られた時点で詰みだ。ラズリに集団で戦って勝てるかどうか。リルリアーゼを除けばさらに勝率は下がるだろう。


 それに他の敵の存在。リゼリアの言葉が正しければ、ラズリと色欲の使徒を除いて残る神の使徒は五人。


 その五人が一斉に襲いかかれば死ぬことは必然となってしまう。となれば、その前に一人一人でも狩って行きたいところだ。


 そして、その残る五人の中で素性がわかっているのはレグリアという傲慢を司る使徒。


 だが、奴は危険だ。それは直感がそう告げている。あいつはラズリとは違って大きく異様であった。


 ラズリは身体能力こそ高いが、弱体化魔法を除けば戦闘方法は人と変わらない。だが、レグリアは違う。


 レグリアは人の姿でありながら、人からかけ離れている。それは初対面の時の背中から現れた何本もの手であったり、レグリアの中から感じる数十もの気配。そして、自分だけに見せたあの顔。


 一人で挑むにはあまりにも危険な存在だ。だが、かといって仲間と挑んでもあまり大差ない結果が現状であろう。


 それはカムイとリリスが強くなったとしてもの話だ。二人は確かに強くなった。だが、この復讐劇で主犯であるはずの自分が強くない。


 だからこそ、強さを求める。それは自分の復讐を終わらせると同時に、大切な仲間を守るために。


 クラウンは落ち着いてきた思考の中でそのようなことを考えていた。いつのまにやら、別の目的も追加されている気がしなくもないが、いまやそれが自分の心の支えとなっている気もするので取り下げることは出来ない。


 仲間の存在は偉大であった。それはこれまでの旅で何度も痛感させられたことであった。だからこそ、これ以上は自分の復讐に付き合わせていいものなのかと思ってしまう。


 勝手についてきているだけと言えばそれまでだが、いてくれることで今の自分があるような気がするのも確かだ。


 そんな矛盾した気持ちがクラウンの中で激しく反発しながらも混ざり合っていく。いつの間にかそれほどまでに仲間の存在が大きくなってしまっていたとは.......


「ねえ、クラウン。一つ聞いていいかしら?」


 するとその時、リリスがおもむろに声をかけてきた。それに対して「なんだ?」と答えるとリリスは直球で聞いてきた。


「クラウンがうなされていた原因ってあの記憶のこと?」


「.......」


 クラウンは その言葉にどう答えればいいか迷った。一言で言えば「違う」と言えるかもしれないが、突き詰めていくと否定できない。


 なぜなら、もう一人の自分が悪意の塊であるならば、それはあの記憶によって作り出されたと言っても過言でないからだ。


 だからこそ、口ごもる。だが、その問いに対して長考してしまったせいかリリスは肯定と受け取ってしまったらしい。


 すると、リリスはクラウンに続けて言葉を告げていく。それは提案であった。


「ねえ、私と雪姫はもう知ってしまったけど、あれはまだ一部なんでしょ? 思い切って話してみたらどう? もちろん無理にとは言はないけど」


「......どうしてそう思う?」


 クラウンはその提案に静かに驚きながらも、すぐにその真意を聞いた。その提案をするということは少なからず理由があるはずだからだ。


 それに対し、「そうね」とクラウンの言葉に納得するようにうなづいたリリスは言葉を並べていく。


「まず思ったのが、あんたは抱え込みすぎであるということ。まあ、私が言えた義理でもないんだろうけど、ここにいる皆は誰しもが辛い過去を背負っている。けど、こうして明るい気持ちでいられるのは、あんたがその重荷を一緒に背負ってくれているから」


「俺はそんなことをしたつもりは無いが......」


「あんたに自覚がないだけで、あんたはしてるのよ。じゃなきゃ、もっとどんよりとした空気のはずよ。それに、そんなあんただからこそ私達は信用しているの」


「.......」


「確かに、私達が勝手にそう思っているだけというのもあるかも知れない。でも、少なからずそう思わせてくれただけでも、私達はあんたに感謝してんのよ。だから、今度は私達があんたの背負っているものを一緒に背負う番ってわけ」


 クラウンはその言葉がグッと胸に染みた。だが、それでもある程度のところでリリス達の熱い思いが急激に冷やされ、消えてしまう。


 まるで自ら壁を作っているみたいに。


 ここまで信用して、助けてくれて、感謝までしてくれる仲間達に対してまだ信じきれない自分がいる。


 いや、自分はきっと信用している。その気持ちは確かにある。だが、それは完全ではなく、何かの壁に阻まれて口に出すまでに届かない。


 もちろん、全て感覚的な話だ。魔法に作用されているわけでもなければ、気持ちの問題であることには変わりない。


 本当はわかっている。恐れていることを。


 仲間を大切に思っているから。自分一人でケジメをつけるから。どんなに恰好のつく言葉で固めようとこの感情が消え去ったことなど一度も―――――


―――――オレの時はあったぞ


「クラウン!」


「!」


 クラウンは突然リリスに声をかけられて思わずハッとした顔をする。どうやらまた考え耽ってしまったようだ。


 だが、リリスがクラウンに声をかけたのはそのことではなかった。もとよりクラウンはきっと考え込むだろうと思っていたので、声をかけるつもりは無かった。


 しかし、リリスは瞬きの間で見た。それはクラウンの左目の白目が黒く染まり、黄色い瞳孔をした瞳を。だから、思わず声をかけた。ただもう一度見た時はいつもの瞳に戻っていたが。


 それが幻か何かだと思うならそうなのかもしれない。ただ妙に現実味を帯びていたのは何とも言えないところであった。


「大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ。少し考え直していただけだ」


 リリスはそういうつもりで言ったわけではないが、本人に違和感がなければそれで良しとすることにした。


 もちろん、その判断が正しいかどうかは現時点でわからない。ただ「クラウンならきっと大丈夫」という気持ちがあったのは確かだ。


「なあ、俺はお前達にとってそんなに信用できる人物だったりするのか?」


 クラウンはふとそんなことを聞いてくる。その言葉を聞いたリリスはふと周囲を見渡す。そして、全員が力づくようなづいたのを確認すると告げた。


「愚問ね。あんたがしてきた行動の全てを肯定するわけじゃないけど、少なくとも私達にしてきたことに対しての報いとすれば十分に信用に値するわ」


「.......そうか」


 クラウンは静かにそう呟くと続けて言葉を告げた。


「なら、聞いてくれ。俺がここまで歪んだ全てを」

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