第153話 兵器の屋敷 ウェポノイド#2
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乙女ゲーはモブと暴食のベルセルクが面白い
――――――ババババババッ!!!
一斉に銃撃音が鳴り響く。サブマシンガンのような銃器から連続で射出された銃弾は一つ一つが空気を切り裂きながら進んでいき、目で捉えきれない速さでクラウン達へと迫っていく。
――――――クラウンはその銃機を見た瞬間から動き出していた。この中でただ一人このことが予想出来ていたからだ。
スゥーっと僅かに肺の中へと空気を送り込んでいく。そして、銃機へと目線を向けて意識を深く落としていく。
すると、クラウンの色づいていた視界はモノクロのような世界へと早変わりしていく。また同時に射出された銃弾がクラウンに向かってゆっくりと向かって行く。
走馬灯が見える時、世界がゆっくりと動いていくように見える現象がある。それは人が生存するために無意識に打開策を見出そうとして普通の集中よりも深い集中をしている状態だ。
そればっかりではないが、その状態で一番近い表現をするならばゾーン状態と言うべきだろう。それをクラウンは意図的に発動させたのだ。
もちろん、これは今までであれば出来ない技術であった。だが、クラウンはその発展形である気配の極地へと至ったのでそこれが出来るようになったのだ。
銃弾は空気中に通り跡のような線を残しながらクラウンへと向かって行くことがわかる。その死の鉛玉一つ一つの位置を確認していくと右手を刀の柄の方へと触らせていく。
そしてすぐさま抜刀。最小限の動きで銃弾を的確に斬っていく。一つ、三つ、五つ――――――ドドドドドドドドド!!!
オレンジ色の火花を散らしながら連続で斬り裂いていく。だが、クラウンはすぐさま苦虫を噛み潰す。それはあまりにも銃弾の数が多いからだ。
サブマシンガンは一秒間に10~15発も銃弾を射出するという。そして、現在サブマシンガンは二丁。
単純計算でも20~30発もの弾丸が飛んでくる。それがほぼ同時。クラウンがいくら人間離れしていようとも限界がある。
だが、その心配は無用だ。一人ではきつかったかもしれないが、今は一人じゃない。それに、クラウンの行動は初撃を防ぐためだけのことだったから。
「氷壁!」
「止まりなさい!」
クラウンの正面の右半面には凍てつく冷気を放った分厚い氷の壁が立ち塞がり、左半面には突然勢いを無くした銃弾が空中へと止まったまま浮いている。
それらはカムイとリリスによるものだ。クラウンが初撃を防いだ一瞬の間に状況を理解して対処したのだ。
それによって今の銃撃による被害はゼロ。そして、銃機も一定の時間が経つと撃つのを止めてふすまの奥へと戻っていった。
それを確認するとクラウンは一先ず安堵の息を吐いた。
「予想していたがまさかいきなり連続射出するタイプだとは......初見殺しにも程があるな」
「確かにな。これじゃあ、大抵のやつらじゃ戻ってこないわけだ。あの速さであの量は初見では俺でも殺られる可能性があった」
「というか、あれは何? もしかして、クラウンの世界のものかしら?」
「そうだよ、仁! どうしてあんなものがここにあるの!? 朱里ちゃんの武器を見た時から思ってたけど」
カムイ、リリスと先ほどのことに思った言葉を吐いていく。すると、リリスの言葉に反応した雪姫がクラウンに向かって聞いてきた。
その気持ちは仕方ないだろう。雪姫はもとの世界でも銃というもの自体見たことない。なのに、この世界では朱里が平然と持っていたり、神殿の罠として普通に現れている。
この世界は剣と魔法が全てだと思っていた雪姫にとって先ほどの出来事は常識の崩壊を引き起こさせるようなものだった。
なので、雪姫は銃撃が終わった後でもやや動揺したような素振りを見せていて、朱里もまた雪姫より酷くはないがそれでも動揺はしていた。
そんな雪姫に対する問いにクラウンはふすまへと向かいながら話し始める。
「単純な話だ。彰さん達のように俺達がくる以前にも転移者はいただろう? ならば、それよりももっと前の転移者がなんらかの理由でこのような神殿を作ったということだろう」
クラウンはふすまへと手をかけるとそれを横に引いていく。だが、そのふすまはピクリとも横へ動かない。
すると、クラウンは数歩後ろに下がって抜刀し、居合切りでふすまを斬りにかかった。だが、そのふすまは当たる前にガキンッと透明な壁に弾かれた。
つまりはこのふすまは物理的には破壊できないということ。ということは、毎回現れる現代兵器にその都度対処しないといけないことだということだ。
「待って仁、『達』ってどういうこと? 私達の前に召喚された人は彰さんだけじゃなかったということ?」
「.......今のはただの言い間違いだ。気にするな」
クラウンは雪姫へとおざなりに言葉を返していくと先へと歩き始める。その言葉に雪姫は思わず心配そうな顔をする。
あの顔は何かを知っている時の顔だ。どんなにポーカーフェイスを決めようと幼馴染に見抜けないはずがない。
だが、そのことを聞くのは躊躇われた。それはクラウンの触れてはいけない琴線に触れるような気がしたから。
その気持ちがもどかしいと雪姫は感じながらも歩き始めたクラウンの後へとついていく。
