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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第8章 道化師は移ろう

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第178話 魔幻の地獄 ティデリストア#4

読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)



「エキドナ、右だ!」


「右ね! なら、左で殴らない!」


「リルはそのまま正面を殲滅しろ」


「......」


 クラウンは巨大な片手アックスを振るうミノタウロスから距離を取るとエキドナとリルリアーゼに指示を出していく。


 その言葉にエキドナは自己暗示をかけるように言葉に出しながら行動していき、思考停止したリルリアーゼは敵と定めたものに無慈悲な鉄槌を下していく。


 クラウンは半身で振り下ろされたアックスを避けるとその避けた勢いのまま回転してミノタウロスの頭を斬り落としていく。


 さらに周囲へと目線を配りながら溢れてくる魔物に対してエキドナ達に言葉で伝えていく。


 クラウン達が現在決めたルールとしては、エキドナがクラウンから聞いた言葉をそのまま反対へと解釈して攻撃に転換し、リルリアーゼはそのまま標的といて攻撃していくというもの。


 現在はこうも上手く動けているが、最初の方はミスも多かった。咄嗟に避けようと考えて前に突っ込んで攻撃を食らったり、逆に仕掛けようとして止まったり。


 いわば、「負けてください」と言われた条件じゃんけんに思わず勝ち手を出してしまうようなものだ。


 しかも、今回の場合はそれが致命的な一撃に繋がる場合があるということ。それは進むにつれて武装した魔物が現れたことに起因する。


 ともあれ、なんだかんだでやっとミスを減らして動けるようになったのだ。それも全てメンバー内で決めたルールのおかげである。


 それは一番ミスが少ないクラウンが司令塔となって二人を動かすというものだ。そして、指示する内容は動詞でないやつでも反対にするというもの。


 だから、先ほどクラウンはエキドナの左側から近づいてきた魔物に対して「右だ」と告げたのだ。 


 もちろん、そればかりでは全然動けないの多少は指示を受ける者も動いてもらうことになるが、そこは旅をして培った絆というようなものでカバーしている。


 ちなみに、これはエキドナだけに対してである。リルリアーゼは自立型思考を排除しているので、そこに思考は存在しなくクラウン達が受けるような影響はない。


 そして、それも続けていけば慣れていくというもの。なので、多少の芸のような動きも出来る。


「エキドナ、小さくしゃがめ! そして、リルは腕を上下にしてレーザーを出しながら一掃しろ」


「わかったわ」


「了解」


 クラウンの言葉にエキドナは大きく上に跳んだ。また、リルリアーゼはロボットのように棒読みで返事をすると右腕を上に、左腕を下にしてそれぞれ大砲のように変えると収束させた光のレーザーを放っていく。


