第160話 メッセージ
読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)
突然舞い降りてくる発想ってありますよね
「新着メッセージだと?」
クラウンは突然告げたリルリアーゼの言葉に思わず顔をしかめる。この世界にメールのような電子ツールがあるとでも言うのだろうか。そんなのがあればすぐにさらにこの世界の世界観が瓦解するが。
「先ほど受け取ったんですよ。ほら、見ていたじゃないですか」
「まさかあのヘッドショットでか.......」
「その通りです。頭に撃ち込まれた際に弾に付与されていた魔力で書かれた文字を解読して情報を抜き取りました」
「器用なことだな」
「伊達に高性能に作られていませんから。ですが、同時にマスターに話そうとしていた大半の情報が意図的にプロテクトがかけられました。現在も解析を継続中ですが復活の目処が立たないほど難解極まりない情報が侵入しました」
クラウンはその言葉を聞くとあごに手を付けて少し考える。
「『侵入』ということはお前が弾の解読をしたと同時にそれも流れ込んできたということか?」
「そういうことになります。お恥ずかしい話です。こんな使えないロボットは是非ともぶって欲しいものです」
「目を輝かせて言うな。お前のその無駄な機能はどうにかならんのか?」
「待て待て待って! なに平然と話を進めているのよ! こっちは突然前と後ろでいろいろなことが起こってるせいで混乱してるの! わかってるならしっかりと説明しなさい!」
クラウンとリルリアーゼのやり取りを聞いていたリリスがついに待ったをかけた。本人的にさっぱり何が何だかと言う気持ちはまさにその通りなのだろう。
さっきまで殺し合うつもりで戦っていた敵が倒した途端にクラウンの配下に下り、クラウンが情報を聞き出していると突然頭部を何かで撃ち抜かれる。
そして、その撃ち抜いた人物はハザドールで会ったレグリアという神の使徒で、しかもその使途に注目していると後ろではクラウンがレグリアに対してでなくリルリアーゼに対して攻撃をしていた。
その間にレグリアはどこかに消え、復活したリルリアーゼはクラウンに何事もなかったかのように話しかける始末。
急に一気に進み過ぎでクラウン達以外は頭にはてなマークが浮かんでいるところだ。だからこそ、同じ仲間として情報は共有すべきだと思われる。
特に今のような状況は。
その言葉を正論だと捉えたクラウンは自分の行動理由も含め説明していった。
「――――――ということだ。先のことを俺一人が進めて悪かったな」
「別にそこは謝る必要はないわよ。それにあんたの行動は私達を助けるための行動だったということもしっかり分かったわけだしね」
「そこだけ強調して言うな」
リリスはクラウンにニヤッとした笑みをするとクラウンはその視線から顔を逸らす。すると、そんなやり取りを見ていたベルが思わず呟いた。
「主様の反応が若干リリス様に似てきたです」
「ふふっ、逆に言えばリリスちゃんも旦那様に似てきたかもね」
「まあ、本人同士は気づいてないかもだけどな」
「なんだか悔しい気もするよ。ね? 朱里ちゃん?」
「そこで同意を求められても.......」
五人は二人の様子に各々の感想を告げていく。その表情はようやくこわばりが緩んできたという感じで、今回の戦いの終わりを告げているようであった。
気が付けば空からもところどころ青空が見えてきており、分厚い雲はまたどこかの地へと流れていっている。
「はあ、ともかく今後のことを話すにしてもそれは明日からだ。リルもその情報は明日だいいな?」
「了解です」
「なら、今日はもう休むぞ」
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―――――翌日
クラウン達は再び焦土に訪れていた。その目的は一言で言えば清掃だ。
これはカムイからの頼みで、リルリアーゼから情報は聞いてないにしろ、またどこかへ行くとなればその時に焦土をそのままにして行ってしまうのは酷いということで全員で清掃している。
といっても、ほとんどが灰なのでやることといったら掘った穴に灰を埋めていくということぐらいだが。
クラウンが糸でくっつけたり、リルリアーゼが多数の手で瓦礫を運んでいき、それらで不完全燃焼なものはカムイが焼き尽くしていく。
そして出来た灰をエキドナが竜化して掘った穴へとリリスが定期的に灰を浮かせて流し込んでいく。
その他のベル、ロキ、雪姫、朱里はそれぞれベルと朱里、ロキと雪姫というペアに分かれて焦土を練り歩いていく。
その目的はまだ無事な遺品や金属貴だ。それらを拾っていき、カルマへと渡していく予定。思い出の品として遺族に渡す場合もあれば、残ったものは他国へと売る資源の足しにさせる。
もちろん、そのようなもので増えるのは雀の涙ほどだ。だが、この国には現状で復興のためには出来るだけの資金が必要なのである。
だから、罪悪感が残りつつも火事場泥棒的な行動を続けている。