そして、クラウン達が歩いて行くことしばらくして、クラウンは突然腕を横に投げだして後ろにいる全員を制止させた。
すると、そのクラウンの行動を理解したベルが僅かに鼻を動かしながら聞いていく。
「主様、私が先導していくです?」
「いや、そのつもりはない。それよりも手っ取り早い方法がある――――――リリス」
クラウンが顔だけリリスの方へと向けると目線を合わせた。すると、その意図を理解したリリスが「わかったわ」と言って右腕を振り上げた。
そして、その腕を一気に下に降ろす。その瞬間、クラウン達の前に続いている真っ直ぐな一本道に超重力が加えられ、ドゴンッ! という地鳴りとともに僅かに地面が揺れていく。
また音同時に地面が一気に砕けて道の端々に大きな地割れのようなヒビが広がっていく。それがこの道に仕掛けられていた罠だ。
「海堂君......今のって.......」
「地雷だ。それも踏んだら即死するぐらいのやつだろうな。リリスが重力を下に思いっきりかけていたからわかりづかったと思うがな。一応、通り抜けられるような道はあったが、それ以外の場所に何十個単位で仕掛けられていたからな。一度踏めば連鎖爆発だ。食らえば体も残らないかもな」
「旦那様の世界はなんともとんでもないものを所持しているのね」
「俺のいた場所には恐らくないだろうが、あることは確かだな。だからこそ、どうしてこんな神殿を作ったのかとても気になるところだが」
「死人に口なしって言うものね」
「.......まあ、そうだな」
クラウンはひび割れた地面を見ながら呟いていく。だが、その時の目は明らかにエキドナの意見に同意したような目ではなかった。
言うなれば聞こうと思えば聞けるとでも言っているかのように。ただ、その表情は背後にいるエキドナにはわからなかったが。
それから、クラウン達はひび割れた地面へと歩いて行く。時折、初見殺しのような不意打ちの銃撃が始まったがそれらはクラウン達によって防がれ、誰も傷を負わない形で順調に進んでいた。
すると、目の前に道が見えない暗闇が見えてきた。そのことにクラウンは「またこのパターンか」とウザさを感じれいるがこの先に行かなければならないのでしょうがなく妥協する。
一応、<気配察知>を巡らしているが罠のような気配は感じない。それに、暗闇と思っていた場所はただの黒い壁であった。
人差し指で触ってみても何もない。だが、その壁に何も無いだけであってクラウンにはその壁に不安を感じていた。
なぜなら、その壁に触れた指は黒く汚れていたからだ。そして、その壁から微かに臭う炭のような臭い。
これの意味することがなんなのかは今の時点では分からないが、きな臭いことこの上ない。
「なんか嫌な感じね」
「この臭い、まるで俺への当てつけみたいだな。俺がただそう感じているだけかもしれないが、なんだか腹が立ってくるな」
「気にするな。もしかしたら、煽るようなそういう設定なのかもしれない。そして、冷静さを失わせた後に殺す。まあ、今がたまたまその状況になってしまっているだけだと思うがな」
「そう......だな。確かに、お前さんの言う通りかもしれないな。なら、俺は仲間をしっかりと護れるようにいつも通りにいないとな」
カムイはクラウンの言葉に励まされるとお返しとばかりに肩を叩いた。それはまるでクラウンも護る対象に入っていると言っているみたいだ。
そのことにクラウンは何も答えなかったがそれでも口元は僅かに口角が上がっていた。
そして、クラウン達がその道を少し進むと背後からガタンッという音ともにこの空間に闇が訪れた。入口が閉められたのだ。どこにも逃がさないように。
すると今度は、クラウン達の前へと空中に灯った炎が真っ直ぐ道を照らしていく。そして、その道の一番奥には石が置かれてあった。あれは神殿名物のイベント強制案件だ。
その石に近づいていくとリリスがその石に書かれている文を読み上げていく。
「この道を抜けたければ三つの鍵を集めよ。ただし、この空間は紅き光を持って挑戦者を食らう。また、読んだ後この道はすぐに消える」
――――ドゴオオオオオオオオンッッ!!!
「「「「「!」」」」」
リリスがその言葉を読みあげた瞬間、背後から爆発音が鳴り響く。それによって、クラウン達の被害はなかったが問題はそこではなかった。
それはその爆発によって背後には炭の壁が燃えて出来た炎の壁が発生したのだ。しかも、その壁はクラウン達に向かって勢いよく迫ってくる。まるでガスかなにかに炎が引火したみたいに。
振り向いたカムイは咄嗟に炎を操る「炎滅」の刀を振るう。その刀はその場に存在する炎なら消すことも出来るのだ。だが、その刀でその炎を消すことは出来なかった。
恐らくクラウンでも破壊できない壁が存在するように、カムイの刀でも消せない特別な炎なのだろう。なら、今は逃げ切ることが優先だ。
そして、クラウン達が石のある方へと向くと先ほどは見えなかったが、迫り来る炎によって三つの道が照らされていた。ということは、この先にそれぞれ鍵があるということなのだろう。
制限時間はこの空間が燃え尽くされるまで。この空間の規模もわからなければ、何が仕掛けられているかも分からならない。
だが、たとえ何があろうとも関係ない。
「全員、覚悟を決めろ!」
クラウンはそう全員に告げた。