 そして、そのレーザーを横なぎに払う。すると、レーザーを避けれずに直撃した魔物から胴体を上下に分断しながら、地面へと崩れ落ちていく。


 その間、クラウンは地上を一人走っていた。狙うはエキドナの行動を真似て避けた魔物。


 だが、クラウンはまだリルリアーゼの二本のレーザーを避けておらず、むしろ時計回りに動いてくるレーザーに直撃しそうといった感じだ。


 しかし、クラウンはもうこの現象の中での動き方を知っている。なので、踏み込んだ右足を僅かに後ろへと流しながら跳躍。


 地面と平行になるように体を一本の棒のようにしながら、体を捻って回転していく。そのクラウンの上下をレーザーが素早く通過していく。


 そして、上手く着地したクラウンは再び走り始め、左腕で糸を魔物の手足に括り付けながら手繰り寄せ、一気に細切れにしていく。


 クラウンはその通常状態でも困難であろう動きを全て思考の中を反対にしながら動かしているのだ。


 正気の沙汰でもないような困難な思考を冷静に巡らしながら行動している。命の危機がありながらのこの行動は自分の体の動きや自分自身を信じなければ出来ない行動だろう。


 それでいてエキドナの対しての指示にも注意を配っているし、リルリアーゼには通常通りの見方で指示をしている。


 自分とエキドナ、リルリアーゼの三人の行動を考えながら、それをさらに反対行動になるように読んで行動したり、指示を出しているのだ。


 いくら戦闘慣れをしているといっても、これも一種の化け物的行動だろう。マルチタスクここに極まれり。


 そしてしばらく、そんな戦闘が続いていき、ついに最終地点であろう洞窟を見つけた。


「なんだか思考がおかしくなりそうね。少し思考を元に戻したいわ」


「それがいいかもしれないな。だが、完全に捨てようとするな。また次の場所でも同じようなことになるかもしれないしな。それとリルリアーゼは復活しろ」


「思考制御.......プログラミング――――――完了。ふぅー、無感情は無感情で疲れますね。必要のない情報にキャパを消費しないのでいいのですが」


 クラウンの指示でリルリアーゼは思考を取り戻すと急に人間らしく饒舌にしゃべり始める。そのことにクラウンは「こいつ機械らしくねぇ」と思うのはいつものこと。


 すると、そんな残念な目で見つめるクラウンにリルリアーゼはなぜか興奮したように顔を赤らめていく。


「良いですね。その残念そうな目で見る感じ。もっと蔑んでください!」


「どういう構造で顔が赤くなってんだ。つーか、こいつ殴りてぇ.......だが、それをすれば負けな気がする」


「ウェルカムですよ~。ほらほら.......いたたたた! そう、これこれです!」


 ウザったらしく絡んでくるリルリアーゼにクラウンの無意識のアイアンクローが決まる。そのことに興奮するリルリアーゼ。


 その一方で、エキドナは先ほどまでの出来事を振り返っていた。それは当然、思考と行動が逆転するというもの。


 この話をどこかで覚えているような気がするのだ。それがどこであったか。もう少しで思い出せそうな気がする。


 そんな神妙な面持ちのエキドナに気付いたクラウンは地面に寝転がっているリルリアーゼの頭を踏みつけながら尋ねる。


「どうした? 何か思うことがあるのか?」


「ええ、まあ......ただそれがどういう話だったのかうまく思い出せないのよ。情報屋として動いたおかげで職業柄、一度見聞きした者は忘れることはないというのに。まだ先ほどの影響で思考が乱れているのかしら」


「それはあるかも知れないな。危険が迫っている状態で思考を逆転させるというのは本来正気じゃない。なんせ本能的行動に抗ってまで理性を働かせるんだからな。通常以上に、少なくとも倍は集中力が必要だ。思考がオーバーヒートしてもおかしくない」


「そう考えると旦那様はさすがって言ったところね。増々惚れてしまうわ。いや、むしろこんな旦那様だから惚れてしまったのかもね。ああ、そう考えると下のお口が疼いてくるわ。早く旦那様の―――――――」


「待て、それ以上は言わせない」


「お供します!――――――ふぐぅ」


「お前はしゃべるな」


 クラウンはどんなところでも飛び交う淫語にため息を吐いた。サキュバスよりサキュバスらしい竜人族。


 久々に思ったがやはり問題は多いだろう。先ほどサキュバスの生き残りとあったが、実はエキドナはサキュバスの血を引いていたりしないだろうか。可能性が高そうなのがなぜか怖い。


 ともあれ、こんな調子でもやる時はやってくれる頼もしい仲間だ。そこに対しての信頼はもはや揺るぎようはないだろう。


「早く全員と合流しないとな」


「そうね。特にまだ二回目の朱里ちゃんや雪姫ちゃんなんてもしここと同じよう.......だったら.......」


「どうしました? ミス・エキドナ」


 エキドナは二人の名前を呼ぶと何かを思い出したように言葉が途切れ途切れになっていく。そして、思考に没頭するように瞳をぼんやりとさせ始めた。


 そのことにご褒美をもらい終えたリルリアーゼが様子を伺うように聞いた。またクラウンもそのらしくない顔に黙って目線だけを送る。


 その間、エキドナは頭の中にある記憶容量にずっと「朱里」と「雪姫」というキーワードにアクセスをかけていた。


 そして、引き出していくはその二人との間にあったやり取りやその二人に関する情報。すると、その情報の中から朱里と雪姫のそれぞれの過去話を拾い上げた。


 それからさらに、その二つの過去話から共通点を拾っていく。


「そうだわ.......」


 エキドナはついに気づいた。先ほどから感じていた違和感に。今回体験した現象は朱里と雪姫が過去に引き金を引く原因となった行動と似ていたのだ。


 つまりは思考と行動の逆転。もちろん、聞いた限りの話と完全一致するわけじゃないが、それでも限りなく一致に近い。


 これが今回と原因があるかはわからない。ただ神の使徒がかかわっているという時点できな臭さはあったのだ。全否定は出来ない。


「だとすると、狙いは.......」


 エキドナは思考する。仮に神の使徒が二人を狙うとしても、その動機が見つからない。むしろ、その二人を再び使うとなれば動機は見つかる。


「どうした?」


「いいえ、考えすぎかもしれない」


「話してみろ」


「......余計な問題を引き起こしかねないからやめておくわ」


「......そうか」


 エキドナは思わずクラウンを見つめた。そして、クラウンに先ほどの思考に対して告げようと思ったが―――――やめた。それは言った通り余計ない情報でクラウンを惑わせたくないと思ったから。


 推測ならいくらでも考えられる。限りなく可能性の低いことですら。なら、まだ確証を持たない以上はクラウンに情報を与えない方が良いと思った。


 それはクラウンもまた考え過ぎるから。それ自体が悪いことではないことはわかっているが、クラウンはすでに自分のことで一杯一杯になっている節がある。


 それを本人があまり見せようとしないので気づきにくいが、それでも旅を共にしてきたのだ。それにクラウンのことを想っているからこそ余計にその行動で問題が起きないか心配になる。


 だから、クラウンの追及に対しても自分の意見を押し通した。とはいえ、クラウンの追及が一回だけであったことには驚きであったが。


「それじゃあ、行くぞ」


 そう言ってクラウンは洞窟の中に入っていき、中にある魔法陣へと乗った。すると、再び淡い光に包まれて、目の前は一瞬白い光景に覆われる。


 そして、目が覚めると横にはリリスと―――――――クラウン(自分)がいた。

もう一人のクラウンとは一体......?

次回に続く!

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