そしてしばらく時間が経ったところでリリスが全体に「休憩しましょ」と言って声をかけていった。
「マスターどうぞ」
目の前でリルリアーゼが四つん這いになる。その目は「椅子にしてください」と言わんばかりの表情だ。
「.......」
「ん♡ その冷めた目で無言で座っていくスタイル嫌いじゃないです」
「それじゃあ、今後について話し合うぞ」
「そうね、それが良いと思うわ」
「皆さんに無視されてる感が実にそそりますね」
リルリアーゼの言葉には誰も反応せず円形になるようにキレイにした地面へと座っていく。まるで触れたら負けであるとでも言っているかのようだ。
だが、実際のところ完璧に無視を決め込んでいるのはクラウン、リリス、ベル、朱里ぐらいだ。
エキドナは特有の淫乱さから笑みを浮かべ、カムイはクラウンとリルリアーゼの構図を自分と妹に見立てて「これもありだな」と呟き、雪姫はまたもや羨ましそうに見て特殊な扉を開きかけている所を朱里に止められている。
カムイはそんな連中らにもはや呆れたため息をしながら咳払いを一回。椅子にしているリルリアーゼへと説明を促していく。
「リル、お前が昨日得たメッセージをについて話せ」
「了解です、マスター」
リルリアーゼは体勢に似合わないキリッとした表情で話していく。
「昨日、リルが狙撃された時に得たメッセージを読ますと『やあ、元気にしてたかな。君らの憎き相手の一人であるレグリアだ。本当はじっくりと話してみたいんだけど、それは後にして単刀直入に告げるよ』」
リルリアーゼは目の前にレグリアがいるかのように口調を変えて告げていく。
「『君たちはこの島に鬼族の娘を探してきたんだろ? だけど、いなかった。まあ、もとよりいなかったんだけどね。でも、今度は確実にいる情報を教えてあげる。それは――――――魔王城さ。取り戻したいなら来ることだね。それじゃあね』ということです」
「罠ね」
「だろうな」
そのメッセージを聞いたリリスは一言でこの言葉を片付けてみせた。そして、その言葉に全員が同じ気持ちのようにうなづいていく。
「だが、結局のところ俺達が奴に行動を先読みされている限りずっと後手であることには変わりない。行く前に危険だとはハッキリとわかるだろう」
「だな。けどそうだとしても、俺は行く.......いや、行かなければならない。それが俺の目的であり、それに死んだグレンの弟からの頼みでもあるからな」
そう言いながらグレンは腰に刺してあるグレンの鞘を引き抜いて両手で持ちながら眺める。すると、その言葉に同意するように次々と声が上がっていった。
「家族を助けるは当然です」
「そうね。私も勝手なことをしてて言う資格はないと思うけど、それでも早く会ってあげなくちゃね」
「私はここまで来たんだから最後まで手伝うよ!」
「朱里だって! カムイさんのためならどこまでだって助けるよ!」
「ウォン!」
「だそうだけど、カムイはどうするわけ?」
リリスはもはやわかりきった様子でカムイを見る。その表情にカムイは目を閉じて笑みを浮かべていく。そして、グレンの刀を支えににして立ち上がると丁寧にお辞儀した。
「お前達にはまだまだ迷惑をかけるかもしれない。だが、どうか俺のために力を貸してくれ! 俺は今度こそルナを、妹を救ってみせる!」
「.......顔を上げろ、カムイ」
クラウンはカムイにそう指示するとカムイはゆっくりと顔を上げていく。そして、カムイが目にしたのは―――――一人一人が希望と覚悟を宿した表情であった。
「言わなくてもわかるだろ? これが答えだ」
「ありがとう。本当にありがとう」
カムイを中心に優し気な風が全員を包み込んでいく。風で服はなびき、髪は揺れる。そして青空に流れていく白い入道雲を背景にカムイはとてもいい顔をしていた。
「その言葉は救った後にだ。まだ俺達は何も成し遂げてない」
「それでもだ。俺にとっては一人で探していた時よりも今の方が何倍もルナはまだ生きていると思えるんだ。どうしてだろうな?」
「単純な話だ。お前がずっと大切にしてきた仲間がいるからだろう?」
「そう......かもな。いや、そうに違いない」
クラウンの問いかけるような優しい笑みにカムイは呼応するように目にしわを作りながら笑う。そして、グレンの鞘を腰に刺し戻すと元気よく告げた。
「よし。休憩終わり......でいいか?」
「ハッキリしないな」
「いや、俺が頼んだことだし.......って聞かなくてもいい感じだったな。なら、張り切って終わらせるぞ
ー!」
「「「「「おー!」」」」」
クラウン以外が元気よく拳を突き上げていく。いや、クラウンも少しだけ拳を突き上げていた。
そんなクラウンの表情にリリスは思わず微笑んでしまう。変わった。これは完全に変わった。前ならきっとしなかったことを今のクラウンはしている。
ずっと望んでいたクラウンが目の前にいる。優しいクラウンがそこにいる。それが何よりも嬉しかった。
そんなリリスの表情をすでに立ち上がっていた雪姫が何かを含んだ表情で、目で見つめていた。




